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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
6.私達の居ない世界
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見えてきた狂気

マオマオは異常だ。それは昨日の夜に組織のデータベースを使って彼女を調べた時に思い至った結論。彼女は私の思っていたような…、考えていた存在ではなかったのだ。


本名:佐々木(ささき)真央(まお)。現在の彼女は天涯孤独の身で国や都から援助を受けて生活している。つまり両親が居ないのだ。別に日本で両親が居ないなんて珍しくもない。私もそうだし、子供に親がセットで居てくれる環境なんていつまでもあってくれる保証もない。


そして小学校、中学校の彼女は特に目立ったところは無かった。卒業アルバムの写真を見ても地味そのもの。今の彼女とはまるで別人だ。だから本当に本人なのか疑わしい。彼女を知る者も高校から突然変わったと言う。


マリナ様たちにお願いをして私は佐々木真央の事を聞き出した。5人とも佐々木真央とは中学校、小学校とも別々だからそこまで詳しい内容は聞けなかったけど、彼女たちの知り合いから佐々木真央が高校から突然あんな目立つ格好をするようになったと聞いた私は組織のデータベースから彼女を調べることを決める。


もうその時には確信のようなものがあった。だから私は徹夜で彼女のことを調べ上げた。そして私は彼女の両親が一年前に事故で他界していることを知り彼女の自宅へと行くことを決めたのだ。


そしたら出るわ出るわ奇妙な点が。先ず彼女にはイマジナリーフレンドではなくイマジナリーファミリーが居るらしく見えもしない両親を紹介された。


しかも彼女の家には家具らしき家具もほとんどなく、彼女の部屋に備え付けのクローゼットとテーブルぐらいしかない。家電も最低限で女子高校生の一人暮らしの家とは到底思えないというのが第一印象の私の感想だ。


でも彼女には人どころか他にもベッドとか見えているしく床に座らせられたりと奇妙な言動が目立って私は結構彼女に引いていた。ヤバい薬をキメていると疑うほどに。


薬で頭がイッているのならそれでも良かったけど、もしかしたら両親が無くなり心を病んだ可能性もある。だから私は特に指摘とかはせずに先生にパスを通じて連絡を取った。そしたら彼女、私と先生とのパスに割り込んできたのだ。これで黒じゃないとかありえない。私はすぐに彼女を押さえつけて殺害しようとした。


でも先生に止められたから私は佐々木真央を殺さずにいくつか質問をすることにし、彼女の現在の状態を把握しようと努めていた。


「通院歴も無いしヤバい薬をやってんのかとも思ったけどここには薬の類は探知出来ない。だから心の病とも思ったけど他人のパス間に割り込めるなんて普通じゃない。お前の全てが普通じゃないんだよ佐々木真央。」


彼女の額に拳銃の銃口を向けながら私は彼女に問い詰める。この子はもしかしたら何も知らないのかもしれない。でも、全くの無関係なわけがないんだよ。状況証拠全てが彼女を黒と語っている。


「…ミヨヨも、そうやって私をおかしいと言うんだね…酷いよ…どうして…私は、普通にしてるだけなのに、みんな私をおかしい、変だって言う。私は変じゃないもん…!」


「いや、みんなから言われている時点で自分自身が変だって思おうよ。かなり変だし前から思っていたけどさ、なにがミヨヨだよ。そうやって人と距離を詰めようとしているのかもしれないけど普通に不快だから。」


なんだろう。初対面の頃からずっと感じていたんだけどなんか見ていて痛々しいんだよ。可哀想という言葉が良く似合う。この状況も彼女の頭も生い立ちも全てが可哀想だ。なにか一つでも彼女に備わっていたらこうはならなかった。でも彼女には何も無い。神は彼女に損な役割だけを与えたようだ。


