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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
6.私達の居ない世界
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光対影 ④

決着。




※ちょいグロ表現と食べ物を食べながら読むのには注意してください。

今までの戦いを見ると能力では理華の方が上だけど、能力の使い方や個人の技量ではルイスの方が上のように見える。正直な話ルイスの技量は相当なものだ。本当にビックリしたよ。ここまで戦えたんだねルイスって。


「やっぱり戦闘に関しては天才的だから嫌になるわ。」


ラァミィは溜息と一緒にルイスへの称賛の言葉を吐き出す。認めたくないような人物だけど実力だけは認めざるを得ないってところかな。


「周りの環境に左右されやすい能力だけど、室内ではかなり凶悪な性能をしているよねルイスの能力。」


「はい、私のサイコキネシスも万能な能力ですが、室内では流石にあの能力には劣ります。」


物理的な干渉を無効化するルイスの能力では物理的に干渉する能力とも言えるサイコキネシスだと相性が悪いのか。相性に関しては仕方ないけどラァミィのサイコキネシスも相当イカれた性能しているけどね。


「…なんか、ルイスが勝ちそうで大損になりそう。」


「ねえ?リカって子も頑張っているけど流石にルイスとは経験値が違うよね。」


「なんだかんだ私達のリーダーとしてずっと率いて来たからね。やる時はやる女だよ。」


…ルイスへの信用度は低いのに信頼度は高いのか。ふ〜ん?それで理華へは信用度も信頼度も低いわけね。


じゃあ…もう良いかな。そろそろこの戦いも終わりにしようか。喧嘩の延長線かと思って私は特に準備や対処はしていなかったけど、ガチガチのバトルなら公平にしないとね。


私は騒がしくなって気が緩んだ空気を引き締めるために両手を強く掌を打ち合わせてパンッと音を鳴らした。するとその場にいる皆の視線と意識が私に向けられて、理華が私の瞳を強く見つめてくる。


「理華…」


私はバリアとは別の能力を行使し、私の周りの空間を掌握した。これは文字通りの意味でこの空間内は全て私の支配下に置かれた事を指している。


そして、私は彼女の枷を外す。


()()()()()()()()。」


私の言葉を聞いた理華の口元が一瞬だけ弧を描いたように見えた。それは私の知っている彼女の笑顔ではなく狂気に満ちた表情に見えたけど、恐らく彼女の周りの光が屈折したせいでそう見えたのだろう。彼女は私とは違うのだから。


「うん、早く終わらせて一緒に帰ろうね美世。」


理華のベルガー粒子が爆発的に拡散する。理華の作り出した光輪から照明へと伸びていた細い光の線は数を増やしランダムに動き出す。


ガラスを一瞬で熱して溶かす程の熱量を持った光線がまるでステージを照らす舞台照明のように天井から床へと落ち、ライブなどで使用されるレーザー照明の如く多彩な動きを見せた。


「なっ…!こんな物が逃げ場所の少ない室内で使われたら神達が…!」


ルイスは影の中から美世と同士たちを心配をして彼女たちがどうなったかを確認した。すると光線は美世の近くに行くと不自然に停止してその身に光が届いていないことを視認する。


「ルイス、私達の心配はしなくていいから自分の心配をしたほうがいいよ。」


「え…?」


ルイスは神の言葉の意味を瞬時に理解は出来なかったが、次の瞬間には嫌でもその意味を理解することになる。


「…え?」


影の中には当たり前だけど光源は存在しない。物体なら何でも取り込める影でも光は影という性質上取り込む事が不可能になっている。


しかし光情報の一切は影の中へ入らないと言えば違う。影の表層、影と影の外側の境目では光は確かに存在する。じゃないと影の中から影の外側を視認することが出来ない。だから影の中は真っ暗闇というわけではないの。


それに私自身も影の表層近くに行くと向こう側から私を視認することが出来る。つまり少なからず光は影の中へ入れてしまうのだ。


だけど勘違いしないでほしい。影と光は相対するもの。光が入ってこれるのは影の表層部のみで奥深くへは決して光が届くことはない。影の底はまるで深海の海のように光が存在しない正真正銘の闇になっている。


だからあのブサイク女がどこまで理解していたのかは分からない。ただの偶然か能力の出力が高くて私の能力を上回ったのだと思う。


「…そんな、まさかこんなことが…。」


照明から降ってきたレーザーが影の中に居たはずの私の身体の一部を焼き切って左手の指の全てと胸を横一文字に切断した。血は出なかったが、白い煙と肉の焼けた酷く耐え難い臭いが私の鼻に充満する。


そして皮膚と筋肉が焼けた痛みが神経を通り脳に送られ、私は絶叫する。あまりの激痛につい能力を解除してしまいそうになるが、私はすぐさま光から逃れる為に奥の方へ逃げ込んだ。この光から逃れられるのは影の奥しかない。


だが奥の方へと向かっている途中で左手と乳房の痛みが広がっている事に気付く。私は左手を見ようと自分の顔の前に持っていくと、切断面から熱と光を発せられ焼け続けているではないか。しかも胸の方も同じ様に光を発して火傷の痕が広がり続けている。


「こんのクソガキガァアアァァァアッ!!!!」


痛い痛い痛い痛い痛い痛いッ!!!痛みで今にも気が狂いそうだッ!しかも骨まで焼けて切断面近くの血管を通った血液が徐々に熱せられて使い物にならなくなっている!!


チッックショーッガア!!こんな温められた血液なんて身体中に送ってんじゃねえよ心臓がッ!!!!あああああ〜〜〜〜熱い熱い熱い熱い!!!!!細胞の一つまで熱を持ったみたいに熱いッ!!!!!!!!


頭なんてもう湯気が立ち昇る程に熱くて意識が朦朧としてきた…!なのにあまりの痛みで気を失えない!痛覚だけが正常な働きを見せて異常なまでの信号を送ってくる。


身体の内側から炙られているみたいで舌がブクブクと泡が立って膨張し喉を塞ぎ、眼球は茹でたみたい水蒸気を発して角膜と瞳孔が白く濁りその機能を失う。


頭の中は沸騰したやかんの中身のような状態で、脳というタンパク質の塊が熱で変質して固まり血管が凝固する。


「かぁ……か、あ……ぉ……あ……」


肺の内部の空気が熱で膨張して口から漏れ出す。肺の水分が蒸気となって喉を通ると粘膜を焼いて声帯を破壊した。もう声は出せない。口から漏れている音はやかんみたいに蒸気が漏れる音で、人間から発生するような音では無かった。


ルイスは能力を行使することが不可能になり影の中から急激に浮上する。そして影の中から出てきたルイスを見て魔女たちは凍りつく。まるでルイスは蒸し器やオーブンに入れられた肉の塊のような有り様だったからだ。


切れ目の入った左手と大きな乳房からは蒸気が常に漏れて人の内側から発せられる不愉快な臭いを地下駐車場内に充満させていき、彼女の着ていた服は炭化して彼女の皮膚を焼いていた。


「…勝負ありだね。ルイスが降参と言えそうにも無いから私が勝敗を決めます。」


理華は能力の行使を止めて何十にもなるレーザーを消す。地下駐車場の床や壁にはマグマを流し込んだかのような跡が幾重にも作り出されていてその威力を物語っていた。あのまま能力を行使し続けていたこの地下駐車場はどうなっていたか、考えるだけでも恐ろしい。


「ルイスは死亡。よって最後まで戦っていた理華の勝利。」


こうして2人の戦いは壮絶な死を迎えたルイスの敗北で決着がついたのだった。

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