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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
5.終わらせた未来の軌跡
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策略

アネモネの提案を否定する者はこの部屋には居なかった為にファグを囮にして人型バグを倒す算段を立てることになった。その作戦を無事に達成するためにも協力を仰がないといけない人が居る。


僕達は明日に備え早めに就寝に入った。明日の事を考えたら身体と脳を休ませておかないと能力の行使に支障をきたす。


そして目が覚めたときはまだ日が上がった所で朝食を摂るのに良い時間に起きれた。緊張して眠りが浅かったのもあるのだが、寝すぎるよりはマシだ。


「…おはよう。みんなもあまり寝れなかったみたいだね。」


「おう、気が張ってあまり寝付けなかったわ。」


「はあ…マージで今日やんねえとなんだよなぁ〜。嫌だな〜!」


ディズィーはやる気に満ち溢れてエピは頭を抱えて今にも布団の中に入ってしまいそうだったが、ベッドから降りて支度をし始めたから大丈夫だろう。口ではああ言ってもエピは結構真面目な性格で約束事を守る男だ。これをやると決めたらそれに向かって突き進める性格だと僕は知っている。


「ユーとナーフ達は起きたかな?」


「あ〜どうだろうな。マイは寝てそうだわ。」


「そうかな。みんな寝てたりして。」


僕達は部屋を出てアネモネ達の居る部屋へと向かう。その途中に眠たげな先輩達とすれ違うと少し緊張してしまう。この基地内で信用出来る仲間は同期しかいない。いつ襲われても良いように頭を早く覚醒させないと…


「だからといってディズィー。ベルガー粒子の操作バレバレだから。」


「いや、曲り角ですれ違ったからさ。ファグじゃなくて良かったぜ。多分出合い頭で一発決めてたわ。」


「うわこっわ。ディズィーに殴られたら一発で死ぬんじゃね?」


ファグも体格が良いけど異形能力者の一発は効くだろうな。銃撃一発で死んだし見かけよりも脆かったよあの人。


「俺達の部屋からあいつらの部屋ちょっと離れてんだよな〜。」


「昔からの風習なんだろ?男と女で別けるのって。」


「なんでだろうね。」


昔は繁殖が出来る身体に性欲というものがあったから問題になったかもしれないけど、今は人類全員が繁殖出来ないし男と女が一緒の部屋で駄目な理由が思いつかない。あまりに古臭い考え方だ。


「でも俺はマイとずっと同じ部屋は嫌だな〜。」


「マイも同じこと言ってんぜ多分。」


「ちげえねわ。」


「おーい起きてるー?」


部屋の前に立ちドアをノックする。こうやって僕達が居るのを知らせる必要があるのが少し面倒くさい。ネストスロークではそんな文化無かったから。そこまで人の部屋に行く事なかったし。


「ちょっと待って!準備してるから部屋の前で待っててくれる?」


起きてはいるのか。なら言われた通り部屋の前で待ってようか。


「女って朝遅いよな。」


「なあ〜?俺たちなんてすぐに支度終わったぜ。なあアイン。」


「女子は色々とかかるんでしょ。前にそれをアネモネに聞いたら凄く不機嫌に答えたからみんなに言わない方が良いよ。」


男と女は違う。身体の構造も違うし性格もね。だから違いがあってそれが普通だと受け入れないといけない。自分と違うことを指摘するのではなく受け入れる。だって向こうからしたら違うのは僕達の方なのだから。


「アインが言うなら止めておこう。最近はナーフよりもユーが怖えんだ。」


ディズィーは想像し身震いをする。昨日のディズィーはかなり怒っていて怖かったけど、普段の彼は大人しく優しい性格をしている。だからこそ昨日は本当に怒ってくれていたんだろうな。


「マイは怒っても怖くねえけど面倒だかんな〜。俺も止めておこう。このあとの事もあるし。」


廊下の壁に背を預けながら僕達は彼女達を待った。まるでこの時間を味わっているかのように。もしかしたらこうやって話すことは今日で最後になるかもしれない。それはみんなが理解しているからこうして早く起きたのだろう。