「やだ…やだ。そんなこと聞きたくない!ミヨヨなんて嫌いっ!」


「ガキかよ…いやガキか。年齢的に。」


精神年齢が同世代に比べて低いように見えるけどこのぐらいが普通の反応なのかもしれない。私がすれている性格のせいかこの子の反応が無性にムカついてしまうだけで。


「あなたのパパやママって金持ちだったんでしょ。だからこんなマンションに一人で暮らせている。でも、今のあなたには存在しないものが見えているのが凄く引っかかるの。」


「え?え?パパ、ママも居るから一人暮らしじゃない…よ?」


「…ウザい。お前に両親はもう居ないの。だからどうやってここで暮らせているのかが分からない。学校側に提出する書類や国や都に提出しないといけない手続きとかどうした?どう考えても今のお前には不可能だ。そこが()()()()()。」


コイツの後ろに何者かが居ると私は考えている。コイツ単体には意味はなくて、ただ利用されているだけの可能性が高い。だから今日でその情報を聞き出そうと思ったのに頭がイッているから会話が成り立たない。


「パパもママも居るもん!パパ!ママ!助けて!」


佐々木真央が泣き叫ぶが誰もこの部屋に訪れることはない。彼女の両親は去年に死んでいるのだから来るわけがない。…心の病気?それとも精神系の能力を食らっている?判断しようにも情報が無さすぎる!情報を得ようとしているのになんで情報が無いことに苛立たないといけないの!


「…もういい。立て。パパとママが居ないことを教えてやる。」


私は佐々木真央の腕を掴み立ち上がらせて部屋を出る。ずっと抵抗をしているけど彼女の貧弱な筋力では私から逃れることは出来ない。


「ほらあなたのパパとママはどこで何をしてる。言ってみろよ。」


「痛い!離してよ!」


私から逃れようと空いた左手で私の握った指を離そうとする佐々木真央は本当に可哀想な生き物だと思った。ここまで来ると頭が足りないと評するしかない。目の前の事しか見えていない行動にイライラする。


もし仮に私の手から逃れても私は拳銃を持っている。そんな状況でどうするつもりなんだ?背中を見せて逃げる?それとも大声を出して助けを呼ぶ?ここの壁は分厚いから隣の部屋には声は届かないだろうし彼女もここで暮らしているんだからそれは分かっているはず。


でも彼女は泣き叫びながら必死に藻掻いている。…幼い。言動全てが幼い。この頭で今まで生きてこれたのだから日本は平和だよね。


「娘が泣き叫んでいるのにお前のパパはソファーにでも座っているのか。ママはクッキー焼いていて助けには来てくれないのか。どうなの実際?」


拳銃を持っている私に対して空想の親たちは何をしているのかを彼女に問う。彼女は受け止めなければならない。彼女は両親の死を。


絶対に佐々木真央の両親の葬式があったはずだ。彼女の両親にも親は居る。親戚たちもだ。事故で亡くなっているのだからみんなが葬式を開いてくれただろう。なのに彼女にはその記憶が無いらしい。…マトモではない。  


私もお母さんが殺された時は気が狂いそうだった…というか狂ったけど、流石にお母さんが死んだと受け入れていた。しかしコイツは受け入れずに死者を冒涜している。


「パ、パパは驚いている。ママも同じ…。」


佐々木真央には娘をただ見守っている両親の姿が見えているらしい。…視線の先はここか。


私は拳銃を構えて引き金を引く。すると数発の弾丸が撃ち込まれて床と壁に穴を開けた。


「パパッ!!」


どうやらパパに当たったらしい。しかし血が飛び出るどころか声も何も存在しない。ただ硝煙の臭いが部屋の中に充満していくだけだ。


「ママはキッチンに立ってる?」


キッチンに立っているらしいママにも退場してもらうためにまた拳銃で弾丸を撃ち込み壁を破壊していく。彼女は狂ったように泣き叫び再び両親を失うことになる。


「私は殺し屋なの。こうやって世界の邪魔になる奴を殺してお金を貰う。でも、あなたの両親はとっくの前に死んでるから何も貰えないけどね。」


佐々木真央の腕を離してから彼女の正面に立ち、見下すよう告げた。こうやって彼女の目を覚まさせる。じゃないと彼女の背後に居るクソ野郎共が見えてこない。


クソ野郎共は絶対に居るはず。こんな生活が不可能な環境でも彼女が学校へ通えている時点で誰かがこの家に来て補助をしているのは明らかだ。見えない両親と生活している佐々木真央を…。

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