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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
5.終わらせた未来の軌跡
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最恐の一角

ユニーク数が3万人を達成しました。気が付いたら3万人もの人にこの作品に目を通してもらったことになります。実感があまりありませんがこれからも色んな人達に目を通して貰えるよう投稿を頑張りたいと思います!

それがその場に現れた時、アネモネやアイン達は動きを止めて兵士達も動きを止めた。アネモネ達はそれがどういうものなのか知っている。そして兵士達は本能的にそれがどういうものなのか悟り身動きを取らず目立たないようにしていた。


アイン達や兵士達からすればいきなり第三勢力が現れたようなものだが、三つ巴の関係になったりはしない。この存在に並ぶ外敵は居ない。全てが等しく抹殺対象である。


「…動くな。殺される。」


アインは敵である兵士達にそう言い大人しくする。兵士達も敵であるアインの言葉を聞きそれに従った。あんなものを目にしてアインとの戦闘を継続しようと思うほど兵士達はネストスロークの人形ではない。能力者としての本能があれを最大限に警戒すべきものだと決めたのだ。


そんな空気が浸透した矢先にアイン達の目の前に人型バグが現れる。前動作も無ければ音も気配も無かった。瞬きをしてもいないのに、瞬きをしたんじゃないかと錯覚させるほど一瞬の出来事だった。


なので兵士達もアインも反応が遅れる。例え反射的に動けてもそこは人間の限界値。どれだけ反射的に動こうとも1秒にも満たない時間内では良くて身体を少し動かせる程度の行動しか取れない。それに対し人型バグは正に光速。一瞬の内に腕の部位と思われる触手をくねらせて動かし兵士達の装着しているスーツごと斬り裂いた。


兵士達の装着しているスーツはまだ耐久値が残っておりベルガー粒子拡散力場発生装置は起動していた。だが人型バグは能力も使わずただの身体能力で兵士達を瞬時に屠ってみせた。元は人間とは思えないほどの身体能力を持っている事がこのことから伺える。


「ヒサシイナ キョウダイ」


…どうやら僕のことを覚えているらしい。もう半年以上前の事なのに…。しかも兄弟認定されているから僕の立場はコイツの弟さんになるのか…?そんなァ…。


「…僕は殺さないのか?」


「キョウダイハコロサナイ ダカラアンシンシロ ソコマデフルエルヒツヨウハナイ」


そう言われて胸をなでおろす…訳がない。一回心を折られた相手だ。今すぐに逃げ出したい。


そしてコイツ、震えるなとは言ってくれる。お前を見るだけで身体が竦んで力が入らないっていうのに。何回お前に殺されかけたか。お前を倒すためにこっちは逆行してまでやり直してそれでもまた殺されかけたんだぞ。


「味方…なのか?」


「ハッ ソレハドウカナ オマエシダイダ ナニシロナニモシラサレズニココマデキタカラナ」


何も知らされていない…?つまりはモミジが絡んでいるのか?彼女がコイツを呼んだのかもしれないな。この状況を予期して。


「お前モミジを知っているんだろう。ならこの先何が起こるか…危ないっ!!」


視界の隅にスナイパーライフルの銃口が光ってこっちに向けられていることに気付いた。狙っているのは僕じゃない。コイツだ。僕は狙われていると伝えたが、どうやらその心配はなさそうだ。


「…コンナモノデシネルノナラクロウハシナイ」


人型バグはスナイパーライフルの弾丸を触手でキャッチしてみせた。しかも振り向きもせずに。あの触手柔らかさそうに見えてとてつもない強度だ。


「フム…ベルガーリュウシヲカクサンスルシクミカ コレナラバオマエノヒダリウデモトバセルナ」


青い目が僕の左腕に向けられる。僕の左腕は黒く染まったベルガー粒子に血が血流のように躍動しながら何本も巡っていた。ハッキリ言って自分の腕っていう感じはしない。寧ろ気持ち悪い。仲間には見せられないな。


「サッサトオワラセルカ」


人型バグの触手の一本がブレて一瞬光ったと思ったら地面に突き刺さっていたポッドごと兵士達が真っ二つになって地面に転がっていた。…速すぎる。昔アレを初見で防御出来たのは幸運だったに違いない。普通はあの兵士達みたいになる。実際アネモネ達はスライスされたからね…。


