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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
5.終わらせた未来の軌跡
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始まりへの軌跡

頑張って書き切ります……!

水爆の熱量で地上にある有機物は全て蒸発しきりアイン達は消え去った。残るのは焦土の土地と灰色に濁りきった海水のみと思えたが、その場には水爆の干渉を受けずに残ったものがある。物理的干渉を受けないベルガー粒子がその場に残っていた。


アイン達のベルガー粒子が爆風の影響を受けずにその場に停滞していたのは、ベルガー粒子が能力者以外でいえば唯一干渉を受けるといわれる重力の影響によってその場に停滞していたからだった。もし重力の影響を受けなければその場から拡散してしまい停滞はしなかっただろう。


そしてそのことをモミジは知っていた。こうなることも全て彼女は知っていた。ここから起こること全てが決まっている。アインが生まれる前からこの日に終わりを迎えることは決まっていたのだ。


そしてベルガー粒子がひとりでに動き出し圧縮される。それはまるで能力者の干渉を受けているようだったが、そこに誰も能力者は存在しない。しかし間違いなくベルガー粒子はうごめき、意志を持って1箇所へと集まっていく。


これはベルガー粒子に保存された能力者たちの願いから発動した能力。因果を操りどの次元にも干渉出来る能力がこの場に残っていた願いを元に事象を引き起こす。


身体は消失し、皆の身体そのものが再生することは叶わないが、時間を遡りそこに能力者たちが居た因果は存在している。ベルガー粒子はその因果に干渉。そしてその者たちの動き、形状を【再現(リムーブ)】し空間に軌道を創り出す。


その際に再現される軌道において必要なのは脳や臓器、骨や血液ではない。不必要なものは「Remove(取り除き)」必要なものだけを再現する。再現されるものは()()()()()()()()。それ以外は必要ではない。


なので弱点の存在する肉の身体も不必要なものだ。必要なのは己自身だけが対象に対し干渉の出来る身体。つまりベルガー粒子の身体ということになる。


その場に集まっていたベルガー粒子が人の形を形取っていき、次第にドス黒く不透明な身体が出現した。その身体にはまるで血管のような線が黒い身体の中を通っており、脈動しているかの如く赤みが増したり減ったりなどを繰り返している。


だが一人の身体の動きを再現しても足りない。必要になってくる動きはネストスロークを殲滅させる動き。能力者一人がこれまで歩んできた人生の全てを読み取って全ての軌道を再現しても動きの幅には限界がある。なので一つの身体に能力者全員の動きを再現し、様々な指向性が必要になってくる。


先ずは人体の弱点となる頭は外骨格で覆う。その外骨格には何人もの目が浮かび上がってありとあらゆる情報を読み取れるようにし、口の中は鮫のように歯が縦に何列も並んで重なり、舌はまるで触手のように複数生えて人というよりもバグに近い形状として形作る。


手の指も人間の皮膚というよりも丈夫な皮で覆われたからのように分厚く頑丈で、爪も同じ様に分厚くて鋭いものだった。


胴体に関しては男のように筋肉質でありながらも女性らしく(しな)やかな体つきで、男女の良い所だけを再現した体格を創り出している。


足先は靴のような形状でもあり五本の指もしっかりと再現されていて、どのような状況下でも運用できるように再現しつつ、まるで一つの刃物のような鋭さと強靭な筋肉の二面性を持った脚を創り出した。


この姿を端的に表現するのならば正に人型バグ。人間らしさと人間ではありえない形状をかけ合わせて破壊に特化させた姿。これが物理的干渉を受けないベルガー粒子で再現したのだから殺意が高い。


そして脳みそも必要としないこの身体はやはりと言うべきかひとりでに歩き出した。()の者が足を地につけても歩き出しても足音は聴こえてこない。そこまでは再現していないことを意味していた。


彼の者が歩いている地面は水爆の爆発で熱されて蒸気を発し、茹だった海は上昇気流を作り出す。上空には雨雲が急激的に成長し雨を地面へと降らすが、雨は彼の者に触れることもなく地面へと落ちていってしまう。


雨で地表は冷やされ蒸気が発しなくなった時に彼の者は歩みを止める。そして彼の者が左手を前に出すと次の瞬間には重火器等の物資を載せていた宇宙船が現れた。地形が変わり元々そこに何があったのか誰にも分からなかったが、彼の者にはそこに何があったのかが視えていた。


そしてその宇宙船に彼の者が掴まると宇宙船は上空へと打ち上がり大気圏外まで一気に上昇した。まるで逆再生のように【逆行(リワインド)】させて運動エネルギーを逆方向へ再現したのだ。


宇宙空間へ出ても彼の者が窒息することはない。肺は再現しておらず呼吸をする概念も再現していないので不必要なものだった。大量の紫外線が襲ってきてもベルガー粒子を貫通してすり抜けていく。


こうなれば最早誰にも干渉することは出来ない。彼の者が目的を果たすまで止まることはないだろう。その目的が例えこの時間軸以外での出来事だとしても……。


だが今はこの時間軸、つまり一巡目の時間軸に存在している。そして宇宙空間の中を宇宙船が進んでいけばネストスロークに捕捉されることになり、何者の干渉を受けなくとも事象そのものは観測されて、この事象はアインの能力によるものだとマザーは気付くこととなる。


[ーーー我々の宇宙船がノアの方舟へと接近していることを探知 バーニアをこちらへと向けて時速3000km以上の速度で飛行中]


ノアの方舟へ人工衛星から情報が送られてマザーは状況確認に努めていた。最後の水爆は地球へ発射し手元に存在しない。月にある水爆は位置の関係上今からでは輸送が間に合わないだろう。


[R.E.0001が生存していた?あれだけの攻撃でも死なないとは驚愕ですが 彼は酷く疲弊している可能性が高い]


勝算はまだこちらのほうが高いと思考するマザーは迎撃ミサイルを撃って反応を見ることにした。宇宙船が破壊されれば彼は宇宙空間に取り残されることになる。向こうもそれは分かっている筈なので宇宙船を能力で守るはずだ。でなければここへは辿り着けない。


こちらへ高速で接近する宇宙船へミサイルが衝突し誘爆した。大気のない宇宙空間で爆発すれば破片が凄まじい運動エネルギーで爆散することになる。あの質量の宇宙船では決して耐えられるものではない。


しかしレーダーには変わらず宇宙船の反応があり、その飛行速度にも変わりはなかった。つまりR.E.0001が能力を行使した証拠で、宇宙船に乗っているのはR.E.0001が確定で、もしかしたら他の仲間たちも乗っているかもしれないことが現段階で判明する。


[ーーーいいでしょう 久しぶりの里帰りです ここは温かく出迎えてあげましょう]


ノアの方舟に積まれていたミサイルを弾薬庫から開放し、全てのミサイルをたった一つの宇宙船へと撃ち出した。その数、大型や小型含めてなんと440発。全てを誘爆させればノアの方舟が塵も残さず消え去ってしまうほどの火力である。


そんな火力を秘めているミサイルが次々へ撃ち出され宇宙船へと衝突し誘爆していくが、一発目と同じく宇宙船は変わらない速度でこちらへ向かってくる。


[なるほど……どうやらまた彼と会わねばならないようですね]


マザーはR.E.0001を迎え撃つ準備を整えるために乗員へ指示を出し時間稼ぎに努める。そしてマザー自身はネストスロークのリソースの90%を使いある装置を完成させることにした。その装置は使えばどのような能力者が相手だろうとも決して負けることはない叡智の結晶。マザーが長年の研究で作り出すことに成功した最強の装置だった。

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