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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
5.終わらせた未来の軌跡
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素粒子世界の法則

温度とは言うなれば動きである。原子・分子の動きが激しければ熱エネルギーがあることを示し、逆に動きが緩やかであれば熱エネルギーが少ないことを示している。


つまり原子・分子の動きに干渉出来る能力とはエネルギーの量を調整することの出来る能力と言えるだろう。このことからアネモネ、ナーフ、エピ、マイの4人はエネルギーの指向性を操作する能力であり、根本的には干渉の仕方は4人共同じではあるけれども、敢えて違う点を挙げるとしたら指向される方向性が違う程度の差だ。


しかしそもそもエネルギーとは何か。そのエネルギーはどこから来たのかがこの能力の味噌になる。この能力はもともと射程圏内にエネルギーが無ければ何にもならない。


ではエネルギーとはなにか?に話は戻るが、エネルギーとは宇宙が持っているエネルギーの総量である。宇宙誕生のきっかけとなったビッグバン。この時に生じたエネルギーは現在でも総量は変わらない。この世界で唯一不変な存在であり事象であるのだ。


だがこのエネルギーは総量は変わらなくても偏ったりはする。例えば物体が熱くなればそこにエネルギーが偏る。逆に物体が冷えればエネルギーは他へと向かう。


分かりやすい例えだと温かい飲み物が入ったコップが時間と共に冷めていくが、あれはコップの飲み物にあったエネルギー(熱)が空気に指向性を持って移動しているにすぎない。もっと言えば温かい飲み物を作り出すのにもエネルギーは使用される。


エネルギーとは指向性を持って移動し続けるものだが、ひとつ忘れてはならないことがある。この宇宙の法則に自由にアクセス出来るのは4人だけではないことを。トウキョウにあったエネルギーの指向性を操作した者が居ることを彼女達は考えねばならない。


そして、その者の能力は決して「冷やす」という事象を引き起こすだけの能力ではないことを考慮しなければならなかったのだ。冷やされたという事象はあくまでエネルギーがそこから極端に減ったというだけで、()()()()()()()()()()()()()()()()|を…


「これで地中へ行って移動出来る!」


ナーフは赤くに赤熱する地面にを見ながら確かな手応えと感触を得ていた。だから彼女はこの時に気付けた。地面にエネルギーが集まりすぎていることに。


「なんか暖かくなりすぎたな。」


フェネットの創り出した炎に当たっていたディズィーは汗をかき始めていた。最初は炎に当たりすぎだと思いそこから離れたがそこまで効果はない。それどころかナーフの温めた地面から発する熱のほうが暑く感じ階段の方へと避難する。


(なんだ急に暑くなりすぎじゃないか?)


そこでディズィーは周りを見て気付く。自分だけ暑がっている訳ではないことを。一番近くにいるフェネットは全身に汗をかき能力の行使を停止させていた。他も異常な暑さに汗を浮かべて周りを見渡している。何故急に暑さを感じたのか、皆の視線が交差し合い1つの答えに辿り着いた。


「ヤバい逆だ!()()()()()()()()!!」


これが敵の攻撃と気付いたのは気温が30℃を超えた辺りの事だった。急激な気温上昇に凍り付いた建物は溶け始め一気に蒸し暑くなる。


「くっそやられた!ごめん地面から離れて!凄く熱くなっている!!私が能力の行使を止めても凄く温度が上がっているわ!!」


ナーフは地面から離れみんなに上へ避難するように叫んだ。ナーフが熱した地面は赤熱から白熱へと変わり温度が1500℃を超える。しかもまだ温度は上がり続けているので近くに居るだけでも数百℃の空気に当てられてしまう。人の耐えられる温度を優に超えてしまっていた。


「マズいよ!私達には冷やす能力は無い!このままだと焼き殺される!」


アネモネが叫ぶ。寒さなら自分達には対抗手段はあった。だが暑さには何も出来ない。このトウキョウにエネルギーの指向性が向いて原子と分子の動きが活発になっている。敵の能力はこちらの想像以上の効果範囲だったようだ。


「アインどうにか出来ない!?」


「そんな無茶振りされても無理だよ!温度という干渉そのものを消した時にどういうことが起きるのか想像も出来ない!」


氷の冷気を自身に干渉させなかった時とは訳が違う。寒いものは寒いし暑いものは暑い。そういった事象を僕の能力で削除した場合にどうなるのかは分からないのだ。


熱を奪うのなら寒いと判断出来るけど、結局はそんなのは僕の感想でしかない。宇宙的にはその温度は普通かもしれないし熱いのかもしれない。


なのに熱そのものを削除なんかしたらどうなる?熱いも寒いもないんだよ。それが人体にどう影響するのか想像もつかない。熱が無い状態なんてこの宇宙のどこにも存在しない事象なんだから当たり前だ。きっと熱するよりも酷い結末が待っている。