「えっ…?」


そして兵士達に目を向けた瞬間にはもう人型バグの姿はなく、人型バグは再び上空へ飛び残りの兵士達の前へ姿を現した。


[…いやはやこれは勝てません 何度も貴方に挑ませるために能力者を地球へ送ってきましたがどうやら過ちを繰り返し続けていたみたいです こんな相手とは戦いにすらなりません]


兵士達の頭部に付けられたマイクからマザーの声が聞こえてきたが、マイクの付いた兵士の頭部は胴体と別れて地面へと落ちていく。人型バグはそのことに対して特に気にもせずその場を離れて家の方へと向かって行った。


「…私達の苦労とは一体。」


「…私達って、アイツに殺されたんだよね?覚えていないけど、あの光の攻撃は忘れないよ…。」


アネモネとフェネットは降りてくる人型バグを見上げながらそんな感想を漏らす。忘れるわけがない。初めて人型バグと戦いその能力に苦しめられたことを。本体とは一度も会っていないが会えば死ぬということは分かる。


「…終わった?終わったみたいだね。」


家のドアが開きモミジが顔を出す。今の今まで隠れていたが戦闘が終わったと見て出てきたみたいだった。


「モミジ…、これってあなたが知っている展開なの?」


アネモネはモミジに聞く。この日にネストスロークが攻めてくるのも人型バグが来るのも知っていたのかを。


「…それは話せない。話せるのはうちの長男が出てきて一時的に時間を稼いでくれるってことぐらい。私達兄妹の中で1番強いのがアイツだから。」


モミジは上に居る兄を見ながらそう答える。アネモネの求める答えではなかったが、態度から彼女は全てを知っていて黙っていた事は理解出来た。


「エピとマイとディズィーを運んできて。治療するから。あとアインも手当てしないとこのあとに支障が出ちゃうから連れてきて。」


モミジは家の中に戻ってしまう。正直私達は状況について行けてないけど、取り敢えずは出来ることから率先して動いていくしかない。先ずは仲間達の治療が先だ。エピとマイ、そして1人で戦っていたアインを助けに行かないと。


私達はその後3人の治療をするためにカイコガの糸で作った包帯や薬などをかき集めて治療を開始した。マイとエピは両腕が内出血していて骨にヒビが入っていたけど添え木をしておけば問題は無さそうだった。問題だったのはアインの方で片腕が無くなっていたのだ。


「どうしたのっ!?能力で戻せないのっ!?」


「いま戻したら記憶まで戻ってしまう。戻すのは後だよ。」


そうは言っても痛々しくて見ていられない。ベルガー粒子で形作った腕は禍々しくマトモではないように思えるし、痛くないのか?と聞けば能力で痛覚を削除したと答える。もう私達にはどうしようもない。言っても聞かないと分かっているからこれ以上は何も言わないけど、傷口の消毒だけでもしないと後々で化膿してしまう。


「ヤイテシマエバイイ」


「…いきなり傷口を焼くの止めてほしいんだけど、兄弟では普通なのこういうのは?」


アインの左腕の傷口からジュウジュウと肉が燃える音が部屋の中に響き、肉の焼ける匂いと煙が立ち昇る。


「コイツがおかしいんだよ。人並みの感性は期待しないでね。まともな育ちじゃないから。」


モミジはテキパキとエピ達の治療をしながら二人のやり取りを放置する。


「…良く放置出来るね。私はあれを放置出来るほど慣れていないから気になるんだけど、痛てて。」


「兄弟…なんだっけ?似てねえな〜。」


マイとエピは治療を受けながらも意識がアインの方へと向かってしまう。因みにマイとエピだけではない。他のメンバーもそうだ。ユーに包帯をぐるぐる巻きにされているディズィー達も全員アイン達の方に意識を向けている。それもそのはず有り得ない光景がそこにあるからだ。


「ーーーコノトシデコウチャヲノメルトハオモワナカッタ」


紅茶の入ったコップを複数の腕で持ちながら休息を愉しんでいる者が部屋の隅に居た。そしてその隣に腕の傷口を光で灼かれて不機嫌そうにしている者も居た。


「…ごめん、言わせてほしい。なんで寛いでいるの?」


しびれを切らしたアインは何故か家の中に居る自身の兄である人型バグに尋ねた。


「ソコニコウチャガアルカラダ」


そう答えた後に口があるであろう位置にコップを持っていくバグを皆が見続ける。もうそれしか人型バグに対してすることが無かった。

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