表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
2.死神の猟犬
42/602

死神の仕事

次から3章に突入します!

「ハァハァハァッ!」


なんだよあいつ!急に襲ってきやがった!まさか俺達の情報を奪いに来た“組織”のエージェント共か!?


中国に本拠地を構える“能力者開発機構”そこで敵対勢力として名が挙がる“組織”の本拠地、東京支部に侵入した仲間から情報を受け取り本国まで無事に持ち帰る事が男達の仕事だった。


その任務の帰りに突然何者かに襲われた。苦楽を共にし好きな女のタイプも好きなアダルトサイトも同じだった同郷の仲間も蚊を払うように2人殺されて、残ったのは俺たちの4人だけだ。


(早くこの場を離れないといけないのに!探知系能力者の奴らが最初に殺されちまったから敵が何処から来るのか分からない!)


「おいどうするんだ!ここはあいつらのテリトリーだぞ!応援を呼ばれたらすぐに包囲されちまう!」


「分かってる!事前に決めた逃走ルートを使って港まで行くぞ!」


「ああ!海に出ればこっちのもんだ!」


狭い路地を走る4人は無能力者だ。もし能力者と正面からやりあったら命がいくつあっても足りない。仇を取りたいという考えなど欠片も思い付かない。…虎と素手でやり合おうなんて誰も思わないだろう?


「もし捕まっても情報を取られるなよ!自害してでも隠匿するんだ!」


「家族を残してそう簡単に死んでたまるか!それに死んだあいつらの家族も残してよ!」


しかし相手は手練の能力者だ。基礎体力が段違いだ…いつかは追いつかれるだろう。


(覚悟を決めるしかない。)


「俺が囮になる!俺の家族を頼んだぞ!」


「ユアン!お前、故郷に子供を残してるだろう!俺が残る!」


「いや俺が残る!この中で一番年上だ。若いヤツが死ぬことはない。」


お互い考えることは同じ、生きてこいつらを本国に帰らせたい気持ちで一杯だ。お前達と出会えた事が一番の宝だ!


『話し合う必要は無い ここで死ぬことになるからな』


空から“何か”が降ってくる。かなりの高所から降りてきたことが着地の衝撃音で理解出来た。あれだけ騒がしく声が響いていた路地裏に静寂が訪れる…今動いたら殺される…!


『【探求(リサーチ)】は便利だな 訓練されベルガー粒子の扱いに長けた能力者でも見つける事が出来る まあ見つけたのは本当に偶然だったのだがな』


目の前に降ってきたコイツは一体何者なんだ?背丈はそれほど大きくない。俺と同じぐらいで170後半か?顔は布で隠されていて視認が出来ない。言葉は日本語だろうが声の感じに違和感を覚える。まるで複数人の声を混ぜ合わせたみたいだ。


『見た目がアジア系だがニホンジンではないな アジアでここ最近活発的に動いている所など1つしか思い付かないが…念の為に情報を引き出した方がいいか』


どうやら俺達の命運もここまでのようだ。雰囲気で分かる…コイツはヤバい!本国で出会った能力者達とは格が違う。


「まさかとは思うが“死神”なのか…?」


俺が漏らした疑問に3人が反応する。この業界に入れば嫌でも知る人物。一度狙った対象は必ず殺す事から死神と呼ばれるようになった生きた伝説だ。俺達の組織もコイツには散々と辛酸を舐めさせられた。


『ワタシを知っているという事はただの一般人ではないと言っているのと同じだが 覚悟は出来ているのだろうな?』


死神から殺気が漏れ出す。こっちも股間から液体が漏れそうになるがそれよりも早くその場から離れる事を優先して走り出した。来た道を引き返し目線で合図を送る。4人とも逃げる方向が別々なら誰か一人ぐらい生き残れるかもしれない。


「また生きて会えたらあの店で飲み明かそう!」


「「「おう!」」」


もうみんなで揃うことは無いだろう。それでも鼓舞するために約束する…絶対に死ぬなよお前等!


『飲み明かす事はもう叶わないが』


死神が右手にベルガー粒子を集めて男4人に向けて腕を振るう。腕から放たれた粒子が男達4人に纏わり付くことによって死神の効果範囲に入ったことになる。射程距離は死神が認識出来る男達4人の軌道全てだ。


『【逆行(リワインド)】』


男の動きが止まる。その現象に声を出して皆に伝えようとしても口も喉も動かせない。


(なんだ!身体が動かせない!まさかこれが死神の能力なのか!?)


