全員集合
な、なにこの生き物…?生物としての大きさがおかしくないか?こんな大きさだと自重で動けないと思うんだけど、割と軽快な感じで動いてる。どんなエネルギーで動いているのかも分からない。これだけの質量を維持するエネルギーはどうやって工面しているんだろうか。
『…ナンカお腹空いた』
『末妹 オマエノ食べれる物はコノ地球上にはナイ』
レイが彼女のことをリヴァイアサンと呼んだ。ちょっと変な名前だなって思ったら突然彼女が激しく動き出した。
『チガウ〜〜〜〜ッ!!!!!そんなナマエじゃーなぁあ~~~~~イイッ!!!!!!ワタシにはお母さんが付けてくれた名前があるの〜〜〜っ!!!!!』
リヴァイアサンの目が青色に輝き何事かと思っていたら、そのまま片足を上げてから…思いっきり踏み降ろした。そしたら海が蒸発したように打ち上がり、途轍もない水飛沫が発生してリヴァイアサンの頭まで水で濡れる。もちろん僕たちの居る空間にも水が降り注ぎドーム状の空間に弾かれた。
『…ダレだよコイツ起こしたヤツ ナンモ成長してねえ…』
セルシウスがウンザリとした声がパスを通じて皆に伝わる。昔からこういう性格らしい。
「揺れすぎて気持ち悪くなってきた…。てか今ってどういう状況なの?」
フェネットがリヴァイアサンが大きく揺れる為に気持ち悪そうに口元を押さえていた。確かに頭がぐらんぐらんしていて気持ち悪いかもしれない。
『レイ、セルシウス、これ…この人ってどういう人なの?』
『…身体は誰ヨリも成長したが 頭ガ誰よりモ成長シなかった能力者ダ』
レイの説明が分かりや過ぎてなんとなくこの人のイメージは掴めた。今も癇癪を起こしたみたいに身体を揺さぶっている。僕たちは恐らくこの生物の頭の近くにはまっている状態で、彼女が頭らしき部分を揺らすと凄い揺れが生じるという環境下に居るみたいだ。
『訂正シローーーーっ!!!』
また彼女の声が頭の中に響く。声の感じからしてモミジと対して変わりはなさそうだけど、話し方からかなり幼さを感じる。寝ていたから精神的にも成長していないのかもしれない。
『オマエノ名前なぞ忘れた もう何百年もヨンデいないカラな』
『ハア〜〜〜っ!?意味ワカんないっ!!リヴァイアサンなんてヨンデルの人間ダケじゃんっ!!』
『オメエも人間ダロウが…』
人間…?正直この3人はとてもじゃないけど人間とは言い難い見た目をしていると思うし、僕だけじゃなくみんなもそう思っていそうな表情で会話を聞いている。
『シンデシマエって名前あるモン!!ドコカイケとか色んな名前で呼ばレテいたンダからッ!!!』
「…それって名前じゃないんじゃない?」
アネモネのツッコミは的確だったけど、この場ではあまり口にするべきではなさそうな内容だったと思う。
(…彼女達は母親からしたら産みたくもない子供だったんだ。)
良く考えてみるとそうだよね。子供を産むという工程を人の身体で行なうことはリスクがあるって学んだし、性行為をしないと人は妊娠もしない。これは基本的に恋愛感情が絡んだりしてその工程を行なうパートナーとやるはずなのに、彼女達の母親は望まない相手とその工程をやらされていたんだ。そんな中で産んだ子供に愛情は感じないのだろう。
つまりレイやセルシウス達も本来の名前ってあまり良い意味で付けられたものでは無さそう…。そりゃあ忘れるよ。思い出したくもない部類の記憶かもしれないんだし、忘れて別の名前で呼ばれた方がマシだ。
『おいアネモネ 早くナマエをツケテヤレ』
『…また私なの?』
『オメエ以外ダレがツケんだよ』
セルシウスにまた無茶振りされるアネモネ。とても可哀想だけど何もしてあげられなくてゴメン。仲間のみんなは辺りを警戒する振りをして顔を逸らしているから助けは期待しないでね。
『…ダレ?』
『えっと、はじめまして。えっと貴方のご兄妹の知り合い的な者です。』
『え 能力者ジャン ヨク殺されずイキテルね』
…彼女ってどういうスタンスなんだろうか。人間に対して殺意を持っているのは確実だけど、それでいきなり襲ってくる感じなのかな…。
『今は共闘シテル 私達の母親を貶メたミューファミウムと現在戦争中にアル オマエの力をカリタイ』
『…あのクソヤロウ共が居るの?』
パスを通じて凄まじい殺意と怒りを感じ取り僕たちは呼吸するのも苦しくなる。まるで自分に対して殺意を向けられているように感じてしまう。それだけの殺意だった。
