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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
5.終わらせた未来の軌跡
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掛け合わす能力

ネストスロークで生産された能力者の脳には脳波とベルガー粒子を探知する装置が埋め込まれている。その装置にはベルガー粒子を操って脳へ干渉し能力の行使を妨げる機能も盛り込まれているが、その分脳への負担が大きく長時間使用し続けると脳が焼き切れる欠点が存在する。


『クソヤロウはモウ動けない あの金属ノ塊ヲ落とさなイとチビ共がヤバそうダ』


セルシウスはアイン達のもとへ向かい2人の様子をきょうだいに伝えた。


『レイはナニヲやってんだ?デカいのにヤラせろ』


『デカいのッテワタシ〜〜ッ!?』


グラ娘が怒りの声を上げるがセルシウスの言うとおりすぐに行動に移した。グラ娘が手を上げると地球の地面が振動しだす。これはとてつもない質量が動いたからでグラ娘の腕一本の質量は小島一つ分に相当する。


『レイ!アブナーい!!』


『…このバカ共ガ セルシウス アインたちヲ頼んだぞ』


レイは瞬時に光となってその場から離脱する。そしてセルシウスにアイン達を保護するよう指示を出して自身はディズィー達のもとへ向かい、彼らを触手で掴んで振り落とされないようにキャッチした。グラ娘が動くだけで地形が変動し彼らは簡単に落ちてしまう。


『…相変わらズの速さネ』


『でも航空機を落とせていない時点で戦犯だけどね。』


『黙ってイロ』


ストームとモミジも彼らを振り落とされないよう掴もうとしていたが、レイの方が早く動いていたのでやることを奪われてしまう。なのでモミジは少しだけ毒を吐いてレイをからかうのだった。


『イクヨーーーー!!』


グラ娘はその巨大な腕を掲げてから…振り下ろした。それだけで様々な能力を上回るパワーが出る一撃なのだから恐ろしい。振り下ろした際に空気が邪魔になり凄まじい圧縮が起きて空気は外へ逃げ出そうと避けていく。すると突風が起き、それだけで航空機が撃墜されそうではあった。


だがそれだけで落とせるのなら最強の出力を誇るレイ一人で落とせたはずなのだ。レイでも落とせなかったということはこのバリアの出力はリヴァイアサンと呼ばれたグラ娘すら上回る。


『オチロ〜〜〜〜!!!!』


バリアを張った航空機に巨大な手が重なる。その構図は飛んでいる蚊をはたき落とす人間と似ている。それだけ大きさの差があるのだが…


『ハアーーーっ!?』


爆弾が爆発したときのような音がグラ娘の手のひらから鳴り響く。しかし結果としては落とすことが出来ずグラ娘は自分の手が弾かれたことに驚いた。バリアの硬度は分かっていたつもりだが、まさかこんな小さい物がその場から動かずに自分の手を弾くとは思いもしなかったからだ。


『ドイテ ワタシがやってミル』


ストームが作り出した雲を操作し航空機の周りをとり囲む。この雷雲にはマイナスの電子が抜けてプラスの電荷が溜まっていた。この正の電荷は通常では地上へは落ちない。真横や真上に対して放電する性質を持っていて赤い閃光を放つ雷となって放電される。


この雷をスプライトと言い、地上へ落ちる雷よりも強力な電力と電流を誇り、まだ地球で旅客機が飛んでいた時はこのスプライトによる墜落事故が起こるほどだった。通常は雷が落ちることを前提に設計された旅客機が墜落するのだから途轍もない威力を秘めているのは間違いない。


その証拠に灰色よりも黒色に近い雷雲から赤い閃光が漏れて辺りを照らし始める。その光量は一瞬しか発光しないのに目が眩むほどに強い。


『オレもヤルゼ エネルギーがニゲねえよニシテヤルから遠慮なくブッパナセ!』


セルシウスの声がパスを通じて響く。セルシウスは現在アネモネとアインのもとに居るが東京の面積をカバーする彼の射程距離ならばここからでも能力が届かせることが可能。


スプライトのエネルギーを無駄なくネストスロークの航空機にぶつけるためにセルシウスも参加することにした。彼の能力ならばスプライトのエネルギーの指向性を変えて航空機に集中させられる。


『バリアを酷使サセロ 弱ったトコロをワタシがヤル…』


レイも参加を表明。彼の能力ならばバリアが薄まった瞬間を光速の速さで衝くことが可能。ディズィー達を掴んでいた触手を緩めて航空機に向けて構えを取る。両手の触手に凄まじいエネルギーが溜まり、いつでも能力をぶつけられる下準備を終えた。


