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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
5.終わらせた未来の軌跡
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前夜の語らい

どういう能力を使うのか分からない相手に対してどう対応すればいいのか考えても答えは出てこない。経験と知識も足りない自分では正解が導き出すことは難しい。


考えるには想像性も必要になるけど、そういう訓練はしてこなかった。未知というのは良い面もあれば悪い面もある。今回の場合はかなり悪い方へと働いた。


「光…そのバグは光を操る能力なんじゃない?」


「光?」


アネモネが確信を持った言い方をするので、みんなが彼女を囲むように座り直す。


「見たら飛んでくるんでしょ?それってアインの目の中に光が入ってそれを頼りに移動しているんじゃない?人の目の中に入り込み視覚情報から脳へ作用させているのなら色々と辻褄が合う。」


…凄い。確かにそれならあの異様な能力にも説明がつく。


「人型バグが一瞬で動いた時、音とか何もしなかったし空気が揺らいだ感じも無かった。でも光が一瞬で動いてもそうなるよね。」


「つまりそのバグって光速で移動出来るってこと?分かった所で対応しようがなくない?」


ナーフも会話に参加し意見を言うと、アネモネがそれに追加で説明を入れる。


「ナーフ、それは違うわ。恐らく相手はこっちを視認するに人の視覚に入る必要性があると思うの。それが分かっただけでいくらでも逃げようがあるわ。」


「それってそのバグは私達を見れない…というより見ていないけど、私達がそのバグを見たらその光情報から飛んでくるってことだよね…?私の認識当たってる?」


「マイにしてはやるじゃん。」


「うっさいエピ。」


どんどん意見が出てきて敵の実態が明らかになってきた。…みんな凄い。僕一人じゃ絶対に分からなかった事が短時間で分かるなんて…。


「でも見えないだけで触れられるんじゃないの?遠くから狙撃すれば?」


「その狙撃スコープはいったい誰が覗くの。」


「あぅ…そうか。」


ユーの提案をナーフは一言で切り捨てる。見れば射程圏内に入ってしまうこの人型バグは視認する事すら許さない。


「なら爆弾は?ここに来るのが分かっているのなら時限爆弾仕掛ければ?」


「ユー、それは…アリなんじゃない?」


「可能性は高そうだけど…アインは実際に見たんでしょう?爆弾で倒せそうなの?」


あれを爆弾でか…確かに有効そうな手段だ。


「人型バグって言っても僕達より遥かにデカいんだ。デコイですら大きいのにその本体はもっと大きい。あれを爆弾で殺すなら至近距離でかなりの量の爆薬がいるかな。」


「ならその線で試してみる?」


「え、逃げねえの?戦う感じなん?」


「戦うに決まってるでしょばかエピっ!」


逃げるのも手だけど色々と問題があるんだよね。


「バグは人を襲うのは分かるよね?僕達が逃げたら追ってくると思う。どうやって追跡してくるかは分からないけど、そういった手段は持ってるはずだよ。じゃないと人を選別して襲ってこれない。その人型バグだけに関して言うと人しか襲っていなかったから。」


「じゃあ無理か…俺たちみんなで逃げたら目立つもんな〜。」


「あの〜ちょっとした疑問なんだけど良いかな…?」


フェネットが小さい身体を更に小さくさせておずおずと手を上げた。


「何?」


「その人型バグって本当に始まりのバグなの?だってもしそうなら物凄く長生きしていることになるよね?」


「そうね。千年は生きていることになるわ。」


考えたこともなかったな…。バグに寿命そのものがあるかは分からないけど、もしあったらあいつらは繁殖出来る個体であるということになる。


「寿命があるってことは遺伝子があって、繁殖出来るってことだ。なら子孫かもね。」


「…おい、それってもしかしたら人型バグが何体も居るって事か?」


「あり得ない話ではなさそうね…。」


繁殖をする際に生き物は遺伝子を利用するが、この遺伝子は時間と共に劣化する。劣化した遺伝子で作られた個体は劣化した遺伝子を持って生まれてしまうので、これを何度も繰り返してしまうといつかはその種類の生物は絶滅してしまう。


