演技型迫真系能力者
美世の学校生活のお話を書けて良かったです。これからもちょいちょい書けたらなと思ってます。
昨日腹パン決めた男を怖かったとほざくなんて事は常識的にどう考えてもおかしな話だけど、人という生き物は自分が信じたいものやそうだと決め付けたものを真実として捉える。つまり私はこの変な空気感に逆らわずに乗っかることにした。
乗るしかないこのビッグウェーブに!
「怖かったよね伊藤さん…」
「私達が味方になるから大丈夫だよ。」
優しい世界………もしかしてこの世界って優しさで出来ている?円グラフで表すと10%ぐらいは優しさで出来てそう。海の塩分濃度より高いし舌に乗せれば感じ取れるぐらいには多いよね。
「い、伊藤さん?ど、どういう事だい?」
私と部長さんの間に女子グループのリーダーが立ちはだかる。
「さっさと自分の教室に戻ってもらえます?」
リーダーそのままやっちまってくださいよ!え〜んえ〜ん。
「そ、そうだそうだ。」「何で一年の教室に三年が居るんだよ!」「もしかして一年なんじゃね?」「それな。」「引くわー。」
(ぽ、ぽまいら!?)
ビックリしすぎて古事記に載っている死語を使ってしまったけど、これはどういう事だ?名前も覚えていないクラスメート達がストーカー排除に乗り出してくれた。
本当にありがたいんだけど……誰が誰だか分からない。だけど私の味方をしてくれる人はみんな友達だ。ストーカーは居てものけ者は居ない本当の愛が教室にある。フレンズのみんなありがとうー!みんなの種族名ちゃんと今度から覚えるから!
「またあの先輩来てるじゃん。」
「女子に一発貰ってダウンしたってマジ?」
「最初はカッコいいと思ってたんだけどな〜」
廊下にも別のクラスの人達が援護射撃をしてくれる。一年生みんなが団結した瞬間だった。のけ者は帰れ!2期なんて無かったんや!
「え〜んえ〜ん。」
私の迫真に迫る演技のおかげでクラスメートのやる気スイッチが刺激され帰れコールが始まる。
「「「「「「か・え・れ!・か・え・れ!」」」」」」
流石のストーカーも熱を帯びたコールに怯んだのか、廊下を飛び出て自分のクラスに戻った。これが【逆行】か…
教室のあちらこちらで自然とパチパチと拍手が起き、互いの健闘を称え合った。こういうノリにはついて行けないけどちゃんとお礼は言いたい。絶対に暴力沙汰で退学になる所だったもん。
「み、皆さん…あ、ありがとうございました。皆さんと同じクラスになれて、私…わたし…!」
感極まって声が出ない感じを演出しクラス中の流れを持って行く。みんなの優しい表情が能力で認識出来る。これで何度もストーカーが来ても大丈夫。
(この必殺技使えばチョロいもんっですわ!)
「本当にありがとうございました。皆さんが最初に動いてくれなかったらこうしてお昼ご飯も食べられなかったです。」
ストーカー撃退クエストを終えた後、流石に教室を後にするのは憚れた私に女子グループの子達がご飯を誘ってくれた。この子達とお昼を一緒にするのは入学当初に一回食べたとき以来だから緊張する。
「伊藤さんが困っているんだから当然だよ。」
この正義感が強そうな娘はマキさん。見た目はちょっと髪を明るくしたショートヘアーの娘で、ヘアピンやヘアゴムを使っておでこを出したヘアースタイル。その日の気分で変えているらしい。性格も見た目も勝ち気な印象を受けるカッコいいとカワイイの中間のような女の子だ。ホームルーム前に話しかけてこようとしたのも最初に私の肩に手を置いたのもこの娘だったりする。
「私達こそ昨日は何も出来なくてゴメンなさい。」
私に対して謝ってきたのがリンさん。このグループの中で1番小さくて小動物感がある娘だ。かなり明る目のミディアムヘアーで毛先に行くほどウェーブが強くなっている。スマホや髪型を見るとオシャレさんな感じがする。スマホをデコってるしパーマかけないとこの髪型は出来ないと思うからかなり見た目に課金しているよ。
その為か私の次に身嗜みで注意を受けていると思う。リンさんが星野先生に捕まっている時に良く横を通りすぎて気付かれないように下校しているから間違いない。
「まあ私達が間に入らなくても大丈夫そうだけどね伊藤さん。昨日のパンチ良かったよ!」
笑顔が太陽みたいに明るいレナさん。体格の良さと小麦色の肌からザ・スポーツ少女って感じだけど運動部には入っていないらしい。中学までは野球をしていたらしいけど肩を痛めてからはちょっとやんちゃな不良娘だとか。(本人談)
身長が高くて私と並ぶと彼女の肩の位置に私の頭頂部が来る。私の身長は平均を超えたことがないからレナさんみたいなスラリとした手足が羨ましい。この頃の女子は大人の階段を登り始めの娘特有の色気があると思うの!髪も後ろで結ってるから項が良く見えてセクシー!私はお団子アレンジした髪型好きなので結構どストライクの見た目だ。
「マジそれな!」
ビックリした私の性癖を同意されたのかと思った。このサブカル系な見た目をした彼女はミレイさん。私と同じ黒縁メガネをしていて体型も似ている。ド偏見だけどYou Tub○で配信とかしてそう。マンガとかアニメも知ってそうだし私と似た陰の雰囲気があるんだけど性格が明るいからそこは陽だね。
部活は美術部に入ってるとかなんとか、部活に誘われたけどお断りした。アートの道は断念したのだ。世の中は第一次産業で動いている。でも配信業とかは少しだけ興味あるから、もし誘ってくれたら一緒に配信してあげても良いんだからね!ギャラは半々ね!
