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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
5.終わらせた未来の軌跡
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語られる歴史

通訳と思しき彼女は僕達に自己紹介を始める。そういえば彼女達の正体どころか名前すら知っていない。それは向こうも同じか。良く考えると彼女達にとって訳が分からないもんね僕達の存在って。


「私はミカエラ・ルマンド。アナタ達をここまで案内したのは右からマサ・マエカワ、真ん中がミミ・マエカワ、左はメメ・マエカワ。3人はキョウダイね。」


ここで初めて僕達をここまで案内してくれた彼女達の名前が判明した。だけどそれよりも気になった点が一つある。3人はキョウダイってどういう意味なのか、それにキョウダイという単語に僕は聞き覚えがある。人型バグが最後に言ったあの言葉……


「ーーーキョウダイ ダッタカ」


奴が言ったキョウダイとミカエラと名乗った彼女の言ったキョウダイ。この単語の意味が同じなのかここで聞かなければならない。


「……多分名前を教えてくれたのよね?えっと私達は……」


「あ、ごめんアネモネ。ちょっと聞きたいことがあるから質問させて。」


アネモネが自己紹介をしようとしたところに僕が声を重ねて中断させてしまった。うぅ、ちょっと機嫌が悪そう。あとでフォロー入れておかないと怖いな。


「……どうぞ。」


「……どうも。えっと、ミカエラ?君が言ったキョウダイってどういう意味か教えてもらえる?」


僕の質問が予想外だったのか、ミカエラは黒と茶色の混ざった耳をピンッと立ててから左右に動かして何かを考えているようだった。……彼女達は耳で感情が読めるから便利だな。アネモネ達にも耳があったらな良いのに。それなら機嫌とかが分かって理不尽に怒られる事が無くなるから。


「えっーーと……キョウダイはキョウダイという意味なんだけど、アナタ達には通じてなさそうね。」


「単語の意味が分からないだけでミカエラの話している言語は分かっているよ。逆に僕の言語が伝わっていない可能性がある。」


千年も違う文化を過ごしてきたんだ。使っている言語は同じだったかもしれないけど、途中で変わった部分が大きいと思われる。


「……いいわ。なら分かるよう教えてあげる。キョウダイって意味は同じオヤから生まれた子供達のことを指す言葉なの。」


オヤ……オヤってなんだっけ?


「みんなオヤって単語分かる?」


「オヤ?私はホヤって聞こえたけど?」


「俺はそもそもそこまで聞き取れていない。良く会話出来るな。ところどころの単語は聞き取れたけどさ……」


どうやらみんなはミカエラの言葉を聞き取れてすら無かったらしい。もう少し彼女には話す速度を落としてもらおうかな。


「ごめんミカエラ。僕以外はミカエラの話す言葉が早くて聞き取れてなかったらしいからもう少し遅く話してもらえると助かる。」


「ああごめんなさい。緊張しちゃって……次からはゆっくりと話すわね。」


同じ言語でも発音の違いでこうもやり取りに時間が割かれるのか。難しいな。


「あ、それでオヤって僕達には難しくて良く分からないんだけど……」


「え!?オヤが分からないってどういうこと!?」


そ、そんなに驚くところなの?オヤってそこまで大切な単語なのか……ネストスロークでは使われていない単語だから馴染みが無いんだよね。


「僕達と君達との間では文化の違いがあるからオヤって単語を使う機会が無いんだよ。」


「オヤを使う使わないってあるの……?それならリョウシン、チチオヤ、ハハオヤは?それなら分かるでしょ?」


「……ごめん。僕には分からないし、他のみんなも分からないと思う。」


僕達の反応を見て気になってそうなキョウダイと呼ばれる3人がミカエラを呼んで何かを話し始める。


「ーーーーーーーー、ーーー!ーーーーーー、ーーー………」


あ、これ長くなるな。この間どうしようか。


「ーーーーー。」


オサの声が聞こえ自分に話し掛けているような気がした。布越しで影しか見えないけど、顔がこっちを向いているように見えなくも……ない。気の所為かもしれないけど。


「あーー自分ですか?」


「ーー。」


どうやら自分だったらしい。えっとマサ、ミミ、メメの3人は僕達をオサに会わせる為に案内してくれたんだから最初に挨拶をしないといけないのは彼女であるべきだったね。


「普通に会話してるけどやっぱりアインって何かしらの能力を使っていると思わない?」


「うん……私さっぱりなんだけどアイン分かってそうだよね。」


「アイン能力1個じゃなかったんだね。1個のほうが珍しいけど。」


あれ?僕が能力を使って会話してるって思われているけど、そうすると僕の能力ショボくないか?会話しきれていないし分からない単語あるしでイマイチ効果が発揮されていないんだけど……。


「ミカエラ、ーーー。」


オサと呼ばれる女性がミカエラを呼んで通訳するように話した……と思われる。やっぱり何かを話しているって分かるんだよな……これって能力を行使しているからなのか?


