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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
5.終わらせた未来の軌跡
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共鳴

アネモネとセルシウスがアインと合流し、マザーの操る機械人形が見合う形になる。機械人形の表面は熱せられ全身から白い煙を発していたが、それを上回るベルガー粒子を全身に纏わせていた。バリアを張ることでセルシウスの攻撃をこれだけのダメージで済ませることが出来たのはマザーが人間とは違い、慌てることなく瞬時に動けていたからだ。


「はじめまして…になるのかな?君たちが人間を襲い始めてからワタシは宇宙(うえ)へ行っていたので、お互いすれ違いになっていましたから。」


『オイ 翻訳しろアネモネ』


マザーが何かを言っているのを確認は出来たが、話している言葉を上手く理解出来ないセルシウスがアネモネに翻訳するよう命令する。


『…はじめまして。すれ違いになっていたけど会えて光栄だって。』


『ブッコロシてやる…オレも会いたカッタと伝えろ』


セルシウスのベルガー粒子が更に濃くなり殺意が迸る。アネモネは近くにいるだけで喉が締め付けられるような感覚を覚えた。


「…彼も、マザーに会えて良かったって言ってる。」


「彼が何かを言っているのを理解しているのですか?興味深いです。解剖出来ればいいのですが…」


「…マザーから煽られてるよセルシウス。バラバラにしてやるってさ。」


アネモネのエキサイティング翻訳がキッカケでセルシウスが飛び出した。彼の居た地面は真っ赤に燃え上がり、その衝撃でアネモネは顔を背ける。かなりの熱風が彼女とアインのもとまで飛んできたが、セルシウスはそんなことも気にする余裕もあるはずもなく千年間ずっと思い続けていた相手との時間に夢中になっていた。


セルシウスの今の身体は結晶体で構成され金属とぶつかっても砕けることも変形することもないほどの硬度と粘度を誇っている。そんな物体が凄まじいエネルギーを放出しながら突撃してくるのだから相手からすればひとたまりもないだろう。


当然マザーも最大限の出力で迎え撃つ。能力者の脳みそを物理的に結合しパスを形成。そのパスを利用しサイコキネシスの出力を最大限まで引き上げセルシウスの能力と拮抗させることに成功した。


「ただの結晶体かと思えば人間のように怒るなんて不思議な生態をしていますね。」


マザーは余裕そうに答えるが実際はかなり無理をさせて能力を行使させている。最初は拮抗していた。だがセルシウスの殺意は本物だった。能力者はストレスを受けると能力が成長するという性質を持っている。それはセルシウスとて同じこと。しかもセルシウスは千年も生きた能力者だ。何もストレスを感じずに千年もの時間を過ごしてきたわけではない。


その千年という時間があったからこそセルシウスは人としての身体を捨て、ただただ敵を殺すことに特化した存在へと昇華したのだ。


『このテイドか?オレはまだまだ本気デはないぞ…!』


セルシウスのエネルギーの指向性を自由に操る能力は運動エネルギーにも適用される。例え相手が強力なバリアを張ろうとも拮抗させようともその指向性を変えられるのがセルシウスという能力者だ。


マザーの機械人形はバリアでエネルギーとセルシウスの攻撃を防ぐことに成功したが、その場で留まることが出来ず次第に後退りをし始めて最後には足が地面から浮き上がりそのまま後方へと吹き飛ばされてしまう。


セルシウスは浮き上がったマザーの機械人形を更に押し込んで何百メートルも空中を運び続ける。アネモネ達と離れてしまうがもうそんなことは関係ない。セルシウスはここで決めるつもりだった。


『人間ヨリも熱に耐性ガアリそうだが あとドレグらい耐えられるカナ?』


機械人形のベルガー粒子拡散力場が起動してもセルシウスの能力を中和しきることは出来ない。アインとは単純な出力が違うのだ。さきほど落ちてきた水爆のエネルギーもセルシウスにとっては能力で対処しようと思えば出来た。だがあの場には自分以外も居たからそうしなかっただけで、セルシウスの能力ならば水爆の一つぐらいは簡単に対処出来たのだ。


それほどまでにセルシウスの出力は高い。そして何よりも身体の構成からして生き物から脱している。アインの【削除(リボーク)】でやっと身体の一部を消し飛ばせる程にセルシウスは不死性を獲得しているのだ。


