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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
5.終わらせた未来の軌跡
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散弾の蓄積

何だ…、何かが飛んできたけど、見たことが無い。ネストスロークでは見たことが無いし教えられなかった装備だ。全部で5つあるけど…。


アインは宇宙船から飛来したポッドを凝視しどのような装備かを見定めようとしていた。するとポッドの頭頂部がスライドし機関銃が現れた。そしてその機関銃にはセンサーが付いており、登録されていないベルガー粒子を持つ生物を撃ち抜くようプログラムされている。今回はアインの持つベルガー粒子のパターンを覚えさせていない。つまり、この場において撃つ標的はアインのみ。


「マジ…か…!」


流石にアサルトライフルよりも口径のデカい機関銃を向けられて回避行動を取らない訳にはいかない!


合計で5丁にもなる機関銃が唸りを上げて銃口から火炎と共に12mmを超える弾丸が放たれる。その威力は地面に着弾すれば地中に地雷が爆発したと錯覚するほどの土煙が舞い上がる程だった。


機関銃の連射間隔は広く、1秒に良くて2発程度しか撃てないが、それが5丁分にもなると関係がなくなる。


「ぐっ!!」


アインは回避行動を取りながら能力を行使する。弾丸が地面へとぶつかる際に生じる衝撃が予想していたよりも強烈で、マトモに近距離で食らえば鼓膜は破れ脆い血管が破裂するほどだった。アインは自身の身体を固定するだけでは防げないと悟り、因果そのものに干渉して衝撃と熱を遮断した。


だがこの選択は脳へのさらなる負担へと繋がる。結局のところダメージを疲労として変換し脳へ蓄積させているに過ぎない。その事にここ最近気付いていたアインは出来るだけ最小の射程と効果範囲で済ませようと尽力しだした。


「…流石はネストスローク。機械類はお手の物だな。」


センサーの射程が広いのか離れていても追撃してくる。しかもあの機関銃はオマケのようで本命はポッド本体に格納されていた物資。後方に下がっていた兵士達がポッドから銃と弾薬を補充しているのがチラッと見えた。


「βはショットガンでR.E.0001に牽制をし、αはスナイパーライフルで狙撃を行ないなさい。狙うのは胴体、又は手足のみとする。」


兵士達はアサルトライフルを腰に取り付いているサブアームで掴み武器を変更していく。このサブアームは第3の手足として機能する装備で手となり足となったりする。アームの先端は手のような4本の指が付いており、その指で銃を掴んだり引き金を引いたりも可能。


更に装備を背負って重心位置と姿勢が不安定な兵士を補助するためにアームが動き重心位置を調整したり、実際に地面にアームを突き立てて足の代わりにもなる。特に姿勢を固定して精密射撃をする際には通常はうつ伏せの状態が好ましいが、このサブアームなら立ったままでも正確な射撃が可能となるのだ。


能力が飛び交う戦場においてこれは大きなアドバンテージになる。なにより疲れづらい点がアインとの戦闘において重要、真正面からぶつかればどんな能力者もアインには勝てないが、持久戦ならばネストスローク側に勝機がある。


能力者の数と物資の差で勝負に出た所からネストスロークの本気度が伺える。


「機関銃の残弾ゼロ。αはポッドで半身を隠しながら狙いを定めβは前へ行きなさい。」


「「了解。」」


現場の様子を知覚し指示を出すマザーはチェスの駒を動かすプレイヤーのような視点だった。それは駒への価値観に対しても同じで、勝負において駒が重要なのは間違いないが駒そのものには何も感じるものはない。失えば補充すればいいだけのこと。それだけの価値観しかマザーは兵士達に価値を見出していない。


「R.E.0001の頭部には当てるなよ!…撃て!」


ネストスロークが用意した散弾銃(ショットガン)は従来のショットガンとは機構が異なっている。銃口に細工が成されており横一列に銃口が開くタイプと丸形に拡散させるタイプの2種類が存在する。銃身にあるトリガーを操作して切り替えられるようになっており、横向きなら銃口は横に拡散しトリガーを下にスライドさせると銃口は丸く拡散する。


