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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
6.私達の居ない世界
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突如の襲撃、突然の終わり

魔女たちはその場から動けず、かつてはルイスだった物を見ているしか無かった。こういう反応を見るとルイスってなんだかんだ魔女たちからは好かれていたんだと実感する。


「お疲れ理華。」


「……うん、ごめんね。時間かかっちゃって。」


あれ、予想外な反応だ。勝ったのに理華はあまり喜んでいなさそう。右腕を左手で掴んで居心地悪く佇んでいる。


「いや、私や魔女たちを巻き込まないように最初は力をセーブして戦っていたでしょ?分かっていたのに私がバリアぐらいしか張らなかったから私が悪いよ。」


なんで理華と謝り合っているのか私も良く分からないけど、謝られる筋合いはないし気にしないで欲しいな…。


「えっと、その、理華はやっぱり強いね。多分ルイスってこの世界でも相当上位にいる能力者なのに本気出せば完封だったし、流石は私の相棒。」


こういう時はおだててその気にさせるのが一番だとマリナ様で学んでいる。私もコミュニケーション能力が向上してきたみたい。


「……本当?本当にそう思っている?」


「思ってる思ってる。だって、私はあまり人付き合いしないじゃん?理華だけだよ私と一緒に居てそんなに嬉しそうなの。」


「天狼さんや蘇芳だって美世と一緒に居ると嬉しそうだよ?」


あれ?これも何か思っていた反応と違う。う〜ん?理華ら私のどういう反応が欲しいんだろう?別に言い合うつもりも無いんだけどな……。


「姉妹だからね。血が繋がっているから大事な存在だし、私が家族にこだわっているのは分かっているでしょ?」


「うん、家族が第一なんだよね美世って。」


理華は笑いながら言ったけど、笑っていない。機嫌が悪い時にそんな反応を見せる時があるけど、それとも違う。こんな理華は初めて見た。


「……うん。その通りだけど理華は私にとっては特別だよ?」


「どう特別?天狼や蘇芳よりも特別?」


……あの理華が伊弉冊のことを呼び捨てした?蘇芳のことも普段はちゃん付けしているのにおかしい。なんか変だし怖いよ。それにルイスを放置しすぎるのもおかしいからここはルイスに話題を振ってあやふやにしようかな。


「あ〜〜ルイスを最初に生き返らせてからでいい?見て、魔女たちの顔を。話し込んでいる場合じゃないよ。」


私は振り返り魔女たちを観察する。かつてはルイスだった物の近くで話し込んでいる私と理華に少しドン引きしているから、さっさと生き返らせてあげないと。彼女たちはまだ使えるからね。


「おい、起きなさいルイス。」


「……え、はあっ!?なんで戦っている最中に影の外に出てるの私はっ!?」


私が問いかければルイスは立ち上がって周りを見回し始める。そんなルイスに少しだけ苦笑してしまう。彼女のマイペース加減に救われる日が来るとは。


「終わったよ。理華に殺されておしまい。あとでお金、用意しておいてね。」


ポンッとルイスの肩を叩いて私はその場を去ろうとした。この流れなら有耶無耶にして帰れそう。そんなことを思っていた。


だが、いつものように私の日常というのは唐突に、突然に終わりを告げる。あの時も、今だって……。


私はそのことを改めて思い知らされるのだった。


「ピーーーィン」


地下駐車場に響いたその声のような音のような判断のつかない音声を私と理華はいち早く認識してお互いに顔を見合わせた。


まさか……いや、そんな事があってたまるか。ここは東京なんだよ!?


「どこっ!?こんな所に来るわけが無い!」


「美世!アイツは、敵はどこに居るの!?」


もうさっきのような反応は消え失せ、いつもの様子に戻った理華が最大限の警戒をして辺りを見回す。


「え、か、神よ。さっきの金属音のような音は……」


ルイスが一歩進み、私に近寄ったタイミングで奴は地下深くから急速に浮上してきた。コンクリートの床を打ち破り姿を現したのは鎧に身を包んだ異形な存在。


「調……整、体……ッ!」


その者の名前を口にするとまるで返事をするかのように調整体から金属音のような声が返される。


「ピーーーーーィン」


魔女たちも只事ではないと察し、すぐさま能力の行使を始める。だが、コイツを倒せる能力を持つのはルイスと私、それに理華しか居ない。だからここで仕留めるしかない!


(でも、東京のド真ん中で殺れるような相手じゃない!隔離しないと、無関係の人々の命が奪われる!)


「メリッサっ!!私達を中心に空間を想像してっ!!」


「え?」


「早く展開しなさいッ!!」


私は叫んで創造系能力者であるメリッサに異空間を創造するように指示を出す。少しでも判断を迷えば多大な被害が生まれる。だから早く動いてメリッサ!


