混沌属性
どうも一週間ぶりの投稿です。お久しぶりです。
そしてお伝えしなければならないことがあるのですが、両腕の痛みが中々に引かずにこのままだと手術しないといけない的な所まで来ていたのですけど、もう少し安静にして様子を見ることになりました。
それでしばらくの間は毎日投稿は止めて2〜3日に一回のペースの投稿にしようと思います。スマホもキーボードも痛くて辛いんですわ…。
でもいつかは毎日投稿に戻して今年中に完結出来たらな〜と考えていますので、またこうやって前書きなので報告しようと思います。なのでそれまではこのペースの投稿でよろしくお願いします。
人生で一度は言ってみたい台詞を言えたのは嬉しかった。でもマジで人類が滅亡しそうだし、この場の空気もなんか死んでいるしどうしようかな。割とやばいことをノリで言っちゃったけど、このあとの事とか何も考えていないんだよね。
「さ、さぷらいーず…。」
この場をどうにかしようとまた余計なことを言う伊藤美世だったが、この一言で彼女が本人である可能性が非常に高いことが判明する。
最初はこの美世が本人なのか分からなかった伊弉冉と蘇芳と理華は偽物と疑っていた。なぜならば自分たちの知る伊藤美世と見た目が異なっていたからだ。
まず身長が明らかに高い。着ている制服がぴちぴちなのですぐに違和感を覚えていたし、髪の毛も長くてふんわりとしている。それに…これが一番おかしい点なのだが顔色がとても良いのだ。そこに3人が一番の不信感を覚えていた。
自分たちの知る伊藤美世はもっと死にそうな…辛そうな顔をしていたはずだ。しかしこの美世はとてもスッキリとした顔をしている。まるで一週間も旅行してストレスを発散しきった二十代後半のOLの顔色だ。
だから最初は疑った。しかし言動が明らかに本人であるので間違いなく美世本人であるのは確定している。しかし解せないことが多く、中々にその事実が受け入れ難い。そんな共通認識が3人の中に生まれ誰一人として言葉を発することが出来ずにいた。
そんな中で美世は普通に冷蔵庫の所へ向かい飲み物を取り出す。しかも牛乳・オレンジジュース・アップルティーの3種類のパックをだ。それを3つのコップにそれぞれ注ぎ次々と飲み干していく。そして…
「う…美味すぎる…!」
突然泣き出した。日本に居れば誰でも口にすることが叶うありきたりな飲み物を飲んで泣き出した美世に3人が再び不信感を覚える。ここまで来ると3人にも彼女が本人であることに確信を持てない。
(一年ぶりの牛乳美味すぎんかっ!?母乳ってこんなにも心に染み渡るものなのか…。)
牛乳一つで感動を覚えるほどにネストスロークでは娯楽、特に食べ物に関しては終わっていた。だからこの時代の日本に帰ってこれて良かった〜!
「…美世?」
「…理華、久し振り。元気…してた?」
なんか酒瓶持って泣いた跡のある理華にそんなことを言うのもおかしいけど、私にとっては一年ぶりの再会だしこの挨拶で間違いないはずだ。
「…美世?」
あれ?また同じ事を聞かれたぞ?時間が巻き戻ったのかな?
「…理華、久し振り。元気…っ!?痛ッ!?」
理華にまた同じ事を言おうとしていたら突然太ももに激痛が走り、私はその場に膝をついてそのまま床に倒れてしまう。
(えっ!?マジか…?理華の能力で太もも貫かれたんだけど…。)
突然の事と予想外過ぎることで反応が遅れて防御も回避も間に合わなかった。右足の太ももに鉛筆が通りそうな穴があいて鉛筆削りみたいになってる。…なんだよこの女やべえんだけど。
「おい理華!何を…………いや、お前は正しいよ。良くやった。」
私の姉が妹の太ももを鉛筆削りにした女の行動を咎めるどころか肯定して褒めやがった…。なんだこの姉。
「良くないよ…痛いよ…足に穴あいてんのに手当ての一つもしてくれないの?」
私は見下す2人を見上げて抗議を口にする。久し振りの再会にこれは無いでしょう…。どんな仕打ちなのか聞き出したい。私にとっては一年でも君たちは数時間でしょ?頭おかしいよ…。
「本人ならそのぐらいの傷は治せる筈。」
「うん…美世なら治せるはず。治さないなら美世じゃない。」
「…人の家でなにほざいてんの?」
心の底から出た疑問だった。家主が数時間ぶりに戻ってきたら隣人に太ももを貫通させられる正当な理由ってあんの?
「蘇芳…何か言ってやってよ。私が特異点だって知っているでしょ?嘘が言えない蘇芳が言えばあなたの姉に穴が増えることも無かったのに…。」
私は私の味方と公言しているマイシスターに助けを求めた。彼女ならば姉である私を見過ごすなんて行動はしないはず。蘇芳ちゃん…助けて…。
「…お姉ちゃん。」
「蘇芳ちゃん…!」
私は期待の視線を妹に向ける。蘇芳ならやってくれるって信じてる…!
