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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
6.私達の居ない世界
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戻る感覚

最近どの話で伏線を張っていたかを確認するためにグーグルで検索して調べていたりするのですが(500話を超えて見返すのに時間が掛かりすぎるので)そこで「私は殺し屋として世界に寄与する」と探したいワードを入れたりします。


そこでこの小説を紹介してくれたりするまとめサイトやブログを見掛ける機会があって非常に驚きました。いや、本当に驚きましたよ。


もしかしたらそこからここに来た人達も居るのかな〜と思うと、とても不思議な気持ちになったりして嬉しくなりました。


貴重な経験をさせて頂きましたので記念としてここで報告させて頂きました。

私は左手をファーストと呼ばれた男を隠すように前に出して集中する。この能力ならば私の探知範囲に入っている人間全てを消し去ることが可能。一番厄介そうな敵を何も考慮せずに消す…。


それが最適解だと思い能力を行使しようとした。だけど先生が立ち上がって私の能力を制したのだ。


「ミヨ…それは最終手段だ。まだ早い。」


私の軌道を脱ぎ捨ててアインの姿に変わった先生が敵に向かって歩き出す。


『ワタシなら大丈夫だ 怪我をするほどワタシは正確に再現されていない さっきの攻撃だってほら もう何も無い ワタシにとってダメージなんてものは無視出来るものだ だから…落ち着け 冷静さを欠いたらこの戦い…死ぬぞ』


パスを通じて先生が自身の状況と私の心境を説明してくれる。私が先生がやられたのを見て冷静さを失っていることに気付いて先生が忠告してくれたのだ。


『…ごめんなさい先生。冷静さを欠いていました。もう大丈夫です。…敵の目的が恐らく私のあの能力を使わせることなので、先生の許可無しでは使わない方向で行こうかと思います。』


ふぅ…冷静さを欠くなんて一年前の私ならしなかった。先生がやられる光景を見たせいかな。私の敬愛する先生を撃つなんて…。


あ、いけないいけない。指摘されたのにまた冷静さを欠く所だった。これ以上先生の負担になるわけにはいかない。


先ずは…そうだ。何故か敵は私の持つこの能力を使わせようと揺さぶって来ている節がある。多分あいつらが先生と同じ能力を使える事に関係していると思うんだけど…。


そこが分かればあいつらを攻略する手立てになるのに。ここは少し時間を掛けてでも情報を集めよう。核ミサイルは理華に任せた。彼女なら私の期待に応えてくれる。絶対に絶対に応えようとする。


だから私はこの戦いに集中しよう。守るべきものがあり過ぎて集中しきれないのはもう自覚している。だからこそこいつらはここで殺さないといけない。私の後ろには大切な家族が居るのだから…。


「…チッ、乗ってこないじゃん。」


仲間からサードと呼ばれたパイナップル頭の女が私の反応を見て舌打ちをする。そしてやはり私の予想が当たっていたらしく私の予想を認めるような発言を口にした。


やっぱり私に能力を使わせようとしているっぽいね。…まあ、この発言が罠の可能性もあるけど、このタイプの女はそんな細かい手を使わない。


それに、こいつらは私をそこまで危険視していない。舐めているという訳ではなく自分達に自信があり過ぎって感じ。まあ、私と先生にとってはそっちのほうが都合が良いんだけどね。


「先生と共闘して戦うのいつ振りでしょうか…。」


全身に血が回るような感覚を覚えて視界がギュッ〜と広がる。私が戦う時に良く起こる現象で、恐らく情報を得ようと視界が広がっているんだと思う。懐かしい…ここ最近では感じなかった感覚だ。


美世が両手を構えるとその場の空気が急に重くなったような感覚に襲われ、5人組の彼らもそれを感じた。


美世は指の関節を曲げるとポキポキと音が鳴り、まるで獣のように爪を立てて獰猛な笑みを浮かべる。その表情は彼女の容姿と合わさり怪しげな妖艶さを醸し出していた。


前までなら幼さも見え隠れする容姿だった為に人によっては彼女の雌豹のような靭やかな四肢を見て欲情を覚える者も居たかもしれない。しかし今の美世は完全に成熟期を迎え、虎や獅子を連想させるような体躯の良さを持ち、今では天狼とそこまで遜色の無い完成された肉体を持っている。


身長も女性にしては高く175cm以上もあり体重に関しては80kgもある。これは骨の密度が高く筋肉量が多いからだ。


それに対して死神は身長が美世と同じぐらいで体重は生前で77kgはあったが、この体重は再現したものなので全く再現しなければ体重そのものが無くなる特性から実質として体重というのは存在しない。


