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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
5.終わらせた未来の軌跡
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固定される空間

アインが宇宙船へと向かい通信装置を破壊しようとしていた頃、家の近くにて残っていたアネモネ達は同じくその場に残っている兵士達と戦闘状態に入っていた。


「アインが能力を行使出来ている間に兵士達を無力化させないといけない!みんなは全力で能力を行使して!」


アネモネは皆に能力の全力行使を提案、それに皆は賛同し兵士達と相見える。


「447期生はベルガー粒子の操作を開始、反逆者として処理を行なう。」


兵士達は持ったアサルトライフルを構え同時にベルガー粒子の操作を行なう。その粒子量はアネモネと比べると少ないが兵士全員とアネモネ達全員で比較すれば兵士側が多くなる。


だが能力はベルガー粒子量で決まらない。能力の特性で決まる。そしてこの中には超広範囲の空気を操るS判定能力者の彼女が居る。


「そのスーツがどれほどの外圧に耐えられるか耐久テストをしてあげる。」


アネモネは右手を掲げて硬く粘度のある何かを握り潰すような構えを取る。すると大気そのものが圧縮されて空気が擦れるような音が耳に届く。だがその音は空気を伝う性質上、大気が兵士達に向かう為に音がどんどん遠くに感じていく。


[A.N.0588は我々の想像を超えた成長を見せた これは地球での生活で受けたストレスによるものと断定]


マザーはアネモネ1人の能力で兵士達が指一本も動かせず無力化された事実を観測した。空気が粘度を持つ程に圧縮された大気はあまりに気圧が強く深海に居るようなものだった。


「…身体が動かせません。スーツの耐久が減っていき止まる様子もありません。」


兵士達のスーツは例えサイコキネシスで阻害されても完全に無力化されることはない。それほどにスーツで使われている筋繊維は強靭なのだ。だがアネモネが全力で能力を行使すればユーのサイコキネシス以上の力を加える事が出来る。


そして更に兵士達に動きが見られた。腕を上げられなくなり身体に密着させ拘束具を付けた状態に近くなる。空気とスーツが強く擦り合う音がこの距離で拓けた土地なのに籠もって聴こえる事から凄まじい圧力が掛かっていることが伺える。


「…アネモネ凄い。1人で済むんじゃない?」


「そんなことない…かなり無理してるからその後は任せることになると思う。」


アネモネの脳には凄まじい負荷が掛かり目眩で倒れてしまいそうだった。だが仲間達に悟られまいと表情には出さない。しかしフェネットだけは気付いていた。だからアネモネに話し掛けて返答出来るか試したのだ。


(アネモネが焦ってる…かなりマズい展開なんだ。)


フェネットもネストスロークが攻めてきた事を重く受け取っていたが未だに現実感の無い内容であった。急に来たから心構えもなくてしょうがない…とはいえ自分達の命が掛かっている事態が半年ぶりなのだ。半年間平和な時間を過ごしてきたせいで戦いの空気を忘れてしまっていた。


しかし仲間が後先考えないまでに能力を行使している。それは戦場の空気を覚えているからだ。少しでも迷ったら死んでしまう。そんな状況をフェネットは徐々に思い出し追撃するため能力を行使する。


「そのライフル、少しだけ邪魔だね。」


フェネットは火球を作り出し兵士達にぶつける。兵士達は自分達を取り囲むように配置されていたのでサークルのように火の壁を作り灼熱で兵士達を焼いた。


スーツは耐火性に優れていたので燃えることは無いが銃は違う。電気制御されているアサルトライフルは熱にそこまで強くない。どうしても配線に使われるゴム類が溶けて絶縁部が剥がれショートを起こしてしまう。スーツなどで保護されていない銃の類は使い物にはならなくなる。


それに銃弾に使われる火薬も熱せられれば引火する。弾倉にあった銃弾は火薬が引火し弾け飛んだ。地面、兵士達、そしてアネモネの所まで破片が飛び散るが、ユーは事前にバリアを張り飛び散った破片をガードした。


