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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
5.終わらせた未来の軌跡
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終わりの前兆

ネストスロークの航空機が撃墜されたことで、機体内部に設置されていた通信機も破壊され、アイン達の脳内に埋め込まれたマイクロチップの機能が停止する。


「……あ、ありがとう、ございます。助かりました……。」


『ナニヲ言っていルか分かんねエけど大丈夫ソウだな』


アネモネは起き上がりセルシウスに礼を伝える。能力が使えない間もパスを通じて会話は聞こえていた。彼らが尽力してくれたおかげで自分たちが助かったことをアネモネたちは知っている。


『おいアイン おめーモ無事か?』


『なんとか平気そうです……。』


『マアどう見ても平気じゃナサそうだわな 言ってオクがレイのヤツこのまま攻めるツモりだ』


セルシウスはグラ娘の頭の方へ視線を向けてアイン達に伝える。ここからだと何kmも離れてしまっているので登るのは大変そうではあるが、合流しなければならない。


『オレは合流シニ行く オマエたちはソコにイロ』


セルシウスはそう言い終えて一人で頭頂部へ飛んでいった。一人だけで行ったのは2人の体調を見て連れて行くには負担が大きすぎると判断したからだ。セルシウスの能力では連れて行くのに更に身体へ負担が掛かってしまう。丁重には運べないと自分の能力と性格を理解した判断だった。


「……どうする?僕の能力だとアネモネも運べるよ。」


「なに言っているの。その顔を見れば登っている途中で能力が切れるのは分かりきっているから。」


アネモネの指摘にアインは何も言えず苦しそうに横になる。マザーの操る機械人形との戦闘で肋骨が折れて内臓にもダメージを負ったアインは立つことも難しい状態でだった。この状態で無理に動けば命が危ぶまれる。


「……アイン、最後の確認なんだけど逆行はしないんだよね?」


アネモネはこの状況になる前へ戻るかどうか、最後の確認の為にアインへ質問する。


「……しないよ。自分の状態も戻すつもりはない。記憶が無い状態になるのはまだ早すぎるし、もう少しでネストスロークに届きそうだから。」


アネモネはアインの考えを聞き納得することにした。本当のことを言えば左腕が無い状態の彼をそのままにすることは嫌ではある。しかし本人がまだ記憶を保持していたいのなら本人の意志を尊重するしかない。


「そう……分かったわ。……私はアインと最後まで居るからね。」


アネモネも自分の意志を伝える。何故かは分からないがここでアインを置いていけばそのまま会えなくなるような気がするからだ。


「……みんな、どうしてるかな。」


アインはまだ戦っている仲間のことを思い空を見上げる。あそこにはきょうだい達と仲間達が居ると思うと横になっていることに罪悪感を感じてしまう。


「みんななら勝てるよ。私達は吉報を待っていましょう。」


アネモネは打算的に考えてこの戦いは勝算の高いものだと考えていた。おそらくネストスロークの動かせる戦力はもう無い。あっても通信用の人工衛星や能力者達だろうけど、レイ達にとっては障害になり得ないだろう。


(みんな頑張って……!)


思いを込めて皆の無事と健闘を祈る。彼らならやり遂げてくれると信じて……。


その祈りが届いたかどうかは分からない。ただ分かるのは皆が最後の戦いへ向かおうとしていることだけだ。


『アイツらハ多分ダガ来レナい アインのヤツがヤバソウだったカラな……』


セルシウスはただ事実を述べて最後の戦いにはアインとアネモネの2名は不参加になるだろうと皆に伝えた。


『ソウカ 元々ワタシひとりデやるツモりだったから大した問題デはナイ』


レイはそう答えてすぐに行動を始める。敵が迎撃の準備を整える前に仕掛けたいからだ。


『オマエ達はドウする?付いてクルか?』


レイはディズィー・フェネット・ユー・ナーフ・マイ・エピの6人に最終確認をする。この最後の戦いには危険が伴う。なんせ敵は宇宙に居る。そこまで行くだけでも危険と隣り合わせになるだろう。


皆がお互いの顔を見合わせて決心がついていることを理解し合う。


『……俺は行きます。戦力では役に立たないかもしれませんがネストスロークの内部なら少し案内出来ます。連れて行ってください。』


ディズィーは参加する意志を見せて同行すると言い切った。若干震えながらの意思表示だった為にイマイチ締まりが悪かったが、セルシウスは気に入ったようで肩に腕を回しながら髪をワシャワシャと撫で回した。


