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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
5.終わらせた未来の軌跡
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ディズィーの真価

自分のベルガー粒子以外が身体の周りに纏わっているのは不思議な感覚だ。だが嫌な感じじゃない。見知った奴のベルガー粒子だからか?なんか…暖かい感じがする。いや、バグの能力のせいでめちゃくちゃ寒いんだけど、温かい何かに包まれているような感じがして安心感があるんだよな。


(なんかイケるって思える。)


あのアインですら近付けない相手なのに今から俺は突っ込む。だが不安はない。寧ろちょっとワクワクしてるかな。ここで決めれば俺カッコいいんじゃん?みんな助かるし凄いって褒めてくれるだろうし、俄然やる気しか出ねえわ。


「ここで決めろ…ここで決めたらカッコいいぞ俺…」


自分に言い聞かせて集中力を上げていく。自分のベルガー粒子は身体の内側へ押し込むと筋肉が膨張して神経が研ぎ澄まされていく。


俺の異形能力はかなり単純な能力でベルガー粒子で筋肉を増強したり神経系を強化して五感を高めたり出来る。そして血管や細胞…?なんかのサイクルを早めて傷の治りを良くしたり早くしたりも出来る。


たったこれだけだ。一応2つの異形能力だけどこう述べると3〜4行で説明が終わっちまう能力だ。俺よりも有能な異形能力はごまんとある。例を上げると電気系や燃焼系。あとは硬質化なんてものある。


だからなのか。正直な話をするとみんなが羨ましかった。みんな俺よりも凄い能力を持っている。特にアインやアネモネはすげえ。頭良いし能力の使い方も上手い。俺には真似できないからいつも頼ってしまう。


だけどそれって俺があまり頼りになっていないってことだよな?自分で決められないから判断と責任を2人に押し付けていることぐらい分かっている。それぐらいは分かってる馬鹿だと自負しているが、多分知らない所でみんなに負担を掛けてしまっている。


だから…ここで自分の存在理由を証明しないといけない。異形能力は近距離で戦わないとただのお荷物だ。前線で戦うからこそ俺の価値は生まれる。


「しぃーー…行くぜッ!!」


口から白い吐息を出して足に溜まったベルガー粒子を爆発させた。足を一歩踏み抜くだけで地面の表面が割れて大きく抉れる。元々地面はバグの能力による熱で溶かされてから冷えて固まり硝子のような表面になっていたので割れやすくなっていたのだ。


その破片が後方へ飛んで散らばり音を鳴らしていたが、彼の耳に届くよりも早くディズィーは前へ前へと突き進みバグに接触する。ユーとアインの能力により風の抵抗を受けずに走れたお陰だがこの時のディズィーは音速と同速だった。


質量80kgが音速で衝突した際の衝撃力は凄まじいもので容易く炎の壁を突き破り高気圧の空気層を抜けてバグの身体を粉砕してみせた。それでもディズィーの勢いは止まらない。空気もバグの身体も今のディズィーにとってはそう変わらないものだった。


バグの身体は熱せられジェル状になっていたこともありディズィーの攻撃で散り散りになる。そしてディズィーは攻撃の手を緩めずに急ブレーキを掛け、左足を腰の位置まで上げてから地面に振り下ろす。地面はエピが柔らかくしていたこともあるが、ディズィーの踏みつけた衝撃で地面が割れて地面に埋まっていたバグの身体と一緒になって隆起した。


「行くぞアインッ!」


ディズィーはそのバグの身体と一緒に隆起した土の部分をアインの下へと殴り飛ばした。その突拍子もないパッションの効いた行動にアインは驚きつつも意図を理解しベルガー粒子の操作をする


(この能力は世界から存在を削除する。これは今までに無い能力の使い方だ。)


