命の粒
ワンチャンですが明日も投稿出来たら投稿しようと思います。
最初にその場に辿り着いたのはフォースだった。突然道路の前方方向に現れた髪をブリーチした女性に彼女達は驚きつつも足を止める。彼女達は避難しようと目的地に向かっている最中であり、精神的にも肉体的にも疲弊していた状態ですぐさま判断し、行動することが出来なかった。
「あ、あの…もしかして美世のお知り合いの方ですか?」
こちらの質問の反応もなくすぐさま私達に向かって走って来た。その動きはこちらに配慮した動きではなく、私達に害をなそうとする動きで私は子供たちに逃げるように告げる。
「逃げてッ!!」
子供たちを突き放すように押し、こちらに向かってくる女性目掛けて持っていた手荷物を投げ付けた。でも止まる気はないようで相変わらずこちらに向かって一直線に走って来る。
「お母さんっ!」
「母さんっ!」
「早く行きなさいっ!!」
娘と息子はまだ本当に危ないことを分かっていない。私は美代さんと出会ってからは色んな危ないことを知っているから分かるけど、アレは本当にとても危険な相手だ。クスリ漬けのジャンキーや半グレのチンピラなんか比べ物にならないほどあの女性は危険人物…!子供たちだけは絶対に逃さないとっ…!!
あと1メートルと差し迫った時にサードもテレポートをし終えてフォースの後方2メートルに出現する。そしてそのすぐ後に美世と蘇芳が現れてフォースをひどく驚かせた。何故ならばフォースの伸ばした手を弾くように美世が現れたからだ。
「このクソアマッ…!!」
出力の関係上、美世たちの能力が優先されてフォースの腕が弾き飛ばれされて右腕を失う。そして現れた瞬間に美世は空いた左腕でフォースの頭部を掴むとその握力で頭蓋骨を砕き近くに停まっていた車目掛けて思いっ切り投げ飛ばした。
「ガッ…ハッ…!」
その様子を見ていた家族3人は今までの人生の中で一番驚いていた。突然見知った彼女が細身の女性とはいえ5メートルは離れていた車まで片手の力で投げたのだ。驚かないはずがない。
「美世…だよね…?」
「澪さん…それに香桜くんと舞帝虹ちゃんも私から離れないで。守ってあげられないから。」
3人は美世の声を聞いて余裕がないとすぐに分かった。昔から知っているからこその理解の速さ。そして滅多にこんな声を出さない彼女がこう言ったのだ。3人はその場を逃げ出さずに美世の後ろに固まった。
「美世、その子は…?」
美世の右手には大事そうに抱っこで抱えられた少女が居た。美世とまた違った美貌を持った顔立ちに儚そうな印象を受ける四肢。…ほんの少しだけ美世に似ている。
「…私の家族。蘇芳っていうの。可愛いでしょ。」
「…じゃあ私の家族でもあるね。よろしくね蘇芳ちゃん。」
「はい…よろしくお願いしますね澪さん。」
美世と澪たちがこの状況下でも軽口を交わし合ったのは香桜と舞帝虹たちのため。彼らを安心させようとした方便のようなものだが、それを聞いていた彼等もそれは分かっていたので口を閉ざしたまま聞くだけに留めた。
「…ここで間に合うなんてやっぱりヒーロー気質なんだね。」
サードは腰に手を当てて美世たちに近付く。そして両肩から怪腕を生やし間合いを測る。怪腕の強い距離は向こうの射程でもある関係上すぐには詰められない。そしてそのことを分かっている美世は動かずにただその場でサードを見ていた。
だがサードたちには時間が無い。もう視界の7割以上は黒い人間のシルエットで埋まり、全体像はもはや見ることも不可能。そんな彼女は表情には出さなかったがかなり焦っていた。
(ファーストもセカンドも手間取ってるし、フォースは頭蓋骨を潰されて脳みそを治すのに20秒掛かるな…)
20秒待ってふたりで殺るか、20秒という貴重な時間を無駄にもしないためにも前へと出るか…
そんな悩みをしていると突然…蘇芳のベルガー粒子が減り始める。最初は何かしらの能力を行使してこちらに攻撃を仕掛けてきたのかとサードは警戒を強めて怪腕を前方向へクロス状に構えた。しかし何も起きない。
(なんだ…?蘇芳と美世も慌ててる…?)
