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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
6.私達の居ない世界
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共通点

私はオリオンと店内に入り取り敢えずドリンクバーを注文した。チェーン店のレストランでドリンクバー頼まないのはエアプ。


「来てくださってありがとうございます。忙しかったですよね?」


「まあね。でもミヨの為なら時間は作るさ。」


なんてカッコいいんだろう。私も後輩とかが出来たら言ってみたい。でも私の後輩って多分私よりも年上になるんだよね。年下の先輩って絡みづらいよね普通。


「ーーーなに?」


私が熱い視線を送っていたのに気付いたオリオンが少し居心地が悪いのか困ったような顔をする。…イケメンの困り顔ええやん。


「いや、先生とこうしてご飯が食べられるだけで幸せだな〜って。」


「先生とは…いや、いい。人も多いし誰も私達の会話は聞こえていないだろう。」


先生の言うとおり年始であっても私達以外の客が多く入店していた。初詣帰りで寄ったのかな?


「なあミヨ。私達の関係性については話したよな?」


先生は私に再確認を取ったけど、ちゃんと先生との会話は覚えている。


「オリオンと私は()()()()()なんですよね。覚えていますよ。」


「なら少しは自重しろ。」


そうなのだ。私とオリオンと呼ばれる白髪の青年とは親子の関係にある。しかも私が母親になるから驚きだ。


蘇芳との一件から私と先生の関係は修復不可能になったと思ったけど、普通に私は仕事をしていたし先生というかオリオンも仕事をしていた。だから…まあ普通に第一部ビルとかで会うんだよね。


だから私はオリオンを誘って話し合いの場を設けた。そこで先生との関係をはっきりとしたかったからだ。そしたら先生から「私達は未来から来た」「オリオンと呼ばれるこの青年はミヨの娘」「一巡目の世界はうんたらかんたら」と急に言われたからかなり参ったよ。


でも話を聞いて納得したというか合点はいった。私が先生の話をすぐに信じれたのは蘇芳の存在があったからだ。彼女が前もって一巡目・二巡目の世界の話をしてくれたから私の中で辻褄が合い、先生がアインの能力そのものであることも受け入れられた。


いま思い返すとこの辺りからPTSDを発症した気がする。そうなると先生が原因で私は毎晩うなされているのか?これは責任を取って私と毎晩夜を一緒にする義務があるのでは?????


「でも私が好きなのは先生であって、オリオンさん…じゃなくてアインは別に好きではありません。あ、恋愛的な好き嫌いですよ!?だって息子ですし恋愛感情はありません!近親相姦になるじゃないですかっ。」


「…それはつまりワタシという能力に恋愛的な感情を向けているのか?」


「そうですけど?」


先生は心底困ったように頭を抱える。私はアイン個人には昔から恋愛的な感情は持ち合わせていない。私が好きなのは目の前で頭を抱えているこの能力(ひと)そのものだ。…初めて会った時に私を救ってくれたのは先生だから。


「能力に恋愛感情を抱くとはどうなんだ?…もしかしてこの時代では普通のことなのか?」


「まあ〜〜普通ではありませんけど…あり得なくはないですよ。2次元が好きな人も居るんです。多次元が好きな人も居て不思議ではありません。」


郵便ポストと結婚する人も居るんだ。能力と結婚したいと考える女子高生が居てもおかしくないよね。


「…これと血が繋がっているのは嫌かな。」


「あ、今のはアインですね。徐々に先生という能力を理解してきました。」


先生の中には色んな人達が居る。アインだったりアネモネさんだったり話に聞いた447期生の人達だったりね。誰がどのタイミングで表層に現れるかは分からないけど、反応とかを見れば結構分かりやすい。


「はあ…。」


「息子よ〜〜母親に向かって溜息とはどうなんだい?」


子供を産んだ覚えのない母親が産まれた事実すら消失した息子の軌道に対してマウントを取り始める。控えめに言って地獄の光景だった。


「産んでいないでしょう?僕は産まれてもいないことになっているんですよ。」


アインは少し不機嫌そうな表情でドリンクを口に運ぶ。このときのアインは親子の関係にあることを言わなければ良かったと後悔するが、特異点相手では今更どうしようもないことだと思い直す。


「そんな寂しいこと言わないで。この溢れ出す母性をどうすればいいの?子宮が無いのにここが疼くのよ?」


私は大根役者ばりの演技で自分の下腹部を撫でる。それを見た息子が非常に嫌そうな顔をして身を引いてしまった。そんな反応されたら傷付くよお母さん…。


「そろそろ本題に入らないか?」


アイン…ではない。先生がいつものように落ち着いた声で私に話しかける。これ見た人が見ると豹変したように見えるから私の前以外ではやらない方が良いですよ。


「そうですね…先ずは山盛りポテトとほうれん草とベーコンのソテーにピザを頼みますか。あ、すみません注文良いですか?」


忙しそうに働く男の店員さんを捕まえて注文をする。こういう時は自分の容姿が役に立つ。この人が私にチラチラと視線を送っていたのは能力で視認していた。私から声を掛けられるのを待っていたよね店員さん?