『オマエを起こしたノもソイツらの仕業だ』
『…ワカッタ 戦う前二お腹スイタから…このエネルギーって食べていいの?』
『アア 丁度いい クラってくれ』
レイが許可を出すと彼女はその大きな口を裂くように更に広げて空気を吸い込み出した。すると空気中にあった放射性物質や雲などが彼女の口の中にどんどん吸い込まれていく。しかもそれだけじゃない。海面も揺らぎだして最後は海水が持ち上がり彼女の口の中へと吸い込まれるではないか。その光景を見ていた僕たちは顔を真っ青にしながら眺めることしか出来なかった。
『んん〜〜〜♪お腹イッパイ♪』
彼女の身体は熱をも吸い込み身体の内部に凄まじいエネルギーを溜め込んだ。そのせいか元々デカかった身体が更に膨張して体積が増えていく。地面…というか彼女にとっては肌?がまるでマグマが血管のように流れて所々が発光している。特にお腹と思われる部位が膨れて膜のようなお腹の下に太陽のような光を発していた。
『…これでソトへデレるナ エネルギーの殆どハこの大食いがクッタから平気ダぞアイン』
『え?あ、うん…』
僕は能力を解除してみることにした。するとあれだけ熱せられた空気が無くなっていて過ごしやすい気温まで下がっていた。
「凄い…なんて言葉じゃ言い表せないよね。」
マイは目まぐるしく移っていく状況で頭の理解が追い付かず、ただただ凄いという感想しか出てこない。
『うっぷ お腹イッパイ…あ!それでナマエ付けるとかドウトカ言ってたけどドウなったの〜〜?』
『…グラトニー。』
アネモネ…今見た感想を言葉にしただけだろう。
『…ナンカカワイクない』
いや元々君が言っていた名前の方が可愛くなかったよ?
『じゃあグラ娘で。』
『いや、アネモネ。それはちょっ…』
流石に怒られると思い声を掛けたが。
『カワイイ!!それでイイヨーーっ!!』
…本人がこう言って気に入ったみたいだから良いか。
『ーーーオイ』
また知らない声がパスを通じて聞こえた。それと同時に雨が降り出してきて上を見ると何故か雨雲が存在していて驚く。なんせさっきグラ娘が雲を吸ったばかりなのに太陽の光を遮る程の雲が張っていたからだ。
『ま〜た厄介なヤツがキタゾ』
セルシウスは面倒くさそうな声を出して雨雲を睨む。恐らく最後の兄妹だと思われる彼女?彼?が来たらしい。
『オゾン層がねえノニ雲を吸ってナクシてんじゃねーよ モミジ達ガ死ンだらドウスルの』
オゾン層は太陽からの紫外線を軽減させる役割があるが、現在は上空のオゾン層に穴が開いたせいで紫外線がそのまま入ってきてしまっている。それをカバーするために雨雲を張ってくれたのなら、彼女は味方で間違いない。
『ありがとう。おかげでみんな無事だよ。そっちはあの爆発大丈夫だったの?』
『全然大丈夫ジャナイ スゴイストレスを受けて身体の構造がヘンカしたオカげで助かったケド セルシウスみたいにナッちゃってさ』
モミジと会話しながら雨雲から落ちてくる雨が一箇所に集まって人の形に変わっていく。そしてセルシウスのような生物とは違う構造の生き物が僕たちの目の前に現れた。
…薄い水色の液体の塊から凄い量のベルガー粒子を感じる。確かにセルシウス達との繋がりはある容姿だ。
『モミジ この身体フベンだから身体ダシテ』
『ええ〜〜。私あんまり能力使いたくないんだけど。多分だけど私の大元の方は蒸発しちゃったから残機は私しか居ないし…。』
モミジはそう言って自分の服を脱ぎだしたが、下にも服を着ているので別に全裸になった訳ではない。いつも彼女が着ている服は自身の皮膚細胞を利用したもので、その服のような皮膚を増殖させて一つの身体を作り出した。見た目はモミジに似ているがそこまで精巧な作りではない。木を削ったような…粘度をこねたみたいな質感の人形とでも言えばいいのだろうか。
その人形に水の身体を持つ彼女が侵入してパサパサだった質感に潤いが増して人の皮膚程度の質感へと変わった。そして液状の身体を持つ彼女は血流のように人形を巡ってその身体を操り立ち上がる。
『うん…身体ガあるとベンリ』
彼女はそう言い放ち手や足などを器用に動かし始める。その動きはまるで本当に生きているみたいで、モミジの能力を改めて再認識することになった。