マザーの操る機械人形では有効打を与えることすら不可能と言える。マザーも間近でセルシウスを観察しその答えに辿り着く。


「これは…R.E.0001以上に厄介な能力者ですね。こんなものがあと4人も居るのだから我々は地球へは降りなかったのですよ。」


マザーは自身の判断が間違っていなかったと再認識する。能力同士をぶつけて勝てるような相手ではないと。


「ですがやりようはありますね…」


気が付けば機械人形は超巨大な生物の腰付近まで押し込まれて坂を(くだ)っていた。その間も容赦なく敵の熱にやられフレーム内の背骨と脳も熱く熱せられ能力の出力も落ちてしまっている。


なのでマザーは目の前のセルシウスにではなく離れてしまっている447期生全員に目標を定めた。


『サッキからなにを言ってイルッ!!』


セルシウスは叫ぶ。どう見ても敵は自分に集中していない。それどころか戦闘自体もおざなりにしている節がある。だがこれは仕方ない。敵は戦うことには興味を持っていない。だからこそ千年もの間セルシウスはマザーと戦うことすら出来ていなかった。


「アナタがR.E.0001やアネモネから離れてくれて助かりましたよ。」


マザーはある装置を起動させた。それはアインの能力によって阻まれていたが、今のアインは能力を解除している。なのでこの装置が発動すれば…


「これって…っ!?」


「ガッ…!」


アネモネやアイン達に埋め込まれたマイクロチップが起動し脳へ急激な負荷を与え始める。それはここから更に離れたディズィー達の所でも症状が表れていた。


「くっ…!」


「つぅ…」


突然その場に倒れ始めた面々を見てモミジは脳にあるマイクロチップが作動したことを察し、それを見て驚くストームに説明をする。


『ナンダ…?なにが起こっていル?』


『彼らの脳にはネストスロークの機械が埋め込まれているの。それが起動したんだと思う。…アインの能力が途切れたから。』


『ソレはアインが能力を行使出来ない状態にナッテいるってコト?』


『うん…恐らくは。』


周りにはもう動ける機械人形は存在しない。モミジ達で全ての機械人形を破壊することに成功した。だがその直後に彼らは苦しそうに倒れてしまいモミジやストームではどうしようも出来ない。


『ネエ〜〜ナニガ起きてルの〜〜?』


グラ娘はその場で立ち尽くすことしか出来ずジッとしていたが、彼らのベルガー粒子が乱れたことを探知し状況を確認しようとモミジ達に質問する。


『ネストスロークのクソ共のせいで脳に負荷を掛けられて能力が行使出来なくなっているの。早く解除しないと脳が焼き切れる…。』


『えっ!?ソレってヤバイジャんか!!』


グラ娘はオロオロしてしまい身体が揺れて更に倒れているディズィー達が苦しそうに転がっていく。


『ワワワ!ごめんなさいっ!!』


『落ちツケ ワタシ達でドウニカ止めさせナイとイケナイ モミジ お前ナラその方法が分かるだろウ?』


ストームはモミジを見て彼女ならばこの状況を打破する方法を知っているのではないかを問う。


『うん。あの中に電波を発している装置があるからそれを破壊すれば…』


モミジが指差した方向はレイが居て今も能力で航空機を沈めようとしていた。だが中々バリアを突破出来ず苦戦していた。


『オマエたちも手がアイタなら手伝え 恐らくワタシ達がやっている方法デ能力を強化している』


レイの見込み通り航空機内部には何十人もの能力者の背骨と脳が連結されており、その凄まじい出力はレイの能力とすら拮抗するほどで、この方法をマザーは…


共鳴(ユニゾン)…ワタシはこの現象をそう名付けました。一人ひとりの能力の出力が低くとも別の能力者と組み合わせれば足し算ではなく掛け算のように出力を上げられるのです。欠点はありますが一時的にアナタのような強力な能力者と相対するときには有効的な運用方法となっています。」


セルシウスはアイン達のエネルギーが乱れたことを探知しそちらへ意識が向いていた。そうなれば普通はマザーが勝機とみて動き出すのだが、マザーの機械人形の表面がグズグズに溶けてベルガー粒子の操作すら不可能になっていたので、セルシウスはその機械人形に対して興味を失っていたのだ。


『…オマエを必ず殺すヨウにハハオヤから呪いをカケラレタが その理由ヲやっと理解シタぜクソガッ…!』


セルシウスはその場から離れアイン達のもとへと向かっていった。弟とその仲間を助けるために。

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