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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
5.終わらせた未来の軌跡
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殺意の満ちた冷気

今まで書いていて一番お気に入りの敵キャラは雨女と白雪姫です。特にこの冷気の能力はお気に入りなのでもう一度物語に出したいなとは思っていましたので、ここで書けてとても嬉しいですね。

敵は確実に僕達を殺すつもりだ。恐らく敵は僕達を観察している。敵からしたらこのままトウキョウを冷やし続ければいずれ僕達が死ぬと分かっているから焦りなどはせずに僕達を見ているに違いない。姿を現さないのがいい証拠だ。


「どうする?身動きが取れなくなったのはかなりキツいけど?」


冷気のせいで行動範囲が絞られてしまっている。しかも外の光景が白一色に変化しているせいで位置関係があやふやだ。僕達はゲートからどれぐらいの距離と位置に居るか考えてから動かねばならない。


「フェネットとナーフの能力で辺りの温度を上げて移動するしか無いんじゃない?他に案があれば聞くけど。」


…いやアネモネの案しか希望は無さそう。ここに居続けても危険な状況からは逃げられない。


「アネモネの案で行こう。2人とも能力の準備は良い?」


「うん、大丈夫だよ。」


「私はフェネットよりも広範囲には温度上げられないからあまり期待しないで。」


ナーフは自信が無さそうだが彼女の能力はフェネットよりも高温を出せる。フェネットでも温度を上げられない場面でもナーフなら可能だったりするかもしれない。


「じゃあ次はアインね。あとどれぐらい能力は使えそう?それと射程は?私達にはどこまでの空間が安全なのか見えないから。」


あ、そうか。伝えていなかった。それだとどれだけ僕と離れても良いのか分からないよね。


「えっと僕を中心に半径10〜15メートルだね。みんなとの距離が離れたりしたら伸ばしたりしてカバーする範囲を拡げていたりしたけど、出来るだけ近くに居てくれると脳への負担が減るからそこは覚えておいて。」


もっと射程は伸ばせるけど脳への負担が大きすぎて現実的ではない。それにもしもの時に僕が逆行出来ないなんて事になったら大変なのでここら辺が現実的なラインだと思う。


「じゃあ先ずは階段の付近の温度を上げましょうか。フェネットお願い。」


「良し来た!」


フェネットは張り切って能力を行使する。かなりヤバい状況ではあるが前回と比べれば今の状況は大した事はない。あの時は敵が直接乗り込んできて暴れ回ったからね。今はまだ平和とも捉えられる。今はね…


「燃やしちゃうから!」


フェネットのベルガー粒子が熱を発し次第に炎へと変化する。近くに居る僕たちにもその熱は伝わってきた。かなりの高温だ。フェネットはその炎を操り凍った階段へと向かわせた。凍った階段の表面はあんなにも白かったのに次第に氷が溶けて乾いていく。


「この温度なら凍った物は温められるんだね。」


フェネットも手応えを感じたのか、操る炎を増やして両手で忙しそうに動かして解凍を続ける。1分もしないうちにあれだけ冷気を放っていた階段は人がギリギリ過ごせるぐらいの温度になり僕達は階段を降りる事に成功した。だが寒いのは相変わらずでフェネットの近くにみんなで集まり暖を取る。


とてもではないが外へは行けない。外からの風が非常に冷たくまるで鋭い刃物のようだ。そんな風に触れるとたちまちに温度を奪われその肌の感覚が無くなってしまう。みんな手や顔を炎の近くに置かないと寒さによる痛みで目も開けられない。とんでもない寒さだ。


「…これアインの言うとおり絶対に死ぬ。寒さって暑さよりもヤバい。俺耳が寒くなると頭が痛くなるのを初めて知ったぜ。」


ディズィーは大きな身体を縮こまらせてフェネットの炎の近くで動けずにいる。建物もボロボロだから隙間風が入ってきて最悪なのだ。フェネットの炎でも足りないかもしれない。


