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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
3.サイコパスの青春
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モテ期到来

3章スタートです。

全く授業を聞かずに机の下でスマホを弄っている時、私は女子高生をしている実感を得る。授業そっちのけでネットサーフィンを楽しむのが楽しいんよね〜。いや〜捗る捗る。


でもね。もちろん能力の訓練は怠らない。スマホを弄りつつ【探求(リサーチ)】でそこら辺を歩くように視ていたら3時間も過ぎようとしていた。


突然だがみんなはY○u Tubeを見たことがあるだろうか…いやあるよね。その中で一人称の視点で街中をただ歩き続ける動画があると思うけど、海外の人が動画を撮りながら日本の街並みを歩きつつ気になった所をフォーカスして映すアレだ。私もそんな感じで街中を探検している。


私は実際には歩いていないけど人目を気にぜずに人の輪郭や建物の形を観察しながら歩けるのは中々出来ない経験だと思う。飲食店に入って実際に調理している光景を間近で見たり綺麗な女性のスカート姿をローアングルで眺めたりと大変有意義な時間を過ごしていた。


そして4限目の終了を告げるチャイムが鳴ったので私の東京観光ツアーも終了させる。顔を上げて机の上を見ると一時間目の現文の教科書が置かれた状態だった。どうやら期末試験も終了を告げる可能性が出てきたようだ。いつもの事だけど。


トイレ(ご飯)に行くか。)


こんな悲しいルビは見たことが無かったけどこれが現実だ。ぼっち飯を人に見られたくないからね。…仕方ないね。


いつも通りカバンを背負って廊下を出ようとするとドアの前に見たことが無い男子生徒達が居ることに気付く。いや見たことがあるんだろうけどここら辺では見ない顔だ。恐らく二年生か三年生だろう。


「伊藤さんってこのクラスだよね?」


「佐藤先輩どうしたんですか?」


クラスの男子が佐藤先輩と呼ばれた男子に近付いて声をかける。やっぱり二年生か三年生だね。そしてこのクラスには伊藤さんは私だけだね。


「おっ工藤ってこのクラスだったのか。伊藤さんってまだクラスに居る?」


あいつ工藤って言うのか。クラスのみんなの名前はほとんど覚えていないし多分すぐに忘れる。ごめんな、くどう…


「え、伊藤さんですか?居ますけど…」


クラスの視線を独り占めにした主人公と書き出せばドラマが生まれるが、クラスの目線を集めた陰キャと書くとトラウマが生み出される。さて、私はどっちのシチュエーションなんだろうね!


そんな事を考えながら、私は聞いていませんでしたという雰囲気を出しつつ別のドアから出ようとしたら私に直接声をかけられてしまう。


「あ!伊藤さん!ちょっと時間いい?」


「やっべ、生伊藤さん可愛いわ。」


「顔ちっちゃ!足なっが!」


もう帰宅したい。普通に授業を受けていた(記憶改竄)だけなのに!誰だよこいつら!誰とも話さない伊藤美世ちゃんが目立っちゃうでしょ!


「あの私に何か用ですか先輩方。」


面倒くさいけど、ここで無視した方が面倒くさくなる絶対に。ここテストに出せ。


「いや伊藤さんとご飯食べながらお話したくてさ。」


「そうそう。」


「学食なら奢れるぜ!」


いや意味が分からない。こいつら誰だよ。私と知り合い同士だっけ?


「すいませんとりあえず誰ですか?初対面ですよね?」


「あ!そうだよねごめんね?俺は3年の佐藤隼也(しゅんや)。サッカー部の部長でフォワードをやっているんだけど分かるかな?こうやって伊藤さんに向かってゴールを決めるのが仕事なんだ。そしてこいつらは同じサッカー部の仲間だよ。」


「俺は優真(ゆうま)。絶賛彼女募集中のミッドフィールダーだぜ!」


「やめとけって(笑)俺は(れん)。ゴールキーパーをやっていて伊藤ちゃんのゴールも守ってみせるぜ!」


やべーこいつらもう面白い!いちいちサッカーネタ挟むのがダサくて好きだ。しかも部長、結構攻め過ぎてセクハラに取れるボールを蹴ってきたから吹きそうになった。


「先輩達って面白いんですね。」


私が笑いながら皮肉を言ったら3人共顔を真っ赤に染める。レッドカードかな?退場してくれるのかな?


