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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
5.終わらせた未来の軌跡
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地球最強戦力

今月中にこの章終わるかなって思いましたが終わらないかもしれません。


あれ、もしかして半年はこの章続いているのか……?やば。

きょうだい達と協力し僕たちはありったけの物資を集めて装備することにした。敵の持っていた銃などはまだ使えるものがある。僕の能力と相性が良いし銃火器の類は優先的に回してもらった。でも使い方がいまいち分からないものもあって実戦で使用することに少し抵抗がある。


本当は実戦のまえに試し打ちをしたいけどもうそんな時間は残されていなさそうだ。


『……見つかったって。出来るだけ雲を厚くしてくれるけど突き抜けてくる。』


モミジは雲にいるきょうだいから連絡を受けて僕たちに伝えてくれる。……先制は向こうからか。


遥か頭上に浮かんでいる分厚く重厚な雲に小さな穴が空いたと思ったら、そこから更に穴が広がり風穴が作り出された。そしてその穴の中心に黒い点のようなものがあり、それがどんどん大きくなって僕たちのところへ向かってくる。


この両手に持った銃火器じゃどうしようもないな……。能力であの弾道ミサイルを止められるか?


『たかだかアレぐらいデ慌てるナ』


セルシウスが右手を掲げて能力を行使する。上空数千メートルもの高さにある弾道ミサイルに干渉しエネルギーを奪い取った。セルシウスの能力はエネルギーの指向性を変えられるが、それは温度のみの話ではない。無論運動エネルギーも同じである。


超質量で高速落下してくるミサイルの運動エネルギーを奪うことで落下速度を低下させた。僕たちの頭上数百メートルの所でカクンと大きく減速し始め、黒く鈍い色の弾道ミサイルは自身の重さだけで落ちているように見える。


セルシウスはその弾道ミサイルの落下地点に移動し、なんと片手で直径5メートルにもなる弾道ミサイルを受けて止めたのだ。しかもキャッチした際に起こるはずの衝突の衝撃は無かった。まるで最初から持っていたと思うほどに自然に持ってみせる。


『ほらアイン オマエの出番ダ』


セルシウスはそう言って軽いノリで僕に弾道ミサイルを投げて……きた……ッ!?


「り、『反復(リテイン)』」


銃火器を持っているせいで両手が塞がっている状況では能力でしか受け止められない。僕はベルガー粒子を操作して迫りくる弾道ミサイルの軌道を空間に固定した。この能力ならばそこで停止させられる。


『ホウ……やるな』


「いきなり投げてきた側の感想とは思えないっ!」


自身の質量の数百倍はありそうな金属の塊を投げつけてきてその言い草はあまりに酷すぎる。アネモネ達なんてドン引きしてセルシウスを見つめているし僕も同じような視線を向けていると思う。


『そんなにオコルな オマエノ実力を測りたい』


言い終わったタイミングでパスから情報が濁流のように流れ込んでくる。これは……セルシウスからの情報?……なんてとてつもない量の情報なんだ。この弾道ミサイルのエネルギーの向きや量の情報が事細かに頭の中へ叩き込まれたせいで頭がカッと熱くなってきた。これを使ってどうすれば……?


『オマエの能力はコウイウ時に使うものダロ?ワザワザ向こうがブッシをオクッてきたンだ 有効活用すればいい』


『……言いたいことは分かったよ。』


弾道ミサイルの軌道はもう創り出されている。ミサイルの軌道は遥か空の上まで続いていて恐らく大気圏外まで続いている。この弾道ミサイルはネストスロークか人工衛星から来たと思われる。


セルシウスから送られてきた情報と僕の能力を組み合わせればこの弾道ミサイルを逆行させてぶつけられる……?でもネストスロークがあるノアの箱舟も人工衛星も動き続けているからこの軌道を逆行させても衝突する可能性はゼロだ。


…………そうか。そこでセルシウスから送られてきた情報を使うのか。エネルギーの詳細なデータを読み取って軌道の方向を修整すればいい。……いや、言ってみれば簡単そうに聞こえるけどそんな簡単なものじゃない。僕には瞬時にこれだけの情報を計算する演算力はない。


