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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
5.終わらせた未来の軌跡
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化かし合い

さて、アネモネの考えた作戦を成功させようか。ファグは心構えも無しにここに呼び出された。このタイミングだからこそ僕達の作戦の成功率が高くなる。


「えっと、昨日の…続きか?俺を呼ぶ必要なんてないんだぜ?」


「いえ、私達はあなたに用があるんですよファグ。」


「ほらほら座って座って!昨日みたいに座れるよう椅子を作ったので〜。」


マイが用意していた椅子に僕とディズィーでファグを座らせて下手な行動を取らないよう監視する。まだ何かをしだすとは思わないけど、念の為にもこの段階で仕組んでおかないと。


「お、おう。シルバーこれはなんだ?」


「…私の口からはなんとも。こいつらに聞け。」 


「はあ…。」


ファグは何がなんだかという反応で何故呼ぼれたのか分からないといった様子だ。これからどんな反応に分かるか楽しみだ。特にアネモネとディズィーは楽しみで楽しみで仕方ないようだ。


「単刀直入に聞きますけど、今日のご予定は?」


アネモネはファグの背後から近付き横へ回り込んで彼の反応を確認する。


「今日か?いや、今日は午前中に食料調達で昼からは車の整備だけど?」


「その後は?」


「…いや、特にねえけど?」


僕の記憶ではファグに誘われてあの丘の上へと運転させられたけどね。


「アインを車の運転に誘うつもりだったのでは?」


相変わらず踏み込むな…。聞いているこっちがドキドキする。


「…なんでそう思うんだ?昨日最後にアインに予定がどうこう聞いたからか?」


「いえ、そんなことはどうでもいいんですよ。…もし、仮にアインを呼び出した場合、その時はファグ…どうするつもりですか?」


「…うーん、もし仮にだろ?アインに車の運転を教えるのはいいかもな。お前達の代に運転出来るやつの一人や二人は居たほうがいいだろう?」


こいつ…僕以外にも誘うつもりか。そんなことはさせないぞ。


「運転のあとは?」


「帰るだけだが?」


「それは本音で間違いありませんね?」


「間違いない。おいなんだこの問答は。シルバーどうなっている。」


「こいつらが満足すればそれでいい。私も真実が分かればそれでいいから。」


ファグは最初から変わらないシルバーの要領の得ない反応に眉をひそめる。いつもみたいな彼女の反応とはかけ離れているせいで不気味な雰囲気をファグはここでやっと感じ取った。


「これはあれか?なんか俺を疑ってんのか?なんもしてねえだろ?」


「これから何かをするつもりかもしれないでしょう?それを防ぐために動くのは自然なこと…それで先輩には精神支配で“本音”をもう一度聞かせてもらいます。ただもう一度言うだけです。どうってことないでしょう?」


…なんて嫌な笑顔なんだ。人を追い詰める事が楽しくて仕方ないんだろうな…。彼女の中に嗜虐心があったのか。


「は?普通に嫌なんだけど。精神支配なんて言いたくも無いことを言わされる可能性があるだろ?俺が不利な事を言わされてもそれは俺の意思ではない!」


うんうん確かにそうだね。そう言われると思ってちゃんと考えてきてるから。


「記憶を読み取ってそれを言ってもらうだけです。精神支配する際に先輩の記憶を覗かせて貰います。」


ビクッとファグの身体が震えたのを僕達は見逃さなかった。


「記憶は読み取る際に先輩が昨日、今、何を考えていたのか分かります。ここに来てから私がした質問に何を思って話していたのかもね。」


さあどうでる。ファグはどうやってこの場を切り抜ける?