「俺達面白いんだぜ!なあ?」


「そうそう!一緒にお話しようぜ!」


「今日だけでも良いからさ!」


どうしようか…別に一日ぐらい付き合っても良いけど私には先生という存在が居るから浮気になるかもしれない。もしそうなら駄目だね。


(ヨシ!断ろう。)


「ごめんなさい。お昼は一人でゆっくりと過ごしたいのでご一緒出来ません。」


「えーなんで?やっぱり俺達怖いかな?」


「いえ、正直に言うと何故先輩達が私に声をかけたのか分からなくて反応に困っているのです。」


私が正直な思いを話すと、お互いに肘を突き合いながらお前が言えよとか俺はゴールキーパーだから攻められないとか言い出してうざ絡みを始める。


「…あの?」


「ああ、ごめんごめん。いやさ、正直に言うと伊藤さん良いなあって思っててさ。偶然廊下を歩いている所を見かけて…一目惚れってやつ?」


クラスのみんながどよめく。まさかの公開告白されるとは思っていなかった。遂にモテ期が来ちゃった?私の魅力で先輩を魅了しちゃった?あれ、私…何かしちゃいました?


「だから仲良くなりたくてこいつらを誘ってから伊藤さんに声かけたって訳。」


「優真って結構モテるんだぜ?でもサッカーバカだから今まで恋愛なんて興味なかったんだけど伊藤さんに一目惚れしてからずっと伊藤さんの事ばっかなんだぜ?」


「友人として応援してやりたい的な?伊藤さん今日だけ、今日だけで良いからさ!」


先輩達のお願いを断れるほど私のヒエラルキーは高くない。クラスの男子なんか先輩達を睨みつけているし女子は耳打ちしながら私を見ている。ここで断るとアイツなに調子乗ってんだよとクラスの女子を敵に回しかねないし。断らなかったら尻軽ビッチって言われる可能性もある。あれ、これもしかして詰んだ?


「あの、困ります。いきなりそんな事言われても信じられませんし、あまりに接点が無さ過ぎて先輩になんて返したらいいか…」


気弱な少女を装い同情心を煽る。客観的に見れば、私は年上の男性3人に言い詰められている少女。もし人目のつかない場所で声をかけられたら間違いなく病院送りにするけどここは学校だから能力が使えない。だからここは演技で乗り切るしかない!


「あーごめんね?急すぎたね。でも好きな気持ちって止められないからさ、もし良かったら俺と付き合ってほしい…なんて考えているんだけど。」


「「フォオオオ〜〜!」」


思春期の男子半端ねえ!一年の教室で告白しやがったよ!マジで怖いもの無しだねこの頃の男子…。んー…シチュエーション的には嫌いじゃないけど、全然タイプじゃないんだよ少年。あと10年したらまたおいで?ちゃんと振ってあげるから。


「好きな人が居るんですごめんなさい。」


「「「「「「ええええーー!?」」」」」」


蜂の巣をつついたかのようにクラス中が大騒ぎになる。何故私まで愛の告白をしなければならないのか…でもこれぐらい言わないと諦めてくれなさそうだったし、早くうま娘したいし、先生以外は対処外だから!


「それってこの学校の人?」


ゆうま?先輩が私に質問してくるけど答えられないんだよね。死神の事は秘密だし、ここは適当に誤魔化すか。


「バイト先の人です。これ以上は先輩に関係無いですよね?失礼します。」


無理やり先輩の横を通って逃げるように教室を立ち去る。だからだろうか、先輩の暗い瞳を見逃してしまったのは…


[1年C組の伊藤美世さん。今すぐ職員室まで来てください。繰り返します…]


トイレ(ご飯)に向かおうとしたら校内放送で呼び出しを食らう。今日はイベントに事かかないけど、どうしてだろう?私は只、ご飯を食べようとしただけなのに。


こういう事は早く済ませた方が良いと人生経験からの教訓で知っているのですぐに職員室に向かう。もしかしてさっきの告白で騒いだから呼び出されたのだろうか。もしそうならあのサッカーバカ共を地獄に落とさなければ…


「失礼します。」


「伊藤さんこっち。」


職員室に入って私を呼んだのは1年C組の担任、つまり私の担任である星野未来(ほしのみく)先生。アラサーながら生活指導を任された学校のホープであり私のピアスに激怒した鬼教師だ。


「ごめんなさい怒らないでください家には連絡しないでください!」


星野未来先生を認識した瞬間、私は職員室の中で土下座をかましたのだった。

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