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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
6.私達の居ない世界
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接続

えっと、この装置は私の脳波に干渉することが出来るってことは、ベルガー粒子に干渉出来るってことだよね?なら私のベルガー粒子をケーブル代わりに使えないかな?…無理かな?


この装置は能力増幅装置だけど、別に私の持っている100%の能力(ちから)を110%…120%にする機能はなくて、私の100%の能力を無駄なく分配して処理速度を上げる機能のはず。じゃないと結局私の脳が耐えられなくて装置の意味がなくなる。


つまりこの装置は私の能力を無駄なく完璧に近い状態にする装置ってことだ。


でも接続方法が不明で上手く私とは同期してくれない。ならケーブルを用意すればいいんだけど、さっき言ったようにベルガー粒子でこの装置と橋渡し出来ないものだろうか。取り敢えずマザえもんに頼んでみようかな。


「マザー、この装置の機能でさ、ベルガー粒子の操作って出来ないの?」


「ベルガー粒子を操作出来るのは能力者の脳だけです。」


「…なら、あんたが隠し持っている私の脳をコピーしたやつ持ってきてよ。アレと繋がって処理を分担するから。」


「…バレていたのですね。」


探知能力者をなめんなよ。お前が私の使ったスプーンや落ちた髪を回収して色々とやっていたのは知っていたよ。今の今まで見逃していたのはお前にあの子たちの肉体を作ってもらうため。


いつかは問い詰めて私のお願いを聞いてもらおうとしていた。それが今だと確信したからこうして今脅迫(お願い)をしている。


「もしマザーが私の言うことを聞かなかったら…どうなるか計算してみる?」


「すぐに持ってきます。」


「オッケー。」


SSDとパソコンとケーブルがあっても、接続端子が無ければ2つの装置は繋げられない。ここでは昔からパソコンという名の能力者の中にSSDというチップを内蔵させる方法を取っていたけど、私の場合はそれが出来ないし、させたくもない。だからケーブルと端子を用意するしかないんだけど、上手く行けばいいんだけどね。


マザーが戻ってくるまでの間、私は眠くなり能力増幅装置に座って船を漕いでいると、マザーの操る機械人形が私のDNAから造り出した脳みそと脊椎を持ってきた。


脳みそは瓶のような容器に入っていて、その下に機械らしき部品がくっついている。…内部の温度とか調整しているのかな?良くは分からないけど台車に載せられてマザーが運んできた。中々にシュールな光景だ。機械が人の脳みそを持ってくるなんてディストピア感がある。


「グロ…。」


「なんて事を言うのですか。これは素晴らしい人類の叡智の結晶ですよ。」


自分の脳みそをそんな風に讃えられるなんて経験したくはなかったな…。


「ほら、さっさとその瓶の中に入った脳みそをこの装置の側に置いてよ。」


「…分かりました。この試験が終わったら返却を希望します。」


「終わったら焼却処分だよバカたれ。」


自分の脳みそのクローンが存在することを認知してあげられる人ってこの世に居る?私は無理だよ。


「…仕方ありません。燃料と肥料の一部にします。」


「ええ…発想がサイコパスやん。…もうアンタに任せるよ。」


私の脳みそで育った植物は食べたくないな…。特にあの子たちには食べさせたくはない。サイコパスすぎるよ。


このネストスロークでは無駄な廃棄物を出すまいと排泄物をクリーン化し、また私達の口に入れても大丈夫なように加工がなされたりはするけど、流石に人の脳みそを肥料にはしないでほしいと個人的には思う。でも燃やすのもエネルギーを使うし仕方ない。