慌てるのもそのはず、蘇芳の持つベルガー粒子が美世を通じて彼女の能力に変換されていたからだ。しかも留まることを知らず終わりが見えてこない。このままでは蘇芳の持つベルガー粒子はあと10秒もしないうちに無くなってしまうだろう。
「蘇芳っ!」
「これって…!」
すぐさま離れたふたりはその異常事態に言葉を失う。
(蘇芳のベルガー粒子を吸った!?私のベルガー粒子だけじゃなくて他人のベルガー粒子も利用しようとするなんて異常にもほどがあるでしょっ!?)
これは美世の意思でも蘇芳の意思でもない。美世が生み出した何かが判断して取り込んだのだ。
「…はは、ここしかねえよなっ!?」
サードは蘇芳目掛けて駆け出して思いっ切り蹴りを放った。そして出現させた怪腕も振り回すことで攻撃を被せる。怪腕はベルガー粒子という性質上、物理干渉は無いのでサードの身体をすり抜けて無秩序に振り回すことが可能。
しかし怪腕は事象そのものを引き起こせるので、もし蘇芳にぶつかれば彼女の身体は粉砕するか、又は削除されてしまうだろう。
「ぐうぅッ…!!」
蘇芳は咄嗟にバリアを張って防御をし、暫くは拮抗するが、疲れ知らずの異形能力者であるサードの猛攻を防ぎ切ることが出来ずにその衝撃によって道路の上を転がっていく。
「蘇芳っー!!」
美世が蘇芳のもとへ駆け寄ろうとしたが、サードは右手に拳銃を握り、美世ではなく3人の家族目掛けて引き金を引いた。
この攻撃を無能力者の彼女たちが避けれるわけがない。そもそもサードの握っている拳銃はベルガー粒子によって創り出された代物。彼女達には何をしているのかすら認識出来ない。自分達が何故殺されるのか、どのようにして死ぬのかすら分からないまま不可視の弾丸が澪たち親子を貫こうとした。
しかし…結果としてはそうはならなかった。もしかしたらそうなった方が良かったのかもしれない。
「いぢッ…!」
美世から血が滴る。その姿を後ろから見ていた澪たち親子は何が何やら理解が出来ずにお互いの顔を見合うしかない。特に大きな音は無かった。だから何かが起きたようには思えない。そもそもその前の事も良くは分からない。
肌が紅く発光する全裸の黒人女性が目にも止まらない速さで蹴りを何回か放ったけど、蘇芳という子には当たったようには見えなかったのに何故か数メートルも弾かれたように飛ばされたし、美世はその場を動かずに血を垂らしている。…どこか怪我をしたの?
「美世っ!血っ!血が出てる…っ!?」
澪は後ろからは分からなかったので彼女の肩越しに怪我の具合を見ようとした。すると美世の右腕がまるで金属バットで殴られたみたいに真っ二つに折れており、しかも服越しでも大きく損傷しているのが伺えるほどに肉と骨が露出しているではないか。
しかも後ろからでは分からなかったが出血した血が服に吸われたり肌に伝っていたりして血が道路に垂れるのを防いでいた。つまりは地面にはまだそこまで垂れていないほうだったのだ。澪の想像していたよりもずっと出血が激しく、もっと悲惨な怪我を負っていた。
「美世っ!?どうしたのその怪我ッ!?」
「澪さんは下がってて…!本当に危ないのっ!ここは私の言うことを聞いてよっ!」
美世はまだ大丈夫な左腕で澪を掴んで自分の後ろに隠すように誘導する。こんな状態であっても自身より他人を優先する行動は美学ではあるが、美しさだけでは誰も救えないことを彼女はそろそろ理解すべきだろう。
「み、美世さん?」
「お母さん…美世ちゃん怪我、酷いの…?」
「あんた達は私の後ろにいなッ!!私の前に出るんじゃないよッ!!」
今までで聞いたことのない母親の怒った声にふたりは身体を硬直させて口を閉ざす。それだけ命の危険に晒されているのだ。そして自分たちの母親が身をもって守ろうとしてくれていることに恐怖を覚えて涙が出てきた。自分たちの良く知る人達が命懸けで行動している事そのものが怖くて仕方がない。
