大切な密約
おかげさまでもう少しでユニーク数が5万人超えそうです。何もわからない状態から始めた執筆活動ですがここまで続けてきて本当に良かったです。では、皆さんまたどこかでお会いしましょう!(未完)
ふざけている場合じゃないんだから早く離れてよ!怖いから2人!まだ見た目も中身もかなりキツめのオッサン2人に詰め寄られた方がマシ!
「ほ、本当にちょっと待って。時間が無いんだって。」
「なら全てをここで話してしまえ。お前蘇芳が真実を語らない時に文句を言ったよな?なら私達が文句を言ってもいいだろう?」
「別に言わなくてもいいんだよ?そしたら地下に連れていって守ってあげる。」
右からイザ姉の囁きが聞こえてきて左からは理華の囁きが聞こえてくる。なんて嫌なASMRなんだ。可哀想なのはちょっと…。私は終始イチャイチャが良いんですよ。NTRは嫌い。
「話します!話すから止めて!みんな見てるんだって!恥ずかしいんだって!」
そう言ってなんとか2人の拘束から逃げ出した私は私の現状について話すことにした。…どうせ話し終わっても拘束されるんだろうな〜。
「私と先生が地下の研究所で消えたのを覚えている?」
「あれを忘れられる人間居るの?」
そ、そうだよね。衝撃的すぎたよね?でも私にとっては一年も前の出来事なんだよ。相対性なんだよ!
「あ、うん。それでね?先生と一巡目の世界に行ってたの。」
「…話何個か飛んでない?」
「と、飛んでないよ!というか一回話したし!…スルーされたけど。」
理華のツッコミで中々話が進んでいかない。でもみんなも私を怪しんだ目で見てくるしどうしたら…。
「本当よ。オリオンで死神でもある私が証人。ちゃんと見てたから。」
「あ、アネモネさん…!」
やっぱりこの人は私を甘やかしてくれる逸材…!初対面から分かってたんだから!
「日本語で話してるから何言ってるのか分かんねえな?」
「ねえ?話の流れとか良く分かんないわよね?」
魔女ーズがフランス語でグチグチと言い始めたので私とイザ姉と理華とアネモネさんとで翻訳しながら話を進めることにした。
「一巡目の世界についてはもう大体みんな分かってるよね?ここが二巡目の世界なのもオーケー?」
私が確認を取るとみんなが頷くけどハーパーはあまり良くは分かっていないみたいだ。そういえば話した事無かったっけ?
「私勝手にみんながハーパーに話しているもんだと思ってました。」
「私達もあいの風がハーパーに話しているもんだと思ってたけど?」
「何も聞かされていません!!私だけ仲間はずれですか!?」
ハーパーがものすごく怒るけどあまり怖くない。みんなホッコリ顔だ。でも通行人たちは何だ何だと気になった様子で通り過ぎていく。…目立つよねここ。
(【個人的範囲】)
私は能力を使い私達への意識を逸らした。これなら心置きなくヤバい内容を話すことが出来るね。
「秘密が多いのねミヨって。」
「アネモネさん…あなた程ではありませんよ。」
秘密の塊みたいな人なのに人の事を言わないでほしいよ。アネモネさんが顔を私の方に向けるとそのなんとも表現しにくい赤色の髪が揺らいでそちらに意識が向いてしまう。…何度見ても髪キレイだな〜。あの色良いよね〜今度澪さんに頼んであの色に染めてもらおうかな?
…その機会が私に残されていたらの話だけど。
「イチャつかないで。」
理華が私の腕を引っ張ってまた耳打ちをしてくる。またこの子ったら嫉妬して〜。私よりも重いんじゃない?
「一言話しただけでイチャつき判定なら挨拶すら出来ないんだけど。」
「じゃあ挨拶しないで。」
「マリナ様に殺される…。」
理不尽過ぎてもうツッコむ気も起きない。早く情報を提示して楽になろう…。
「え〜っとね、この二巡目の世界って2020年じゃん?でも一巡目の世界は千年後の世界なの。私はそこに死神と一緒に辿り着いてそこで一年暮らしてたんだけど…」
「…私の日本語力が低いのかアイが千年後の世界に行っていたと聞き取れたのてすが…?」
「合ってるぞハーパー。」
ハーパーが私の話した内容が受け止めきれずに素の反応を見せる。でも…それっていつものことか。大体私の話す内容はおかしいからね。
「つまり神は神の国に行っていた…?」
「我々も向かわねば…」
「今こそ解放の刻…」
こっちは私の話した内容を正確に翻訳して聞いた筈なのに正確に捉えることができていない団体が居る。でも…それっていつものことか。大体こいつらの頭の中おかしいからね。
「だからこんなにも成長してんの。ハーパーもおかしいって思ってたでしょ?」
私はハーパーの前でくるくると回って身体的アピールをする。だけどハーパーにはしっくり来ないのか不思議そうにしてるだけだ。
「単に成長期だったんじゃなかったのですね。実家のお隣に住んでいるジョージも少し会わないうちに凄く大きくなっていたので普通のことかと…。」
「ジョージくん私と同じ特異点説出てきたな…。」
というか天然なのを忘れていたよ。ハーパーってこんな娘だったね。
「話が脱線してるぞ。」
おっと、天狼モードのイザ姉が少し苛立ってる。ここは真面目モードにならないとまたご飯抜きにされてしまう!