「じゃあ取り敢えず肥料にされる前にこの脳みそを変換器にしちゃおうか。」


瓶の中に入った脳みそはケーブルなどで繋がれている。なんか電流とか送ったり送られたりするケーブルだと思うけど、これを上手く増幅装置に接続してっと…


「なるほど。能力者の脳同士なら問題なく繋がり、この脳は機械に繋がっている。経由させるわけですね?」


「うん。これならいけると思うけど…。絵面ヤバいな。この光景見られたら多分私がサイコパスになるじゃん。」


変な機械人形の隣で脳が入った装置を怪しげなオブジェクトに繋いでいる私ってなんなの?地球人の未来の光景がこれってなんか嫌だ。


「…接続を確認。あとはイトウミヨ、アナタ次第です。」


マザーからの報告を聞いて私はまた台の上に手を置いて装置を起動させた。私のベルガー粒子をこの脳へと送り、更に脳から増幅装置へと送られる。これなら私の脳に干渉出来るはず。


「うお…?なんか脳の一部を勝手に使われているみたいな感覚がする。」


前にお母さんが私の中に居た頃を思い出す。殺意に飲まれた時と感覚が似ている。私を別の存在が操作しているみたいな感覚だ。


「出力はこれで最大なのでそれ以上は干渉出来ない筈です。」


「そうなの?じゃあ、めいいっぱいやってみる。」


私は能力を行使して過去の情報を読み取る作業を開始した。取り敢えず視る範囲は東京。そして視たい年代は約千年前の2020年初頭。私と先生が居なくなった直後がベストだ。


「…来た。」


私の視界に例の光景が広がる。あの時間の流れがこのフロアに流れ込んできた。どうやら大きく時間を越えようとすると出てくるらしいね。


「…これはなんですか?…いや、()()()()()()()()()()()…?ーーーバグとエラーが凄まじい速度で増殖中。能力増幅装置を緊急停止させます。」


「いや続行させる。時間を越えるってことはこういうことなの。ここに来る時もこうなった。多分私は成功に近付いている。」


ここで止めるなんてあり得ない。ここで止めたら永遠に2巡目の世界を視ることが出来なくなる!


「ですが…これは人の手でどうにかなるものなのですか?我々にどのような悪影響があるのか分かるのですか?」


マザーが機械人形を操り時間の流れに触れないように動かす。その反応が人間そっくりでちょっと不気味だ。本当の身体じゃないんだから敢えて触れに行きそうなものだけど。


もしかしたらマザーは知っているのかもしれない。先生が逆行させた時もその場にいて観測していた筈だ。その観測した時間も逆行したのだろうけど、何かしらの事象として記録され続けている可能性もある。


だからこれが危ないものだと本能的に理解しているのかも。機械に本能的なんて言葉は合わないと思うけど。


私がそんなことを考えていると時間の流れに変化が起きる。虹色に光る時間の流れが軌道を創り出し始めたのだ。


「…これは私達?」


私とマザーが写し出された。この軌道の動きから数分前の私達だ。それが逆行し続けて巻き戻っている。瞬きをしたら場面が飛んで別の私が写し出された。


これは…1ヶ月前の最後の能力者を生き返らせた時の軌道?


「…視えます。我々にもこの光景が…軌道と時間が視えます…!」


「…その目、私かアインのでしょ。」


軌道が視えるなんて私かアインの目しかありえない。この野郎まだ隠し持っていたのか。アインたちが毛嫌いする訳だよ。


「今は非常時です。今はこの事象をコントロールすることだけを考えてください。」


機械人形が私の方を見て訴えてきたけど、芝居臭い演技を見せられているみたいでムカつく。


「…あ、これは私が初めて来たばかりの時…。」


さっきまでは数分前の時間だったのに、もう1年前の時間に移った。まさか加速している…?あ、また変わった。


「アインとアネモネたち?」


見たことは無いけど恐らく話に聞いていた仲間達とアインが写し出された。テーブルに座って何か楽しそうに語り合って…あ、また変わっちゃった。


「…この時は我々が記録しています。これは35年前の振り分けですね。」


教室のような部屋で子供たちが泣き出している。何かの紙を握って悔しそうに悲しそうにしていて見ていられない。


そこからも場面は切り替わっていき、私とマザーは逆行していく時間の流れを観測し続けた。

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