「お、お姉ちゃん…」
アスファルトの上を転がると人間は皮膚が傷付き血が出てしまう。良くバイクを乗っている人達の間で言われるが“アスファルトはヤスリと変わらない”
人間そのものの質量と激しい衝撃を加えると人の肉は簡単に削げ落ち骨も削られてしまう。
今の蘇芳は左頬の皮膚が裂けてしまいドロッとした血が首筋にまで垂れており、肘や膝などの硬くて突起した部分も地面にぶつけてしまいかなりの出血をしている。指の関節も外れたのか、又は骨が折れたせいでまともに握ることも出来ない。
能力者といっても身体能力が無能力者と変わらない蘇芳はたった一回の衝撃で立つことも出来ない程に疲弊していた。姉を守らないといけないという使命で意識を失わずに済んでいたが、あと何秒間起きていられるか分からない状態だった。
「…なんかさ、まるであたしが悪役みたいじゃん。」
サードはボロボロになってでも自分ではなく他人を助けようとする美世と蘇芳のふたりを見て頭を掻く。非常に居心地が悪く躊躇いすら覚える。しかし彼女はそれでも引き金を引いた。不可視の弾丸は美世の顔面目掛けて突き進み、どうにか回避行動を取ろうとした美世は後ろに居る澪の存在を思い出してまともに動かない右腕で再びガードした。
「ガアッ…!!」
折れた右腕が千切れんばかりに暴れて近くに居た澪と香桜と舞帝虹の3人に美世の鮮血が舞い散る。血は生生しく輝き、火傷しそうな熱と妖しい匂いを放っていた。その血は間違いなくあの千切れそうになっている美世の腕から零れたものだと嫌でも理解してしまう。
「美世っ!!」
「美世さんっ!!」
「み、美世ちゃん…い、いやーっ!!」
少女の叫びが東京の街に鳴り響く。しかしこの中で最も泣き叫びたいであろう美世は奥歯を噛み締めて決して声が出ないようにし、何か打開策が無いか思考を巡らせていた。
(パスを通じて蘇芳からベルガー粒子を受け取っても結局は吸われてお互いにガス欠になる…。理華に助けを求めて一時的に助かっても向こうから【熱光量】が飛んでくる…!)
他に助けを求めようにも距離が遠いし私は何も能力が使えない。しかも澪さんたち親子を助けながら逃げることも難しい。蘇芳はあと少しで意識を失ってしまう。私の探知能力は相手が意識があるかどうかを視ることが出来るけど今の蘇芳は意識を失う3秒前といったところだ。
「…すげーなお前。その頑丈さは人間辞めてるよ。」
サードは一撃でも貰えば能力者であっても致命傷になる攻撃を2回も貰っているのにも関わらず、それでも膝すらつかずに立ち続けている美世を心のなかで称賛した。
そしてサードは手心を加える事は失礼にあたると考えて確実に殺せる方法を取ることにした。左腕を前にして能力を行使する。行使した能力はテレポート、瞬間移動させたのは1体の調整体。…美世の表情が強張る。
サードはその調整体に命令して美世たち目掛けて突撃を仕掛け、それと同時にサードは悪魔の言葉を口にした。
「これで終わり…【再現】」
2つの軌道線に不可視の弾丸が同時に疾走る。この攻撃方法は美世が幾度も使用して何度も能力者を屠った実績のある凶悪なやり方だ。これを防ぐにはそこを退くしかない。美世の身体能力ならばギリギリ避けることは可能のはずだ。その代わりに後ろに居る誰かは死ぬことになるだろう。
そのことを誰よりも分かっている彼女は選択してしまう。今の今まで蘇芳にすら隠し通し、この場では一度しか使えない選択肢を…。
「…はあ?」
脳の修復を終えたフォースが最初に見た光景は相変わらずに真っ黒な視界だったが、それでも視界の隅に映っていた蘇芳が突然消えて、しかも美世と美世が守っていた親子たちが恐らく同じタイミングで消えたようにも見えた。
残ったのは突撃を仕掛けた調整体が1体のみ。標的を失った調整体が空中を飛び交い、そして勝手に何処かへと飛んで行ってしまう。恐らくは一番近くに居る人間を襲いに行ったのだろうが、止める気も起きずそのまま放置して美世たちを探すことにした。