「ふざけるなよッ!!」


マイの作った椅子に腕を叩きおろし怒りをあらわにするファグ。それに対し冷ややかな反応を見せるアネモネ。


「先輩に向かってなんだその言い方はっ!シルバーもこいつらの言いなりにならないでくださいよ!」


「…お前の言う通り言い方は悪いが、ただ疑いを晴らすにはお前の記憶を見る必要があるんだ。」


「疑い…?なんの疑いですか?」


「お前が昔一緒に行動を共にしていたシックについてだ。」


「シック…なんで今彼の話が?」


「それを知るために記憶を見させてもらう。今彼の最後を思い出しただろう?それを見させてくれ。」


シルバーも彼の言動に不信感を持ったのか、もっぱら疑って掛かっている。


「はあ〜!?な、なんでそんなっ!俺があいつを殺したって言うんですか!?」


「…私はそんなことは言っていないしアネモネ達も何も具体的には言っていないが?」


墓穴を掘るとはこのことだ。あえて僕達は何も言っていなかったのにそんな単語が出るわけない。ネストスロークで人殺しは起こらないからだ。この基地でも人殺しなんて無縁なことのはずだ。


「そ、それは…みんなが俺をそう疑って、そんなの言わなくても伝わってくるものでしょうがっ!」


どう伝われば人殺しを疑っているように聞こえるのか、僕がお前の立場なら絶対にそうは疑われているとは考えないけどね。


「ファグ、実はもう能力を行使してあなたの記憶を見させてもらいました。精神的に不安定な今の状態ならすんなりと上手く行きましたよ。」


「え、は?な、だ、誰が俺の記憶を見たんだ?」


「私ですよ。私がS判定の能力者だって知ってるでしょう?」


アネモネがS判定能力者だと先輩達のみんなにはもう知られている。精神支配なんて能力はそれ程に強力な能力だ。


「やっぱり、アインを森を抜けた丘の上に連れて行って殺そうとしたんですね。あなたの能力で加速させた弾丸なら戦闘服を貫通させられる。シックで試したからそのことをあなたは良く知っていた。」


アネモネがそう言い終わった時、ファグが腰に手を素早く手を伸ばしたタイミングで僕は能力を行使させる。


「クソッ!!」


ファグが拳銃をホルダーから取り出しアネモネに向けた所で僕の能力が行使された。…証拠は掴んだぞ。


「こいつの動きを止めました。引き金を引くことも弾丸が進むことも出来ない。完全に身動きは取れないよ。」


ファグを座らせるときに僕は彼の身体に触れてその時には彼はもう僕の射程圏内に入っていた。いつ何をしようとしてもすぐに止められるように。


「ファグ…お前、本当にシックを殺したのか…。なんでそんなことを…。」


「…………」


ファグは話すことも呼吸をすることも出来ず、次第に顔色が危険な色に変わっていく。ここでこいつに死んでもらう訳にはいかない。


「因みに記憶を覗いたのは嘘よ。私達にそんな能力を使える者は居ないわ。ただのハッタリだったけど、あなたにはそれで十分だったようね。」


僕は彼から拳銃を奪い床の上に叩きつける。そしてディズィーが彼を拘束し能力の行使を一時的に解除して呼吸を出来るようにした。


「かッはー!な、何しやがったっ!?」


「聞こえていたでしょう?いや、聞こえなかったのか?あなたの身体を止めていたんですよ。僕の能力を説明するのはこれで2回目ですね。」


「2回目…?何を言っているんだ!?」


「うるせえよ。」


ディズィーが上にのしかかり掴んだ腕の関節をキツく絞め上げだ。するとギチチッと関節から嫌な音が鳴り、聞いているだけで鳥肌が立つ。


「ぐあっ!」


「これで分かってくれましたねシルバー、私達の言っていること本当の事だって。色々と思うことがあると思いますが、今は私達に協力してもらえませんか?」


そうだ。別に彼の悪事を暴くのが目的ではない。ファグの悪事を暴くのはシルバーの信用を得るための手段でしかないのだ。僕達には最も優先される目的がある。


「…分かっている。お前達の話を信じよう。どんな協力も惜しまない。お前達のやりたいことを言ってくれ。」


良し。シルバーの協力を得れた今ここからが本番だ。ファグなんてもうどうでもいい。僕達の未来のためにお前を利用させてもらう。

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