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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
6.私達の居ない世界
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審判の日

ユニーク数が55000人を超えました。感謝…圧倒的感謝…!

ルイスの影はすごい速度で動ける上に範囲も相当なものだからその能力を操る彼女の判断に任せられる。とても優秀な能力者だもん。信用しないと。でも…ちょっと不安定だ。やらかしているイメージしかないもの。


…いやいや、彼女のことを考えていても仕方ない。一番問題なのはあの雲だ。雲よりも上で爆発したら終わりだよね…。


でもそれは無いと思う。雲は結構厚いし重い。爆風が地上まで上手く届かなくなるから雲の下で起爆するはず。そうすれば雲が蓋となって爆風が地上に行き渡るもん。


でも雲から見えた時にはもう遅いだろうな…。やるなら雲の上辺りでやりたい。私の能力ならば充分届く。…そうなるとあの厚い雲が邪魔だ。


「…光を集めろ。【熱光量(サーマル)】」


暗い日中の東京にも光はある。その少ない光をビルの上に集めて巨大な光球を創り出す。だが、光を集めるということは光を閉じ込めるということだ。そうすると光球の周りは真っ暗闇な膜が生まれ、光球の光がどんどん強まっていく。


明るい筈の光球の周りが日中であっても暗闇になる…この一見して反した光景は能力特有の事象に他ならない。矛盾している事象であってもこの世界で起こり得るのだ。


そしてこの光景は一般人にとってはとても異質に見える。能力者が見たら能力による事象だと納得するだろうが、光球の直径が9メートルにもなれば嫌でも目立ってしまう。


(…これ一般人にバレるよね。)


というかルイスの影も相当目立つ。高層ビルからだと良く分かるけど彼女が影を広げながら凄まじい速度で動いている。


範囲としては大体…直径600メートルぐらいだろうか。目測だから大体の大きさだけど真っ黒な影が生き物のように動いているから一般人達は何事かと戸惑っているだろうな。建物の中でも外が急に真っ暗闇になればおかしいと思うだろう。なにしろまだ昼間なのだから。


(さっさと終わらせないとパニックが起きるかも…。)


集めた光を一気に放出する。光球の光は蘇芳の指示のあった方角へと放出されて東京の街を真っ白に染め上げた。しかし変化はそれだけじゃない。私の放った光はやがて雲に大きな穴をあけた。


雪が降る程の冷気が上空にあっても私の【熱光量(サーマル)】の光が空気中の原子・分子を温めて、冷えて固まった水と塵の塊はただの水蒸気となって風に乗って消えていく。


不自然なほどに雲が散れて空から太陽の光が地上へと照らされる。もうこうなったら私の能力は止められない。上空には強烈な光があり私はその光を利用して能力を行使する。


初めに放った光球の光には私のベルガー粒子が乗せられていて光と共に遥か彼方の上空にまで伸びている。能力者とは基本的にベルガー粒子を認識して操る者を指す名称で、私はベルガー粒子を媒介に光を操る能力者だとここで再認識した。


「ぐっ…!」


途轍もない頭痛に襲われて視界が真っ赤に染まる。目の血管が切れて私の視界が血の色に染まったのだ。それ程までに能力による負荷が大きく、しかもそれだけでは留まらない。


私はやがて自分の力では立っていられなくなり、膝をついて鼻と耳から赤黒い固形のような粘り気のある血を出しながら呼吸困難に陥った。運動神経にまで支障がある負荷は危険信号だ。障害が残る可能性があって最悪の場合は死に至る場合もある。


でも私は能力を行使し続ける。それしか取れる選択肢がないからだ。どの能力者だって長年能力を使っていれば分かってくるけど能力は一度行使してしまえばキャンセルが出来ない。この制約によって私は自身の命を燃やし尽くすことになったとしても能力を行使するしかない。


(痛いっ…!脳が捻れて口から漏れ出しそうっ…!)


でも私は能力の行使に集中する。私はまだ何も成せていない…誰の役にも立っていない!私と同い年の美世は今も戦っているのにっ!自分の能力で脳を潰している暇なんてないんだよッ!!


「うっ…ああ、あああああッ!!!!」


手を前に出して射程を伸ばしていく。ミサイルがこの距離で見えないのなら見えるようにすればいい。私は光を操る能力者なんだからッ…!!


見えないということは私の見たいものが発する光が私の網膜まで届いていないということ。それなら届かせればいい。そんな簡単なことに悩む時間なんて無い!


