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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
6.私達の居ない世界
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裏切りの疑い

私は…気持ちよく戦っていたはず。だけど急にミヨが私の目の前に現れてなんか見たことのある女までも隣に立っていた。…あれ、これ前にもあったような…


「…よし、成功した。」


「私…もしかして死んだ?」


「うん。」


そっか…何か失敗しちゃったらしいわね。しかもここどこ?あれ?なんで東京支部のビルが後ろにあるの?もしかしてかなり時間経っている…?誰か説明してちょうだい。…いややっぱり良いわ。自分のミスの話なんて聞きたくないし。


「あの、あ、ありがとうございました…生き返らせてくれて。」


「約束だからね。」


ルイスの時間を巻き戻して敵のベルガー粒子も削除した。このやり方なら一日以内の出来事なら元に戻せることが分かっただけで充分だ。


「じゃあルイスは雪さんと一緒にビル内に待機してて。」


「ちょっ!美世ちゃん私も待機なの!?私戦えるよ!」


雪さん…かなり興奮してる。多分だけど全能感に酔ってる状態だ。雪さんでもあの感覚に飲まれると冷静になれないのか。


「雪さんのベルガー粒子は私の影に入った時に弾かれてしまったので能力の行使をすることが出来ません。」


「あっ…」


「それに敵の目的がこの東京支部なのが確定したので守りに人を割かないとです。ルイスと雪さんの二人は外に出しても強いですが内に置いても安心出来るので待機でお願いします。」


そうだ。敵の狙いは個人ではなく組織自体への攻撃。だからここの人達を守ってあげないといけない。


「そして彼らに事情説明もしないとでしょ?」


私は雪さんが破壊したビルの窓からこちらの様子を伺っている特定課の人達の方に指を指して事情説明をするように雪さんにお願いをする。このまま放置するわけにはいかないから。


「うぅ…、了解したよ美世ちゃん…。」


「ルイスはビル全体の防衛ね。頼んだよ。」


「は、はい神よ。了解いたしました。」


よし、この二人なら任せられる。私は私の役割を全うしよう。


「じゃあ私は行くから後はよろしく〜。」


私はテレポートし処理課のフロアに向かった。自分の事で忙し過ぎて状況の把握が出来ていないからだ。


「なんでみんな居ないのっ!」


私は部屋へ入ると疲れた顔をした炎天とその腰巾着野郎に状況の説明を迫る。なんで蘇芳すら居なくなってんの!


「はあ…お前たちが出ていってから日本中でおかしな事件が同時に起こったんだよ。だからその対処の為に出払ったんだが…一応おめえにも連絡いれたが見てねえなこりゃあ。」


「え?ライン教えましたっけ?」


「テメエのラインなんざ知るかっ!」


ちょっとしたジョークなのに…この男には余裕というものを感じない。


「ソプリの方ですね?」


「それ以外に無いでしょう…」


初雷の小言を頂きながら私はソプリを開いて状況の確認を図る。どうやら二人の言う事は正しかったらしい。別に信じていなかったわけでは無かったけど、こうやって自分の目で確認をしないとね。


「蘇芳も外へ出たんですか?」


「ああ?なんで探知能力を使えるおめえが分かんねえんだよ。」


「ジョークですよ。」


私は意識が他に向いていると探知していても認識出来ないことが多々ある。それは私の能力の明確な弱点であり蘇芳にも指摘されていた。だから他人には悟らせてはいけない。特に裏切者が居る段階でこの情報が向こうに渡るのは防がないと。


(蘇芳は地方の支部に行ったのか。)