「あ〜と…そこで能力者を研究してその能力すら行使出来るイカれた人工AIと未来の能力者たちと先生と協力して今こうして私がこの時間軸に顕現出来てる〜って訳。」
3行で纏めたけど自分で言ってて意味が分からなかった。なんだこれ。マザーっていう存在がアホ過ぎてバカみたいな説明にしかならない。
「お前は何をしているんだ…いや、そのおかげで世界の破滅という未来を知れたのは分かる。でもこれは…」
天狼が本当に疲れたような声を出してフォローに成り切れていないフォローを入れてくれた。その間に私が魔女たちに翻訳して説明をする。
「…流石は神です。常人では考えられないルートを辿っているようですね。」
ラァミィくん、それって良い意味で言ってる?それとも天狼と同じ様に悪い意味で言ってる?
「何一つとして理解出来ないけど死神は向こうの時間軸に居るってことだよね?」
「うん、流石は私の相棒。私の理解度が高い。」
天の川は私への耐性が高いおかげでスルースキルが非常に高い。こういうのはもう何回も経験してるもんね。
「…で、アネモネはどんな立ち位置なんだ?あいの風の話だけでは分からない。」
「ん〜私も説明するには少し大変…かな?一応あなた達のフォローで来たっていうのは分かるとは思うのだけど。」
「他のオリオンたちはどうした?先程から見かけないが?」
「アイン…では伝わないか、死神の方で問題があって今は私しか再現出来ないの。原因は…言わなくても分かるか。」
そしてみんなの視線が私に向けられる。…いや!頑張ってたんだから!休んでいたわけじゃないもん!!トトロ居たもん!
「頑張ってたんだもん…。」
「じゃあ何してたの?」
「…言えないもん。」
私がそう言うとまた私をマイク代わりにして2人のASMR収録が再開される。R18(グロ)作品のね…。
「おい。」
「ん〜?」
(薬降るさんのことは墓まで持っていくの!)
「ごめん、これだけは絶対に言えない。」
真面目な表情で真摯に伝えた。でもこの2人には通じずに平手で頬を引っ叩かれる。ペチンペチンってずっと引っ叩かれる…。
「おいおいおいあいの風。隠し事は無しにしないか〜?チームだろ〜?ん〜?」
「私にも言えないんだ。口では相棒って言って結局は他人なんだ。あいの風って浮気を平気でするタイプの女の子だよね〜?」
私の真面目モードが通じないとかこの女ども無敵かよ…。先生なんてこれでイチコロなのに。
「これだけは言えない。…その言えない理由は言える。」
「ほほう…話してみろ。」
「その理由によっては…ね?」
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。さっきから瞬きもしてないのが怖い。目の表面乾かない?目薬を影の中に仕舞ってるから渡そうか?
「は、話せない理由は親子の尊厳を守るため。だから拷問されようが何をされようが絶対に話さない。例え罪のない人を人質にされても決して話さないよ。もしどうしても知りたかったら蘇芳に聞くしかないけど、あの子は絶対に決して話さないと思うよ。もし話したら私が蘇芳の口を壊してでも阻止するって知ってるから。」
私から殺気が漏れて二人が一瞬で距離を取る。大きくは動かなかったけど反射的に一歩引いたって感じだ。…無意識で殺気が出てしまった。2人には悪いことしちゃったな…。
「…はあ、分かったよ。」
「こうなったら絶対に話さないですからね。ここは大人しく引きましょう天狼さん。」
「ふぅ…ごめんね。でも、もし…どうしても、どうしても聞きたかったら蘇芳経由で親子の誰かを紹介してもらってその親子のどちらかから聞いて。私の口からは絶対に話さないよ。」
「分かったって。もう聞かん。」
「ならアネモネさんとの話をさせて。私もこれからどうしたらいいのか決めかねているから。」
アネモネさんの下へ歩いて彼女と対面で相談することにした。かなり状況が切羽詰まってるからね。
「アネモネさん。敵は現在進行系で世界中同時にテロ行為をしています。…今の私では対処出来ません。」
「そのようですね。でも私ではこの事態に対して対応しようにも能力が足りません。私達の特性は知ってますよね?私が出来ないと判断したのは私の考えではなくて能力としての判断です。」
「そうですか…。」
アネモネさんでも駄目となると…
「多国籍企業は何故同時にテロ行為を?世界征服に繋がるようには思えないが…?」
アネモネさんと私との会話に天狼が入ってくるけど私とアネモネはそのまま話を続ける。本当に時間が無いからだ。もうおふざけをしている暇はない。
「蘇芳がどこに居るか炎天から聞きにいかないとかな…。」
「パスで聞いたら?」
またアネモネさんにマジレスされてしまった。そうだよパスで良いじゃん。
「…あったま良い〜。」
蘇芳とのパスに意識を集中して蘇芳に呼び掛ける。お願い出てよ…。
『蘇芳ー!お姉ちゃんたちどうしたら良いー!?』
『…どうしようもない。後手に回っているのは知ってるよね?』
返事が来たけど予想外な反応だ。蘇芳の口からどうしようもないだって…?蘇芳は何を知ってそんなことを言っているの?