動けない自分を誰も追い越せていない事が気になる。普通だったら視界に仲間の走り去る姿が見えるはずなのに…もしかしたら自分と同じく動かせない状態なのか…それを確かめる事も出来ない。


『ワタシの射程圏内に入った時点でもう()()()()()()


身体が動く!しかしこれは…無理やり身体を動かされている感覚だ。足が後ろに動き視界が後ろに流れる。もしかして後ろ歩きをさせられているのか?


(まずい!何故か分からないが死神の方へ後ろ歩きしながら向かっている!?)


『生きたまま再会する事は叶ったな』


()()()()()()()()()。デジャヴなんてレベルじゃない!俺達は巻き戻されたんだ!


「う、うわあああっ!!!」


ありえない現象を体験した俺達は錯乱状態に陥り、やってはいけない能力者との戦闘行為を選んでしまった。俺たちは銃を抜き死神に向かって一心不乱に撃ち出す。


『【反復(リテイン)】』


シュルシュルシュルシュルッ……撃ち出された銃弾が全て空中で停止した。いや止まってはいない。回転し続けてはいるが前進せずに空中で停滞している。


「…………は?」


マトリックスでも見ているのか?銃弾が空中で静止するなんて俺は幻覚でも見せられているのか?


『一人生きていればあとは要らない』


ドバンッ!空中で浮遊していた銃弾が男達に向かって撃ち出される。20発を超える銃弾を受けて男4人蜂の巣のように穴が空き即死する。


『コイツがリーダー格のようだったな』


ユアンに近づいた死神は【探求(リサーチ)】で辺りを探る。この能力は誰にも見られる訳にはいかない…


ユアンが生きていた頃の軌道を認識し、今の軌道を削除する。


『【再生(リヴァイブ)】』


死んだ原因となる銃弾を受けた時の軌道を削除する。そうする事でユアンの最期は銃弾を受ける前の軌道になり、()()()()()()()()()()。その影響で死んだ記憶も削除されるが問題はない。


「う、うわああ…あ、あ?………み、みんなは?」


『死んだよ すぐに皆のもとへ戻してやるから安心しろ お前に聞きたいことがある お前達はどんな情報を持っている?』


ユアンの背後に立った死神は身動きが取れないように首と両腕を抑える。


「な、なんだこれ!?見えない何かが身体に!?」


『質問に答えろ 組織の情報を探りに来たのだろう?どんな情報を集めていたんだ?』


「い、言うものか!俺の仲間を殺しやがって!があっ!?」


死神はユアンの右手首を握りつぶす。無能力者の腕など軟過ぎて簡単に壊れる。


「どうする?このまま拷問をして喋らなければお前の家族も同じ思いをさせるが?」


「クソヤローがッ!クッソ!クッソーッ!」


痛みと悔しさで泣き出した男は観念したようで質問に答える。


「…非接触型探知系能力者の情報を集めていたんだ!」


《ミヨの存在がこんなに早く海外にまでバレるとは…!恐らくだが組織の中に内通者が居るな》


『内通者から情報を得たんだろ?名前を言えばお前の家族には手を出さない事を約束しよう』


死神とはよく言ったものだと思う。…本当にその通りだ。人の命など簡単に奪える存在。こんな奴と正面から仕掛けた俺のミスだ…友よ、すまない。


「ーーーーー、ーーーーーーー。」


『その2人だな?お前との約束は守ろう 仲間のもとに戻してやる』


死神がユアンの顎に人差し指を置いてスマホをスライドさせるように動かす。そうするとユアンの頭が360度回転して地面に倒れた。


《ミヨには新たな能力を教えなければならないな 【再生(リヴァイブ)】は必須として…他にもいくつか覚えさせよう》


間違いなく海外からミヨに対して能力者の刺客が送り込まれる。ワタシがずっと付いてやる事は難しい。ミヨにはある程度自身で自衛をしてもらわなければ。


《ミヨが訓練を行っている間に私達は中国で掃除の仕事でもしようか》


不敵な笑みを浮かべた死神はその場から掻き消えるように消失し、その場に転がっていた死体も死神と同様、一緒に掻き消えたのだった。もしその様子を見た人間はこう言うだろう。


“死神が人間を連れて冥界に戻った”と…。

いつも読んでくださりありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