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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
6.私達の居ない世界
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線を越える

1巡目の世界からこっちへ来てからおおよそ一年の時が過ぎ去った頃、突然私の下に吉報が訪れる。


「イトウミヨ。遂に完成しました。」


「ん?何が?テレビゲーム機が出来たの?」


前にリクエストしたゲーム機が遂に完成したのっ!?やっとこの退屈な時間から開放される。ボードゲームもどきも飽きていたところだし私のゲーマー魂が火が付くよ!


「違います。そちらはまだ完成の目処が立っていません。」


「え、じゃあ今から寝ようとしているのに邪魔しないでくれる?もう夜の九時だよ?」


やることが無いと人は自然と規則正しい生活になってしまう。最近では夜9時には寝て、朝の5時に起きる生活を続けている。現代人とはかけ離れた生活サイクルだ。


「少し寝るのも早い気がしますが、それよりもイトウミヨ。アナタの希望を叶える装置が試験段階ではありますが、使用する事が可能となりましたので報告しに参りました。」


「…マジ?それってあれだよね?2巡目の世界の状況を見たいって私のワガママを叶えられるの…?」


「はい。」


マジか…出来るのか。というか出来たのか。しかも私の知らない間にそんな装置造ってたなんて知らなかったよ。


「えっと、じゃあ…案内してくれる?」


私はマザーの指定したフロアまでテレポートし、そこに居た機械人形の案内で例の装置まで案内してもらった。


「これがその装置です。」


「…これが?」


なんかゴツいオブジェクト的な黒い塊が真っ白なフロアの中心に鎮座していた。色々とケーブルが繋がっていて熱そうなんだけど、これ大丈夫なの?


「えっと、何かの模様を立方体にしました〜的な形だけどさ、どう使うの?」


「確かに雪の結晶のような模様にも見えますが、この形になったのは出来るだけ資材を削る為です。本当は加工の楽な正方形にしたかったのですが、無駄な面積と体積を削りきったらこのような形になりました。」


資材が無さすぎて加工の面倒そうなこの形状になったのね。経緯は分かったよ。次は使い方を教えてほしい。


「使い方に関しましてはイトウミヨ。アナタ次第になります。」


「…はい?」


「イトウミヨのデータが不足している我々では、この装置の使い方をガイドすることが出来ません。」


何を言っているんだこのポンコツは?初めて見聞きした装置の使い方なんて知るわけないでしょ?


「じゃあどんな意図があって設計したの?使い方が分からない装置なんて作る前から理論が破綻してない?」


「いえ、この装置はまだ試験段階ですが、使用する事が可能と判断しています。問題なくご使用ください。」


…機械人形から発せられるボイスって、なんかGo○gle翻訳みたいでムカつくんだよね。常に平坦な声で意味の分からないことを言うから尚更ね。


「これって次元を越えて観測出来る機械なんだよね?私がこれを使って2巡目の世界を見るものなんだよね?」


「はい。その通りです。」


「モニターが1つも無いけど?どうやって見るの?」


「それはイトウミヨ自身が見るので必要ありません。」


あれ?トンチかな?私は一休さんじゃないから分かんないや。


「…あ、もしかしてこれって能力増幅装置?」


「はい。その通りです。能力者の脳や脊髄を使わずに、イトウミヨの脳の演算処理をサポートする装置です。」


「…最初からそう言ってくれる?」


「最初から言いましたけど?」


駄目だ、噛み合わない。まあでも、この装置は私が大量のベルガー粒子を処理するのを手助けしてくれる装置と知れたし良いかな。


それにしても良く考えたものだ。ベルガー粒子をいくら渡されても私の脳で処理出来る量は限られているからね。だからマザーは私の保有しているベルガー粒子を充分に処理しきれるようサポートする装置を造ってくれたんだ。


そうなると望みはなんだ。金か?名誉か?この身体か?…この身体だね。色々と調べたがっているし間違いない。


「じゃあ…早速使ってみようかな。うん、試してみないと分からないもん。」


はやる気持ちを必死に抑えてマザーに気付かれないよう自然と装置の前に立つ。…ヤバい。成功するかは分からないのにドキドキが止まらない。だって一年ぶりだもん。みんなの顔を見たいよ。


「…あれ、待てよ。私の能力を充分に処理しきれるようにしても1巡目の世界を視ることってそもそも可能なの?」


だって千年以上離れた時間軸を視るって相当大変なんじゃないの?私単体の能力でどうにかなるものかな?


