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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
6.私達の居ない世界
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襟を正す

こいつら出るとコメディ感が出てくる

蘇芳の言ったことは本当に正しかった。よくよく考えてみると私個人の動画や画像が世界中に拡散されてしまっているのだからこの格好のまま外に出るのは無理な話だ。


一応私の顔は画質の関係上良くは映されていなかったけど、私という人間を知っているものが見れば私だと断定出来る。だから一般人に顔を見られて困るということはない。


だけど一番駄目なのはあの制服だ。制服に関しては特定されてしまっていると思う。もうこの制服に袖を通すことは無理だろうな…。


「良し…うん、ピッタリ。流石は私の妹。優秀優秀♪」


黒地のシャツもスーツもサイズがピッタリだ。下のパンツスーツもスラリとしていて良いし、ブーツと革靴を足して2で割ったような靴も履き心地が素晴らしい。雪のある場所で踏ん張れそうだ。


「武器もあるじゃん…最高かよ。」


拳銃・ナイフ・警棒・ワイヤーなどの携帯しやすい暗器がズラッと壁に置かれたケースの中に収納されていた。何でも持っていって良いらしい。至れり尽くせりだね。


「じゃあ…これとこれかな。」


拳銃とナイフ、あとサプレッサーや何個か弾倉も取って腰のベルトにセットしていく。持ち前の拳銃も合わせて2丁目だ。


「ワイヤーくんは…いらないかな…。」


ワイヤーは相手の首を締めたり出来るけど能力でもそれやれちゃうし、これ以上かさばるのはいただけない。だからこの高そうな腕時計を付けて終わりかな。


「良〜し〜行くか〜。」


背中を伸ばして気合を入れる。下にはイザ姉と理華を待たせてしまっているし、夜も深まってきた。行動を起こすのならこのタイミングだ。


「だけどその前に…」


私はスマートフォンを取り出して電話を掛ける。私にも動かせる下っ端と仲間は居るのだ。


「…あ、魔女ーズ?今から私の指揮下に入って狩りに行くよ。ダッシュで渋谷駅に来てね。よろしくー。」


さて、次は…やっぱり結界能力者だよね。


「…もしもしハーパー。うん、こっちは大丈夫。それでさ、何も言わずに渋谷駅に来れる?…うん、ありがとう。力を貸して。うん…うん、待ってるよ。」


良し。死神一派の最後のミッションを始めようか。私は学校の制服をゴミ箱に入れて部屋を後にする。もうここにも来ないだろう。後のことは上手くやってよねマイシスター。


そして時と場所は変わり私は愉快な仲間たちと渋谷駅のハチ公前に集まっていた。皆が黒いスーツに身を包み、異様な雰囲気を醸し出している。こんな時間でも人混みは凄く、皆が私達を遠巻きにしながら珍しそうに見ているので非常に居心地が悪い。


「時計を合わせます。」


みんな手首に付けている腕時計を見てみんなで時間を合わせていく。まあ多分みんなちゃんと組織から支給された物を付けてるから合ってるとは思うけどね。


「…合わせたね。じゃあ今回の目的、作戦内容を伝えます。」


こんな恥ずかしいことを言っていても周りの一般人は何かの遊びかコスプレ集団としてか認識していないだろうし、特に気にせずに話を進めていく。それにどうせみんなは今日の朝に起きた事件のことで頭がいっぱいだろう。あちらこちらでその話がされてるし東京は変なやつが多いからスルーしてくれるでしょう。


「敵は今のところ私の探知しているだけでも4人。この4人は一見すると無能力者ですが能力を行使してきますし、時間を掛けすぎると調整体たちが応援に来るかもしれません。」


イザ姉・理華・ハーパー・魔女たちの目を見ながら説明をする。みんなかなり緊張しているのが見てすぐに分かった。状況的にもこの作戦がとても大事なものだと分かっているからだ。


「その調整体ですが見た目は金属の身体を持った人形のようなもので触れられたら終わりです。取り込まれて調整体の仲間入りになるから絶対に触れられないようにして。」


調整体と実際に戦ったことがあるのは私と理華と魔女たちだけだから初見殺しみたいな調整体への注意事項を伝える。取り込まれたら敵の数が増えるし注意しないと。


「しかも飛んだり地下から這い出てきたりと奇襲性もあって非常に厄介だから気をつけて。それに半分不死身みたいなものだから相手のベルガー粒子をどうにかしないとだからそこも頭の中に入れておいてね。」


みんなの表情が少しずつ曇っていく。まだまだ注意事項はあるんですよ…。序の口なんですよまだ…。


「そして問題となっている佐々木真央だけどベルガー粒子の操作が優れていて人のパスに割り込んだり思考を読んだりするの。とんでもなく不快な奴だからもし出会ったら冷静にね。」


「不快…ですか?」


ハーパーが私の不快という言葉に反応する。感情的な注意事項だから変に感じたかな。


「あまりに不快で殺したくなるぐらい。でも殺せない。ありとあらゆる方法を使っても彼女を殺せなかった。だからみんなにこれから殺しに行ってもらうターゲット達も普通の手段では殺せないと思う。」