なので相手の打撃などの攻撃をいなせることも可能。しかも軌道を固定すれば何者よりも重くなることも出来る。


そんなふたりが無言のまま敵に歩み寄っていく。決して相手を甘く見ている訳ではなく、敵がまだどんな能力を持っているのか不明なのでそれを解明する為であった。


「へー…このふたり、私達のベルガー粒子に触れると取り憑かれること分かってて()()()()()()()()()()()。」


サードは美世と似た獰猛そうな笑みを浮かべて美世に向かって歩き出す。彼女は見た目から分かる通り近距離戦を得意とした能力者で、その特性上近距離戦では無類の強さを誇る能力者である。なので美世たちが近距離戦を仕掛けてきたことに歓喜した。


どんな相手も近距離戦になったら本気も出さないまま敵が壊れてしまう。そのせいでフラストレーションが溜まっていた彼女にとっては美世という存在は最高の相手であった。


「え、なに。これタイマンなの?じゃあ…死神のほうはどうする?」


フィフスと呼ばれる黒縁の眼鏡をした女がやる気の無さそうな感じでこれからどうするのかを周りの仲間たちに尋ねる。


「え?俺達4人で死神を相手にすればいいでしょ。」


ファーストはごく自然に有利な対面が出来上がっているのだからこれを利用する以外の選択肢は無いと断言。そもそも彼らには時間が無い。核ミサイルが到着すれば流石に彼らでも死は免れないだろう。


『ワタシが4人を引き受ける その間にその女を殺せ』


『任せてください。殺すのは大得意です。』


雪の降る中でひとつ…不自然な光景があった。美世の身体に触れる前に雪が蒸発する。スーツに雪がひとつも付かない光景にサードは美世と見合ってすぐに気付いた。


(体温が高い…?じゃあ…()()()()()。それならまだ私が有利だよ。)


サードも身長が高く美世よりも高い182cmで、体重も89kgもあるので体格だけでいえば美世よりも優れている。それに彼女のベルガー粒子は相手に取り憑くので触れるだけで能力者であっても無事では済まない。


「ちょっとさ、嬉しいんだけど…」


サードと美世はもうお互いに触れられる距離まで近付き、そこで停止してからサードが頭を人差し指で掻きながら言い出しづらそうに語り始める。


「私のこと舐めてない?あんた異形能力者で軌道を固定出来るんでしょ?()()()()()。」


美世は答えない。獲物を目の前にした獅子のように爪を立てながらその表情はまるで人形のように無表情。そこが美世らしくあり、人間らしくない不気味さでもあった。


もう彼女は人間という種族に分類していい生き物では無いのかもしれない。優れた能力を獲得したせいで無能力者、強いては能力者とも比べ物にならない。そんな存在を果たして人間に分類出来るのか…。


いや、この表現は正しくない。彼女が人間であり続けることを辞めたのだ。まともな人間性を維持したまま彼女は生きていくことが出来なかった。その存在から人間であり続けるのは不可能。しかし、その精神は年齢通りに繊細で、なりたくてなった訳では無い。


彼女が能力者であることを強いられたのは、この世界の意思ともいえる運命で、望んで得た能力(才能)では決してない。


「それなのになんでこの距離まで近付いてきたのよ?教えてあげるけど私も異形能力者。単純な殴り合いならあんたと対等ってわけ。私に触れても軌道を固定出来ないし、傷だってすぐに完治する。」


サードが語る内容は美世たちの予想通りのもので、美世たちが不利であることを示す内容であった。例え美世でも訓練され、軌道を操る不死の能力者を相手にするのは骨が折れる。


しかし彼の者だけは違った。彼の者は美世の変化に気付いていたのだ。


「お前たちは舐め過ぎだ。」


死神はアインの姿でファースト・セカンド・フォース・フィフスの4人とお互いに一歩踏み込めば届くような距離で見合い、そしてサードと同じようなことを口にする。


「死神…君は自分のことを過大評価していないかい?君が()()()()()()()()()()()()()()。それでこの4人を相手に出来るのかい?」


サードと同じく体格に恵まれ黒人特有の長い四肢を持つファーストが両手を広げて死神を挑発する。こちらには4人も居て尚且つそちらは弱体された能力。その指摘に死神は表情を変えずにそれは間違いだと指摘する。


「違う。ワタシではない。()()()()()。お前たちはミヨを舐め過ぎだ。」


死神の言葉にファーストはキョトンとした表情を浮かべ、そこから失笑へと変わる。


「それはこっちの台詞だよ。お前こそ俺達を舐め過ぎだ。お前たちは俺達のこと何も知らないだろう。俺達は…この日の為に、この時の為に準備をしてきた。どんな苦痛でもどんな環境でも受け入れた。それはこの時の為、俺達は…ここに賭けて“来た”んだよ。」


その言葉には、死神ですら計れない重みがあった。ずっと蓋をしてきた物を開けたような言葉だった。まるで初めて口にしたといった印象を死神はファーストの言葉から受ける。


(こいつら…()()()()()()?)