まあ蘇芳はパスを通じて色んな能力を行使出来るから大丈夫か。その気になれば高出力のサイコキネシスで交戦出来るしテレポートで逃避も出来るからねあの子。


それに本当にヤバかったらパスを通じて私に連絡入れるだろうし大丈夫…大丈夫のはず。蘇芳を信じよう。ヤバい未来なんてとっくにあの子は知ってるんだから。


「…少し質問してもいいですか?」


「ああ?そんなのこっちが質問してえよ。そっちの状況はこっちには伝わって来てねえんだよ。」


「炎天様の言う通りです。なにがどうなったかを話しなさい。」


なるほど…ちゃんとした理由だ。でも話せないんだよね。君達二人だけがここに残っている理由が分からないから。


「私の質問を答えてくれたら答えます。なぜ私の質問が先なのかも聞けば分かります。…いいですか?」


「チッ…いいぜ。何が聞きたい。」


炎天がダルそうに椅子に頭を預けて私を見下しながら受け答えをしてくれる。なんてクソみたいな態度なんだ。私みたいでムカつく。


「あなた達二人はなんでここに残っているんですか?」


「ああ?おめえバカか?」


「処理課全員がここを離れるわけにはいかないからですよ。どんな時でも最低一人は残っていないといけない規則なんですが…知らなかったですか?」


え、は?知ってますが?殺しますよ?


「知ってますよそんなことぐらい。血の気の多いあなたが残っているのが不思議なんです。」


「……。」


…なんで無言?


「…じゃんけんです。」


とても言いづらそうに初雷が小さな声で教えてくれた。


「負けたんですね…。」


この組織ってさ…なんかあれだよね。庶民的な方法好きよね。俗っぽいんだよな…。


「じゃあ、それってワザと負けましたか?」


「はあ?」


「なんですかその質問は。」


この二人が裏切者の可能性はある。ワザと負けて処理課の能力者が居なくなったタイミングを狙った可能性があるからね。


私は炎天のもとへ歩いて彼の首元に触れる。脈拍を見たり体温を感じられるから必要なことだ。炎天がビックリしていても初雷が警戒しても私はこの首を離さない…というフリをする。そう二人が思ってくれると嬉しいな。


「あなた達って裏切者ですか?」


「裏切者だと…?」


「またおかしな事を言い出しましたよ…。」


二人は私の言葉を聞いても緊張もしない。確定的な情報が無いからかな。


「蘇芳が裏切者が居ると言ったの。」


その一言で場に緊張感が走る。彼女が知っているということは確定ということだ。


「ならあのガキは誰と言ったんだよ。まさか言ってねえのか?」


「うん。私には言わなかった。」


「本当になにがしたいんですかあの中学生は…。」


私も本当にそう思うよ。でも、あの子なりに考えて立ち回っているから私はもうなにも言わないことにした。


「で、質問に答えてくれる?あなた達は裏切者?」


「ちげえよ。」


「違います。」


「信じます。」


「「はあ?」」


私は彼らに向けて能力を行使していた。この部屋の中では私の求める因果しか発生しない。つまり彼らは嘘をついていないってことだ。めちゃくちゃ怪しいけどね。


「おかしいな…絶対にこの二人のうち誰かって思ってたんだけど宛が外れた。」


「おいテメエ。殺すぞ。」


「そんなこと言っていいんですか?」


「はあ〜?テメエに何か言って俺に不都合があんのかよ?」


炎天がニヤニヤしながらクッッソ舐めたことを言ってきたので私はある手札を切ることにした。


「和裁士さんに彼女さん居るんですよね?」


「おい誰から聞いた。」


「天狼さん。」


「あの(アマ)…ッ!」


その顔が見たかった。私は大いに満足し彼の首から手を離す。


「だから和裁士さんたちに頭が上がらなかったんですね。尻に敷かれてるって聞いたんですけどマジなんですねうぷぷぷ。」


「このガキャッ…!」


炎天が立ち上がり私に手を伸ばしてくる。これはかなり怒っているね。


「私って和裁士さんたちにとても可愛がられているんです。」


炎天の腕が止まる。どうやらマジで彼女さんの尻に敷かれているっぽい。


「ああ〜炎天に組み敷かれて押し倒されたってラインしようかな〜。和裁士さんたちのグループにラインしたらどうなるかな〜楽しみだな〜。」


「なんて低俗な女なんだ君は…。」


炎天はなんか範馬勇○郎の笑顔みたいな表情で固まり、その様子を見ていた腰巾着野郎の初雷からはかなり非難する視線を向けられた。この二人をからかうのはとても楽しい。


「嘘ですよ。しませんからその顔止めてください。子供が見たら泣いちゃいますよ。」


「テメエは絶対にあとで泣かすからな。覚悟しておけよ。」


流石にからかいすぎたようでマジギレしちゃったみたいだ。さっさとここから離れて裏切者を見つけに行こうっと。

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