「前に話してくれましたよね。この時間軸に来る際は一度通った因果を通って来たと。イトウミヨもその因果に沿って能力の射程を伸ばせばいい。」


「あっ!そっか!この1巡目の世界に来てすぐに東京や京都があった場所を視れたように、その結果を逆行させて見ればいいのか!マザ〜頭良いじゃん!」


私の能力の射程距離は千年の時を越えても捕らえ続けている。ということはだ。過去から現在地点までの因果関係が生じていることになる。その因果関係から逆行すれば過去を探知出来るかもしれない。


「はい。我々は賢いです。」


「え、あ、うん…。」


「そしてそんな我々が造り出したこの装置には自信があります。どうぞご使用ください。」


…ふふ、人工AIが自信を語り出すなんて世も末だ。しかもその根拠のない自信を信じてぶっつけ本番で使う私も大概だと思う。


「使い方は私がこの台?に触れればいいの?」


「はい。この装置には脳波を読み取り制御する機能があります。本当は脳にチップを埋め込みたいんですけど、恐らく拒否されると思うのでこのような接触タイプに致しました。」


「そんなの拒否するに決まってるでしょ。」


なんて怖いことを言い出すのよこのポンコツは。脳ってことは頭を切開するんでしょ?…想像したら気分が悪くなってきた。


「なので神経が多く(かよ)う手のひらを装置の上に置いてください。」


この装置は台みたいに平らな面が上にあり、私はその平らな面に両手を乗せた。これで脳に繋がるの?


「電気信号を送りますので拒否しないでくださいね。」


「ヤバいと思ったら拒否するよ。」


私は電気を操れるから変だと思えばすぐに電流を遮断出来る。まさかとは思うけどマザーが私に対して悪巧みをしている可能性もあるから、念には念を入れる必要があるよね。


「…では電流を流して脳波を見ます。」


マザーはベルガー粒子を視認することが出来る。能力者の脳波とベルガー粒子は親密な関係にあり、ベルガー粒子を視認することが出来れば脳波の状態もある程度把握することが可能となる。


この仕組みは能力者の目と脳の一部を利用したものだが、能力者から部位を取り出したものではなく、クローン技術で必要な部位のみを生産したものを利用している。


「おおっ…?電流が流れてきて気持ちいい…。」


低周波治療器かな?なんか、マッサージ効果ありそう。


「これは…厳しそうです。アナタの身体は中々電流が流れてくれません。」


「ああ、私の身体は電気に対してちょっと特殊な耐性があるからね。」


そうか。私に電流を流そうとしても上手くはいかないのか。マザーがさっき私のデータが不足しているって言っていたけど、1巡目の私は異形能力に目覚めていないのかも。だからマザーは私の現在の状態が良く分かっていないんだ。


「えっと、どうしよう…。私の身体が他の能力者と違うからこの装置だと出力が足りないかも。」


「いえ、出力が足りないなんて事はありません。規格が合わないだけです。」


「規格?」


「はい。21世紀初頭に生まれたイトウミヨに分かりやすく例えれば…この装置がSSDで能力者がパソコンです。」


おっと、また人工AIがわけのわからないことを言い出したぞ。


「この2つはUSBで繋げますよね?ですがイトウミヨ。アナタはこの規格では接続出来ないようです。」


「…なるほど?それって私が能力者のパチもんってことでおk?」


「はい、その通りです。」


「ぶっ壊すぞ。」


まさか喧嘩を売られるなんて思いもしなかったよ。その機械人形をスクラップにしてテレビゲーム機を作ってやろうか?


「アナタは能力者として定義しても良いのか我々でも分かりません。なのでこの装置自体には問題はありませんし、問題なのは規格の違いなのです。」


コイツ…最終的には責任転嫁しやがったよ。でも、説明を聞いて問題点は分かった。なら私がケーブルを用意すればいいんだね。それなら心当たりがあるから試してみようかな。

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