ツワモノ
ここで報告しますが、また腕が痛み出して執筆活動に支障が起き出したので2日に一度の投稿を3日に一度にしようと思います。
恐らく寒くなりだしたせいで痛み出したとと考えていますが、良く分からないのでまた病院に行ってみようと思います。
また何かあれば前書きなので報告しますのでどうかよろしくお願いします。
私の役割は敵を吹き飛ばして調整体たちを散らすこと。ちらっと見たらアネモネ達が素手で調整体達をボコボコにしてるからあっちに任せておけばすぐにこの戦いは終わるだろう。だからこちらの被害を最小限にするために魔女達の負担を分散させなければ。
「ふぅ…!」
右腕に電流を流し磁場を発生させて調整体にラリアットをぶちかます。そして吹き飛ばされた調整体はアスファルトで出来た車道の上を削りながら滑っていき、歩道の段差を乗り越えてから停止した。
その様子は魔女達も見ており天狼の規格外な筋力に戦慄する。
「なんて馬鹿力…私のサイコキネシスよりも出力が上なのおかしいでしょ。」
ラァミィは必死に調整体を止めようと最大出力でサイコキネシスを行使しているが相手の動きをスローにするぐらいで停止させることが出来ずにいた。
「ほらっまた一体っ!」
そしてサイコキネシスによって動きが鈍くなった調整体をルイスが触手のように作り出した影でなぎ払っていく。影に対しては何者も物理的に干渉が出来ないので調整体は影に対して何も出来ずに飲み込まれてベルガー粒子を弾かれてしまう。
その様子は影が調整体にかかってすり抜けていくというこの世界ではごく当たり前の光景だが、影に触れた調整体は活動を停止して地面に落ちていく。まるで死に触れたかのような事象に魔女たちはビビりながらも落ちて来た調整体を次々と破壊していった。
「うへ〜ルイスの能力相変わらずえげつねー。」
「ちょっとボー!見てないで手伝ってよッ!」
メリッサが獣たちを創造し調整体たちを運んでいる時に何もせず遊んでいるボーを叱りつける。
「私の能力じゃ何もすることないんだよっ!!血出して倒れてもいいんかっ!?」
「使えね…」
「サラッ!テメエも何も出来ねえだろっ!!」
「アレに憑依したらどうなるかなんて分かったものじゃないのに憑依するわけないでしょ!!」
サラもボーと同じく何も出来ずに調整体が自分を襲ってこないか警戒だけをして何もせずに立っていた。彼女の能力も今回のような相手では機能しない。
「だったら働いている私達の肉壁にでもなっていてくださいよ。」
指を鳴らしてその振動で調整体を割っていくシークがボーとサラに死んでくれとお願いをする。
「…前はあんな子じゃなかったのにやーね?」
「ほんとほんと、あんなにパシられてこき使われていたのにねー?」
「…死んで下さい。」
ボーとサラに散々こき使われたことを思い出し直接的な言い方に変えるシーク。今ではラァミィに気に入られているのでかなり立場が安定しており、こんなことを先輩二人に言っても問題が無いのだ。
「遊んでないのっ!!」
そしてラァミィの叱責が入りボーとサラが慌てて鎧のように動かなくなった調整体たちを運んでいく。調整体自体に触れることは危険な行為だが、ベルガー粒子が影によって弾かれて空になった状態であればただの金属の塊なので危険は無い。
しかしベルガー粒子自体を取り除いても消えてはいない。空中に浮いているベルガー粒子は元の宿主を探して彷徨っているので出来るだけ距離を離す必要がある。
「くそっ…!」
「どれだけ創造してもすぐに壊されちゃう…!」
そんな中で苦戦を強いられているのはステファニーやメリッサといった戦闘には参加出来るがそこまで戦闘面で強い能力ではない者達だ。
ステファニーは風を操ったり真空波を生み出したりは出来るが金属相手では心もとない。そしてメリッサに関しては味方の補助的な戦い方が主で前線に立てるような戦闘能力は有していない。
この二人ではルイスやラァミィ、シークといった戦闘が得意な能力者と肩を並べるにはとても苦労をする羽目になる。
「ヘイトは分散出来てる!落ち着いて対処して!」
ラァミィの指示通り動けているだけで十分な戦力ではあるが本人たちはかなり歯痒い思いをしていた。特に人格破綻者で性格も終わっているルイスが調整体たちを次々と無力化している姿を見せつけられながらなので尚更だ。
「あと4体っ!!」
ルイスはそんな二人の思いを知らずに調整体との戦いにのめり込んでいた。自分の能力だけが通じる相手というのはとても気分がいい。あの生意気な長身女や調子こいたブサイクでも手間取る相手を私が一人で無力化していっている…最高…っ!
