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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
6.私達の居ない世界
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新学期の朝食

私と先生を襲撃した多国籍企業は私達が潰した敵対勢力の残党たちだった。組織という一個の勢力に対抗して世界中のゴミたちが寄り集まったのがこの多国籍企業。蘇芳はもう少し集まってから掃除したかったらしいけど、向こうはかなり私に対して恨みがあるらしい。なんでやねん。


確かに恨まれるようなことはしてきたけど、だったらお前達は誰にも恨まれないことをしていたのかと聞きたい。絶対に私よりも恨みを買っているよね多国籍企業たちのお偉いさんは。


私が個人的に持っている情報網から彼らの情報を集めたけど規模も本拠地も分からなかったから、あまり気乗りはしないけど最後は蘇芳に頼るしかなさそう。彼女も相当忙しい身だから負担を掛けてしまうことは姉としては避けたい選択肢だ。


彼女は私を優先的に考えている節があるし私が頼めばそれを優先してしまう。それはちょっと違う気がするから今のところは先生を頼ろうかなと考えている。


出来れば高校は辞めて情報集めや仕事に専念しようと思っていたけど、伊弉冊が「高校だけは出ろ」って言って私を無理やり高校へと通わせようとするんだよね。


蘇芳も「妹としてお姉ちゃんには高校ぐらいは出てほしい」って言うし、姉妹2人からそう言われたら行くしかない。でもお姉ちゃんは思うんだよ。蘇芳ちゃん、君は中学校に行かなくていいのかい?お姉ちゃん心配だよ。


あまり考えたことがなかったけど蘇芳は中学校行っていないよね?いや、彼女が普通の学校に通っているイメージとかまるで無いし、他の生徒たちの精神衛生上良くないと思うからこのままでもいいのかもしれないけど、お姉ちゃんとしては中学校ぐらいには行ってほしいよ。


でも私と蘇芳の姉である伊弉冊にも蘇芳ちゃんの学校のことを話したら「学校は人間が通うところでしょ?」と素で返されてしまったし、長女はあてにならない。末妹のことを人間として判定していなかったとは驚いた。姉妹の中で伊弉冊が一番人外っぽいのに。


というか今思うと私達姉妹って人間からかなり離れた生き物じゃないかな?真人間いる?私は居らんと思う。


しかも家庭環境とか血縁関係とか結構ヤバい。特に私は三者面談で誰に頼めばいいの?伊弉冊お姉ちゃん?……いや、流石にキツイ。腹違いの姉と担任が一箇所に集まることが既にキツすぎる。


祖父母なんて知らないしな〜。そういえば私の親戚ってどうなってんだろ。父親のほうは結局伊弉冊に聞かないと分からないし、母親のほうは昔から話題に出なかったことからそういうことなんだと昔から察していたし詰んでいる。


「はあ……。学校行きたくないな……。」


考えれば考えるほど鬱になる。こんなメンタルで学校なんか行きたくないけどもう制服に着替えてしまっているから行かない選択肢は無い。リビングには私が学校へちゃんと行くか見張っている姉と妹がいるからね……。


私は鞄を手に取り寝室を出てリビングへ向かう。リビングには朝食がテーブルの上に並べられて姉と妹が着席し、何故かエプロン姿の新垣さんが立っていた。いや能力で見ていたから知っていたけど実際にこの目で見ると疑問しか出てこない。なんで私の家で朝食作ってんの?


新垣さん蘇芳の母親だから私からするとちょっと気まずい関係なんだよね……。この場合私と新垣さんの関係って異母になるのかな?


「おはようございます美世さん。」


「あ、お、おはようございます新垣さん……。」


まさか向こうから挨拶をされるとは思わなかった。この人とは話した記憶が無いから距離感が掴めないんだけど。


距離感が分からなくて新垣さんを観察してみるとやっぱり蘇芳と似ていると感じる。蘇芳の母親なわけだからやっぱり綺麗な人だよな……。しかも能力者として相当ベルガー粒子量が多い。伊弉冊を一瞬で遠くまでテレポートさせているからテレポーターとしても優秀な人だ。


あ、そうなると伊弉冊と新垣さんともかなり微妙な距離感になるよね。気まず!