「…理華、左腕を狙って。」
「おい!このサイコパス不登校女子中学生っ!!痛いっ!!!」
また私の身体に穴があき、もはや大きな鉛筆立てみたいな様相になった私は床の上を転がり回る。あまりの痛さと不条理に頭がおかしくなりそうだ。
「私の知る美世なら時間を戻して直せる。だから証明して。」
蘇芳は私に本物の姉である証明をしろと言ってきた。訳が分からない。
「痛っつ…!証人が…証拠を提供しろって、おかしいじゃん…!」
証人は襲撃者とグルだった。…アイン、どうやら私はパラレルワールドに来てしまったみたいだよ。野蛮な猿の惑星にね。
(痛みも耐えきれないぐらいキツイし、さっさと戻してしまおう…。)
「…り、【再生】」
私は能力を行使し、現在の軌道を削除して軌道を逆行させた。私は1分前の状態まで戻り記憶を失う。そう、記憶を失ったのだ。訳が分からない。なんで私は私の軌道を削除して逆行したんだ…?
「え、なんで…?何があったの?」
あまりの出来事に私は混乱していると更に混乱する事態に発展する。
「「「美世っ!!」」」
伊弉冉・蘇芳・理華の3人が猛突進を仕掛けてきて私は受け止め切れずに壁にめり込んでしまう。特に伊弉冉のタックルがヤバくて不意打ち気味に決まってしまった。
伊弉冉ごと私は壁に突っ込んで半壊させてしまったけど、そこにトドメとして理華と蘇芳のタックルが追加され完全に壁に私の型が出来上がってしまった。
「ゴフゥ…!?」
肺と胃から出たうめき声が壁の崩落音と一緒に室内に鳴り響く。能力者のタックルって、一般家屋では耐えられないのを私は身を持って知ることが出来た。…ありがとうねみんな。そして死んでくれ。
この壁直すの誰やんの?私でしょ絶対に。いや、なんとなく分かっていたけどさ、やっぱり私の生きていた環境ってクッッッソなんやったんやなって…。
フフッ…アイン、早く私をネストスロークに戻して…。
早速心が折れかけて帰りたくなった私はその後に私は無事に壁を直し、ヒビの入った助骨(私の)も直してテーブルに着くことが出来た。
いやマジで家に帰って最初にこれってなんなの?ここまでしないと私はダイニングの椅子にも座れないの?しかも酒臭えんのなんのって。仕事で遅くなった時の帰りの電車で嗅ぐ酒臭いおっさんの臭いが同級生からするの普通に無理なんだけど。
「さて、そろそろ話してもらおうかな。今の今まで何していたの?」
「え?どの口が言ってるのイザ姉。私の台詞だよ。なんで私はここに来て早々に【再生】を行使していたの?どうせイザ姉たちが何かしたんでしょ。3人の反応で分かってんだよ殴るよ?」
いきなり仕切りだした姉に私はふざけていると流石に殴るよ?と宣言する。多分カウンター決められて痛い目にあうのがオチだけど、それでも人は殴らないといけない時があると思うんです。
「本人かどうか確認するために美世に実践してもらったんだよ。美世が言い出したんだよ?」
「え?そうなの?」
「うん、そうだよ美世。私たちがちょっと迷っているうちに勝手に…」
「お姉ちゃん、何があったのか話してくれる?なんで成長した姿なの?」
なんか妙に説得力のある言い訳が出てきたし、何も無かった風に振る舞い始めたぞコイツら。否定する理由も証拠も出せない私は仕方なく何があったのかを話すことにした。納得はいかんけどね!
「宇宙船で一年過ごして戻ってきた。」
「…はあ?」
「で、人類が滅亡する未来を未来というか過去から見てこの道にまで逆行して戻ってきたの。」
「え…?なに?」
イザ姉と理華も頭上に?マークが浮かび理解するのを止めていたけど、蘇芳はなんとなく察しがついていたのか、一人だけ私の言葉を上手く推測し熟考を重ねていた。
「パルスのファルシのルシがパージでコクーンなの。」
「おい、それはふざけているでしょ。」
「うん!」
「おい。なんで嬉しそうにしているのこの子。」
このネタがちゃんとふざけたネタだって通じるのが嬉しい…!マザー相手だと真面目に「コクーン?」とか言って解析しようとするし、ここは私を私としてちゃんと見てくれるからそれだけで嬉しいよ!
「イザ姉。」
「なに?」
イザ姉が頬杖をついて私を呆れた表情でジーッと見ている。私も同じようにイザ姉を見ながら初めに言うべきだった言葉を口にした。
「ただいま。」
「……」
私の言葉に虚を突かれたのかイザ姉は口を少しだけ開けて呆けていたけど、それもほんの少しの間で、すぐに笑顔に変わり私の欲する言葉を返してくれた。
「おかえり。」
その言葉で私は2巡目の世界に戻ってきたと実感し、自分のやるべきことと時間制限を思い出しつつも私は家族との時間を楽しむことにするのだった。




