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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
6.私達の居ない世界
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飼い慣らされた魔女

うぅ……マリナ様達に付き合わされたせいで私の貴重な放課後が消え去ってしまったよ。高校生活を順風満帆で送るためとはいえ女子高生をやるのは疲れる……。


「解散した直後にそんな顔するとマリナ達が可哀想だよ。」


「理華……プリクラで40分も時間を使わされた私に厳しくない?」


私は隣で歩いている理華に文句をたれる。理華は私と一緒にプリクラが取れてこうして一緒に帰れてウッキウキなのは分かるけど、私は連日の仕事とマリナ様たちとの接待で疲れているのです!もう少し優しくしてくれないと面倒くさくなる女なんだよ私は!


「え?私はもう少しプリクラ撮っていたかったよ?女の子同士でプリクラ撮りに行くの初めてだったし。」


「修行ばかりの青春だったんだね……。私は修行していたほうが良かったよ。」


「まだこれ以上強くなるつもりなの……。もう敵無しでしょ。」


そんなことはない。寧ろ敵だらけだ。どうやって効率良く敵を殺すかが今の私の課題になっている。理華の能力【熱光量(サーマル)】のような能力でも意外と制限があって使用する際にその威力を発揮しない場面があるからね。


雨女と白雪姫たちのように陽の光が遮られたり温度を極端に下げられたりすると殺傷力を失う。逆に太陽が出ている日中や電光などの光が常にある場所では無類の強さを誇るけどね。


「まだまだだよ。私は世界最強を目指しているからね。」


「……あまり先に行き過ぎて置いていかないでよ。」


「理華なら勝手に付いてきてくれるでしょ?」


私にとっては理華は相棒で親友だ。お互いに高め合える好敵手でもある。


「はいはい、私が勝手に付いていきますよ〜。」


そんな女子高生らしくキャッキャウフフをしてイチャついていると前方から見知った集団が現れる。……相変わらず目立つ集団だ。理華との会話に夢中でこの距離に来られるまで気付かなかったよ。


あ、こっちに気付いて走ってきた。……面倒くさくなりそうだ。


「おおっ!神よっ!我らの特異点よっ!」


「神じゃありません。伊藤美世という一般的な標準に収まったチンケな人間です。」 


「一般的……?標準に収まっている……?美世が……???」


「そこ、うるさい。」


理華が的確にツッコミを入れてきたけど私は一蹴した。私が標準から外れているとすれば身長とバストサイズぐいだ。歩いていると揺れて邪魔なんだよねこの脂肪。


「いえ、我々の神はここに居られます。」


魔女の集会のリーダーであるルイスが両手を組んでお祈りのポーズをしながら前に出てきた。


「いやお前だれ?キャラ変わり過ぎじゃない?」


「ルイス、貴方の使徒であるルイスです。」


「……だれ?」


説明されても誰なのか分からなかったよ。あれ〜おかしいな……。私の知っている黒髪で彫りの深い魔女の格好したコスプレ美魔女ってこんな奴じゃなかったのにな……。私そいつに何回か殺されそうにもなっていたのに目の前の女は組織の服を着て普通のパンツスーツ姿なんだけど。


「これはこれは神よ。お久しぶりです。明けましておめでとうございます。」


「ラァミィ……。あんたまで堕ちちゃったか……。」


「ええ、我々矮小なる人は(あまね)く罪から下界へと堕ちました。」


家族愛に溢れていた金髪美女が憐れな信者に様変わり。こんなラァミィ見たくないよー!


「相変わらずだねこの人達。私先に帰ってようか?話長くなりそうだし。」


「見捨てるな私をっ!!こんな奴らと話していたら頭おかしくなるっ!!」


魔女の集会改め魔女の信者に変わったこのイカれた宗教団体は何故か私を盲信している。理由は知らない。というかなんでここに居るのかも私は良く知らないのだ。


私がお母さんを生き返らせた後で蘇芳と先生が日本に拉致してきたらしい事を理華から前に聞いたけど、それから彼女達がどのようにして組織に加入したのかは分かっていない。多分先生と蘇芳が便利そうだから手元に置いたのだろう。実際便利だし。


「神よ、これからご予定は?」


「神は獣と家畜をつくり、神に似せた人をつくった。明日は休みを取らねばならない。だから神は忙しいのじゃ。」


「美世の神のイメージって……」


天地創造だって大変なのだ。今日は木曜で明日は金曜日だから学校行かないとだけど、仕事が無い日は今の私にとっては日曜なんです。


「時間は取らせません。……大事なお話があるのですよ。」


「はい。とても、とても大事な。」


ルイスとラァミィが真剣な表情で大事な話があると訴えてきた。……こいつら結構私にとって大事な話をしてくる率高いんだよね……。仕方ない。ちょっと付き合ってあげますか。


「……理華、先に帰ってて。」


「嫌。私も話に参加する。」


「さっきと言っている内容違うやん……。」


理華の余りにも華麗な手のひら返しに少し笑いが出てしまう。この子ったら仲間外れにされるのが嫌なんだから〜。


「美世に関する話でしょ。もう取り残されるのは嫌なの。……あのときは何も力になれなかったどころか関われすら出来なかった……当事者になれなったの。だから、私は美世の傍を離れない。」