「はい。………なるほど、分かりました。彼に伝えます。先ずどこから来たのか、何者なのか説明を求めます。」


ミカエラは片方の耳をオサの方へ向けて、もう片方の耳はこちらに向けながら通訳を始めた。すごく便利そうな使い方をする。


「えっと、僕達は宇宙にあるネストスロークという所から来ました。そこに所属している447期生、地球奪還作戦のため来ましたR.E.0001と申す者です。」


「ウチュウ……?それにア、アール?その数字の羅列が名前なの?」


「はい。仲間からはアインと呼ばれています。」


「……ーーー、ーーーーーーーーー……アイン。」


あ、アインということで伝えたな。まあ別に良いけどね。


「分からん分からん。マジで会話出来てんのこれ?アインすげーな。」


「出来ていないとここまで会話が成り立っていないでしょ。それでも凄いとは思うけど。」


本当に分からないの?分かっているの僕だけなのか?これって僕もミカエラみたいに通訳してみんなに伝えないといけないってことだよね。


「あーー今から多分みんなに自己紹介してもらう形になるんだけど、僕が話したほうが通じるよねこれ。」


「話し終えた後に会話の内容を聞かせて貰えれば良いよ。ここはアインに任せた。」


アネモネがそう判断したのなら僕も従おう。通訳しながら彼女達と会話するのは疲れるし時間もかかるからね。


「アイン……でしたっけ。オサはアナタ達の事も知りたいと申しています。」


「はい。後ろに居るのは僕の仲間でアネモネ、フェネット……」


一人ひとりに手を向けて名前を呼び上げていく。正式的には彼女達の名前は僕と同じくシリアルナンバーなんだけど、ミカエラ達にとっては馴染みが無いらしいから違う呼び名で紹介していった。


「なるほど。少しお待ち下さい。」


ミカエラはオサに通訳して説明していき、マサと呼ばれた少年は僕達の名前を反芻するように口を動かしていた。独り言ぐらいの声量だから無意識かもしれない。


「ではオサから質問です。アナタ達の言うウチュウとはソラのことですか?」


「あーーソラ……ですね。ソラの上です。」


「ソラの上……?そこから降りて来たのですか?」


「はい……そうですけど?」


「そう……なんですね。は〜〜凄い……ですねー。」


なんだこの会話は。彼女達って宇宙という概念を理解していない……?そうなるとネストスロークの存在も、千年前にネストスロークが宇宙へ逃げ延びた歴史も知らないかもしれない。僕達の存在は予想外なことだったようだ。


「……オサは先程にアイン様が気になっていた事について言っております。」


アイン様?なんで急に様付け?というか様って呼び方がここにもあるのか。現代においてネストスロークでは様付けで呼ぶことも呼ばれる人もいないけど、歴史を学ぶ際に人類に貢献した人物を様付けで呼ぶことある。


「オヤという単語に関して理解出来ないということはどうやってアイン様達はお生まれになられたのかを聞かせてもらえますか?」


どう生まれる?……あ、そうか!彼女達は性行為で繁殖するのか!盲点だったよ……


「僕達は人口子宮で生まれます。DNAの相性などでペアを組んで遺伝子操作で……って言っても分からないですよね。簡単に言うと僕達にはオヤは居ません。不要なのです。えっと性行為による繁殖方法がそもそも不可能なんですよ僕達は。」


「………そ、それは!?お、オサ!」


ミカエラは慌ててオサに説明を始める。するとマサ、ミミ、メメの3人も慌てたように騒ぎ出しオサに詰め寄る。……言わなければ良かったかもなこの情報。まさかこんなにも驚かれるとは思わなかったよ。

良くアニメやマンガにある描写で、違う星や違う国同士なのに何故か同じ言語使って会話するシーン、あれって作者的にはかなりモヤモヤするんですよね。なのでこの物語ではリアル思考で行きたいと思います。

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