「ハア…長くなりそうだ。」


長期戦を予想してか先生のテンションが低い。私としては先生にも息抜きと思って誘ったのに酷い反応だ。それともこれが俗に言う恋愛の押し引きというやつですかっ!?


「いっそのことアネモネあたりを呼んで適当に時間を潰すか…?」


「他の女の名前出さないでください暴れまわりますよ。」


「それで本題はなんだ?ワタシを呼ぶぐらいのことだからそれなりの理由があるのだろう?」


先生、スルースキル高すぎない?成長しないことをコンプレックスにしていた割にはスルースキルに磨きがかかっている。


「えっと、まあ…ちゃんとした理由というか先生にわざわざ来てもらったので、先生にもメリットのある話を持ってきましたよ。」


「ほう…それは楽しみだ。」


ちゃんとこっちが招待したのだからホスト役として相手を持て成さないとね。ちゃんとこういう所が出来ていないと結婚相手としては見てもらえない。ただでさえうちの家族構成が歪だからね!


「先生の話を聞いて私なりに一巡目と二巡目の共通点を見つけ出しました。」


「共通点?一巡目と二巡目の世界はかなり年代も環境も違うが、わざわざミヨが言うのだから相当な共通点があるのだろうな?」


オリオンの顔で先生の口調だからかなり不思議な感じがするけどこれはこれで良い。やっぱりイケメンって大事なんやなって。因みにこの対面に座っているのワイの息子やで。イケメンやろ?誰にもやらんから堪忍な。


「はい。共通点のひとつに特異点となる人物が必ず存在すること。しかも特異点が居る年代をその時間軸の基点として捉えます。」


「一巡目がアインで二巡目がミヨだな。」


一巡目の世界の話は先生から前に聞いている。バグという人類を殺そうとする生き物が居たり、燿人というベルガー粒子を持たない人達が居たりなど色々聞いている。


しかもそこにはアイン以外の私の子どもたちが居たりなど「わ〜ぶっ飛んだ世界だな…」と、感想を抱いたのは記憶に新しい。


「そして必ず特異点を誘導する者が居ます。…先生は良くご存知ですよね?」


「モミジ…それにスオウだな。」


先生は私との関連性に気付いた。一巡目も二巡目も関係性があまりにも酷似していること。


「どちらも私たちと血縁関係にあります。私の妹である蘇芳。そしてアインとモミジは…きょうだい、になるんですかねこの場合は。まあこっちも血縁関係にあるのは間違いありません。」


「中々に面白い着眼点だ。時代も立場も違うのに似ているな。」


良かった…好感触のようだ。これに気付いた時は全てが繋がったような気がして先生に話そうと思っていたから嬉しい。


「はい。でもまだあります。これは未確定ですが先生は一巡目から二巡目へと世界線を移しましたよね?」


「移したというより一巡目の時間軸そのものを消失させたが正しい。千年ほど逆行させてな。」


「…スケールが違いすぎます。私がやろうとしたら脳が潰れるでしょうね。」


「ワタシには脳が無いからな。しかも百人を超える能力者とパスを繋ぎユニゾンを行なって能力の出力を上げたから出来た芸当だ。真似するんじゃないぞ?」


「ユニゾンってそんなにも能力の出力を上げられるのですか?」


もしそうならチートの域だ。出力を上げるのに能力者が多数いるだけでいいなんて私達能力者は直流に繋いだ電池かな?


「ああ。お互いの出力を足すのではなく出力が掛け算のように上がるからな。」


「おお…それは凄い。元々の数値が高そうな先生の出力が何百、何千と上がるのなら千年ぐらい逆行出来そうですね。」


「ミヨなら1万年ほどは戻せそうだがな。」


ムリムリカタツムリ!絶対に死んじゃうからっ!私が心のなかで絶叫していると注文した品が運ばれてきた。…これメアドが書かれたメモだよね?注文していないですよー。


「本当に異性からモテるなミヨは。」


「同性の方がモテるんですよ私。なんでですかね?」


まーじで女性たちから言い寄られるから困る。私には先生が居るのになんて罪深い女なんでしょう私って。


「ワタシが知るわけない。性別なんて概念もないんだぞ?」


先生が文句を言いながらもポテトをつまむの…なんか良いね。付き合いの長いカップルのデートっぽくて好みだ。

こういう関係性も良いと思います

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