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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
1.初めての殺人
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殺意

次戦わせたいな

ビルの中に入って一歩、また一歩と進み最初に思ったことは。


(明るい…。)


どうやらビル内部の電気が生きているようで蛍光灯がついてる。


外からはひと目で廃ビルだと分かる暗さなのに実際には明るいなんて、まるで私みたいだ。…どうしようハイになってる。廃ビルだけに。


これから命のやり取りを行うに事に対し、なんというか現実感がない。その証拠がくだらない自虐(じぎゃく)ギャグだ。他に考えねばならないことがあるのに気持ちがついて来ない。


それに対し身体はこれから起こる事を認識してか、頭の血が足元に落ちるような感覚がある。人は緊張したりすると足に血液を集めていつでも足を動かせるようにする機能があって、それが遥か太古から生存競争で長年培ってきた人間の本能だと何かの記事で読んだ気がする。身体は正直だ。


喉は汗をかいたことと緊張でカラカラになってる。左手に持ったカッターもギュウっと握ってるため指先の感覚がない。


あれだけ待ち焦がれたシチュエーションなのに待ったをかけたくなる。気持ちの整理をしたいと切実に思う。


正直な話、準備が足りなかった。覚悟だけ一丁前で衝動的にここまでやってきたが、現実問題相手を殺す手段、又は対象を無力化する手段が今の私には無い。


(…それでも、私のお母さんを殺した犯人がこのビルの中に居るかもしれない!)


覚悟は、覚悟はあるのだ。そして私には能力がある。上手く使えば奇襲を行う事だって可能なはずだ。


私は肩にかけたカバンを担ぎなおす。


私は<地図>でビルの中を確認した。確認とは言っても【マッピング】が自分の周り5メートルという制約だと中々うまくいかない。

 

今、私が居る階と上の階の少ししか確認出来ない。結局のところ歩いて進まなければ()()()()()()()()()()()()


足音を出さないように慎重に廊下を進む。隅には埃が溜まっているが、床はそこそこ片付いていて、音が鳴るといった心配はなさそうだ。


(まず一階と二階を【マッピング】しよう。このビルが何階建てか分からないが、下から順次に上がって行けば対象と同じ階に居なくても、下の階から()()()()()()()()()


行動方針を決めて私はビルの中を歩き続けた。


一階には部屋が等間隔に配置され、ダンボール、書類の束、デスクがどの部屋も似たように置かれてる。

 

二階は木材か鉄骨?といった資材が置かれてる。私の能力ではシルエットから形状を読み取って判断をしないとだから正確性というか視認性が良くない。


(まあ、対象が何処に居るか分かれば充分なんだけどね。)


二階までに対象が居ない事を確認した私は階段で二階に上がる。電気が通っていてもエレベーターは流石に使えない。二階から三階を【マッピング】しながらこのビルの広さを確認する。


(一階と二階の広さが同じだしどの階も広さと造りは似たようなもの。大体5分も歩けば各階の<地図>が埋まる。)


私は情報を頭の中で(まと)めながら三階に上がる。


そして四階の【マッピング】していたら妙なものを見つけた。


(何だこれ?マネキン?)


いくつものマネキンが倒れた状態で置かれていた。ここは衣服などを扱っていた会社だったのだろうか。四階の【マッピング】を済ませ四階に上がる。


(そろそろ対象が居そうだな。気を引き締めないと。)


カッターを握りしめ四階に上がっていくと悪臭が鼻についた。やはり廃ビルだから不衛生なのだろう。


(うっ、臭うなここ。)


人の居ない廃ビルなど掃除とか行われていなさそうだが、ここの階は特に臭う。五階の【マッピング】を行うために奥へと進んでいく。


臭いで気持ち悪くなりながらも私は歩き続ける。この先の奥がマネキンが置かれた部屋だ。どんどん臭いがキツくなっていく。


…嫌な予感がした。私はコレに()()()()()。お母さんが殺された日、お母さんを示す青い○が灰色になり人のシルエットになった。あの時初めて人の死を見た。


部屋のドアの前に立つ。臭いはこの部屋からだ。喉の奥から酸っぱいものが込み上げてくる。ドアノブに手をかけるが上手くいかずドアノブに爪があたりカチッとだけ音が響く。

 

その音にビクッと震えた私は対象に聞かれなかったか周りの気配を探り耳が研ぎ澄まされていく。耳鳴りと心臓の音でよく聞こえない。


ーーーここに来るべきではなかったかもしれない。

 

そんな後悔とここまで来たからには何かしらの収獲を得なければという考えが同時に浮かび上がる。


私は…どちらを取る?


そんな自問自答に対して答えはずっと前から決まっていた。 


私は…ドアノブを捻った。


「う、うぅ…んく…んくぅっ…」


吐き気と声を口に手をあてて無理やり抑える。すぐにドアを閉めその場から離れた。


「おええぇ…っ」


女性の死体が無数に置かれていた。シルエットから服装が乱れていることが分かっていたが、何故乱れていたかが分かってしまった。

 

()()()()()()()()()()()()。下着を脱がされ胸は曝け(さらけ)出されていた。

 

尊厳など無い。()()()()()()()()()


「ハァ…ハァ…ろ、して…やる…。」


殺してやる。自分の母親を殺された記憶、彼女達の光景。これで殺意が湧かないやつがいるか?


ふらふらと立ち上がりながら歩き出す。能力に意識が向けられ、私は願った。あいつの死を、あいつの位置を、私にあいつを殺す力を!


私の意識が上に向かう。身体から離れ天井を抜け()()()()


解体途中なのか壁が取り壊され鉄骨が剥き出しになっていて、最上階は天井すら無くなっており青いビニールシートが屋根代わりになっていた。


索敵範囲が5メートルという制約が破られビルの半分を覆う【マッピング】が行われる。


「ーーー見つけた。」


 身体に意識が向き、先程の幽体離脱のような現象が終わる。私は階段に足をかけた。


『ーーーこれは 当たりを引いたか?』

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