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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
3.サイコパスの青春
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更新される制約

最終回かな?


そんなノリですけど続きます。

先生に指定された場所は意外な事に屋外だった。学校から二駅離れた場所にある工事中の看板が置かれて周りを白い仮囲いラッピングされた工事中の建物。敷地内には鉄骨の枠組みだけが建てられており人の姿はない。


私は奥に進んでいくと雨を防ぐ為に青いレジャーシートで天井を塞いでいる場所があり、ここが先生の指定場所だ。


(何かが置かれている…もしかして卵?)


探求(リサーチ)】に引っかかったのはスーパーなどで売られているパック詰めされた鶏の卵だった。しかも結構の量が置かれている。主婦なら必ずこの場から持ち帰って家族に卵料理を振る舞ってしまうだろう光景だ。


私は料理とかはしないので特に持ち帰ろうとは思わないけど、何故ここに卵が…?とは思う。


「工事の人が置いていった…なんて事は無いよね?意味分からないもんね。」


まさか工事に卵は必須なのだろうか。コンクリートとかそんな感じのやつに卵を混ぜ合わせることで何かしらの効果が見込めるとか?


ヤバいな最近の建設事情は…鶏もまさか建造物に自分の卵が練り込まれているなんて思ってもいないだろう。人間である私だって知らなかった。


(もしかして殻の方が本命!?)


確か殻はカルシウムで出来ているとかないとか、そう考えると丈夫になりそうな気がしてきた。これはもしかして正解を引いてしまったか?


『ミヨ 良く来てくれた』


『あ、先生!お昼ぶりですね!』


後ろから歩いてきた先生。勿論の事だが見た目は私そのものだけど雰囲気が違うんだよね。中身が違うからなのかやっぱり他人って感じがする。


『だな 最初に謝らなければいけないことがある 前に使った地下駐車場は私達の訓練のせいで改修工事される事になった その為に今回はこんな場所で訓練を行う事になった すまない』


先生が申し訳無さそうに私に謝ってくるけどそれは解釈違いなので止めてほしい。先生はいつだって堂々としていてカッコいいのだ!


『謝らないでください!全然気にしていませんから!』


先生にあたふたしつつフォローをしようと声をかけたら先生が少しだけ笑ってくれたので良かった。


『ミヨがそう言ってくれて助かるよ では早速訓練に移ろう あの卵を使って訓練を行う』


先生が指を指して卵の場所まで誘導してくれる。


『え?その卵って先生が用意してくれたのですか?』


『そうだが?それ以外でここに卵が置いてある理由なんて無いだろう?』


『…っすね。』


ちょっとだけ傷付いた。先生に悪意はないのだろうけど少しだけバカにされた気持ちになってしまった。いや本当は分かっていたよ?先生が来るまでの間の暇潰しで適当な事を考えていただけだもん!私バカじゃない!


『この卵を使って訓練を行うわけだが 始める前に先に言っておきたい この訓練が終了した時には…ミヨは世界中から狙われる存在になる』


『私が、ですか?理由はやっぱり…非接触型の探知能力者だから?珍しいとは聞いていましたけど今更ではありませんか?もしくは私が“死神”の関係者だからですかね?』


取り敢えず思い浮かんだ疑問を質問にして先生に聞いてみる。


『ミヨの言うとおりだがミヨが思っているより貴重な存在なのだ非接触型探知系能力者は それにミヨの容姿を考えると手元に置いておきたいと考える下衆が湧いてくるのはどうしようもない事だからな』


…あれ?もしかして先生が私の容姿を褒めてくれた!?先生にそういう感性あったんだね!?勝手にそういうのには興味がないと思っていた。何よりも能力を優先する節があったからビックリしたよ!


『先生から見たら私ってストライクゾーンに入ってますか!?』


『ーーーストライクゾーン?どういう意味だ?』


また変な事を言い始めたよこの娘は…みたいな表情で私の質問の意味と意図を聞いてくる。


『先生にとって私は好ましい外見をしていますか!?誤魔化さずに教えて下さい!』


はぁ…と溜め息をつきながら目をつぶり腕で頭を抑える様子から、まるで頭痛を抑えているように見えるけどそこまで感覚があるのですか?


『ミヨ…今ワタシが頭を痛めたというイメージを持ったな?本当に頭痛がしてきたぞ…』


どうやら無意識に再現してしまったようだ。本当にすいません!もう困らせるような言動は控えます。しない…とは言い切れないのが私の駄目な所でもありチャーミングポイントでもあるけど!手のかかる子ほど可愛いって言うじゃん?


『訓練の話に移りましょう。』


『ーーーそうだな 訓練の話に戻そう』


互いに大人の対応をする。訓練が始まる前から先生の表情から疲れが見えるけど、ここから良いところを見せて汚名返上と行きたい!