これだけの演算力を持っているのはこの情報をパスを通じて送ってきたセルシウス。なら彼に頼むしかなさそうだ。


『……セルシウス、協力してほしい。僕の能力だけだと成功しないかもしれない。この情報を処理しきれる演算力が足りないんだ。』


『アア?演算もクソもねえだろ コノでけえ物体がアッタ場所へ送るだけの話ダロウが』


『いや、そんな理屈を言われても……。』


『ハア〜〜?ならナンでテメエはオレの能力を防げてんだよ 演算して防いでンノカ?ちげえダロウ?』


セルシウスがジェスチャーを使い自分の頭をコンコンと叩いて小馬鹿にしてきた。この会話がパスを通じてみんなに伝わっているのが分かるからちょっとだけムッとしたけど、セルシウスは間違ったことは言っていないとも思った。


「アインの能力は因果律の操作だよね。ならいつものようにすればいいんだよ。時間も関係性も全てアインの射程圏内なんだから。」


モミジからの後押しもあり、もう一度頭の中で整理することにした。確かに位置関係に(こだわ)りすぎたかもしれない。良くよく考えてみると位置関係の定義が曖昧だった。


例えば僕から見てセルシウスの位置は変わっていないように見えるけど、地球という星から見れば地球自体が自転しているから常にセルシウスの位置関係は動き続けているし、太陽系規模で考えても公転しているんだからそこから見ても常に位置関係は動き続けている。


なら衛星軌道上に動き続けている衛星なんて特に考えなくてもいい。いつものように結果から原因へ逆行させればいいだけだ。


「……【逆行(リワインド)】」


ベルガー粒子で包んだ弾道ミサイルを操作し逆行させる。弾道ミサイルは噴射口を上に向けたまま重力に逆らって超高速で飛翔していく。


「……すご。」


「もう見えなくなった……。」


エピとマイの2人の言うとおり弾道ミサイルは目では追えない速度で打ち上がり、視認出来ない程の小ささまで距離が離れてしまった。これは重力と空気の抵抗を受けないからこそ出せる速度であり、アインが拳銃の弾丸の軌道を固定し発射した時と同じ現象である。


『サスガオレの弟 手を焼かされたワケだ』


セルシウスは半年前の事を思い出しながら打ち上がる弾丸ミサイルの運動エネルギーを感じ取っていた。そしてその情報をアインに渡していく。この情報が必要かどうかはセルシウス自身でも分からないが、能力の精度を上げるには多くの情報が必要になる。


セルシウスの能力は分子一つ一つの運動エネルギーを認識して能力を行使している。彼にとってはそれが当たり前のことだが普通はこれだけの情報が脳へ送られれば脳が潰れてしまう。エピやマイなども分子を認識して能力を行使しているが分子のエネルギーを操作するとなると話は変わってくる。


“エネルギー量=物質の重さ”であるようにエピ達は原子の重さを認識することでエネルギーの量を認識しているが、セルシウスはこのエネルギーの量を操作する。すると物質の重さにも干渉することになり別の概念が付与されてることに繋がるのだ。その影響でセルシウスとエピ達は大きな括りで同じ系統の能力であっても能力の行使に掛かる負荷は変わってくる。


負荷が強い分出来ることも増えるので弾丸ミサイルのエネルギーを奪いミサイル自身の質量にも干渉出来た。この事象をセルシウスはアインに学ばせようとしている。


負荷が掛かることは悪ではない。負荷が掛かれば掛かるほど事象が大きくなりやれることが増えることをアインに知って欲しいのだ。


ネストスロークとの戦争の最中というこのタイミングで何故アインに学ばせようとしているのか。それは随分と昔からセルシウスは知っているからだ。もう自分たちに時間は残されていないことを。


遥か前にモミジに言われた事を今更ながら思い出していた。この地獄を終わらせる者が現れることを。そのときには半信半疑としか聞いていなかった。この地獄を終わらせるには能力者を殺し終えるしかない。だから耀人すら手にかけた。この地獄を終わらせるために。


しかし時は流れそんな話すら忘れてしまっていた。今では一箇所に留まり来る者全てを殺すだけの惰性の日々。やりたいことが何一つとして出来ない行動が制限され決められたゴールに向かうだけのつまらない人生がようやく終わろうとしている。


自身の存在に何も興味を持てなかったが、自分という存在に意味を持たせられるのなら残る者達に託すしかない。恐らくだが上と下の兄妹達もアインに何かしらのことを託したはずだ。それしか選択肢が無いからな。


二度とオレたちのような存在が生まれない為にも生き残っていく者達にこれから先も生きていく術を託す。それが今日まで生きてしまった自分が最後に出来る選択だ。

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