「……気にしないでって言ったのに。あれは私が全部悪かったんだから。」


私のお母さんの一件で理華はかなり私に対して神経質になっている。あの件は間違いなく私のせいで、私は理華には幸せになってほしい。無人島の時は私と一緒に地獄に落ちてもらうって言ったけど、私は理華に地獄に落ちてほしくない。だから出来れば今回も当事者になってほしくないんだよ。


「うるさい黙ってて。私が勝手についていくだけなんだから。」


理華はそう宣言して私の手を握る。……あのときも同じ事を言って私の手を握っていたっけ。どうやら私を一人にする気は無いらしい。私がどこかへ行かないよう手を引いてくれるみたいだ。


「置いていったら許さないんだから。」


ぎゅうっと更に強く手を握ってくる理華の横顔は今にも泣き出しそうだった。……じゃあ確認をしないとだね。


「蘇芳絡みでも?」


「蘇芳ちゃん絡みでも。」


「死神絡みでも?」


「死神絡みでも。」


「世界が滅んでも?」


「世界が滅んでも……って、え?ほ、滅ぶの……?え、そんな、話……?」


「あの喫茶店で話しましょうか。」


私は理華の手を強く握り返し無理やり連れて行く。いや〜良かったよ。理華がガッツリと深い所まで関わってくれるみたいで。


「はい神よ。参りましょう。」


「いや、ちょっと急用思い出したと言いますか。ちょっと、手握る力強すぎ……ちょっ!」


「神は親友と下僕をつくり、神は休まねばなりません。行きますよ我が使徒達よ。」


「「「「「「解放しましょう!」」」」」」


「いやーー!私を解放してーーっ!!」


大声で叫びだす外国女性の集団と拉致られようとして叫び声を上げる女子高生を連れて私は喫茶店へ向かう。通行人たちの視線が私の背中を突き刺してとても心が痛いけど、これも世界の為だ。我慢我慢。


喫茶店へ入ると、とても雰囲気が良くてマスターの趣味がこれでもかと反映されたような店内の様子だった。少し古いというかレトロというかモダンというかなんていうか結構ごちゃついている感じだ。


時計何個あるんだよ。木彫りの梟そこらへんに居すぎでしょ客の数より多いじゃん。あ、客は私達だけか。


「いらっしゃいませ。何名様でしょうか。」


おヒゲがチャーミングなマスターが私達に話しかけてきたけど、視線は先頭に立っているを(わたし)に向けられている。あ、これ私と理華のペアと外国人観光客のグループとしてカウントされてそう。


「え〜〜と、9人です……。」


「え?あ、はい。お、お好きな席へどうぞ……?」


マスターがとても不思議そうな目線を私達に向けてくる。関係性が分からないんだろうね。私も分からないよ。殺し屋……とも違うし、アヴェンジャー……か?


「……ユーチューバー?」


マスターの独り言が客の少ない静かな店内に響く。あ、そういうの知っているんだね。でも違うよ〜ユーチューバーとかの類じゃないからね〜。私達はちゃんとした知り合いだよ〜多分。


「あ〜〜注文どうする?」


私は店の奥の方へと歩きながら振り返り魔女たちに質問する。


「酒。」


ルイス……良かったよ!まだルイスらしい部分が残っていたんだねっ!それでこそ私の知っているルイスだよっ!


「仕事終わりでしょ?これから蘇芳の所に行くんだよね?」


「だから飲むのです。飲まなければやっていられない……!」


ルイスの言葉に魔女たちはコクコクと頷く。……可哀想に、我が妹にこき使われているんだね。脅されているのかな?


「雪さんみたいなこと言ってる……。」


「え?理華、雪さんそんなこと言っていたの?」


「うん……疲れた顔でカップ酒が入ったコンビニ袋を持ちながらね。」


うわぁ……ちょっと想像がつくぐらいにはリアルな描写が頭の中に描かれたよ。


私は適当な席につくとすぐさまに隣の席が埋まる。理華が神速で私の左隣に座り、私の右席にはルイスとラァミィが一つの椅子にその安産型のお尻を無理やり押し込んでいた。


ああ……椅子の嬉しそうな悲鳴が聞こえる。お前……良かったな。そんなアンティークな椅子に美人2人が我先と座ってもらえる経験これから先無いよ。今の幸せ……噛み締めろよ?


「神の隣は私だ……!」


「いいや、私こそ使徒達をまとめる者として神の御側に……!」


ルイス、ラァミィの椅子取りゲームを眺めながら私は注文のベルを鳴らす。そうすると困惑な表情を浮かべた初老のマスターがクラフト用紙の会計伝票を持って私達の席まで来てくれる。さてと……


「お酒ありますか?」


「……未成年にお出しすることは出来ません。」


そっか……素面(しらふ)でコイツらと喋りたくなかったんだけどな〜。

魔女再臨


もはや準レギュラーの貫禄

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