耀人の暮らし
明日は用事があってもしかしたら投稿出来ないかもしれないので、その時は金曜の午前中に投稿します。
あの後みんなに洗いざらい吐かされ、情報の共有を無理やりさせられた。誰も手加減なんてしてくれず何故か僕が悪者扱いをくらったりとして最終的にお前が悪いということで決着がついた。
異議申し立てをする余裕もないぐらい絞られた僕はミミ達が戻ってきたタイミングで脱出し、そのまま今日の寝床にまで連れて行ってもらいすぐさま就寝した。
今思うとみんなのテンションが徐々に上がっていったのは夜になったタイミングだったから、夜型の生活が続いていた影響だったかもしれない。夜に活動するバグの襲撃に備えて僕達は夜に起きている事が多かったからね。
みんな生活リズムが崩れていたのだろう。本来ならこの時間帯に寝る筈だ。よって僕が布団に入り寝るのは間違っていない。だから僕の布団を数人掛かりで引っ剥がそうとしないでくれ。
なので布団の軌道を固定し、みんなの攻撃から身を護りつつ僕は強行して眠りについた。
「おはようございますアイン様。」
誰か教えてほしい。目を覚ました直後にすぐ横に見知らぬ人が居た場合の対応を。ネストスロークで教えてもらったことが無いから僕は知らない。
「お、おはようございます。」
「はい、朝食を用意致しました。」
時間が経つと頭が覚醒していきだんだんと状況が理解出来てきた。良く見ると昨日良く働いていたミカエラだった。昨日今日会ったばかりだからすぐに彼女だと認識出来なかったな。
「あ、えっとみんなは起きてる?」
昨日は広い一部屋にみんなで泊まって寝ていたからこの部屋に居ると思うんだけど、この角度と位置だと良くみんなのことが見えない。
「いえ皆様まだおやすみしております。」
そうか……なら何故彼女は僕の横に座っているのか聞いてもいいですか?
「あのうなんで僕の所で待機していたんですか?」
「たまたまです。お気になさらず。」
笑顔ではぐらかされてしまった。抜け目がないというかイマイチ信用しきれないな彼女。アネモネよりも性悪そうだ。
「……左様ですか。」
「左様です。本日のご予定は決まっておりますでしょうか?」
決まっていると嘘でも良いからそう答えたかったけど、みんな寝ている内に決めるのもあれだからな……
「まあ……ぼちぼちって感じです。」
嘘を付くことに慣れていないせいで当たり障りのない返答になってしまった。ちょっと圧が強いんだよね彼女。僕達が予言書に綴れた者と同一人物だと思い込んでから敬語になったっぽいし、何かしら気にかけていると彼女の言動から感じる。
「なら市場に行きませんか?ここの暮らしを見ていって欲しいのです!」
市場……確か物が売っている場所の名称だったかな?ネストスロークでは無かったけど、ここではあるのか。ヤバい興味ある。
「ではお言葉に甘えて是非お願いします。」
本日の予定は決まった。彼女達の暮らしぶりを見学させてもらい耀人の考えを再確認しないと。
「みなさま〜朝でございますよ〜!」
ミカエラがみんなを起こして回り、またミミ達に用意してもらったご飯を食べてからみんなと市場へと向かう事になった。因みにだが昨日のご飯に続き朝食も大変美味だったと言っておこう。
「市場では食べ物等が基本的に売られていて、そこでお金を払って買い物をします。」
市場まではそこそこ歩くので、その間に市場について説明をしてもらう。ミカエラとミミが同行してくれるから視線を向けられるけどまだ歩き回れるね。やっぱり目立ってしまっている。
「お金って通貨のことだよね?ここでは残っているんてすね。」
「アイン様の故郷では無いのですか?」
なんでそんなに驚くんだろ。僕達にとってはそれが普通だからそこまで驚かれるのが不思議だ。
「食べ物は支給されるし、そもそも買うとか売るとかいう文化が無いからね。」
