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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
6.私達の居ない世界
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光対影 ②

久しぶりのヤンデレ描写

ルイスの性格の悪さを再認識した私はこの後の展開を予想する。恐らく能力使用の戦いに移る……筈。肉弾戦では理華はルイスに勝てない。だけど能力ありならば理華が優勢に戦いを進められるはずだ。


「性根が腐ってんなあの女。」


ボーちゃんのポツリと零した感想に私達は無言で頷く。だってルイス楽しそうだもん。彼女は倒れている理華を地面を這いつくばるような姿勢で見下している。


なんて良い顔なんだ。本当に楽しそう。だから負けるな理華。りかーがんがえー。


「……その笑顔を悲痛な表情に変えてあげる。」


理華は立ち上がりながらベルガー粒子の操作を始める。……どうやらかなりムカついたらしく、全力行使をするつもりだ。


能力を行使した理華の下に地下駐車場に付けられた照明の光が集まっていく。ただ光が直線的に向かうのではなく、まるで渦を巻くように様々な色の光の粒子が理華に向かって流れていく。その姿は幻想的でちょっとしたイリュージョンみたい。これだけでご飯を食っていけそう。


「それで食っていけば?殺し屋よりも向いているんじゃない?」


マジか……ルイスと発想が同じだった。ショックで寝込みそう。私と彼女の根本的な部分は似ているのかもしれない。最悪なことだけど。


「口ではああ言っているけど凄く警戒しているね。」


「あ、神もお分かりになるのですね。」


「ラァミィも?凄いね。付き合いが長いから?」


「ええ、ルイスが距離を保ったまま動いていないので。」


私はルイスのベルガー粒子の動きからいつでも能力を行使出来るようスタンバっていることを知覚していたけど、ラァミィは彼女の立ち回りで分かったらしい。なんだかんだこの2人はお互いを理解し合っているように見える。仲は普通に険悪そうだけど。


「……神よ。これって大丈夫なのですか?我々は巻き込まれたりするのでは……?」


えっと、ステファニーか。彼女がおずおずと聞いてきたけど、この2人の戦いの余波を心配しているみたい。


「バリア張ろうっか?」


「是非お願いします神よ!」


「はいよ〜。」


私は魔女たちを包むようにドーム状のバリアを展開した。理華の事だから私達を巻き込むような能力の使い方はしないだろうけど、問題なのはルイスなんだよな……。


彼女の能力の特性上完全に防ぐには私も影を操るか光源を作り出してブロックするしかない。


「わ、私のバリアよりも硬度が高い……。」


ラァミィが私のバリアを見て少し落ち込んでしまう。少し悪いことをしてしまったかもしれない。こういう時はラァミィにお願いして彼女にバリアを張ってもらえば良かった。今度があったらそうしようっと。


「……動き出しました。」


シークの言うとおり理華とルイスに動きがあった。理華の操る光の塊は強力なライトのような明るさを秘めていたが、この距離からだと眩しかったり熱を感じたりもしない。なのに凄い光の量であることは見て分かる。……何だこれ。私でも出来ない。どんな操作をすればこんな摩訶不思議な光が作れるの?


「……それで、その光をどうするつもり?」


ルイスが両手両足を地面につけて、いつでも動き出せるよう身体全体に軽く力を入れる。そして地面と自分の手足が接地した面の影を操りすぐにでも影の中へ逃げる準備も済ませておく。


(このブサイクに対して逃げる選択肢は取りたくないけど、な〜んかヤバそうな雰囲気がするのよね……。)


歴戦の猛者であるルイスの勘があの光は危険な物だと語っている。もし相手の実力を見誤れば死が待ち受けていると確信させるほどにアレはヤバい代物だ。


ルイスは理華という能力者を正確に再認識する。いま相手にしているのは私を殺し得る能力者。いつでも逃げられるように準備だけはしておかないといけない。


彼女のこういった姿勢は戦いにおいて非常に大切な考え方だ。逃げることは間違った選択肢ではない。生き残ることが最善策と考えているルイスの生き方はこれまで何度も彼女自身を助けてきた。あの死神が来る前に一目散に逃げたから彼女は今ここに居られる。


例え同じ志を持つ同士たちですら見捨てて己の生存を第一優先に考える。これが彼女の強さの秘訣だ。


(あの光は触れてはいけない部類の能力ね。神や死神のような理不尽な能力に近い。)