『うん、でもそうならないように蘇芳が予め対策を立てていたんでしょ?』
『対策は立てたよ。』
『…なんか嫌な言い方だね。まるで対策は立てたけど上手くいくとは言っていないみたい。』
『うん。』
蘇芳は嘘が言えない。つまりは私の予想が当たってしまったというわけだ。薬降るさんの話を聞いてからそんな気はしていたけど、直接言われると少し来るものがある。
『…これで何人死ぬことになるの。そこには罪のない人々が含まれているよね?』
『知ってるよそれぐらい。でも、このルート以外はもっと死ぬことになる。一番被害が少ないのは現状のルートだから。』
『…そっか。じゃあ…終わっちゃうの?この世界ってもう駄目だったりする…?』
『それはお姉ちゃん次第だよ。』
何故か私の心の中は静かだった。蘇芳のことを怒ろうとも思わなかったし、取り乱したりもしない。ただ淡々と事実を受け入れ始めていた。
『…少しでも私は人々を救うよ。』
『うん、お姉ちゃんになら出来るよ。私もお姉ちゃんみたいに出来るだけ人々を生かす選択を選ぶから。だから…とても辛いだろうけどみんなをよろしくね。』
『そっちはそっちで、こっちはこっちで…って感じ?』
『うん。』
『そっか…そんな感じか…。』
『…怒らないの?』
蘇芳の不安という気持ちがパスを通じて流れてくる。だけど私はもう彼女に伝えたはずだ。姉として私は妹である彼女の意志を尊重すると。
『妹の夢を応援するって言ったじゃん。もう忘れちゃったの?』
『…え?』
困ったような戸惑ったような妹の感情が流れ込んでくる。…それだけ意外だったのだろうけど、それだけ私を警戒していたってことだよね…。ごめんね。怖いお姉ちゃんでさ。
『私はもう家族を蔑ろにして赤の他人を取りたくない。それで私は大切な家族を失ったから。…もうあんな後悔は一回で十分だよ。だから今回は私は大切な家族や仲間を選ぶことにしたから。』
私が蘇芳の話を冷静に聞けているのは迷いが無いからだ。前回は2択だった。私はお母さんを選ばずに平穏を取ったけど、それが自身にとって良い選択だったわけじゃない。世界にとって、他者にとっては正しい選択だったとは思うけど。
だけど今回は家族と世界だ。天秤に乗せるのも憚られる選択だと思う。…世界、なんて重い選択なのだろうか。普通だったら世界を選ぶだろうね。でも…私は知ってしまった。家族を蔑ろにする後悔を。
『私も知ったから。だから蘇芳…私は蘇芳を選ぶよ。あ、でも諦めたわけじゃないよ?私はこの二巡目の世界を継続させたい。』
『お姉ちゃん…なんか、変わったね。私の知らないお姉ちゃんだよ。』
蘇芳の知る私とはどの私を言っているのだろうか。この二巡目の私?それとも蘇芳の求める三巡目の私だろうか。
『…蘇芳は三巡目の世界に行きたいんだよね?』
『うん…どうしても行きたい。いや、行かないとなの。』
蘇芳は悪人じゃない。だから彼女の選択は悪ではない。これは彼女の思い描く未来への選択なのだから。
『じゃあ…今度は負けないよ?』
これは最後の蘇芳への宣戦布告。姉妹での勝負もこれでおしまい。どちらが勝ってもお互いに納得し協力しあう。これぞ初めて会った時に彼女が言っていたWin-Winの関係だ。
『どちらが勝っても恨みっこなし…っていうわけね。うん、いいよ。…だけど忘れないで。私はずっと美世の味方だから。』
蘇芳はそう言い残し私達の密約が終了した。もう選択してしまったのだから引き戻せない。後は出来るだけ素早く行動し、迫り来る破滅から大切な人達を救わないと…。
次回…か、その次ぐらいからずっとシリアスなシーンが続くと思います。前の章のラスト辺りみたいな感じで。
あと30〜40話以内に終われたら良いんですけど、今までの経験則から多分終わらないと思いますね。