新たな能力としてアインは認識し能力を行使した。


「【削除(リボーク)】!」


アインの射程に入った土の塊とバグの身体の一部が消滅する。その際には音もなく過程もない。ただそれが普通であったかのように結果だけが残る。これがアインの新しい能力【削除(リボーク)】。アインの能力を更に一段階引き上げる能力であった。


「今ので1割2割は持っていけたからもう少し頑張ってみんなっ!!確実に僕達が勝っているから!!」


アインは皆の能力を駆使すれば不滅に近いバグであっても消滅することが出来ると確信に至る。今の一連の出来事で分かったが、バグの身体は分散させて少量の質量であればベルガー粒子を奪える程の知能は無いと思われる。でなければわざわざ自分の身体を消滅させる訳がない。


このバグはかなり知性が高い。人間かそれ以上の知能があると思われる。だが分散するとこのバグは能力と思考力も落ちるんじゃないか?分散しユーを背後を取って攻撃を仕掛けてきた時もそこまで出力は出せていなかった。ユーの髪をパサつかせるぐらいだったしね。


「あとディズィー!」


「え、お、おう!?」


突然自分の名前を呼ばれて混乱するディズィー。何か失敗したかと焦りつつアインの顔を見る。


「ナイスだったよ!ありがとうっ!」


アインの笑顔混じりの称賛。それを見て聞いたディズィーの顔は自然とほころぶ。


「…おうっ!!お前こそナイスだったぜっ!!」


2人はお互いを称賛し認め合う。それだけでディズィーの中にある悩みと迷いはスゥーッと消えていく。


そうか…たった一言で良かったんだ。アインから認められるだけでこんなにも満たされるのならやって良かった。…だけどまだやれる。まだ大部分は残っているからな〜油断なんかしてられねえ。


「ハアーハアーハアー…」


アネモネは能力の行使を解除し膝から地面にへたり込んでその場に両手を付く。かなり身体への負荷が大きく血流が乱れ頭に上った血がサーッと引く感覚に平衡感覚を失う。


「ちょっ!アネモネ!」


「え、アネモネ!?どうしたの!?」


アネモネの異変に気付いたマイとフェネットが駆け寄る。だがその隙を見逃すような敵ではなかった。分散した身体の一部からベルガー粒子が溢れて氷の塊を形成していく。そしてそれらの氷の塊が空中に浮かび完全なサイズになった瞬間にアネモネの周辺へ放出された。


「この陰湿バグッ!」


バグのやり口に一番キレているユーがアネモネの周辺にバリアを張る。だがバリアに氷の塊が衝突すると砕けて辺りに飛び散る。その破片はかなりの質量と速度でありバリアの外にいるエピとディズィーユーを襲う。


「コイツっ!」


「性格悪いっ!なによコイツ!」


「氷の塊を作っている結晶体を狙うしかねえ!」


だがそんなことをすれば標的はアネモネ達からバリアの外にいる3人へと変わり氷の塊が放出される。バリアを張っていても衝撃で吹き飛ばされれば最悪の場合、脳震盪を引き起こし能力が解除されてしまう。特にユーは致命的だ。それはエピもディズィーも理解しているので優先してユーを守る為に能力を行使した。


「ユーは地中へ逃げろっ!グワッ!」


「え、キャッ!」


エピはユーの足元の地面を柔らかくし本人の意志とは関係無しに地中へ避難させる。だがそんな事をしていればエピは氷の塊を避けられずまるで氷の山に押し潰されるようになってしまう。ワザと放出する速度を下げて積み上がるようにバグが調整したのだ。


「いい加減にしろっ!!」


自身の軌道をアインによって固定されているディズィーは地面に手を差し込んで持ち上げる。すると何百kgにもなる土の塊が岩盤のように剥がれ、それをディズィーは持ち上げて分散したバグへと投げ飛ばす。その途中で氷の塊に撃ち抜かれたりして土ばバラバラにされるが一時的には注意を引けた。その間にエピを救出するために駆け出す。一人も死なせない為に。

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