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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
5.終わらせた未来の軌跡
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血の繋がり

気が付いたら400話の大台を超えていました。今年の1月に400話ぐらいで完結するのかな〜って考えていた自分を殴り飛ばしたい。

コイツらは血が繋がっているとしたら間違いなくあの女はバグだ。付いてこいなんて一体何が目的なんだ?


「ねえ、さっきからあの女?は何を誰と話しているの?ちょっと怖いんだけど……」


アネモネが服の袖を引っ張ってきた。みんなも同じ感じで不気味に思っている。僕もそっち側の認識なのに……


「えっとね……あの女と人型バグが会話している。どうやら家族らしいんだけど、そうなるとあの女も人型のバグになる。」


「……じゃあ敵ね。」


その認識で良いと思うんだけど、あの女からは殺気のような気配を感じない。寧ろ親しい雰囲気を感じる。


「ーーー“メイ”?ドチラカトイエバ“オバ”か“イトコ”にチカイダロウニ………イヤ ソンナコトハドウデモイイ オレノジャマヲスルナラヨウシャハシナイ」


散らばっていた人型バグは1つに集まり身体を形成した。コイツからは相変わらず殺気を感じるが標的が僕達から女の方へと向かった気がする。


「人を殺す事をプログラムされた能力(アナタ達)は大変だよね。でもさ、考えてみた?人を殺しきったら自分達の()()()()()()()()()()?」


プログラムされた?存在意義を失う……?彼女は僕達の知らない事を知っている。しかもバグの根幹となる部分をだ。


「ダマレ ニンゲンは……ノウリョクシャハスベテコロス ()()()()()()()()()()()()()()


やっぱり人型バグは僕達能力者を殺すのが目的なんだ。だけどハハ?ハハの願いを叶える為に……?どういうことだ?


「アッハッハッハ!その感情すらプログラムだって分かっている?アナタも意思、思考があるんだから自分の生き方ぐらい自分で決めたらどうですか?千年経ってもマザコンは結構ヤバいですよ〜?あ!マザコンというよりババコンが正しいですかね〜。」


ブワッと人型バグから殺意が吹き出たのを見た。殺意を視認出来たと錯覚するほどのドス黒い殺意。自分に向けられていないって分かっているのに手の震えが止まらない。こんなものを直接向けられたらと考えただけで……。


「オマエヲコロサナイノハ オレニノコッテイルリョウシンガアルカラダ デナケレバコロシニイッテイタダロウヨ」


人型バグの身体が変異する。氷のような質感から鉱石のような結晶体になり周囲の温度が上がっていく。だが熱すぎも寒すぎることもない。僕達が過ごしやすい温度に調整されている。……なんだ急に。意味が分からない。


「あは!血が繋がった家族は良いですね!それではこの者たちを連れていきますね。……ふふ、そんな顔をしないでくださいよ。いずれ耀人がノコノコとやってきたり、()()()()()()()から粋のいい能力者が提供されますから。」


女は笑いながら知っているはずのない名前を口にした。間違いなく彼女は「ネストスローク」と言ったのだ。つまりバグはネストスロークの存在を知っていて……


「今なんて言ったのッ!!答えなさいッ!!」


アネモネが立ち上がり赤い髪を揺らしながら女の方へと向かっていくが、それと同時に人型バグがこちらに背中を向けて立ち去っていく。ど、どっちを見れば良いんだよっ!?


「ちょっ!アネモネ待ってよっ!それに貴方も待ってっ!」


フェネットがアネモネを追いかけていくと自然とみんなも突然現れた女の方へと流れていく。だが僕はアネモネの背中を追いながらも後ろを振り返り人型バグを見た。


そして彼と目が合う。その瞳には変わらず人類への深い殺意が宿っていたが、何故かその時の僕は奴の意思で持った殺意ではないと思えて不憫に思えた。


プログラムされた存在……。持ちたくもない役割を背負わされた悲しき生き物が僕達を羨ましそうに眺めながらその場に立ち尽くしたのを僕はしっかりと記憶しその場を立ち去った。