「サード…仕留めたの?」
「いや…分からない。なんで消えた?」
辺りを見回しても見当たらず、どこにも彼女たちは現れない。
「テレポート…した?」
「ならどこに現れる?あの家族の視界は?」
【ラプラス】を使えば特異点を除いて視界を覗き見ることが出来る。それを使えばどこに逃げようとも追うことは出来るが…
「…見えない?あたしこの能力をあまり使ったことが無いからさ。上手く使えていないだけ?」
「いや…私も見えない。現在進行系の時間だとどこにも居ない。」
「居ない…?なんで?死んだってこと?」
「…もしそうならこの能力は解除出来ないってことになるね。」
相変わらずサードとフォースの視界にはあのうっとおしい黒い影が映し出されている。そうなると美世にはまだ死んでいて欲しくないという矛盾した考えが浮かんでしまう。仮にもし本当に美世を殺せていたとして、それでもこの能力が解除されないのならあと数分の内に自分たちは死ぬことになる。
「いや、死んでないよ。だって死体が無いんだよ?」
「じゃあどこに行ったの?まさかどこにも行ってないとか?」
そこでフォースは気付く。さっきとは何か雰囲気が違うことに。何かあったはずの何かが突然消えたようだ。…美世たちが消えたことと関係があるのかもしれない。
「…ベルガー粒子だ。ここは組織のビルが近くにある。つまりここは美世の射程圏内だった。なのにここには美世のベルガー粒子が存在しない。」
「いや、元々無かったじゃない。あいつのベルガー粒子ってこのモザイクに吸われて…」
「違う。【探求】の能力で空間に溶け込ましたベルガー粒子だよ。さっきまであったのに無くなってる。」
フォースは先程の美世が【多次元的存在干渉能力】を使っていた際の周辺の様子を【ラプラス】で見ることが出来ない事と逆に蘇芳と離れた際の美世の視界を覗けることを確認して確信を得る。
「この辺りのベルガー粒子をかき集めて吸われる前に能力を行使したんだ。1度きりの能力になるけど出来なくはない。…よく思い付くよ。しかも最後の最後まで温存してたとか…。」
「…マジ?右腕をあんなことになってさ、しかも私が調整体を持ち出すまで温存してたの?…ここまで行くとヤバいよあの女。」
サードはここまで他者に畏怖を感じる経験をしたことがない。本当に昔から知っていた相手だ。自分達が多国籍企業どもに集められ、そこでコピー能力を使ってこの計画を考えた時に最も調べたのは美世だ。しかし知ったつもりになっていた相手が、自分の予想を超えて化け物だった。彼女の精神構造は人間や能力者を超越している…
「感想は後。【探求】を使って逃げたのならマッピングした範囲内だし、【ラプラス】で追えると思う。今の時間が視えなくても先の時間なら視えるからね。」
どこに隠れているは分かった。ベルガー粒子内だ。しかしそのベルガー粒子は自分の生み出した能力に吸われていつかは外に排出される。そこを【ラプラス】で見れば…
「…ここか。まあ、そうだよね。行くよサード。」
フォースとサードが瞬間移動をしてその場を離れる。そしてテレポートした先は組織の総本山である東京支部。そこには調整体たちの猛攻を実質たった一人で防衛していたルイスとその仲間である魔女達に加えて特定課の中で戦闘能力を有した能力者の集団が居たが、そんな中で民間人の家族たちも混ざっていた
「また今度はなにッ!?何か半裸と全裸の女が来たんだけどッ!?」
「ルイスは周りを警戒してて!まだ調整体たちが空の上からこっちを伺ってる!」
根本から折れたビル内部でどうにか立ち回り続けていたルイスは限界だった。調整体を殺すのは簡単だ。問題なのは自分の所へ来ない個体達。他の者に襲いかかろうとしているのを防ぐのに神経を使っているせいで酷く荒れていた。能力者としても人間として大きく成長した姿はもはや見る影もない。
