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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
2.死神の猟犬
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晩餐

そろそろ第二章が終わります。長かった…

装填(リロード)を行ない銃の軌道を消し去った後、銃口を対象に合わせながら近付く。


「い、いや…。」


少しでも私との距離を離そうと動いても腕があんな有り様じゃあ芋虫がモゾモゾしてるようにしか見えない。私が頭に軌道を合わせようとすると必死に頭を振って抵抗する。


「宮沢さん一撃で済まさないと多分その状態でも痛いよ?」


『ミヨ 脳は破壊しないでくれるか?これ程の念動能力者はそうそう居ない 貴重なサンプルとして“第三部”の研究員に引き渡したい』


『分かりました。ではどこを撃ちましょう?』


『首の横を掠めるぐらいの位置だ その威力なら総頚動脈を損傷させられる』


私は言われたどおりに首の横に軌道を合わせる。


「かはっ…ううぅ。」


(嫌よ…こんなところで死ねないの…!まだ何も成し遂げられていないのに、人生で初めて生きる目的を持てたのに!)


呼吸をしようとするだけで口からうめき声が出て話す事もままならない。怖い…死ぬのが本当に怖い。でもそれ以上に彼女が怖い。何度も吹き飛ばしたのにケロッとして銃を撃ってきたり、よく分からない腕を生やして殴りかかってきたり彼女が本当に人間なのかすら疑わしい。


そうだ!疑わしいと言えば彼女が言っていた事も能力者同士の闘いは楽しさの欠片もないただの殺し合いだったし途中から一方的に攻撃され続けただけだ!


伊藤美世と宮沢みゆきの視線が重なる。一人は満足そうな表情をし、もう一人は怯えた表情をしている。


(うーん宮沢さんはこの闘いに不満を感じたのか…お互い全力を出し合って良い勝負だったと思うんだけどね。)


伊藤美世は宮沢みゆきの資料に目を通したので、ある程度は彼女の事を理解しているつもりではあるが全てを知っている訳ではない。


「いい闘いだったね。」


(はあ…?何を…言ってるの?良くなんか無いわ!お前に負けたせいでわたしは死ぬっていうのに!)


人を視線だけで殺せるんじゃないかというぐらい睨みつける。


「悔しいって思えるのはそれだけ全力で挑んだからじゃない?今までで1番頑張ったからすっごく悔しいんだよ。」


自分より年下のガキに負けて演説まで聞かされたら自分が惨めで仕方ない。もうこれ以上憐れむならさっさと殺してよ!


「こ、ころしてよ、も…おわりたい。」


『早く殺してやれ 場合によって情けは相手を愚弄する事と同じだ』


『はい…りょです。』


首に500玉ぐらいの半円形の傷が生まれてそこから血が飛び出る。先生に命令にはイエスと返すのが伊藤美世さんである!


「かふっ…………あー…さい、あく……。」


空を見上げながら人生を振り返る。わたしの人生最悪だったなぁ。楽して生きようとしたからバチが当たったのかな?嫌な思い出ばかりの人生だったからこそ幸せを掴もうとしたのに…最後はよく分からず死ぬんだね。


「…最後に言っておくけど、これ私の初任務でさ。だから最初の相手が宮沢みゆき…貴方で良かったよ。」


宮沢みゆきがこちらに視線を向ける。


「貴方と会えたから私は成長出来たと思うしこれからも色んな能力者達と渡り合えると思う。宮沢みゆきさんありがとうね。」


「礼、言うくらい…なら…殺さない、でよ……。」


「それはゴメン。でも仕事だから許してよ!」


(何だコイツ…本当に意味が分からないしそんな奴に殺されるわたしも意味分からないし…もう感覚が無くなってきて寒いよ。)


「だからこれからもいっぱい仕事こなして私、有名になるからさ。そしたら初任務で殺した貴方の名前だって有名にしてあげる。死神の一番弟子である伊藤美世が最初の仕事で殺した能力者“宮沢みゆき”ってね。」