「あの性格悪そうな女性やるね。」
「フェネット…見た目で判断するのはどうかと思うわ…。」
フェネットのルイスに対しての評価を聞いて嗜めるマイ。彼女たちは近くに居る全ての調整体たちを無力化に成功しルイス達の戦いぶりを観察していた。
勿論ルイス達が危なくなればすぐに助けに行くつもりでただ佇んでいる訳ではない。彼女たちが介入すればすぐに事態は収集するだろう。しかしそれが一番最良な選択とは限らない。
彼女たちは言ってしまえば世界のエラーのようなものでこの世にはあってはならない存在だ。そんな彼女達がでしゃばり過ぎることはこの世界の為にならない。なによりもこの時代の能力者たちが成長しないのが問題だ。
「でもよ〜苦労はしてほしくねえんだよな…。俺たちみたいにさ…。俺たちみたいなのはさ…この時代には居ないでほしいよ…。」
エピは悲しそうに今を生きる能力者たちを見て、少しだけ羨ましそうにしていた。もう死んだ身である自分達とは違って成長することが出来る彼女たちが心底羨ましく感じる。
「そうね…でも、歴史は繰り返される。ミヨの推測通りならば彼女たちも私達みたいな最悪を体験することになるわ。」
アネモネはアインとミヨの二人が話し合っていた内容を聞いていた。そしてその話からこの2巡目の世界が自分たちの居た1巡目の世界と同じルートを取りつつあると確信を持っている。
「それを防ぐのが私達の役割でしょ?そうでしょみんな?」
皆の顔を見回して自分たちの存在意義を確かめるフェネット。しかし元々は死んだ身である彼女たちがやり過ぎるのも問題になる。
「…いいえ、私達の役割はこの問題点を消す存在を見つけること。そして、その役割はもう済んでいるわ。」
「…ミヨ、だよね…。彼女に託すしかないのかな…。彼女も私達と同じか、それ以上のひどい目にあっているのに…。」
「でも彼女しかいない。1巡目の世界がああなった原因でもある彼女がこの2巡目の世界で特異点として動かないと歴史は何度も何度も繰り返されることになる。」
アネモネの言うとおりこうなったのは元々は伊藤美世がキッカケであり、伊藤美世という個人の存在が世界に対する影響力が大き過ぎるというところが一番の要因になっている。
「そんなのまたアインみたいな人柱を立てるみたいなものじゃない?」
「確かにその通りだけど良く考えてナーフ。私達って次の時間軸に居ると思う?最悪私達じゃなくてもいい。アインが次の時間軸に居るとみんなは思う?」
そんな問いをされたアネモネ以外の全員が考え込んでしまう。そしてみんなが同じ結論に至る。
そんな奇跡は2度も起こらないだろう…と。
「特異点であるアインが居なければミヨが特異点として覚醒することもない。つまりこの先何度も何度も世界をやり直しても結末は私達よ。人類は滅び誰も幸せにはならない。もし次の時間軸に行けても…結果は変わらない。」
何故なら歴史は繰り返されるからだ。少しの変化はあっても大筋は変わらない。結局行き着く先は亡霊としての世直しだ。
「今しかチャンスはない。ここで失敗すれば次も失敗する。もう1巡目では失敗してるのよ?2巡目でも失敗すればその結末が必然に変わる。…もう、私達の望む平穏な世界は訪れないわ。」




