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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
5.終わらせた未来の軌跡
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ぶつかる異能

凄い…そうとしか考えられない出来事がいま目の前で起きた。私の視点からはアインの撃った弾丸が敵を吹き飛ばし視界から消え失せたように見えたけど、本当にそうなのかは分からない。見ていた筈なのに理解が追いつかない。


アイン…あなたは人類で最も上の位置に居る能力者ってことをちゃんと自覚してる?


「…殺せてない。仕留め損なった。」


アインはそう言って空中に固定された建物の外へと出ていってしまう。一体彼には何が視えているの?


「待って!」


私と仲間達はアインを追いかけて出ようとするが、地面はまるでスープのように煮え滾り真っ赤に染まっていたので降りることは出来ない。だがアインだけは何でもないように地面に着地し歩き出してしまった。まさか私達を置いて1人で戦うつもり?…まだこの男は分かっていないみたい。


「みんなはそこから出ないで!そしてヤバそうならあのゲートまで行って先に離脱していて欲しい!」


「なっ!?勝手な…!」


あまりに一方的なアインの言い分と言い方に私はムカついた。でもそれは私だけではなく、どうやらみんなもアインにムカついてるみたい。こめかみの血管をピクピクさせて今にもブチ切れそうだったもの。


「…だから勝手な言い分を押し付けるなって言ったのにまだ理解していないのあの馬鹿っ…!」


怒りに震えた声を出すフェネットの周りの温度が上がっていく。彼女は怒ると周囲の温度を上げてしまう癖がある。だからその上昇した温度で大体どれぐらい怒っているのかは分かるのだが今回は相当怒っていると見ていいだろう。


「私がみんなを運ぶよ。」


ユーは全員をサイコキネシスで身体を浮かせてアインの下まで運んでいく。これだけの人数を運べる程に今のユーはキレていた。多大なストレスの影響か、能力が増大し特に問題なく全員を運べている。


「…来ちゃったか。今回は来ないでほしかったんだけどな…」 


敵に対し有効打を持っている自分一人で戦った方が勝率は高いと思う。前回の人型バグとの戦闘では疲弊した状態で本体と戦ったのが一番の敗因だと僕は考えているから、あの時コンディションが整った状態での戦闘なら自分の能力で押し切れたかもしれない。


そして今回はまだまだ余裕あるし恐らく本体が出てきている。これは千載一遇のチャンスだ。ここで仕留めておきたい。そうすればこのトウキョウ付近の安全は確保されて遠い場所まで探索に向かえる。


「置いていくなバカアイン!」


ユーのヒスが入った声で文句を言われる。そして文句を言いながらもその人数を運びながら高度を保っているから器用だ。前のユーならその人数は厳しかったのに今では余裕そうに運んでいる。


「…1人で戦える。多分勝てると思うしヤバくなったら逆行して戻るから待っててよ。みんなは相手の攻撃を防げないでしょ?」


みんなの能力で相手にダメージを負わせることは出来ても、相手の攻撃を防ぐ事は出来ないと思う。相手の攻撃はどれも強力で対処をミスれば一瞬で命を落としてしまう。だから敵の攻撃から守る範囲を狭めて戦える一対一の闘い方が良かったんだよな。


「それは…そうだけど、でもみんなで攻撃した方が確実だし敵だって馬鹿じゃない。今は一方的に攻撃出来ているかもしれないけど、ベルガー粒子量を比べればどっちが先に能力が使えなくなるか分かりきっている。」


確かにユーの言うとおり脳すら無さそうな相手だ。やり合っても勝てない可能性がある。生き物ですらないのなら殺す事は不可能。この世界から奴の身体の分子を一つ残らず消し去るぐらいやらないといけないかもしれない。


それにベルガー粒子量も確かに向こうの方が多い。だけど僕達の総量の方が多い…ああ、ユーの言っている意味がやっと理解した。全員で戦ったほうが勝率が高いと言いたかったのか。


「おいおいアインらしくないぜ?また俺達が死ぬんじゃないかって思ったか?それはあまりに舐めすぎだぜ。」


「本当にそう。馬鹿にされたと思ったわ。無自覚なのが本当にムカつく。」


ディズィーとナーフの指摘で自分の行動に問題があったことも理解した。確かにみんなには死んでほしくないから1人で戦おうとしたんだと思う。


自分一人で戦ったほうが勝率が高いんじゃない。1人で戦ったほうが気楽だったからそうしようとしていたんだ…。恥ずかしいなこれ。だってみんなからしたらバレバレで僕だけが分かっていなかった事になるからね。