『ヨーシよく言ッた!オマエは漢ダっ!』


『きょ、恐縮てす……』


さっきまでの勢いは鳴りを潜め大きな身体を縮こませているディズィーを見て皆の緊張感が解け始める。


そして他の面々も参加を表明する。ここまで来れば最後までと考える馬鹿しかここには居ない。でなければそもそもネストスロークから出て危険だと言われていた地球には行かなかっただろう。


『最後まで付き合います。2人が居なくても私がその分頑張りますっ!』


『アノ2人の分ニハならなそうダガな』


「あう……」


レイの冷静なツッコミに出鼻をくじくフェネット。だがレイは参加自体には特に反対などはしない。やる気があるのなら連れて行くだけだ。


『久しぶりの帰宅なんです。みんなが行くなら私も行きます。』


『あ!ソッカ!ミンナにとってハお家になるのカ〜!』


ユーも手を上げて参加を表明、グラ娘が戦う前とは思えないテンションでズレた意見を述べる。


『私も行くよ。さっさとこんなことは終わらせて地球で悠々自適に過ごしたいからね。』


ナーフはワザと軽い感じで言い、その場の緊張感を解すことにした。最後はどうなるかは分からないが最後ぐらいは仲間と笑っていたいと考えての言動だ。


「……ナーフらしいね。そうだよね……平和な時間を好きに過ごしたいよね。」


モミジはナーフの言葉を聞き胸を痛める。最後はどうなるかを知っているからだ。


『私は……正直ここで止めてもいいと思っているけど、マザーは多分止める気はないよね……。なら、やるしかないんだと思う。』


マイはみんなの意志を聞き自分の中にある気持ちを整理しながら参加すると口にする。そしてそれは彼女らしい考えだと、その場にいた仲間は笑顔で聞いていた。


『ソノ通りだ やるしかナイ』


ストームはマイと似た考えを持っていたので彼女の意見を尊重する意志を見せた。ここまで来たらやるしかないのだ。敵はこちらの全滅を望んでいる。あの水爆から見ても間違いない。


『俺もマイと似てるけど、正直俺がここに居てもいいのかまだ分かんねえ。現実感とかそこまで無いからさ。……でも、時間がねえのもここでやらないとまた誰かが傷付くことぐらいは分かるから俺はやる。一人でもやってやる!』


エピは左腕を無くし更に負傷して戦えない状態のアインのことを考えて気持ちを固める。


いつも戦いの時はアインが前に出て最後まで戦っていた。最後の最後ぐらいは自分の意志で戦い抜きたい。


『……みんな。』


『アインかっ!?大丈夫なんかよ!?』


エピは突然頭の中にアインの声が聞こえて驚きながらもアインの安否を確認した。声の感じから相当重傷なのが伝わってくる。


『最後まで戦えなくてごめん。でも、みんなに言いたいことがあって……。』


『アイン、あまり無茶しないで。』


途中アネモネの心配そうな声も響き、皆が静かにアインの言葉の続きを待ち続ける。


『……先ずは僕のきょうだい達へお願いです。僕の仲間をどうかお願いします。無事に地球へ帰してください。』


『……分かっタ ワタシたちガ責任をモッテオマエのもとへ送り届けテやる』


レイ達は最後にやることが増えたなと冗談っぽく言い合った。そして、どこまで自分たちがこの世界に残れるかは分からないが、6人を地球へ届けるぐらいは出来るだろうと付け加えて。


『ありがとう……。じゃあみんなに一言だけ言って休むよ。』


アインは腹部を襲う鈍痛に苦しみながらも出来るだけ平常時に近い感じでいつものように軽く言葉を掛ける。


『今日が終わったら明日はみんなで休もう。それからまたいつものように過ごそう。やりたいことをやってさ、またみんなでご飯を食べようよ。』


この戦いが終わればそんな日々が待っている。そんな希望のある話を言い終えてアインは軽く意識を失う。痛みによる失神だったが、骨も臓器もやられている中でここまで意識を保っていられたのは間違いなく彼の精神力によるものだった。


『マッたく……ナオサラ負けれなクなったな』


最後の戦いへ挑むための作戦を共有したレイ達は各々のやるべきことを確認しあい行動を開始する。

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