「ルイスか…まあ、ここなら時間稼ぎは出来るよね。」
ルイスの心からの叫びを無視してフォースとサードは戦闘体勢に入った。そしてそのすぐに美世と意識を失った蘇芳と澪たち家族が現れて見合う形になる。美世もここにサードたちが現れるのを予想していたので特に驚くことなく臨戦態勢に入った。
しかしこのまま殺り合おうにも周りには人が多く、例えここが広い玄関のロビーであってもルイスの影や瓦礫があって手狭に感じる。しかも倒壊したビル群もあって大きな建造物に囲まれて、ちょっとしたリングのような有様だった。
「ルイス…」
「神よっ!その怪我はどうしたのですかっ!?神の血は赤かったのですねっ!?」
「そんなボケ良いから蘇芳とこの家族を影の中にしまって…」
澪たち親子は突然周りの景色が変わり、混乱しつつも状況を理解しようと辺りを見回す。すると先程居たサードとフォースのふたりを見つけてすぐにお互いに抱き寄せ合う。
「美世こっちに来なさいっ!」
「私から離れたほうがいいよ。…ルイス、早く。」
「わ、分かりましたっ!」
澪たち親子は浮遊感を感じたと同時に視界が真っ暗になりそして…意識を失った。ルイスの影の中は時間が経過しないという特性上、そこに入れば何者も彼らを害することが出来なくなる。そして蘇芳も影の中へと落ちた影響でベルガー粒子を失う形で避難する事となった。…ここで蘇芳は前線を離脱した形になる。
「それで…なんで彼等を避難させてないの?」
「あ!あの、その…拒まれまして、それで神の大切な家族ですので無理やり影の中に落としたら神に殺されてしまうと思いましたので…」
「私達も説得はしたのですが周りを見れば分かる通り敵だらけで彼等を説得する暇もなく守ることしか出来なかったのです…」
ルイスとラァミィの言い分を聞いた私は大きく溜め息を吐く。大切な人達を避難させる為にここに来たのにまさか一番大切な人達が未だに避難せず残っているとは思いもしなかった。
「…美世か?」
「…避難しててよ。…お父さん。」
振り返ると瓦礫の影に隠れていた血の繋がらない元父親の姿があった。たった3人の親子もちゃんと守れず、たったひとりの妹も守りきれなかった私がこの家族を果たして守りきれるものか…
「ここなら一回は能力を使えるし、悪い判断じゃ無かったんじゃない?」
気安く話しかけてくるサードを睨み付け、絶対に叶わない願いだと理解しつつも一途の願いを口にする。
「…うっせえよサード。だったら殺すのは私だけにしてあの家族は狙わないでよ。」
「それは無理。アンタを殺さないとあたし達が殺されてしまうもの。」
サードは美世と見合いながら間合いを詰めていく。もうここで殺る気なのは分かりきったことだが、それでも美世は自分の命ではなく他人の家族の命を優先に考えていた。
どうすれば彼らが助かるのか。どうしたらこの状況を打開出来るのか。死ぬ直前まで彼女は考え続けるだろう。
“最善の選択は何か?”
その答えを見つける為に彼女は大切な人達に背を向け、虎の子のベルガー粒子を集めて能力を行使する…
本編で描ききれなかった部分の補足をここで書きます。
蜃気楼は創始者の家系でその姪である結貴も創始者の家系に当たります。処理課の中でも特別な立場なのも創始者の家系の人間だからです。
そして蜃気楼が処理課のなかで一人だけ年食っていたり、テレポーターであったりなどの設定は一応初期のほうからあったのですが、いつ回収するのかは特に考えておらず、最悪本編では書かなくてもいいかなと考えていました。脳内設定というやつです。
一応結貴との設定と辻褄が合うようにキャラを設定していましたが、他にも色んなキャラに色々な設定があったりして作者自身でも把握しきれなくなっています。多分もう本編にはそういう設定は出てこないと思います。尺的に無理。