彼らが自身と同じ能力を使えるという事は…一巡目の世界にも行けるということ。つまり、一巡目の世界から二巡目の世界に来れるということだ。なら…こいつらの出身はどこの時間軸だろうな。


死神は彼らの生い立ちに興味を抱いていた。異常な存在というのは分かる。なら、どこから始まりどこから来たのかが攻略の鍵になるだろう。


しかし、それはワタシの考え。ミヨは別の考えで動き、ワタシですら予想出来ない能力者…。


ほら…言ったそばからだ。もう止められない。全てお前たちのせいだからな。あの頃の彼女を呼び起こしたのはお前たちだ。その責任をその身で引き受けるが良い。


「この時間の事は俺達にも見えなかったが、充分な戦力は…」


突然…ファーストが言い終わる前にセカンド・フォース・フィフスの3人と一緒に後ろからの衝撃に襲われ、死神の方へと吹き飛んだ。


死神はその光景を見るだけで特に何もせずにすれ違う5()()を見送る。そして道路に転がっていく5()()はアスファルトに叩き付けられて無様にその身体を傷付けた。


「かはっ…!な、何が…」


ファーストは何が起きたのか確認するために周りを見渡す。そしてまたしても言い終える前に衝撃に襲われた。


自分のすぐ横に首が折れて下顎の全てを失い、凄まじい衝撃によって眼球が赤黒く滲んだサードが白い湯気を立ち昇らせながら倒れているのを目にしたのだ。


「だから言っただろう?お前たちはミヨを舐め過ぎた。何故勝てると思ったんだ?」


死神はゆっくりと振り返り道路に倒れる5人を見下す。その目には慢心も無ければ哀れにもない。これから死ぬことが確定した者をただ見ているだけの目だった。


「先生、軌道というよりベルガー粒子を体表に固めて殴れば取り憑かれずに殴れますよ。あ、先生は取り憑かれないか。」


握り拳を作った美世が死神の隣まで歩いて来て今起きたことを説明しだす。その説明の内容は単純なもので、ただベルガー粒子を集めた拳でサードを殴っただけだった。


それだけでサードの顎は吹き飛び、その衝撃で吹き飛んだ彼女の身体に後ろで立っていた4人に激突し、こうして無様に道路の上に倒れている。そう…それだけのことだった。


「ほら、立てよ。この日の為に準備してきたんだろ?私は一度家に帰って寝たいぐらいコンディションは良くないけど、お前たちは準備万端なんだからさ。…さっさと立たないなら…」


美世は足に力を込め…


「もう…ここで終われよっ…!」


解放した。一瞬で地上から離れて人が首を見上げる為に動かす最高速度を超えた速度で宙へと飛ぶ。高さ30メートル以上もの高さから美世は落下していき…


「…回避、回避しろッ!!」


敵はファーストの指示に従って反射的にその場を飛び去る。しかしその場に残るものが居た。美世の攻撃によって頭部に甚大な損傷を負ったサードだけが倒れたままで、そのサードに向かって美世が降りてくる。


美世は着地する際に足全体に怪脚を再現し、その足でサードの身体の上にクッションのように着地した。だが、サードはクッションの役割を果たすことは出来ず、彼女の身体の下にある地面がガラスのように割れる。


アスファルトの道路はその衝撃を受け止めることが出来ずに割れるが、それでも衝撃を殺し切れることはなく、大量の破片が周囲の建物に向かって飛び散って行った。


建物の外壁やガラスはまるで銃弾の雨に晒されたような有様になるのに必要な時間は一瞬のことだった。しかし被害はそれだけで留まることはなく、地面に対して垂直に放たれた怪脚の衝撃は地中深くまで響き渡り、なんと東京都は震度2の地震に襲われる。


その地震に電柱のケーブルは揺れ、その電柱に登って作業をしていた作業者たちはまるで何かが爆発したような爆音を聴き、すぐに作業を止めて避難を始める。


そして周辺に居た警察官たちは立ち昇る大量の煙と破片に危機感を覚えて一般人を避難させようと無線機に手を伸ばす。


そんな中でその爆心地の中心に居た美世は大きく抉れた地中から這い出て軽く自身の肩に乗る土埃を払っていた。軌道を固定した美世の表面に汚れらしきものは無かったが、それでも肩などには土埃が乗ることもある。それを払い美世は徐々に思い出し始めた感覚に喜びを感じていた。


「…やっと戻って来た。一年前のあの感覚が…。これならまあ、殺れる…かな?」

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