「暑い!もうあんなに寒かった建物内も暑くなってきた…!」


階段を上りながら出来るだけ地面から距離を取っていくが、最早どこもかしこも暑くて目眩がする。急激な温度変化に身体がついていけない。まるで風呂に浸かっているみたいだ。


「どこに行くのっ!?上も相当暑いんだけどっ…!?」


地面から距離を取るために上へ向かっているがもう空気そのものが暑くて仕方がない。恐らくトウキョウ全体が猛烈な暑さに包まれている。その中に居る自分達の身体にもエネルギーが向けられているのか、身体の奥から熱が生じているみたいで非常に息苦しい。自分の吐き出す空気がもう熱いのだ。


人の身体はたんぱく質で構成されているせいで耐えられる熱は決まっている。このままではたんぱく質が熱で固まり脳が変形して死んでしまう。頭だけはどうにか守らなければならないのにその方法がない。別に太陽の光に照らされているわけではないから帽子を被って直射日光を防ぐような方法は取れないのだ。


身体を構成する原子・分子にエネルギーを向けられているから防御は不可能。こんな攻め方をするバグとは誰も想定していない。しかも射程が広範囲過ぎる。今すぐにトウキョウから離れるためにゲートまで向かわねばならないが、恐らくここから全速力で向かっても熱で死ぬってことは分かりきっていた。


現在の気温は50℃を超えて今も上昇中。しかも湿度も高いせいで身体に熱が籠もり放熱が上手く出来ない。湿度の高い空気のせいで汗をかいても蒸発しにくく気化熱で体温を下げることが出来ないからだ。


「サイコキネシスでバリアを張るのは!?」


もう逃げるところは無い。階段を登ると運動のせいで体温が上がってしまう。それに暑すぎてもう動けないのだ。急いで荷物を下ろし水分補給を摂りながら対応策を話し合う。


「…バリアも熱を通すから無駄。みんなの能力の中に何か無い?」


「…私達の能力はみんな分かっているでしょ?何か出来るのならもう試してるよ。」


地球に来てまだ一度も使っていない能力はあるにはあるが、使わない理由が単純にその能力が使えない部類の能力だからだ。そもそもの話、使える能力があるのならそもそも地球には来ていない。


アインやアネモネが持っているような有用な能力は一般的な人類は持ち合わせていないのが普通なのだ。アインの能力が万能なだけで殆どの能力は射程距離と効果範囲が足枷になってその能力の効果を発揮しないパターンが多い。


「寒さ…暑さ…熱…。敵の能力って温度変化?」


アインは敵の能力を絞れずいた。アインからしたら敵の能力は氷を飛ばせる。寒く出来る。暑くできる。それしか情報が無い為に安直な発想しか出てこない。だがアネモネ・ナーフ・エピ・マイの4人は頭のどこかで理解していた。敵の能力とはどういうものなのかを。


「「「「違う。」」」」


4人の声が被る。そして4人は目配せをし確信を得る。そして相談や話し合いを無しに能力を行使し始めた。その光景にアイン・フェネット・ディズィー・ユーの4人は一瞬呆けたが、目的意識があっての行動だと気付きアネモネ達の動向を見守ることにした。


「熱って事は熱エネルギーが元になっている可能性が高い。俺の予想だと分子の動きに干渉してきているって思うからそこらへんを試していこう。」


「うん。あんたは重いのを私は軽いのを試そう。」


エピは階段などの物体に触れて分子の流れや動きを読み取ろうとし、マイは建物内にある塵や埃などの軽い物体に干渉して分子の動きを阻害しようとした。


「私達は空気ね。」


「分かってる。さっきので結構感覚を掴んでいるからアネモネが私に合わして。絶対に成功させるから。」


そしてアネモネとナーフは空気などの原子・分子に干渉して能力を行使する。メインはナーフでアネモネはナーフが能力を使えやすいよう環境を整えてあげていた。そのためか、一番最初に効果が出始めたのはナーフとアネモネのペア。あれだけ暑く感じた空気の温度上昇が止まったような感覚をその場に居る全員が感じ始めていた。

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