「朝食を作ってくれたんだ。お前も座れ。」


「なんでこの状況を受け入れてコーヒー飲んでいるんですか。私と同じ立場でしょうお姉ちゃん。」


伊弉冊だって新垣さんとは異母の関係になるだろうに落ち着いている。私とは大違いだ。


「私達の食生活が酷すぎるから来てもらったの。料理が上手なんだよ。」


「へ、へ〜〜そんなんだ蘇芳ちゃん。それは楽しみだな……。」


蘇芳ちゃん。蘇芳ちゃん?少しこの状況の説明にしては些か情報量が少なすぎないかな?確かにカップ麺とかチンして食べられるものばかりだったけどたまには外食したりウーバーで野菜を摂っていたでしょ?あなたのお母さんと同じ部屋にいるのとても気まずいんだよお姉ちゃんは。


「どうぞ美世さん。蘇芳の姉なら私の子供も同然です。どうか美世さんのご自宅ですので寛いでください。」


「あ、はい。」


気を遣わせてしまった〜〜!年上の人というだけでキツいのに義母から気を遣わせてしまっているのが物凄く嫌な気持ちになる。距離感どうしたらいいんだよ〜!!


私が心のなかで苦悩に打ちひしがれていると玄関の開く音がして理華がリビングまで入ってきた。この子ったら毎回タイミングが悪いんだから。


「美世〜今日一緒に登校……どういう状況?」


「その答えを求めてこれから学校に行くんだよ。ふざけんなよマジで。」


取り敢えず理華に当たるしか私の心の平穏は保つことは出来なかった。見てよこの状況。みんな誰かしらが家族なのに片方しか血の繋がり無いか全く血が繋がっていないんだよ。あれれーおかしいぞー?(名推理)


「理華も座れ。理華の分も作ってもらったんだ。」


「あ、それで朝からライン送ってきたんですね。ならご一緒させていただきます。」


あらやだこの子ったら順応性が高いわ。私ひとりだけ騒いでいるみたいで嫌やわ〜。


「京都だと割とある話だから。いただきます。」


理華がサラッと怖いことを言って味噌汁に口をつけ食べ始めてしまった。……京都怖すぎる。能力者は産めや増やせやだから私達みたいな姉妹も珍しくないってことだよね?……え、もしかして理華の家もそんな感じなの?


「ほら美世さん。大盛りで盛りましたから食べてください。」


私の席には大盛りのご飯と味噌汁が並べられる。……食えと?この状況下で?正気ですか?いただきます。


私は大人しく席に座って味噌汁を口にする。


「あ、美味い。」


匂いからして美味いのは分かっていたけど美味しい。白飯にわかめの味噌汁という朝ご飯には欠かせない二品に、おかずは鮭の塩焼き・だし巻き玉子・漬物・根野菜の煮物。どれも美味しゅうございます。蘇芳ちゃん、こんな美味しいご飯を毎日食べられて羨ましいわ〜。


「お母さんのご飯は世界で一番美味しいから。気に入った?」


蘇芳が嬉しそうに聞くもんだから肯定しか出来んのよ。かわいいかよマイシスター。その笑顔なら中学男子のハートはイチコロですよ。


しかも嘘が言えない蘇芳が世界一って言うんだから本当に世界一って思っているんだろうな……。本当にかわいいなお前。お母さんのご飯が世界一って私の妹可愛過ぎる。


「毎日味噌汁作って欲しいぐらい美味しい。あ、とても美味しいです新垣さん。」


ちゃんとお礼を言えることで定評のある私は新垣さんにお礼を口にする。本当に美味しいです。味噌汁とか出汁が効いてて幸せ過ぎるよ。


「おかわりありますからいっぱい食べてください。」


「お言葉に甘えていっぱい食べます。もぐもぐ……」


私は大盛りの白飯をかきこんで次々とおかずに手を伸ばしていく。どれも美味しくて素晴らしい朝食だ。今晩のご飯も作ってくれないかな?


「美味しそうに食べてて申し訳ないけど時間ヤバイよ。マリナもう待ち合わせ場所に居るんじゃない?」


理華の一言で最高の朝が最悪の朝に変わってしまう。そうだよこんなゆっくりとご飯食べている時間ないじゃんか!


「ごちそうでした。」


「え、あ、早い!あの量のご飯がその身体のどこに入ったの!?」


私とそんなに変わらない量のご飯を短時間で完食した理華はすぐに食器をキッチンに持っていき洗おうとした。すると新垣さんが理華を呼び止めて自分が洗うから学校へ行くように理華を送り出す。新垣さんママみ凄くない?


「美世、手が止まっている。」


「なんで伊弉冊まで食べ終わっているの!?早いからね!?味わって食べなよ!!作った新垣さんに失礼でしょうが!!」


しかしマリナ様を待たせればそれ以上の時間を使って説教をされてしまう。……ここは仕方ない。朝食をちゃんと味わってからアリナ様の説教もゆっくりと味わいますかね。

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