問題児
次で伊藤美世視点を終わらせて最後に先生視点を書いて3章に入りたいと思います。…思うだけですが。
先生の悪口を言われて完全にキレてしまった私は炎天にガンを飛ばす。
「訂正しろよ。」
「ああ?」
ヤンキー座りした炎天と腕を組んだ私とでメンチを切り合う。腕を組んだのは挑発行為の意味もあるが銃を握ってしまいそうなのでそれを防ぐ為に腕を組む必要があった。
「耳がおイカれになっておられるのですか炎天様?訂正しろって言っているんだよ。」
「てめぇ…」
お互いに殺意を放ち合いながら今にも飛びかかりそうだ。
「先生は平穏な世界を実現する為に尽力していらっしゃるの。私はただその目的の為に使われているだけ。」
「あー?話が見えねえぞ?」
「私の意思で死神の側に居ることを選んだって事よ!貴方なんかにどうこう言われる筋合いなんかない!」
「じゃあ何だ〜てめぇは利用される事を承知の上でアイツの軍門に下った、て事か?」
炎天の額にある血管が浮き出る程に怒りをあらわにする。何故そこまで怒るのかは分からないがこいつは敵として見ていいだろう。
「ねえ貴方って私と先生の敵?」
左手にベルガー粒子を集中させながら炎天に尋ねる。返答次第ではここで殺す。
「はっ!さあな?どっちだとおも…」
ニヤけた面でふざけた事を言ってくるのでここで殺す事にした。【再現】で軌道を確定させて炎天の首を絞める。
「ッガァ!?」
炎天もそのスピードに反応出来ず伊藤美世の細い指が首に食い込むように絞められて言葉を発せなくなる。
(コイツ!ガキの癖に腕力が尋常じゃねえ!)
美世よりもふた回りも太い腕を使って引き離そうとするがまるでびくともしない。炎天の腕力は能力者の中でも上位に位置するが、それでも美世の軌道を固定された腕を引き離す事が出来ない。
「死神の正体を探る者は処理する。」
私のせいで先生に迷惑をかけた日には切腹しなければならない。大事な恩師の期待を裏切るような真似は許されない!
「炎天が力負けしている?信じられない…どういう筋力をしているんだ?」
宵闇が信じられないものを見た反応をする。
「あれ止めないと殺されるんじゃない?あいの風が。」
ポニーテールの似合う高身長の麗人“天狼”があいの風を心配して周りに聞こえるように忠告する。
「痛っ!」
左手に鋭い痛みが走った。炎天から蒸気の様にベルガー粒子が噴出され炎天の皮膚が高温になる。
(ヤバい…異形型の中でも面倒くさいと言われている発火系の能力者か!)
「手を離したほうが身のためだよ。そいつ500℃まで体表温度上げられるから今、手を離せば日焼け程度で済むよ。」
ここで初めて声を出したのが見た目と雰囲気が大学生のような青年“初凪”
親切心で声をかけているが、手をうちわの様に仰いで話しかけている様子からは煽っているようにも見える。
「炎天は異形型の能力者ですから首を締められた程度では殺す事も意識を奪う事も出来ませんよ。」
二人には目もくれずに未だカップを手にして優雅に紅茶を楽しんでいる貴婦人“薬降る”があいの風にアドバイスを飛ばす。
「何を言っているか分かりかねますね…首自体を潰せばどんな能力者だって死ぬでしょう?」
左手の感覚が無くなってきた…かなり火傷が進んで神経すら駄目になってきたかも。顔まで熱が伝わってくるぐらいの熱さ…かなりの高温に達している。
(手の表面だけじゃなくて手首まで火傷が進んでる。けど関係ない!)
防火対策されたグローブでも熱自体は断熱出来ない。さっきから腕全体が痛みを訴えてるけど脳のリソースを【再現】に割いて痛覚を鈍くさせれば!
例え私の手の筋力が焼き固まって自分の意思で動かせなくなっても握り拳を作る軌道を描けば私の筋力なんて関係ない。
「私の左手はくれてやるよ炎天。その代わりにお前の命は頂く!」
「そこまでだ。」
炎天が突然、目の前から消えて私の左手は握り拳の形のまま空を掴む。
【探求】ですぐさまに炎天の位置を認識する。この感じ…ワープか?
「ゲホッゲホ!ゲホ!」
「大丈夫ですか炎天様!」
私から5メートル離れた場所にワープした炎天の首には私の手の形の痣が出来ている。
「お互いにやり過ぎた。歓迎会で殺し合いなど聞いたことが無い。」
(この人、強いな。ベルガー粒子がこんなに均一に張られた人見たことない。)
「先生からは能力を探る奴は殺していいと言われていたので。」
「それは組織の人間であってもか?」
「何で死神より会ったばかりの人を優先しないといけないんですか?」
意味が分からない。どうして先生よりお前達を優先して考えないとなんだ。
「…なるほど。お前の考えは分かった。“初電”…炎天を連れて下がれ。」
はついなびかり?が炎天を連れて行く途中に何度も睨まれる。嫌われたな〜。
「自己紹介が遅れたな“蜃気楼”だ。」
挨拶の為に左手を差し伸ばしてきたので火傷が酷い左手を伸ばす。
「そういえば左手は大丈夫なのか。おい“薬降る“診てやってくれ。」
貴婦人さんが私の側まで近付いてくる。この人は薬降るって言うのか…覚えた。
「痛みはありませんか?」
「かなり痛みますが大丈夫ですよ?」
シェイプサテングローブを取ったら腕全体が真っ赤になって指先から手首まで水膨れで腫れていた。
「「「「っ!?」」」」
私の火傷痕を見て数人が目を見開いて驚く。
「お前やせ我慢も大概にしろよ!薬降る早く治してやれ!見てるこっちが痛くなる!」
「分かってます初凪!あいの風、少し触りますけど良いですね。」
「痛たた。」
薬降るさんが私の左手を包むように両手で掴みベルガー粒子を纏わせる。多分治癒能力だと思うけど初めて見た。あ、能力といえば…
私はさっきの現象が気になって蜃気楼の方に顔を向けて質問を投げる。
「そういえば蜃気楼さん、あのワープって蜃気楼さんの能力ですか?」
蜃気楼が少し眉尻を上げて私の疑問を解決してくれる。
「ああ確かにそうだが、それよりも自分の事を気にしなさい。」
「まったくだ。」「とんでもない問題児が入ってきたな。」「死神も苦労とかしてんのかな?」
各々が言いたい事を言い合っているが訂正してほしい。私は優秀な生徒だ。いつも先生に褒められているからね!
「治しました…でも傷跡が少し残ってしまいました。半年もすれば目立たなくなると思いますが後で塗り薬を出しておきます。」
「えっ!?」
目を離した瞬間、火傷が治っていた。え、凄い!なんだこの能力!傷跡なんて良く見ないと分からないレベルしかない。日焼けって言えば誰も分からないだろう。
「本当に早業だな薬さんの能力は。」
「“天狼”の能力ほどではありません。」
ポニーテールの人が天狼ね。カッコイイな〜コードネーム。
「良し、仕切り直して歓迎会を再開しよう。」
え!まだ歓迎会やるの!?しかもみんなお茶会のセッティング始めてるし!?
「これが処理課…なんて人達の所に来てしまったんだ。」
自分の事は棚に上げて発言したら薬降るさんから呆れられた目を向けられる。
「只でさえこの課は変人の集まりなのに、一番おかしな子が来てしまいましたね。」
ブクマをしてくれる人には幸運が訪れますよう毎秒祈っております。