「殺せないっていうことは私の【熱光量(サーマル)】でも?」


「焼いても駄目。脳みそも背骨も粉砕しても私の探知能力では死んだことにはならなかった。しかも一分もしないうちに治ってしまう。だからルイス。」


「え、あ、はい!」


突然自分の名前が呼ばれた魔女の集会のリーダーであるルイスが驚きつつ返事をする。魔女たちを呼んだ理由はこのアホを呼ぶためだ。


「あなたの能力がぶっ刺さる。目標を影の中に沈めればベルガー粒子を奪えるから多分相手を無力化出来ると思う。だからあなたが目標を殺して。得意でしょ?」


「…はい。とても、とても得意です神よ。」


ルイスが獰猛そうな笑みを浮かべて一般人を引かせている。完全にヴィランである。魔女っぽいとんがりボウシに真っ黒なスーツを着ているから迫力が凄いんだよね。


「ルイスをメインにして立ち回る感じでみんなお願い。私とみんな…この二組に別れて取り敢えず目標4人を殺す。オーケー?」


…異論は無さそう。不服そうなのが数人居るけど私がルイスと同じ【堕ちた影(エトンヴェ・オンブル)】を行使出来るのを知っているからね。私ひとりで事足りてしまう。


「…本当にひとりで大丈夫なのか?」


「心配しすぎだよ天狼。私には最終手段として先生の能力で相手の存在そのものを消し飛ばせるから大丈夫。これでもここに来る前に先生と相談して対策を建てて来てるから。」


私が佐々木真央を仕留め残った時、私と先生とマーザーの3人…?人間が私しか居ないから3人というカウントは正しくないけど、まあこの3人で対策などを考えたりしていた。


取り敢えず私が使える能力を並べていって先生とマザーがその中から有効的な能力をピックアップしてもらって、その中で候補として上がったのが先程私が説明した通り【堕ちた影(エトンヴェ・オンブル)】と【削除(リボーク)】の2つ。


この能力ならば佐々木真央のような存在を殺せると判断し、それから私はここに来ている。他にも色々と対策を打っているけど、今は別に語る必要がないのでここでは割愛させてもらう。


「…死神は来ないのですか?」


ラァミィからいつかは来るであろうと思っていた質問が来た。そうだよね。居たら最高だよね。私しか居なくてゴメンね。


「先生は今回バックアップって形で参加してるから前線には出てこないよ。」


「そうですか…。」 


ルイスを除く魔女たちの顔色が悪い。…これはルイスを信用しきれていない感じか?というか魔女たちに関してはお前たちのリーダーだろ一応は。今回の花形だぞ。


「不安だ…ルイスで大丈夫なのか?」


ボーちゃんが言ってはならない事を言ってしまう。前提条件が瓦解してしまうから思っていても言わないで欲しかったよ。


「…最悪私がみんなを生き返らせるから。」


だけど私もつい言ってはならない事を言ってしまった。ルイスがやらかす前提で話を修正しようとしてしまいルイスの機嫌を損ねてしまう。


「神よ、私が信用ならないのですか?あの女に負けたからですか?」


ルイスが理華を指差し抗議をしてくる。…ダルい。ひたすらダルいよルイス。理華も凄くダルそう。そしてとても不安そうにしている。この場に居る全員がルイスを信用しきれていない。


(逆にここまで信用されていないのすげえなこの女。まともに会話もしていない筈のハーパーすら信用していなさそうなんだけど。)


これは人選ミスかもしれない。ルイスは戦闘要員としてカウントし、現場の指揮は他に任せるか。


「作戦変更。天狼がリーダーでラァミィが副リーダーとして動いて。ルイス、ちゃんと言うこと聞くんだよ?」


「はぁ〜!?何故ですかっ!?リーダーは私ではっ!?私がこの作戦におけるキーマンなのですよねっ!?」


美人で妖艶さがある外国人のルイスが叫ぶと周囲の人間の視線を凄く集めてしまう。日本語じゃないから内容は聞こえていないだろうけど、このままじゃ警察が来ても不思議じゃない。


今夜は警察が多い。今日の朝の事件のせいで東京中がピリピリしてる影響で出回っている警官の顔付きも険しいものだ。


「ルイス落ち着いて。ルイスには戦闘に集中してもらいたいの。それだけ相手が厄介で、ルイス以外の能力は正直この作戦では効果が期待出来ないと思ってる。分かる?ルイスの能力しか相手に有効打が存在しないことが。」


ルイスの目が少し輝く。よしよしバカめ。私はバカをヨイショするのがとても上手い。私にヨイショされるということはやっぱりリーダーとしての頭が無いってことなのだよルイスくん。


「天狼や他のメンバーは調整体たちを相手にしてもらうことになる。でも本来の目的である敵は無能力者の中に潜んでいる謎の存在。そいつに勝てるのはルイス…君だけだ。」


ルイスの肩に両手を乗せて期待していますアピールをする。今の私の身長ならルイスと同じ目線で語りかけることが出来るから、対等の立場でお願いが出来るのだ。


「私しか…」


「そうだよ!ルイスだけ!私が期待しているのはルイス、君だけだ。…因みにだがこれが無事に終わったらルイス、君にだけ特別に時間を作ってあげようと思っているんだけどね…?」


「頑張ります!いや、頑張らせて頂きます!!」


(((((チョロい…。)))))


皆の気持ちが一つになった。作戦前に気持ちが一つになるのはとても良いことだ。このお馬鹿な狂犬をみんなで上手く誘導しリードを引っ張って上げるのが今回の作戦だと理解してくれたみたいであたしゃ嬉しいよ。

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