「お待たせ。まだ居るかもしれないし食堂行ってみようよ。」


「うん。おはようみんな。」


アネモネ達も合流したことだし、明日もこうやって話せるよう行動に移そう。そのために僕はこの時間に賭けたのだから。


「あー緊張する〜。この日のために地球へ来たのに後悔が少しあるんだよね。他の道に進んでいたら今頃ネストスロークで朝食を食べていただろうな〜。」


マイは緊張しきって顔色が悪い。あまり寝れていなさそうだ。


「ここの朝食のほうが美味しいから私はこっちのほうが良かったけどね。ユーもそうでしょう?」


「今日次第かな。」


「現実的な意見だな〜。」


フェネットは苦笑いしながらも肯定的な感じだ。この日で地球へ来たのが良かったかどうかを決めるのは普通かもね。


「私はどうなっても後悔しないよ。みんなで地球へ来れたのは私にとって一番の思い出だから。」


アネモネは本当に変わったな。昔とは大違いだ。


「まだ終わっていないし、僕がまた戻れば始められる。どんな能力を持ったバグだろうと時間の流れには逆らえない。だから気負い過ぎず自分達の出来ることをしよう。」


「いや、今回で決める。私達は覚えておく事が出来ないけどアインは記憶し続けてしまう。何度も繰り返せばアインの精神に負荷が掛かり過ぎるわ。」


アネモネの言うとおりだけど、もし失敗してみんなに何かがあれば、それをやり直さない方が精神的に負荷が掛かり過ぎる。僕は絶対に戻るよ。成功するまでね。


「食堂に着くからその話はまた後だ。…ほら、居たぞ。」


食堂にいち早く入った(いつも)ディズィーの言う通り目的の人物がまだ食堂に居た。周りには誰も居ないしまだ皿の上には半分以上朝食が残っているね。


いつもより遅い時間に来たけど残っていて良かった。彼女もいつもより遅い時間に来たのかな。


僕達は食堂に入りトレイに皿を載せてその上に朝食を盛っていく。好きな量を自分で決められるから人によって量は変わるけど、みんな大盛りで盛るのが普通になっている。


「…行こうか。」


普段座っている席をスルーし僕達はシルバーの座っているテーブルに向かった。普段から彼女は角の席を一人で静かに食べている。なのでこのタイミングが丁度いいと昨日のうちに話し合い行動に出た。


シルバーはいきなり僕達が自分の席に座りだしたのに驚いていたが、昨日の続きのことだろうと思ったのか、落ち着きを取り戻し食事を続ける。


「皆さんおはようございます。なにやら朝から張り切っていそうですが、何かあるのですか?昨日の続きなら朝食を食べてからでお願いしますね。」


「昨日の件ではありません。今日これから起こる事で話に来ました。」


「そうですか。今日これから何があるのですか?」


シルバーは特に気にした様子もなくナイフで魚を切り分けてフォークで口に運ぶ。片手なのに手慣れている動きで不自由さを感じさせない。


「そんなに見られると食べづらいのですが…。」


「あ、すみません。」


シルバーは人に食べるのを見られなくないのかあまり人と食事を摂っているのを見かけない。やはり片手だからだろうか。


「それで要件は?」


…彼女を信用出来るかは分からない。だけど彼女の力が必要だから協力を仰ぐしかないので、取り敢えず声を掛けようと決めている。もし彼女もファグのような思考パターンなら僕が昨日へと逆行すればいい。だからここは僕が言わないといけない。


「今日の昼過ぎに始まりのバグがこの基地を襲撃しに来ます。」


言った。言ってしまった。シルバーの反応は…?


「……………。」


相変わらずフォークで魚を食べていて返答もなにもない。聞こえなかった?


「あの、今日ここに人型バグが…」


「聞こえていますよ。はあ…聞き間違いかと思ったのですが結局昨日の続きですか。夢にでも出ましたか?少し驚かし過ぎましたかね。」


あ、これは信じてもらっていないな。そうだよね。普通は信じないよね。


「いや本当に始まりのバグがここに来ます。信じてください。」


「何故そんなことを貴方は知っているのですか?皆さんの反応を見る限り全員知っている感じですが、その根拠を私に証明出来るというのならそんな馬鹿げた話を信じましょう。」


シルバーとは信頼関係は気付けていないこの状況で言葉だけの説得は難しい。だがシルバーも能力者だ、能力者には能力者の説得方法がある。


「僕の能力は時間操作。僕は未来から来たんです。」


「…それをここで証明出来ますか?」


シルバーはちゃんと証明出来るのなら話を聞いてくれそうだ。なら出し惜しみなく披露しよう。


「自分の皿の上を見てください。」


シルバーは僕の言われた通り皿の上を見る。皿の上にはなにも手を付けられていない朝食が盛ってあり湯気が立ち昇っている。間違いなく半分以上は残っていなかったのにだ。


「……くんくん。…偽物ではなさそうですけど幻覚系ですか?」


「ここはニホンという国があった島国で、アメリカ大陸がバグの発生源と言われている。」


「なっ!誰から聞いたっ!?」


シルバーは朝食を戻されたよりもこっちのほうが驚いていた。この情報は限られた者しか知っていない情報なのは分かっていた。来たばかりの僕達が知っている訳が無い。


「貴方から聞きました。昨日話してくれるつもりだったんじゃないですか?」


「貴様…人の心を読んだか?」


中々信じてくれない。でも疑い深いのは良いことだ。信用出来る。


「このフォークを動かしてみて下さい。」


僕はフォークにベルガー粒子を纏わせて軌道を空中で固定した。シルバーはそれを見て不思議そうに手を伸ばし触れて動かそうとするが、微塵も動かない感触に何かを感じ取った。


「能力…サイコキネシスとは違う。まさか時間を止めたのか?」


「そんなところです。他にも短時間なら時間を戻せますが時間がありません。ここは僕達を信じてくれませんか?もし間違っていたからトイレ掃除をしばらくの間しますから。」


「ーーー信じよう。もし、違ったら任期を終えるまでトイレ掃除だ。」


ここ地球での仕事で一番の苦痛を受ける仕事はトイレ掃除だ。こんな提案をここに居る人達は冗談でも口にはしない。僕のこの一言が決め手になりシルバーの信用を得ることに成功した。トイレ掃除のおかげで人型バグを倒せる算段が立ったぞ。

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