「…事前に言ってくれる?」


「ごめん…。」


ユーの静かな怒りを感じ取ったフェネットは即座に謝罪した。この中で間違いなく怒らせたら一番苛烈なユーを宥める事は必須事項。フェネットは自身の行動を反省する。


「…で、俺は何をすればいい?火の中は流石に行けないし、敵がどうなっているのか分からん。」


パッと見は焼けているように見えるがベルガー粒子に異常は見られない。つまり死んでも気を失ってもいない。敵は全員健在だった。


ここに残った兵士達の数は15名。全員がA判定を貰った能力者であり戦闘のエキスパート。銃を奪われただけでは戦意喪失はしない。


「ベルガー粒子拡散力場を形成。即座に行動を開始せよ。」


マザーは兵士達の背中に付けられた装置を起動しベルガー粒子のコントロールを奪った。すると大気に干渉していたアネモネの能力は解除され、火を作り出していたフェネットの能力も解除される。


「なっ!?」


「嘘っ!?能力が解除された…!?」


急に脳への負荷が消えて能力が解けた事を察した2人は驚愕する。こんなことが2人同時に起こるなんて想定していない。


「ーーー殲滅しなさい。」


「「「「了解。」」」」


身体の拘束が解けた兵士達はすぐに駆け出しアネモネ達の下へ走り出した。それに対しディズィーがいち早く反応し体当たりを仕掛ける。


「うらあぁーーッ!!」


ディズィーの全力で行なったタックルは兵士1人を吹き飛ばしたがその両隣に居た兵士達がディズィーに向けて能力を行使する。


重力を増大させる能力と水分を電波で動かし加熱する能力の2つを同時に向けられたディズィーはその場に倒れ込み蒸気を上げる。


「がはっ…!」


「ディズィー!こんのクソ共がっ!!」


ナーフはイオンビームを形成し2人の兵士達に発射した。だがその間に1人の兵士が入ってイオンビームを屈折させる。イオンビームの光と熱はまるで鏡で向きを変えられたみたいだった。


その兵士の両手には円形のような歪んだ空間があり、どのような能力は分からないがナーフの能力を完全に無効化に成功していることから同じ系統か、もしくは上位互換の能力であると察せられる。


「ならこれならどうっ!」


ユーはサイコキネシスで念動の塊を創造しそれを右手でアンダースローのモーションで投げ飛ばした。念動の塊は周囲の空気を巻き込みまるで津波のように兵士達を襲う。


「ちょ、俺も巻き込ま…ぐはっ!?」


これには堪らず兵士達はその場を跳躍して下がるがディズィーはマトモに受け身も取れず念動の波にさらわれた。


「…あいつ頑丈だから大丈夫だろ。俺達はこっちをどうにかしねえとっ!」


エピはディズィーの様子から大丈夫だろうと判断し、後ろから攻めてきた兵士達の相手を始める。


兵士達の居る地面を軟質化させて進行を邪魔しようとするが、地面の表面からガラスのような物質が急激に草のように生えてきて地面を別の物質へと変化させられた。これにはエピも驚き迎撃に失敗する。


「ならこれはどうかなっ!」


マイは自分の足でまだガラスに変化していない地面を蹴り上げて土を空間に固定した。無数の細かい土の粒子が兵士達の進行を阻害する…と思われたが、兵士達がその土に近付くと土は重力と風に流され地面へと落下していく。


「なっ…!能力を無視して…!」


兵士の1人が異形能力者の為にいち早くマイの所まで近付き殴り掛かる。マイとエピはすぐさま攻撃をいなそうと両手を構えるが相手は異形能力者。体格に優れスーツで強化した兵士の拳は2人の触れた両腕にヒビを入れそのまま両腕のガードを弾いて殴り飛ばした。


「マイ!エピ!」


アネモネは2人が吹き飛ばされるのを視認してその兵士を逆に吹き飛ばそうと能力で空気弾を飛ばした。だが兵士に近付くとその空気弾は霧散しただのそよ風程度に変化してしまう。


「R.E.0001が居なければこの程度ですか。素早く処理しR.E.0001の下へ向かってください。」


マザーはそう命令を下しR.E.0001との戦闘に集中することにする。マザーにとってアネモネ達は最早眼中にない存在と判定したのだった。

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