雲が散って上空には直径1キロメートルもの穴があいていた。そして空にあいた穴の先に核ミサイルはある。その核ミサイルを正確に見る必要があるのは私ではなくルイスだ。ルイスが落ちてきたミサイルを正確に視認するか認識する必要がある。


でもルイスの能力ではそれは不可能。私が認識してルイスにその情報をパスを通じて送って誘導すればいい。それで任務は完了する。


私は上空にまで伸ばしたベルガー粒子を操作して光を辺りに散りばめるように放出する。折角集めた光だけど太陽から無限のように光が送られているから問題無い。すぐに補充出来るし、射程を伸ばす方が急務だ。


放出した光は光の速さで広がり高速で向かって来ていた核ミサイルを捕らえる。私はまだ見えていないけど直進させた光が高速で飛来する何かにぶつかって反射したから間違いない。頭でそのことを認識した私は反射した光を私の所まで操作して持って来る。


光の速さで動かせるからコンマ0.01秒以下の誤差しかない核ミサイルの姿を捕らえた光情報を手にすることが出来た。


この光情報を私の目の前で映像化する。私の視界にすっぽりと収まるディスプレイのように表示させて私は肉眼で核ミサイルを視認し、距離感を正確に計算しようと試みた。


(…地上から1000キロメートルも上空で、秒速は…7()k()m()!?)


熱光量(サーマル)】の光がどれぐらいの速さで反射して来るかを脳で計算すると驚きの結果が算出された。そんな超高度から秒速7kmの速度で落ちて来ているなんて…人はなんてものを作り出してしまったのだろうか。


人を殺す為に開発し、そして製造した人の業の深さを私は身をもって実感した。こんなものを見れば私の【熱光量(サーマル)】なんて可愛いものだ。こんな悪魔みたいな物を平気で保有している人間のほうが私は恐ろしい。


こんなものを私なんかがどうにか出来るの…?もしかして私…ルイスにとんでもない事を頼んでしまったんじゃ…?


そんな後悔が心の中に生まれても能力はもう行使されてしまった。今も鼻と目から血が流れ出て私自身の能力が私自身の命を現在進行系で削っている。


焦りが最高潮に達して体調が更に悪くなるけど、頭のすみに嫌に冷静な部分があって、私が置かれている状況の深刻さを正確に認識していた。


(ヤバいヤバいヤバいヤバいッ!もう()()()()()()()()!この速度ならあと2分もしないうちに地上に辿り着いちゃう…!)


しかも地上まで降りて来ないまま起爆するから下手するとあと1分程度の時間しか無いかもしれない。…もうここで勝負に出よう。


理華は大気圏外まで自身の能力が届いているという事実に気付かないまま、大気圏外から落下してくる核ミサイルに対して能力を行使する。


先ず行なったことは核ミサイルの周りの温度を上げることだ。弾道ミサイルは空気を急激に圧縮させながら落下しているので先端はかなり高温になっているが、側面は突風に晒されているのでそこまで表面温度は高くない。


最も温度が高いのは推進装置のある噴射口後部。ここからは止め処なく固形燃料が燃えた際に生じる熱が外部へと噴射されている。


そして理華は核ミサイルの機能を停止させるために核ミサイル全体に凄まじい熱を加えた。核ミサイルに塗られた塗装や外壁材が溶けて蒸発しきるほどの熱であったが、核ミサイルはそれでも止まらない。


噴射口からも変わらずに燃料が噴射されて空気の断層に突入して空気抵抗が増えたとしても速度が維持されていたし、しかもミサイルの入射角度的にもロケットエンジンが停止したとして、このまま東京のどこかに落下すると理華は予想していた。


更に【熱光量(サーマル)】にリソースを注いで何百キロも離れた核ミサイルに対して干渉を強める。核ミサイル全体が凄まじい熱によって真っ赤に染まり、金属部が溶け始めた箇所も見られるほどの高温となってロケットエンジンが付いた後部がミサイルから破損した。


核ミサイルは空中分解しながらも秒速5kmもの速度で落下し続けて人の肉眼で確認出来る爆炎を上げた。その光景を見た理華とルイスに緊張が走る。まるで隕石のように落ちてくる核爆弾をどうにかしないといけないというプレッシャーに呼吸を忘れた。


「…神よ。もし、失敗しても怒らずに生き返らせてくださいますか…?」


そんな弱音を吐くルイスはただ落ちてくる核の巨星に目を奪われ、ただただ呆然と自身の置かれている状況に押し潰されそうになっていた。

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