もし通貨があっても買えるもの自体がネストスロークには無いから意味が無いし、通貨を造る資材も無いから仮想通貨しか選択肢がない。だけどネストスロークには通信量に制限があるから仮想通貨でのやり取りは難しいっていうね……文化が色々と無くなる訳だよ。
「はえ〜凄いところなんですね。」
「……凄くはないんじゃないかな?ここのほうが凄いよほんと。」
「スゴイ?」
「うん、凄い凄い。」
ミミが分かる単語に反応し会話に参加してきた。……今考えると彼女と僕達って不思議な関係だ。彼女は僕達と出会う為にあの森に居て、それでアネモネが吹き飛ばしてしまい怖がらせてしまったのに僕達をここまで案内した。使命があったとしても中々出来ないよそんなことは。下手すると僕達がセパレート・インフィニティに敵対する意思があるかもしれないのに。
「スゴイ、あ、アインスゴイ。」
「僕が?全然だよ。」
ミミは片言で言葉だけなら分かりづらいけど、何を言いたいのかは分かりやすい。表情とか目線、耳や尻尾と身体全体の動きからある程度推測出来る。
「絶対に能力だよな?でもベルガー粒子の動きが無いし……分からんな。」
異形能力者であるディズィーが僕のベルガー粒子の動きを見ながら観察を続ける。僕は能力ではなく観察眼と推測で分かった気になっているだけだと思っている。だからそんな見られても困るよ。
「ここが市場の入口です!」
なんだかんだ話しながら歩いていたら市場に辿り着いた。洞窟のような穴の入り口に文字が書かれた板が掲げられていて人が凄い出入りしている。洞窟の側面には掘られた穴が無数に続いていて、その穴の一つひとつにお店が入っていた。売っているのは魚やなにかのお肉、それに野菜類等の食べ物が中心だ。
こんなに多くの食べ物が1箇所に集められているのは初めて見る。ネストスロークから支給された食料を全て集めてもここまでの数にはならないだろう。
「では行きましょうか!」
「え、行っていいの?僕達はお金持っていないよ?」
ここは食べ物を買う場所なんでしょ?ならお金のない僕達が入っていっても通行の邪魔になるだけだ。
「私達がお金を持っていますし、何か買いたいなら申し付けてください。あまり高過ぎる物で無ければ大丈夫ですよ。」
あぁ……甘やかされている感が凄い。会って一日も経っていない人にここまでされる筋合いが無いから非常に困る……うん、困るね。
「それにみんなからの視線が……」
セパレート・インフィニティからしたら僕達の存在はとても悪目立ちしている。見た目もそうだし、噂が広がっているのか僕達を見ようと色んなところから人が集まってきている気がする。
「手でも振ります?喜びますよ。みんな娯楽に飢えていますから。」
「娯楽として消費される日が来るなんて想像していなかったです。……みんなどうする?」
「……何が?」
「手でも振って友好的だと伝えよう……みたいな?」
話し合いの結果、手を振ってみることにした。わー人類ですよ〜。敵じゃないですよ〜。
「あら、私達人気みたいね。」
手を振ってみると幼い個体が元気に振り替えしてくれる。しかも割と年齢を重ねた個体達も友好的な反応だ。
「皆さんがウチュウから来たってみんな知ってますから気になっているんですよ。」
「え、いつ知ったの?昨日来たばかりなんだけど?」
「それは勿論昨日の夜のうちに情報が行き渡ったんですよ。みんな噂が好きなのですぐでした。」
広めたのお前達か!あれか布団を取りに行ったタイミングか!
「まあまあそんな顔をしないでください。悪い噂が独り歩きするよりもマシじゃないですか。」
言っていることはマトモなのにミカエラの笑顔の怪しさといったら。全然信用出来ない。
「ほら皆さんも耀人に受け入れてもらうためにも交流していきましょうよ!」
ミカエラとミミに背中を押されて無理やり市場に連れて行かれると、もともと市場が気になっていたアネモネ達がすぐについてきて、人混みの中を掻い潜りながら一緒に市場へと向かっていった。