『ミヨに覚えてもらった私の能力である【再現(リムーブ)】【削除(リボーク)】とミヨの能力である【探求(リサーチ)】 この能力をフルに活用してもらう』


『それを同時に使用すると私の脳では上手くコントロールし切れない可能性がありますけど大丈夫でしょうか?しかも更に新しい能力を使えるようにするんですよね?』


『そうだな 最低でも3つの新たな能力を覚えて欲しい そして6つの能力の同時使用がミヨの最終目標だ』


『6つ!?で、出来ますでしょうか!?』


『やるんだ そうしなければ平穏な世界を創り出すことは出来ない ミヨ 君がやるんだ』


『え?私が、ですか?』


私は先生の手伝いをする為に訓練をするんだと思っていた。メインは先生で私はサブ。でも先生にとっては私をメインに添えて考えていたのか。


『ミヨ…はっきりと言うがお前は()()を超える殺し屋になれる!ワタシがそう思っているのではない ただの事実として言っている お前は最強の能力者になれる逸材だ』


先生は冗談を言ったり大袈裟に誇張する人でも無い。だから先生の言ったことは真実なんだろうけど、いきなり過ぎて信じられる事が出来ない。


『私が、そんな凄い殺し屋に…先生を超えた能力者になれるでしょうか。』


自信が無い。仕事はちゃんとこなしているけど私のターゲットはいつも一人だけだ。一対一にはそこそこ自信があるけど、このまえ先生の報告書を見た時はその戦績に変な笑いが出た。


能力者達で統率された軍隊を一人で殲滅した事があるとか、当時の各国最強と言われていた能力者達が先生の命を狙って入国したら全員行方不明になったとか…自分と比べるのが申し訳無いぐらいのキャリアだ。


『なれる お前は最後の希望と言っても良い 私達では平穏な世界を実現させるには能力不足だ…これは事実でありワタシが出来る事はもうミヨを育てる事とミヨの邪魔になる者たちを処理する事だけだ』


俯きながら独白する先生…こんなに弱々しい姿は初めて見た。どうにかしてあげたいけど出来ない。先生は此処には居ないから、私が其処に行けないから。


『私達には制約(限界)がある 最初はミヨの能力を借りて私達の制約(限界)を更新させようとしたんだ 実際に更新はされた…しかし能力者を見つけやすくなっただけでそれ以外はそのままだ 中身は何も変わらない それではいけないのに変われないのだ私達は』


私には先生の言っている意味を全て理解する事は今は出来ない。それでもいつかは理解出来る日が来ると思う。でも先生は変われないのだろう。恐らく先生は()()()()()()()()()()() 


『私達はこれ以上進めない 平穏な世界を実現する為には託すくしかない ミヨに託す事こそが私達が此処に来た理由だと思っている 頼めるか?』


先生に頼られるのは嬉しい…嬉しいけどそれ以上に悲しい気持ちが大きい。出来れば違う形で頼ってほしかった。先生の顔を正面から見る事が出来ない。


『本当に、本当に私で良いんですか?後から私以上に優れた能力者が現れたらどうします?頼られるのは嬉しいですけど不安なんです。私は私をそこまで信用出来ないんです。自分に裏切られるのが怖い。』


『ーーーミヨはワタシが思っている以上に自分に自信が無いのだな 何でも出来るから自信はある方だと思っていたが…なるほど』


先生が笑いながら近づいて来る。見た目は私そのものだ。黒い眼鏡も癖のない黒髪も黒い目も私とそっくりなのにその顔は自信に満ち溢れている。


『いつか来る未来の話だ 私達の正体をミヨは知る事になるだろう その時に私達の全てをミヨにやる』


穏やかな表情だった。視線を真っ直ぐに向けて私を見つめるけど私は目線を逸らしてしまう。


私の髪は屋外という事もあって風で揺れるけどもう一人の私の髪は真っ直ぐなままだ。だって先生は再現された存在だから。


『いらないのでずっと傍に居てくださいよ…私の全てをあげるので一緒に居てください。』


『一緒さ ずっと一緒にいられる ミヨの考えている関係では無いだろうけどな』


これが先生なりの私に対しての精一杯の歩み寄りなんだろう。それを受け入れるのが女の役目だって何かの本で知っていたけど、これは辛いな…


『一生一緒にいられるなら良いですよ。私は都合のいい女で有名な伊藤美世さんなので。』


私は先生と目線を合わせて約束する。この時間にいつかは終わりが来る事を知ったから、今はお互いに歩み寄って目標の為に頑張るのだ。


……だから、私は…私は殺し屋として世界に寄与する。


それが先生との契約、それが先生の願いだから。

久しぶり早く投稿出来て良かったです。

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