「喧嘩も良いけど向こうは待ってくれないみたいよ。」


アネモネの言うとおり向こうは待ってくれなさそうだった。この距離からでもベルガー粒子が見える。距離は…かなり遠くて全然距離感を掴めないのにベルガー粒子が膨張していってどんどん視界を侵食していく。


「ねえ、アインは私達の能力に干渉出来る?」


「アネモネ…?そりゃあ出来るけど?能力でもなんでも因果律があればどんな現象にも干渉出来るから…。」


風のせいで髪が流されて視界の邪魔になり両手で押さえながら私はある事を試してみようとアインに提案を持ちかける。


「じゃあさ、さっきアインのやったことを私達の能力で出来ない?」


「さっき…?もしかして()()()()()?」


アインは右手に握られた拳銃をアネモネに見せて彼女が何を言いたいのかを理解した。そして効果的だとも思った。弾丸一発でああなるのだから非常に強力な択になる。


「うん。私達の能力の軌道と事象を固定出来れば相手は防げないんでしょう?拳銃よりもよっぽど強力な攻撃じゃない?」


ここでアインとアネモネ以外の皆も彼女の話す内容を理解する。アイン1人の攻撃だけではなくアインを含めた8人の能力者の攻撃を浴びせたら?しかも軌道も事象も固定された攻撃だ。あらゆる法則を無視した軌道と事象を引き起こすのは間違いない。


これにはみんな満面の笑みで食い付いた。


「やろうアイン!私達の能力なら完全に奴を抑え込めると思う!」


マイはユーのサイコキネシスから逃れ空気中にある()()()()()()()()()()()()()()、空中にて敵の能力を抑えられると宣言した。


「さっきからワクワクが止まんねえんだわ。しかもアインの能力で俺の能力を強化してくれるんだろ?やるしかねえじゃん!」


エピはユーに身体を持ってもらいながらでマイ程は締まらない姿だったが、直接触れてもいないのにベルガー粒子を地面へ伸ばして干渉し、赤く煮え滾っていた地面が誰でも着地出来るよう冷却してみせた。その速さはまるで映像を早送りで見せられているような急激な変化でアインは驚きを隠せない。


「私も役に立ちたい。だからアイン、私達と協力して。絶対に後悔させないから。」


ナーフも昔とは比べ物ならないほどに成長した。自立した考え方を持つようになったしもうユーの為に自己犠牲を語ったりしない。それに彼女の能力は恐らく敵の能力と似た性質を持っていると思う。実際に見て食らった自分が言うんだから間違いない。彼女の能力が奴を消滅し得るキーになるかもしれない。


「俺は言わなくても分かるだろ?また暴れられるから楽しみで仕方ねえぜ。」


ディズィーは拳と拳を合わせて臨戦状態に入った。ディズィーの異形能力と僕の能力の合わせは良くやったし、能力同士の相性もとても良い。それに今は昔よりも頼りになる。ちゃんと必要な時には前線を張ってくれる心強い友になった。


「私も戦うから!ちゃんと役に立てるってみんなに分かってもらうんだからね!」


今も昔も頼りっぱなしだけどねフェネットには。彼女が居るだけで安心感が生まれる。それは僕だけじゃないはず。あの偏屈者のアネモネとルームメイトだったんだ。この中で一番心が強いのはフェネットだと思う。ここら辺でガス抜きしないと後が怖い。いや本当に怖い。


「私はみんなを守る。絶対に傷付かせない。」


ユーにとって戦うとは守ることなんだね。なら安心して防御を任せられる。そういえば戦闘時はいつも彼女はみんなを守る為に能力を使っていたっけか。


「みんなで戦って勝つ。それが最善なのはもう説明しなくても分かるよね?」


心底人を馬鹿にした表情だけどそう言われても仕方ないな。どうやらまだアネモネには逆らえないみたいだ。


「この人数で戦うなら逆行する分の余裕も残せないからね。…分かったよやりますって。後でどうなっても怒らないでね!」


途中みんなにまた怒られそうだったから言うのは止めた。こうなったら総力戦だ。必ずここで勝って人類の仇を討ってやるっ!

次回から総力戦です

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