「ごめん結構これでも頑張ってやっているんだけど維持するのも凄く大変なの。」


フェネットは創り出した炎が何もしなくても消えそうになると言い、特に風が当たると凄い勢いで消えてしまいそうになるだとか。


「…私ちょっとやってみるよ。」


マイは隙間風が入り込む壁に向かって手を伸ばし能力を行使する。彼女の能力は空気中の塵や埃などの位置関係を固定する能力。マイはその能力を使い建物の隙間を塞ごうとした。


マイの狙い通り風に吹かれて飛んできた何かの破片や氷の粒などを固定して壁の隙間を埋めること成功した。これである程度の防寒は出来た。だがマイはその事実よりも塵や埃よりも重い建物の破片を固定出来た事実に興味を惹かれていた。まるでアインの能力のような運用方法が出来たからだ。


「…ナーフ行ける?身体の震えが止まらなくて仕方ないんだけど…」


寒さで身体がこんなにも震えるなんて初めての経験だ。シバリング…?だったかな。身体を動かして体温を高める為の生理的な行動なんだけどこれをし続けるとカロリーを消費しすぎていずれは餓死してしまう。だから僕達には今すぐにでも早く体温を維持できる熱が必要だ。


多分だけど気温は今も継続的に下がり続けている。地面から氷の棘のような形をした氷が生えてきたり、キラキラとした氷の小さな粒子が風に乗って空中に散らばっていたりするのを見ると尚更そう思う。


「待ってちょい待ち。空気が固まっているみたいに動かなくて能力が上手く使えない。」


ナーフは空気中の分子からイオンを取り出してその影響で発生するイオンビームをコントロールすることが出来るけど、どうやら上手くいっていないみたいだ。空気が冷え固まり分子間の移動が鈍くなっているのが理由みたいだけど僕にはどうしようもない。


「…分子間の移動を活発化させれば良いの?」


アネモネは両手を構えているナーフの手を自分の手と重ねるようにして能力を行使し始めた。アネモネは空気中の分子を動かすのに特化した能力者。ナーフの能力をブーストさせるかのように能力を行使して手助けを試みたが、その効果は絶大だった。


熱どころか光すら発していなかったナーフの手の中に激しく光るイオンビームの塊が発生する。この光は暖かいというよりも熱いと評した方が良い。金属すら溶断するイオンビームの温度は1000℃を優に超える。


「地面を温めた方が良いわよね。」


ここまで来ればアネモネの手伝いは必要無い。ナーフは建物の外に指向性を持たせてイオンビームを発する。激しい熱量のイオンビームは容易く地面を溶かして真っ赤に赤熱させた。


この時の気温は−90℃を下回り地球上で最も低い気温を記録していたが、赤熱している地面は1000℃にもなっていたので、バグとナーフの能力のどっちが凄いのかアイン達は分からなくなる。


広範囲に温度を下げ続けるバグの能力も凄まじいが、そんな中でごく一部には過ぎないけれども1000℃を叩き出すナーフの能力も凄まじい。


勿論だがここまで能力を使える状況を作り出したアインとフェネットの能力とアネモネの能力による補助があっての結果ではあるが、それでも間違いなく拮抗どころか押し切っているのも事実。間違いなく前回の戦いでナーフと皆と同じく大きく成長している。


「エピ!私が地面を温めるから地中に潜れるようにお願い!」


「お、おう!あの中に入ったら暑さで蒸し焼きになりそうだけど了解した!」


エピは地面に触れ能力を行使する。エピの能力は分子間の結合を緩められるが、凍ってしまうとそれも難しくなる。エピも誰かの補助があって初めて効果を発揮する類の能力なのだが、そこで彼は何かを掴もうとしていた。


それはエピだけではなくナーフ、アネモネ、そしてマイもだ。この4人の能力は実の所はかなり似た性質を持っている。温度の低下により空気中の分子の動きが阻害されるという経験を得て自分達の能力を深くまで理解し始めていた。


これは温暖な気温での環境では決して掴めなかった感覚。この4人は敵の存在も忘れて掴み掛かった感覚に夢中になっていた。

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