「わ、分かりました神よ!」


メリッサが私を中心に空間を創造する少しの間、私はコイツをここに縛り付けないといけない。


「ラァミィ!コイツを抑えつけて!そしてルイス!逃げ場所を塞ぐ為に網状の檻を展開して!」


「分かりました神よ!」


「え、えっと了解しました!」


ラァミィはすぐさまサイコキネシスで調整体の動きを封じようと能力を行使した。だが、ラァミィは驚愕の表情を浮かべて私に報告してくる。


「そんな……!神よ!なんですかコイツは!()()()()()()()!」


調整体の周りの空間が歪んだように見えるぐらいの圧力が加わっているのに調整体はその場から動いて私達を観察するかのように首を回した。全身が液体金属のようになっている調整体は首周りの部位が繋ぎのない構造になっていて、首を動かしても金属の擦れるような音はしない。


だけど金属というか砂のような粒子が圧縮されたような音が聴こえた気がした。前に戦った時とは何か構造的な部分が違うような印象を受ける。この短期間でこれだけの差があるということは文字通りの意味で人為的に調整されたな……。


それにラァミィのサイコキネシスで止められないとなると相当出力が上がっている。しかも知能もそこそこありそうだ。前は虫レベルの知性しか感じられなかったのに、今は人間のような動作を挟んでいるからね。


「神よ。ご指示通り影でこの周りに囲いましたが……。」


ルイスは影で地下駐車場の壁・天井・床面を影の檻で囲み、調整体が逃げられないようにした。あとはメリッサの異空間構築が終わるまで足止めするだけ。


「理華っ!」


「分かってる!」


理華の能力で仕留められればそれでいい。瞬時に決着がつくだろう。だが、この調整体が無人島の個体とは異なり、しかも調整されていたのならば……


「【熱光量(サーマル)】!」


理華は照明の光をかき集めて光球を作り出して指向性を持たせる。狙う標的は金属の鎧のような外殻を持った人形の調整体、光速の速さで光線が飛んだ。


そしてそれと同時に調整体にも動きがある。調整体の外殻が浮きだってパージされた。まるで鎧を外したみたいに複数のパーツに外殻が別れてその場で停滞する。


「なっ…!?」


こんな事があって良いのか!?敵は私達のやろうとしていることを()()()()()()!理華の攻撃に反応して対処してきた!


だが外殻に光線が当たり光熱を発して高温になる。本体にはノーダメージだけど理華の能力は拡散して広がる特性がある。あの外殻を脱いでも本体の調整体とは数十cm程度しか離れていない。高温になって真っ赤に赤熱した光が調整体の本体を襲う筈。


しかし私と理華の予想は外れて赤熱に温められた調整体の外殻の一部が唐突に()()()のだ。


「「まさかっ!?」」


私と理華の声が重なり同じ結論に至る。恐らくこれしか考えられない。


((調整体の外殻の一部がテレポートした!))


熱と光を広げて拡散する前にその場からテレポートして消えたのだ。……間違いない。これで確信した。奴らは対策を取ってきた。理華という天敵を克服し、襲撃するために……!


(なら、敵の目的は……!)


わざわざここまでして来るわけだから目的があっての襲撃。つまり襲撃の目的は、狙われているのは私ではなく……


「理華ッ!!逃げてッ!!!」


私は右斜め後ろに居る理華に叫びながら振り返り彼女を逃がそうとする。だけどその時と同じく異空間が構築されて調整体と共に私達はこことは別の空間へと閉じ込められてしまう。


(クッソ……!タイミングが悪いっ!メリッサがわざとこのタイミングで異空間を創造したわけではないのに当たりそうになる!)


「わ、私は……邪魔、なの?美世、私は……いらない、の……?」


理華はさっき言った私の言葉にショックを受けて後退りしながら私を泣きそうな目で見てくる。


「神よ!!抑えられません!!同士たち!!貴方たちは離れなさいっ!コレは貴方たちで対処出来るような相手ではありません!」


ラァミィが叫びながらルイスの下へと向かい、他の魔女たちは瞬時に行動に移して後ろへと下がっていく。何も言い返さずに動けるのは流石の信頼関係と言える。


「ルイス!コイツは私達2人で対処しますよっ!」


「分かってるっ!!」


ルイスとラァミィはお互いの背中、半身を預け合う様に密着して構える。どのような事があっても離れずに行動を共にするということが見て取れる動きだった。


「美世……、私……いらないのかな。私って、美世には、無くていい、存在…?」


理華を放置するわけにも調整体を放置するわけにもいかない。今の理華は戦えるような精神状態ではない。だから、私がここで動かないとここに居る全員が死ぬことになる。


「理華、()()()()()()()()()()()()()。何もしないのならそこで見てて。」


私の口から出た言葉は心底冷静で、とても冷たいもので、自分で口にしてから心臓がバクンっとしたぐらいに私自身でも信じられない程の静かな否定と無関心さだった。


もう理華を見ようとも構おうとも思わない。私は私の優先事項に準じて目の前の問題に対処するだけだ。いつもこうして来たように、これからもこうあるべきだと自分に言い聞かせて行動するだけ。


大切な親友よりも名前も知らない他人の命を優先するのが私という存在。やらなければならないことを瞬時に決めて行動する。お母さんの時もそうだった。一度決めたら自分でも歯止めがきかなくなる。


「ルイス、ラァミィ、下がって。ちょっと、本気出すから。」


私は私の中で保存されていたベルガー粒子を解放して能力を行使する。そのベルガー粒子量は伊弉冊、蘇芳を超えて先生すらも凌駕していた。


多大なストレスを毎晩毎晩と受け続けて成長した私の能力者としての能力は、この世界のどの年代において頂点に位置するものだと自負している。


だから、私が負けることは許されない。私が負ければ全てが終わってしまう。


「この世界の平穏にお前は邪魔だ。この世界には不必要な存在は私が消し去る。」

作者が思うこの物語に出てくる能力者の強さランキング


1巡目ユニゾン強化【多次元的存在干渉能力】>2巡目の現地点美世>怪異点(美世ママ)>2巡目【多次元的存在干渉能力】(5章までの死神)>2巡目【多次元的存在干渉能力】(6章の弱体化した死神)>(越えられない壁)>伊弉冊>理華>ルイス>それ以下の能力者


蘇芳はランク外です。

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