「レナもミレイも止めな。笑い事じゃないんだから。」
声と見た目の迫力があるこの御方こそ教室内のヒエラルキーのトップに降臨する女王。マリナ様である。父がアメリカ人、母親が日本人のハーフであり帰国子女。父親が有名なカメラマンらしくて他国を転々と過ごした経験から複数の言語を話せるマルチリンガルだと教えられた。確か4〜5ヵ国語話せる人の事だよね?もうここだけで強い事は分かる。私は日本語と英語しか話せないから尊敬します。
髪は暗めのアッシュカラーで染めててクールって感じ。結構頻繁に色を変えてて今はこの色に落ち着いたとか。顔立ちは鼻筋が通ってて目の色も碧っぽい。間違いなく美人なんだけどあまり笑わないからちょっと冷たい印象を受ける。だけど姉御肌で頼りになるから周りにいつも人が居る。私と正反対の人種だ。
さて説明は終わったけど私も実際の所あまり良く分かっていない。名前も漢字が分からないし中学がどこなのかも知らない。だから共通の話題がない。情報がないないない。
「伊藤さんってあの先輩と連絡先交換しているの?」
「してないです。」
していたらそのスマホを捨ててしまっているだろう。
「連絡先交換していたら絶対にラインがウザいタイプだよあいつ。」
それは確かに思った。既読スルーするとずっとメッセージが飛んでくるタイプ。
「伊藤さんラインやってるんだ!」
え?馬鹿にされてる?ラインしてない女子高生ってこの国に居るの?私ってラインしていないように見えるの?原始人として見られているのかな?
「してない女子高生居ないでしょ。」
「伊藤さんライン見せてくれる?」
はあ〜〜〜〜?私がこんな事で意地張ってラインしていますって嘘付いてると思ってんのか?お、やっか?ラインぐらいしているが???
「ど、どうぞ。」
さっきの威勢はどこに行ったんだ私。どうして陽キャには低姿勢になっちゃうのだろう。本能なのかな…
私のスマホをいじいじし始めるマリナ様。どうしよう個人情報盗まれているのかな。それとも実はストーカーと繋がっていて連絡先を向こうに送られているとか…。
「はい、伊藤さんありがとう。」
「ど、どうも。」
ラインを見たらマリナ様達のラインのグループに参加させられていた。what?
「私達のグループに入れたから困った時は連絡ちょうだい。うちの母親、法律に詳しいから。」
マリナさんこの為にラインの話題を出したのか、やっぱりクラスの女子を纏め上げているだけある。ちゃっかり連絡先を交換させられた。
「ありがとうマリナさん。」
「マリナって呼んで。私も美世って呼ぶから。」
下の名前を呼び捨てで呼ぶのは小学校一年生の時以来じゃない?無理じゃないか?陰キャにはインポッシブルじゃないか?でも断れないよなあ…言うしかないよね。
「ま、マリナ…ちゃん。」
はっず!恥ずい恥ずい!顔から火が出そう!陽キャのこの詰め方無理なんだけど!
「美世っち顔真っ赤でカワイイ〜。」
「じゃあ私も美世ちゃんって呼ぼっと!」
先生ここでいじめが起きています!学校側で対策を取ってください!
「アハハハ…」
もう笑いしか出ない。助けてもらったからには失礼な態度は取れない。恩には恩で報いねば…もし誰か殺したい人間が居たら伊藤美世までにご連絡を♪
「ちゃん付け、まあいいか…そういえば美世のライン見た時なんだけどさ。」
え?見た時に何か変なの映っていたかな?アイコンのブロリ○が変だった?劇場版を見た時のノリで変えたからちょっとだけ恥ずかしい。でも仕方ないよね破壊神より強いんだもん。
「友達とグループがかなり多かったけど他校の人?」
あ、やらかした…雪さん達のライングループだ。組織の人達のライン見られちゃった!おバカ!なに普通にスマホ渡しちゃったのよ私!?組織の情報が外に漏れたらその情報を知った人は処理しなきゃなのに!
美世が最近人を殺していない事に気付きました。だからドンドン殺して行こうと思います。




