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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
6.私達の居ない世界
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運命的因果

隣のテーブルに座っている魔女たちの質問は終わった。後はこの目の前に座っている2人だ。


「では次は私、シークの質問に答えて頂きたい。」


彼女は覚えている。能力そのものが優秀でベルガー粒子も多い能力者。私も何度か彼女の能力に助けられている。


「はいどうぞ。」


「ありがとうございます。特異点でもある神はあとどれほどの猶予があるとお思いでございましょうか。」


「破滅への?ん〜4月中には滅びるんじゃない?」


私が滅亡する大体の猶予を話すと店内はどよめく。あと数ヶ月で滅ぶとなったらみんな焦るよね。私も内心では結構焦っているんだよ。


「それは……何故そこまで正確に分かるのですか?これも死神が関わるのですか?」


「えっとね……。少しぐらい話してもいいか。1巡目と2巡目には共通点がある。というよりも運命が関わってきて因果が繰り返されていると言ったらいいのかな。」


あれ?なんか私も魔女っぽいことを言っているぞ?机から顔を上げた理華の反応が魔女の戯言を聞かされた時のものと同じだ。


「ゴホン。えっと、つまり1巡目で起きたことは2巡目でも起こるってこと。1巡目でも戦争というか争いが起きてから終わったの。2巡目でも戦争が起こるらしいし、その後にこの世界は終わるって話。」


「な、なるほど……。神は1巡目の世界で何が起きたのか知っているからこの2巡目の世界で起こることも分かる……ということですね?」


おおー!シークはやっぱり頭が良いね。能力者らしい思考の回転だ。


「じゃあ次は私からお願いします。」


ラァミィか。私の話を聞きながら色々と考えていたっぽいけど、彼女からされるであろう質問はどんなものなのかな。


「ラァミィくん。なにかな。」


「神はこの世界を維持するつもりですか。それとも終わらして次へ向かわれるのですか。」


……やっぱりラァミィはそこまで辿り着くか。そうなんだよね。私がどうしたいかは明確には言っていない。ラァミィは私がどう動いているのかではなく、どうしたいのかを聞いている。


「正直そこは迷っているよ。特異点である私はこの世界を継続させることも終わらせることも出来る。だけどどちらが良い選択肢なのかは分からない。ただ、この世界を終わらせるということはこの世界にある人々を無かったことにすることだからね。そんなの選べないよ。」


「……なるほど。貴方様のお気持ちは分かりました。」


ラァミィは私の回答にある程度満足したそうで特に深く掘り下げようとはしない。


「じゃあ……私からもいい?」


「あ、理華が最後か。いいよ、どうぞ。」


最後に挙手をしたのは私の親友の理華。彼女が私に聞きたいこと、言いたいことってなんだろう。


「1巡目と2巡目の世界にある共通点からすぐに起こるであろうことは何?何か対策を講じないといけない事とかある?」


「う〜〜ん……難しい質問だね。私も実際に見聞きしたことじゃないからな。デカいイベントだと戦争とこの世界の終わりぐらいしか分からないよ。」


「そこまで至る道筋は美世は分かっているの?」


それも良くは知らない。先生と蘇芳から手に入れた情報から私が独自に導き出した道筋なら言えるけど。


「組織内で戦争が起こるんじゃない?1巡目も能力者が争って地球がめちゃくちゃだったらしいし、3月末までには敵対する勢力は無くなるっぽいから組織内での覇権争いが戦争規模になるんだと私は考えている。」


「……すっご〜〜く有り得そうだから困る。」


私よりも組織の内情に詳しい理華が有り得そうだと太鼓判を押してくれた。ということは高確率で組織内で戦争が起こるのか。困ったな。


「神よ。それならば神も参戦するのでしょうか。神の能力があればどの勢力にも負けはしないでしょう。」


右隣に座っているルイスがまたこっちに身体を向け始める。話す度にこっちに身体を向けなくていいんだよ。膝を私の太ももに擦り当てるな。


「いや、戦う気はないよ。蘇芳が覇権を取ろうともしていないらしいし、私は勝ち負けとか興味ないから。ただ、私の大切な人達が巻き込まれたら……戦争に参加してるやつ全員殺すかな。」


「……神らしい意見だと思います。もし、戦争をするのであればお声を掛けてください。必ずお役に立つと約束致します。」


「ルイスの能力は戦争向きだからね。戦力としては充分だよ。でも、出来れば戦わない方向で考えておいて欲しいかな。」


「神に従います。」


ルイスちゃんなんて都合のいい女なんだろうか。これで最後に裏切ってきたらルイスらしいけど。


「じゃあ理華まで回ってきたから私がみんなに質問していい?」


反時計回りで回っていったから最後は私になる。私だって言いたいことはある。


「なんで急に神って扱いをしてきたの?私何かした?」


あれ?私なにかしちゃいましたか〜?みたいな事をした記憶は無い。理華の話ではみんなで集まって私の能力を知った直後から信者になったらしいけど、何で信者なったのかは誰に聞いても良く分からないって言うし、直接当人たちから聞くしかなさそう。