『あのバリア、何十人もの能力者の脳を連結させて出力を上げてるから、一人だけの出力じゃ火力が足りない。だからみんなでやるのは正解だよ。』


モミジは敵のバリアの情報を提示し、やるなら全員でと提案した。モミジもベルガー粒子を操作し始めてパスの繋がりに集中し始める。


『ずっと昔にみんなで能力を掛け合せたこと覚えてる?地上の生物を変質させた時のやつ。』


地球に残っていた生物を全てバグへと変質させ、ベルガー粒子が少なかった人間を耀人に進化させた能力のことを覚えているかと皆に聞くモミジ。彼女たちは一度だけパスを繋げて能力をユニゾンで高めてから能力を行使したことがある。


その時は成功したが、かなり危ない綱渡りをした経験でもあった。5人の能力は個々でも強力なのに掛け合せればより強力な能力となる。それはつまり彼らの脳でも耐えられない負荷が掛かることを意味する。


そういったこともありそれ以来はユニゾンで能力を掛け合せたことはない。足し算ではなく掛け算のように能力が向上していくのだ。それが分かっていてその選択肢を選んだということはそれだけ決意が固まっているっていうことを意味している。


『ワタシもみんなノお手伝いスルーー!!』


グラ娘も参加し5人でのユニゾンを開始した。実際に能力を行使するのはストーム・セルシウス・レイの3人で、モミジとグラ娘は能力を行使するためのリソース、つまりベルガー粒子と脳への負担を受け持つことになる。


能力を行使するにはベルガー粒子が必要になるし、何より脳への負荷も考えなければならない。だがパスを繋げればお互いの脳を繋いだことになり、脳への負荷を分散させたり引き受けたりも出来る。


『ジャあ…殺るよ』


先ずはストームの能力から始まり雲からスプライトが放電された。その威力は正に自然界でしか起こり得ない威力、能力でイチから作れる出力ではない。そんな威力を持つスプライトが航空機のバリアに接触し、そのバリアを中心に囲んでいた雷雲にエネルギーが更に溜まっていく。


セルシウスがスプライトのエネルギーを雷雲に溜め込んでエネルギー量を上げていき、それと同時にスプライトが空気に触れ熱された熱エネルギーを変換し、そのエネルギーを雷雲に移すことでサイクルが生みだす。


その影響でドーナツ状の雷雲の中心に飛んでいる航空機にエネルギーが集約していき、バリアが真っ赤に染まる。


『モット出力を上げろッ!!』


『オマエこそモット上手く操れっ!!ヘタクソッ!!』


セルシウスの怒号が聞こえたと思えばそれ以上の怒号がストームから飛んできた。それを聞きモミジとグラ娘は引き受ける能力の負荷を上げていくと出力は上がり能力の精度が向上する。


そしてその様子をつぶさに把握し勝負を仕掛けるタイミングを図っているレイが情報を統制・管理を行なう。


『ストーム セルシウス エネルギーを一点ニ集中サセロ 分散サセる必要ハない 少しデもバリアが弱る瞬間を作ってクレればワタシが仕留める…』


ストームとセルシウスはレイの指示を聞きスプライトの範囲を絞ってレイが見やすい位置へエネルギーを集約させる。するとあれだけ強固だったバリアが薄まるタイミングが出てくるではないか。そのタイミングを今か今かと待ち構えていたレイが動き出す。


レイの身体全体がスプライト以上の閃光を発して飛び出した。その反動でグラ娘の皮膚の表層が吹き飛び、その後ろに倒れていたディズィーたちの所まで破片が飛んでいったほどだ。


しかしその破片がディズィーたちに触れるよりも前にレイは()()()()()()()。そしてディズィーたちへ飛んでいった破片を全て触手で消し飛ばしグラ娘の皮膚の上に着地する。その時の衝撃も凄まじく何百キロもの破片が前方へ吹き飛ぶほどだった。


そしてレイの視界には大きな風穴が開いた航空機が爆散しながら墜落していく光景が映っていた。これはレイが光速で航空機へ突撃し、バリアごと貫通してそのまま地球を一周したことを意味していた。


レイを除く4人もその光景を見て能力を解除し始める。これ以上はぐったりとしたモミジやグラ娘の様子からも分かる通り負荷が強過ぎたからだ。特にモミジの疲弊は大きい。いくら増殖出来ても減少は出来ない。蓄積された疲労はすぐには無くせないのだ。


『さて 次はアソコダな』


レイは上を見てネストスロークの本拠地であるノアの箱舟を次のターゲットとして最後の攻撃を仕掛けようと行動を開始し始めた。

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