「あっはっはっは〜私はそんなに強くないから襲わないでね〜。これでもいいタイミングで介入したんだよ〜?だから信用してくれると嬉しいな〜って。」


僕は少し遅れてアネモネ達に追い付くと皆が女性型バグを取り囲みながら歩いていた。さっきまであの人型バグと戦っていた事なんて嘘だったんじゃないかってぐらいの反応に少し戸惑う。


「……コイツ絶対に怪しいぜ〜?どう思うよみんな?」


「怪しい……急に現れてしかもどこから来たのかも分からないもん。」


「怪しきは罰せよ……よ。殺した方が早いんじゃないの?」


駄目だ……ディズィー・ユー・ナーフの3人は疲れ果てて思考力が低下している。かなり物騒な考え方で女性型バグを殺そうと画策しているもん。


「止めてくださいよ〜。私は人類のパートナーですから〜!」


女性型バグは両手を上げて手をひらひらしながら軽口を叩く。よく観察し見てみると年齢は僕達より少し上のように感じる。体つきは華奢ではないが決して筋肉のつきは良くない。異形能力ではないな……でも何だこの落ち着き方は。まさか勝てると思っているのか?それだけの能力を持っている……?


「何個か質問させて。それで判断して貴方との関係性を決めるから。」


アネモネは鼻血を袖で拭き取って女性型バグと向き合う。それを見て?(フードを深く被っているのにどうやって?)女性型バグもアネモネの方を向きながら歩き続ける。


「ええ良いですよ。アナタはアネモネ……でしたよね。どのような事を聞きたいですか?」


「……なんで私の名前を知っているのかはこの際置いておいて、貴方さっき間違いなくネストスロークって言ったけど何で知っているの?」


そう彼女はネストスロークの名前を知っていた。しかもそれをあの人型バグに何でもないように話していた。ということはあの人型バグもネストスロークを知っていたことになる。説明無しでネストスロークという単語の意味を理解出来るわけがない。


「んーとそれはですね〜。だって私はネストスロークと連絡を取り合っていますから。」


そう彼女はなんてことない事を言うように言い切った。僕達は歩くのを止めて彼女を見続けるが、それでも彼女は歩くのを止めずに僕達の前へ進んでいく。


「え、な、なんて言いましたか……?ネストスロークと連絡を取り合っていた……?」


アネモネの声が震えている。あまりに信じられない情報に頭の奥が痛くなってきた。


「はい、そうですよ〜。私はアナタ達を迎えに来たんです。ネストスロークはアナタ達を見失いましたからね〜。代わりに私が皆さんを保護しに来ました。」


彼女の語る口振りは最初から変わらない。ずっと軽口でとんでもない内容を口にしている。


「大変だったんですよ〜?皆さんの居た基地は崩壊してましたし〜?しかもあの陰キャに喧嘩吹っかけて殺されかけてましたし〜〜?私アイツのこと嫌いなんで本当は来たくなかったんですけどね〜〜。」


彼女が軽快なステップを踏むと服の裾が地面に触れるかどうかの所でヒラヒラと揺れて、彼女の軽薄そうな雰囲気と良く合っているように思えた。そしてそこで気付いた。彼女の服はまるで基地と先輩達を襲った人型バグのような質感をしていると。


思い出したよ。ああいう服はスカート型だ。昔女性が良く着ていた服と似た形状をしている。まるで人の肌と枯れた木の葉を合わせたような色と質感。そして彼女から漏れ出しているベルガー粒子。


間違いない……コイツはあのバグに近いものを感じる。


「ウフフ。そんな熱い視線を向けないでくださいよアイン。ミカエラが悲しみますよ?」


女は振り返る。フードの下から見える口元は嫌らしく弧を描き笑っていた。邪悪……彼女を評するなら邪悪という言葉がピッタリだ。


「……なんでミカエラのことを知っている?」


彼女は何でも知っている。僕達のことや僕達の知らない事、そして僕達が知っていること全てを。


「だって、私の能力は()()()()ですから。」


彼女はフードを外し素顔を晒す。茶色の髪に黒い瞳、耳は僕達のように顔の横に生えていて、顔は整ったアジア系の顔立ち……その姿は正に人間そのもの。


彼女はバグではない。目の前の彼女は僕達と同じ能力が使える人間だった。

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