「神は不死です。人間を超越しています。」


ルイスが熱の籠もった瞳で私の問いに答えてくれた。他の魔女たちもうんうんと頷いているし、どうやら不死の部分が彼女たちの琴線に触れたらしい。


「ロブスターも論理的には不老不死でしよ?」


「ロブスターは脱皮に失敗して死にますし、人間に食べられるので何十年も生きられません。」


「私も生きる気が無くなれば死ぬよ。能力あっての不死だし……多分。」


実は不死のところは私でも良く分かっていない。先生が私の能力について熱弁していたけど、私の能力はベルガー粒子の保存能力をフル活用した能力らしく、私自身の情報全てを保存して好きな時間軸に持っていけるらしいですよ。


「神は我々を生き返らせましたよね。」


今度はラァミィまで参戦してきたよ。しかもみんながうんうんと頷いているし、この流れをもう一回しないとなのか……。


「あれは先生の……死神の能力ね。元々の私はそんなことは出来ない。この世界に存在しない能力は使えないの。」


「ということはこの世界にある能力は全て使えるということですよね?」


今度はラァミィの隣に座っているシークまで入ってきたよ。クソっ、この3人は頭の回転が速いから理華みたいに丸め込めない。どうしたら私への神扱いを止めてくれるかな……。


「試したことが無いから分からないよそんなことは。この世界にどれぐらいの能力があると思っているの。」


「ルイスの能力や死神の能力が使えている時点で使いこなせない能力は無いのでは?これよりも行使が難しい能力なんて神自身の能力しかありません。」


メリッサくん……それはそうかもしれないけど、貴方が神と崇める者を追い詰めないでくださいませんか?


「美世、ちょいちょい。耳貸して。」


理華が私に助け舟を出してくれた。私は魔女たちを無視して理華に耳を貸す。今の理華なら借りパクされても文句は言わないよ。


(パスを繋げば美世の能力が使えるって魔女たちに言ったら泣き出しそうじゃない?)


「え、殺すよ?」


助け舟ではなかった。黄泉の国にある人を彼岸へ送る舟だったよ。耳元でなんてことを呟くんだこの子は。もし魔女たちに聞こえていたら世界の終わりだ。これ以上面倒なことは勘弁してほしい。


「どうしたのですか神よ。その女を殺せばいいのですか?」


「冗談で言っただけだから理華の足元に影を伸ばすんじゃない。言っておくけど理華には勝てないからねルイス。」


「私がこんな下劣そうなガキに?ありえませんよ神よ。私に勝てるのは神と死神とクソガキぐらいです。」


結構居るな……。あと伊弉冊にも勝てないよ貴方。ワンパンで死ぬから。何か光ったと思ったら胴体が真っ二つになっていましたみたいなオチが待っている。


「絶対に勝てないよ。理華が本気出したら貴方たち全員一瞬で殺されるから怒らせないようにしてね。」


これは警告だ。理華は私の身が危なくなると暴走する節がある。今の魔女たちが私に何かするとは思わないけど、理華自身の判定基準で駄目と判断されたらデスビームが飛んでくるよ。


「……イエローモンキーが。」


「オイっ!差別用語は駄目っ!神にもその蔑称使った判定だからね!」


この物語はトランスジェンダー、人種問題に対して攻撃的な思想があって描かれるものではありません。


「……美世に対してなんだその発言は、殺すぞババア。」


おおっと、理華の判定に引っ掛かってしまったようだ。ルイス……お前はいいヤツだったかもしれないよ。


「んだこのジャップが。日本では目上の人に頭を下げるのがマナーなんだろ?頭を下げろよブスが。」


「お前は目上じゃないね。無駄に年食ったババアは自尊心が高くて困る。中学生にこき使われているからな?」


2人が席を立ち睨み合いが始まるけど、私を間に挟んで睨み合うのは止めてもらえませんかね……。


「おほっ!面白えのが見れそうだ!」


ボーちゃんの口調が砕けてる。私に対してのみあんな話し方なのか。……私もそっちの砕けた話し方で話しかけて欲しいよ。


「表出ろ。私が勝ったら金輪際、我らの神に近付くな。」


「なら私が勝ったら美世に謝れ。泥の上で土下座でな。」


あれ?私が蔑称で呼ばれたことになってない?え、私がイエローモンキーやジャップって呼ばれていたの?


「え〜〜と、その、お店に迷惑にならないよう取り敢えず外へ出ましょうね。ね?」


私は魔女たちと理華を連れて喫茶店を後にした。まさかただの放課後がこんな殺伐とした喧嘩に発展するとは思わなかったよ。

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