今回は胴体部を狙うのでトリガーは横に立てて引き金を引く。そうすれば散弾の玉が横一列に拡散していき標的にヒットする。


「これは…!?」


アインは散弾を無力化させようと能力を行使したが自身の思っていたよりも負荷が大きく脳に疲労が蓄積されていく。問題なく能力は行使され散弾の細かい玉は地面に落ちたり服の皺にくっついたりしているが、寧ろ完璧に能力が働いている程にアインの脳は限界に近付いている。


これはアイン側の問題ではなく能力側の問題。射程も効果範囲も広すぎるが故に全てをこなせてしまう事が原因だった。


[何だ…ベルガー粒子が乱れた? …そうか 散弾の玉一つ一つの処理を行なっているのか]


アサルトライフルが撃ち出す弾丸は一発ずつだが、ショットガンは一発撃ち出すと最低でも10発を超える散弾がR.E.0001の身体にヒットする。そうした場合どちらが脳への負荷が強いのかは明白。


「散弾による効果を確認。全ての散弾をR.E.0001に浴びせなさい。」


マザーはすぐさま追撃を指示した。アインの持つ能力の弱点の無さから生じるアイン自身の弱点に気付き確信を得たのだ。


β部隊はショットガンを両手で構えながら走り出し銃口をアインに向けて引き金を引いた。射出された散弾は確実にアインを捉え能力を使わせていく。アインの身体には傷一つ存在しないが脳への負荷は無視出来ない所まで来ていた。


「…出し惜しみしている場合じゃない。」


アインは右手を伸ばし腰に付けたホルダーから自動拳銃を取り出した。そしてベルガー粒子を弾倉に纏わせて引き金を引き弾丸を射出する。弾丸は真っ直ぐ飛びながら軌道を描き兵士の装着するスーツに着弾した。


「…問題無し。攻撃を継続する。」


しかし敵は気にした様子もなく射撃を続ける。アインは必死に回避行動を取りながら2射目を発砲。だがこれも敵の身体に当たると跳弾し地面へめり込む。


(…僕が纏わせたベルガー粒子は残留している。敵に奪われたわけじゃない。)


人型バグはベルガー粒子をコントロール化に置いて奪ってきたが今回の場合は違う。ただ妨害されているみたいな…。まるで干渉されて能力が乱れたように感じた。理屈は同じでも規模が違う。恐らく人型バグのような強力なものではない。


そして敵のベルガー粒子自体には何も変化がない。貴重な2発を使った甲斐があった。これは能力者による妨害ではなくなにかの装着による干渉だ!つまりあいつらの背中に背負っている装置のどれかを破壊すれば攻撃が通じる!


「ーーーα部隊…手足を狙い狙撃しなさい。」


発射音と同時に僕は身体のバランスを崩しその場に転倒した。能力の使い過ぎによる疲労か?すぐに立ち上がろうと左手を地面に着けようとしたらまた転倒してしまう。なんだ、左手の感覚が…


「あ、なんだこれ…?」


左手に違和感を覚え見てみると肘より先が無くなっていた。有り得ない…身体の軌道には注意を張っていた。でも身体の表面に纏わせていたベルガー粒子が乱れている?いやそんなことよりも傷口の断面から血がこんなにも流れて…


「痛ッ〜〜っ!!」


自覚した瞬間に痛みという信号が脳を支配し三度転倒した。敵の事や色んな情報が頭から抜け落ちて激痛のみに神経と思考が持っていかれる。


ここまでの怪我をしたのは初めてで慣れない痛みに吐き気を覚え何も出来ない。能力を止めたら自分も仲間も死ぬのにそこまで頭が自分の意志で動いてくれない。痛みという人格に身体全部を乗っ取られたみたいだ。


「ーーーA.vsc弾の効果を確認。R.E.0001を捕獲しネストスロークへ連れてきなさい。」


マザーの指示に従い兵士達はアインを取り囲もうと歩き進めていく。

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