語られた歴史
説明していたかしていなかったか覚えていないんですけど、アイン達の居る世界は一巡目の世界で美世が暴れていた世界は二巡目の世界です。
同じ人種同士でも全く違う独自な進化を遂げた僕達。どっちが良いとか変とかは無いけど、理解出来ない部分があっても仕方ない。特に僕達の繁殖方法は機械とAIが無ければ成立しないからセパレート・インフィニティ達からしたらかなり奇妙に見えると思う。
「えっと、それは私達には理解の出来ない範疇の話ですね…。古代技術にそのような事が出来ると文献で見かけた事がありますが、この現代に残っているとは思いませんでした。」
ミカエラ達に挙動不審というか、怪しんでいるような視線を向けられるけど、証明しようにも何も出来ないからこれ以上は特に何も言えないです。
「そうですか。あの、僕達もまさか地球に人類が生き残っているとは思いませんでした。我々としては皆さんが生き残っていてくれていて本当に嬉しかったです。」
嬉しかったと伝えたらミカエラの雰囲気が柔らかなものになった。彼女達とは良好な関係を築きたいものだ。
「はい。昔は本当に大変だとソボやソフから教えられました。人類の数が激減し、技術と記録の大半は失ったせいで元の生活水準に戻すことも不可能になったので。」
そうか…セパレート・インフィニティ達は生き残ることを優先した結果、途中で技術力を失ってしまったのか。良く記録も失い知識すらも無い状況からよくここまで繁栄出来たものだよ。機械が無くてはネストスロークでは一週間も生きられないから。
「こっちは物資の不足で自由に子供を生むことが不可能になり、皆さんのようを生活を送る事も不可能になりました。決められた進路を選んでその生活を死ぬまで続けるしかないんです。」
「それは…大変ですね。こちらも昔は食糧不足で子供が死ぬのは良くあったらしいです。子供達が大人まで育ち人口が増えたのはここ百年ぐらいのことで最近なんですよ。」
なるほど…かなり貴重な話を聞かせてもらったけど、やっぱりこっちはこっちで大変な思いをしていたんだね。
「あ、オサがアイン様にキョウダイを説明したいと申しております。」
キョウダイ…今までの情報から導き出される答えは同じ個体同士の性行為から生まれた個体達って事だ。
「えっと、男女のペアから生まれた個体達の関係性を示す言葉なんですよね?」
「は、はい。そうですけど…?」
ミカエラは驚いた表情で肯定してくれた。…当たってはほしくなかったけど、これで奴の言いたかった事が分かったよ。奴は僕を何かのキョウダイだと勘違いして見逃した。その何かは分からないけど、キョウダイだと思われれば人間であっても見逃すという事実からその何かは相当な者だと思われる。
だけど僕にはキョウダイは居ない。ファーストナンバーである僕は同種の個体は居ないし、もしかしたらネストスロークではもうR.E.シリーズの個体が生み出されたかもしれないけど、地球には降りていない筈だし、そもそもだからなんだって話だ。奴がそんなことを気にする訳が無いしそんな事実も知らないだろう。
「…そうですか。ありがとうございました教えてもらって。」
「いえいえ、私達もウチュウ?に仲間が居る事を知れたので嬉しいです。」
話は和やかな雰囲気で進行していく。それは会話に入れていない者達にも伝わり、最悪な事態は無いことを喜んだ。下手すると敵対という未来も有り得た。なにしろ見た目からして違う両者は本当に同じ人類として括っても良いのか判断がつかない。
アインの考えていることは勿論向こうも考えている。人類同士でも争うというのに別の種類となればお互いがお互いを警戒し合うのは当然の反応であり、そうはならなかったのはアインの人としての人畜無害さが向こうに伝わったからであろう。
「え?本当に彼らを…?はい…分かりました。伝えます。」
オサがミカエラに何かを伝え、緊張した面持ちでアイン達を奥へと案内しようとする。
「我々が永く受け継いできた唯一の記録、予言書をアイン様達に見ていただきます。」
「予言…書?それは言葉の通りで受け取っても?」
技術と記録を失ったと聞いた直後に予言書と来た。これには流石に素直に飲み込めないな。
「ーーー、ーーーーー。」
オサと僕達との間に隔たれた布をマサ達が外していきオサと初めて対面する。オサは白髪にシワの付いた顔、耳はセパレート・インフィニティ達と同じく獣みたいな耳に尻尾は3本もある。服装は白い布を何枚も重ねたようなもので重厚感と迫力があって、ここまで歳を重ねた人間に初めて会ったから僕もみんなも驚いていた。
「ーーーーー!」
そんな僕達の反応が面白かったのか、オサはシワシワか顔を更にシワを作りながら笑った。…一応は僕達を信用したから顔を見せたって考えて良いのか?