だから様々な生き物は寿命という終わりを身に付け、劣化する遺伝子を子孫に残さないように自分で死ぬようにした。これでサイクルを造り劣化する前の段階で繁殖をする。そうやって生き物は増え続けているとマザーから教えられた。


「人間の子孫とバグの子孫がこうやって地球で覇権を争っていると考えると思うところがあるな〜。」


「ずっと人類(私達)は負け続けてるけどね。」


「だからここで勝ちにいくんでしょうが。私達で勝ちにいくわよ。」


おお、ディズィーとユーとナーフの3人はやる気に満ちている。


「それだと私達だけでは作戦遂行は無理ね。数が足りない。」


「でもアネモネ、ファグってアインを撃って私達を敵視してるんでしょう?他の先輩達もそうかもよ?」


「敵多すぎないかこれ?信用出来るのみんなだけよ。」


「いや、あんたは実績積んでるから信用しきれないけどね。」


「もう月でのことは許してくれよっ!ちゃんと勉強し直したから!」


エピはあの後にちゃんと個人で勉強を続けていた。それはみんなが知っているから信用はしている。だからこれはマイとエピのいつもの馴れ合いのようなものだ。


「そうね…先ずは敵を知ることから始めましょうか。人型バグは光を操る能力を使えると仮定して、その能力についてもっと話さないといけないと思うんだけど。」


「でも結構話したじゃん。他にも何かあるんかアイン。」


他にか…、結構話したつもりだけど逆に気になることを質問されたほうが楽なんだけどなあ。


「私はあまり光について詳しくないんだけど、光で人を8等分にカット出来るものなの?」


アネモネはみんなに質問をした。みんなそれぞれ持っている情報には偏りや違いがある。自分が知らなくても誰が知っている可能性はゼロではない。


「あー確か光でレーザーやビームっていうのがあって、それだと金属も切れるって何かで見たな。」


それなら彼女が詳しいんじゃないか?彼女の能力がそれに近いことが出来る。


「…そんなに見ないでよ。」


ナーフが居心地が悪そうに紫色の髪を指先で弄りだす。


「はじめに言っておくけど私はそこまで詳しくないから。私の能力はどっちかと言うとアネモネのように空気中の原子に作用する能力だし。」


へーそれは初耳だ。勝手に熱に関する系統の能力だと思っていたから。


「私のは空気中の原子からイオンを取り出して高速加速させる能力で、その人型バグと同じ様な系統の能力じゃないわよ。」


「それであんな熱が生まれるの?初めて知ったよ。」


「いやユー…あなたには何回か話したけど?」


この反応…さては理解していなかったな?


「俺も初めて知ったぜ。」


「いやディズィー、あんたにも言ったから。」


ディズィーは仕方ない。もう諦めて他のことに時間を使った方が良いよ。


「…まあいいや。確かに光で金属を切るのは可能よ。人体はやったことが無いけど金属より楽なのかしら?いや、水分が多いから難しい…?」


水は切りにくいのかな?まあ液体はそもそも切れないしね。


「じゃあ人型バグの能力はほぼほぼ確定したとみていいんじゃない?もしかしたらその影の円柱ってその場の光を外に向けて放出しているから暗いのかもね。」


「放出?」


「光そのものを操作出来るのなら暗くも明るくも出来るでしょう?本体の姿を隠しつつ外に向けて光情報を飛ばしていたならアインの話の辻褄が合うと思うわ。」


多分アネモネの推測は合っているように思える。思えるのだが対策方法は相変わらず見えてこない。結局の所、奴を見てはいけないって制約は変わらないのだから。


「ならどうする?視認してはいけない相手にどう戦う?」


僕の問いにアネモネは簡単そうに答える。まるで最初から対策を思いついていたように。


「先輩達をデコイとして利用すればいいじゃない。ファグなんてどう?」


どうしよう。とても悪い考え方なのに良いアイデアだ。バグが人を襲う習性を利用して彼を囮に使えば簡単に誘き出せる。


「アネモネ…ちょっと悪い顔してるよ。」


フェネット…ちょっとどころの騒ぎじゃないよ。かなり悪い顔をしてるよこの人。

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