最悪な慰め方をされてしまいました。最後に付き合っていた彼氏でもそんな慰め方してこなかった…いや、アイツに慰められたことすらなかったかな。


「ふふ…ばーか。わたしの事、なんか…忘れて…好きにしなさい。じゃないと、わたし…みたいになる、わよ。」


アホらしくてもうどうでも良くなってしまった。最後にこんな変な奴に殺されるならわたしの人生も最期くらい劇的なものだったのかも知れない。


「う〜〜ん…なら、そうするよ。でもね貴方の名前はずっと憶えててあげる。さっきの怪腕を使う度にちょっとだけ思い出してあげるからさ…そろそろ寝むっていいよ。」


彼女がわたしの側まで近付き腰を下ろして手を伸ばしてくる。


ああ温かい。冷えたわたしの顔に温かい手が触れて心地いい。この手に殺されたのに、この手に心地良さを感じるなんて本当に、意味…が分、から、な、い…


宮沢みゆきが灰色の物体に変わることを視認して組織に対象の処理完了の報告をする。


『後は組織に任せて良いんですよね?』


『ああそうだ 後はプロに任せてワタシたちはココを離れよう』


私と先生はここを離れる事にして入口まで移動した。そして途中でアタッシュケースを回収した後に最後の大仕事を済ませる為にタクシーを捕まえに行った。


「いらっしゃいませー!何名様でしょうか?」


「二人ですけど会計ってPay大丈夫ですか?」


「はいお使いできますよ。お好きなテーブル席にお座りください!」


私とタクシーのオッサンがテーブル席に向かう。もう説明不要だと思うけどタクシー捕まえたらオッサンも捕まえてしまった。もはや予定調和過ぎてお互いそこには何も触れなかった。


オッサンにおすすめのラーメン屋まで連れて行ってもらったら何故かオッサンも降りてきて一緒に店内に入り私の後ろに居る。


イスが対面に1つずつ置かれたテーブル席に座ろうとイスを2つ引いて座る。すると何故か私の引いたもう一つの席にオッサンが座ろうとする。


「は?」


「え?」


お前の顔見ながら飯食べたくないんだけど?私は拒絶の意思を見せるためにガチトーンの声を出す。


「はぁ?」


女子高生のマジの拒絶を受けて中年男性の心に深い傷を負わせて退散する。オッサンは大人しくカウンター席に向かった。


(私の対面席は先生専用だ!)


私の引いた席に先生が座る。まあ私の姿を再現した姿だけどね。私視点だと双子が仲良く座っている様に見えてハッピーだ。


『ワタシはこの状態では食事出来ないし居る必要が無いと思うのだが…』


『伊藤美世の初任務お疲れ様会です!付き合って下さい!』


『ーーーそうか それなら付き合おう』


ヨシヨシ!先生とのご飯なんて嬉しくて顔がニヤける。表情を悟られないようにメニューを開いて顔を隠す。何食べようかな〜。


「すいませ~ん!」


「はーい!ただいま向かいます!」


時刻は21時を過ぎているからか客はほとんど見られない。帰ったら23時過ぎるだろうなー怒られるだろうな…帰るの嫌だなぁ。


「はいご注文は?」


「特製醤油ラーメンと塩ラーメンと唐揚げ小1つずつで」


「かしこまりました!」


元気な女性の店員さんだ。この時間でも仕事とは恐れ入る。そういえばオッサンも昼から今まで仕事していたんだよな。娘さんの養育費の為にお疲れ様です。


『結構食べるのだなミヨは』


『能力者と戦ったあとはお腹減りません?』


《人を殺した後は食事が喉を通らない者も居るのにこの子の胆力には驚かされる 初任務後の心のケアが必要かと思っていたが杞憂だったな》


『さて食事が運ばれてくる前に【削除(リボーク)】について説明しようと思うがいいか?』


先生の表情が引き締まって二人の間に緊張感が流れる。


『はい…お願いします。あの能力(リボーク)って一体何なんですか?』

ブクマと評価ポイントをしてくださった人達は神様の使いですか?

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