「皆様どうぞ奥の方へ。ここから滅多に人が入れない聖域。どうか奥で見たことは他言無用でお願いします。」
「分かりました。みんな、ミカエラ達について行って。予言書っていう記録を見けてくれるってさ。」
「記録!?ほんと!?」
アネモネが一番に食いついたけど、そういえばシルバーの持っていた手記にも食いついていたっけか。
…シルバーにはろくにお礼も告げられずに永遠の別れをしてしまった。今でも後悔しているけど彼女のおかげで今がある。彼女の命に報いる意味を僕は見つけていかないといけない。その意味を知るためにここに来たと言っても良いと僕は思う。
セパレート・インフィニティ達の知る情報がどんなものか、この目で確かめないと…!
「更に地下へと向かいますので足元をお気をつけください。」
オサの座っていた草のようなもので作られた板を退かすと床に扉があり、その扉を開くと更に地下へと続く階段があった。ここまで来るのにも降ったのに更に地下空間があったのか。
「ーーー、ーーーー。」
僕達を案内してくれたミミと呼ばれる少女がオサを支えて階段を降り始める。…オサは足腰に問題を抱えているのか?
「オサは怪我をしているのですか?」
「いいえ、歳を重ねているのでここの階段はキツイのです。」
「歳を重ねるとそうなるんですね。」
「…アイン様達の暮らしぶりが分かったような気が致します。」
ミカエラは何かを察し信じられないものを見る目で僕を見る。そうか…ここではオサのような歳を重ねた人々が多いから普通なのか。
「僕達は住む場所も会える人間にも制限があるからオサのような年齢層を知らないんだよ。」
「凄い生活ですね…皆様はそれで納得しているんですか?」
「…納得していないからここに居るんだよ。」
僕はそう言ってミカエラとの会話を終わらせた。僕達の生活がここに比べれば不自由でとても虚しいものに思えたからだ。ここでは当たり前のこともネストスロークでは貴重な体験で贅沢に入る。
セパレート・インフィニティ達を知れば知るほど僕達のほうが変な生き物なんだって分かってしまう…。多分それはみんなも感じるもので…みんなにここの事を教えるのがとても怖いと思ってしまうんだ。
「あ、アイン。」
薄暗い階段の中で壁に嵌められた発光石だけを頼りに降りているから僕を呼んだのが誰なのか判断がつかない。声の感じからミミかメメだと思うけど…ミミはオサに掛かりっきりだからメメか?僕を呼んだのはこれが初めてじゃないか?
「えっと、メメ?どうしたの?」
「あ、あーーミカエラ、ーーーー、ーーーーーーー。」
「…メメはアイン様達のいらしたネストスローク?について興味があるそうです。」
そうなの?ネストスロークに興味あるってことは宇宙に興味があるのかな?
「あまり良いところじゃないよ。…人を招く事も出来ないからね。」
食事も出せない有様だから長く滞在すると餓死するんじゃないかな。それで貴重なサンプルとしてマザー辺りが確保する。絶対にセパレート・インフィニティ達が来ちゃいけない場所だ。
「このあとでメメがアイン様達に質問があるそうです。どうか答えてくださいませんか。彼女がこうも興味を示すのは珍しいですから。」
「はあ…、良いですけど。」
失望される可能性が高いから答えたくないな…。
「ーーーー。」
「…着きました。ここが予言書の間です。」
階段を降りた先は円形の広間。壁一面には数万を超えるであろう文字が彫られ、中央には大きな発光石が置かれている。…どこを見ても書物が一つもない。本棚も何もだ。
「あの…予言書ってどこに?」
「周りに彫られているのが予言書に綴られていた文章です。」
「ま、周りの彫られた文字が予言書…?」
周りを見回して壁に彫られた文字を見るとみんなも釣られて壁の文字を見渡す。
「はい。最初の予言書は紙に書かれたものだったのですが、時間が経つに連れて劣化してしまうので他の媒体に記録し後世に遺されてきたのです。」
「な、なるほど。その予言書っていつの時代のものだったのですか?」
「千年前…人類がバグの脅威に晒される前の事です。この予言書に綴れた内容にはバグによって人類が滅ぼされる未来が書かれています。」
「なっ!?千年前の記録ってことですか!?」
驚愕な真実だ。千年前もの書物の内容をこの現代まで遺し続けたセパレート・インフィニティ達も凄いが、内容が内容だ。バグが現れる前からバグの出現を予言していた?
「アインどういうこと?」
アネモネは僕に通訳を求める。みんなも僕の反応が気になって視線を向けられていた。
「…予言書にはバグが出現されることが書かれたらしい。それもバグが現れる千年も前から。」
「それって…予知能力者の記録って事じゃない!」
そうだ。アネモネの言うとおり恐らく予知能力を持った者による手記で間違いない。そしてこれだけの文字が彫られているんだ。内容はそれだけではないだろう。僕はセパレート・インフィニティが持つ記録を聞くために、ミカエラに彫られた文字の内容を翻訳してもらうために話の続きを聞くのだった。
一巡目の世界で描きたかった内容回