実際に神と戦った経験から自身よりも遥かに強い存在と、理解の及ばない能力が存在することを知った。その経験則からこの光は恐らく私の能力と相性が悪いことが分かる。


あの神が強いと明言したのだ。しかも私と同士たちを同時に相手取っても勝てるようなことも言っていた。同士たちの中でも私が一番強いことは神も承知の筈。それでもあのブサイク女が勝つと言ったのだから私の能力を上回る出力ということは確定している。


その証拠に複雑な色合いを見せるこの光は様々な角度から物を照らし、いくつもの影を生み出してはいるが、どの影も薄くて地下とは思えない薄い影ばかりとなっている。これでは私の能力が上手く効果が発揮されない。


だから私は戦いになると地面に接する面を増やす為にこうして手足を地面に密着させている。


私は地面というより壁や物から離れると能力が無力になる性質があるのよね。影が作り出されない環境は私にとっては翼をもがれるようなものだから。


「それでいいの?あんたこのままだと死ぬけど?」


チッ、クソ生意気なブサイクなイエローモンキーが……。勝敗はまだ決まっていないのに勝ったつもりになりやがって。


「その口を塞ぎなさい。臭いがここまで来て不快だわ。」


私の一言が合図となりブサイク女の能力が私に向けて飛んでくる。私の視点からでは視界が真っ白になるだけだったけど、背筋が逆立ち血液が一気に身体中を駆け巡った。それほどのプレッシャーと死をこの光景から感じたわ。


だから私はすぐさま影の中へ逃げ込み相手の攻撃を避けることにした。その判断が間違ってはいなかったと、私が居た地面が真っ黒に焦げた様子から伺えたわ。


影の中から地面を見ようとすると見上げるような形になるのよね。なのに地面の様子が見えるから透けて見えていることになる。これに関しては私もどういう理屈なのかは分からない。そもそも影の中へ入り込めているだけで意味不明なのだから今更ではあるか。


(やっぱりあのブサイク女に勝つためにはこの影の中へ落としてベルガー粒子を奪うしかなさそうね。)


私以外のベルガー粒子はこの影の中へは入れられない。だから能力者をこの影の中へ落としてしまえば自身のベルガー粒子を失い能力が使えなくなって私の独擅場になる。だから私の勝利条件は相手を影の中へ入れるか肉弾戦で相手を殺すか意識を奪うしかないのよね。


「はあ……面倒くさい。」


だけど面白くもある。こんな歯応えのある敵は中々出会えない。ここ最近は小物ばかりを相手にしていたから昂ぶっちゃうわ。……ふふっ。ちょっと楽しくなってきちゃった。


ルイスが理華のことを好敵手と捉え始めた一方で、理華はルイスのことを別の捉え方をしていた。


(この能力は美世のお母さんが多様していたと天狼さんから聞いた。私の能力ならばあんな結末は迎えずに済んだかもしれないのに……。)


相性を考えれば私の能力はルイスの能力【堕ちた影(エトンヴェ・オンブル)】に対して非常に有効打を与えられる。もしあの時に私が居ればと何百回と思ったことか……。


そうすれば美世が自身の手で母親を殺さないで済んだのに……!私がこの能力で美世のお母さんを殺せばよかったと今でも後悔している。私ならば出来たはずだ。美世のお母さんを、怪異点を殺す役目は私にあったはずなんだ。そうに違いない。だって、そのせいで美世は苦しんでいる。そんなことはあってはならないのに!


一体美世が何をした?悪いことなんてした?母親を生き返らせた事が悪だった?なんであの時の私は美世の味方でいなかった?なんであの時に美世の敵にならなかった?私は当事者ですらなれなかった。あれだけ隣に居るって言ったのにも関わらず、私は美世の傍にもいられなかったんだ。


……親友失格だ。私は美世にとって必要とされていない。全て終わった後に美世の傍に居たのは蘇芳だった。しかも彼女は数少ない美世の家族。私は血の繋がっていないただの他人に過ぎない。


だから私は証明したい。私が美世にとって有益な存在であることを。そのためにもこの戦いは負けられない。私は美世に思ってほしいんだ。


あの時、理華が居れば良かったなって後悔してほしい。私が必要だって気付いてほしい。私が美世にとって唯一の支えになりたい。私が美世の一番になりたい。美世の心情を独占したい。


「……絶対に勝つ。だって、私が絶対に勝たないといけない相手だもの。」

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