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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
5.終わらせた未来の軌跡
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月面の教訓

月での描写は難しいですね。特に現代ではなく未来の月とか無理ゲーです。サテライトキャノンとかあるのかな?……ちょっとありそうで困る。

月での訓練は宇宙服を来て月面を移動し目的の物資を手に入れて帰還するという内容だった。これは地球での業務で資源を見つけてネストスロークに供給する為の訓練である。


そんな説明を月面基地で聞かされた後に食料と水と地図と時計を渡されすぐに月面へと放り出された。月面に居られる時間は最初から決められており、時間をオーバーすることは出来ないと説明をされたけど急過ぎて誰もついて行けていない。


なので月に到着して1時間でいきなり訓練が始まってしまった。


「うお〜〜!超ジャンプ出来る〜〜!天井がねえの違和感すげーわ!」


ディズィーはみんなの荷物を背負ったまま異形能力者らしく身体能力をフルに使って月の上をぴょんぴょんと跳ね回っていた。確かに月での運動は面白い。この宇宙服が無かったら最高なんだけど宇宙空間の温度は人が過ごせるような温度ではない。影になっているところはマイナス100℃以上になるのに太陽の光が降り注げばそこは何百℃にもなるらしい。


しかも月には空気がない。一応は原理的にはあるらしいんだけど重力が低いせいで宇宙空間に霧散してまうから人が吸うだけの量は無い。呼吸が出来なければどんな能力者でも死んでしまう。脳を動かすには酸素が必要だからだ。


「マイ、時計の管理はお願いね。」


「はいはいさー!」


「…大きな声出さないで。スピーカーで聞こえるから耳塞げないし離れていても声量は変わらないんだから。」


「あ、ごみん…。」


空気がないということは音も伝わらない事を意味する。なのでこの宇宙服にはマイクが取付けられていてそれを通信でお互いに音声を送り合って会話をしている。


「時間が限られているし少しでも進もうと思うんだけど。」


アネモネとフェネットは地図と時計を見ながら計画を立てていく。


「賛成。遊びに来たわけじゃないし酸素にも限りがあるからね。えっと…この地図に書かれた補給ステーションをいくつか経由して進まないとだから方角は…こっち?」


「…フェネット、それは違うんじゃない?」


ナーフが2人の会話を拾い会話に参加する。50日の訓練を経てすっかり仲が良くなったアネモネとフェネットとナーフ。ちょっと前に殴り合っていたとは思えない。女の子って怖い。


「ナーフ…じゃあどっち?」


「いや知らないけど。」


「じゃあなんで違うって言ったの!」


「私も違うと思うよ。」


「アネモネまで!」


そう、方角という概念は僕達にとってあまり所縁(ゆかり)がない。ネストスロークに方角とかあまりないからだ。あって前後左右上下ぐらいか。正直な話をするとネストスロークの船自体の前側すら僕達は知らずに生活していた。


「あー待てよ…あそこに地球があって、地図だとこの印が上を指しているんだから…」


エピが地図と上を見上げて地球を観測し、お互いの位置関係を頭の中で計算して向かうべき方向を導き出した。


「高確率で向こうへ行けば補給ステーションがあると思う。距離は…このメモリで10kmか、なら22kmぐらいだな。」


「エピすごいじゃん!見直したよ!今の今までただの情報集め狂いだと思っててごめん!」


彼はサバイバルの素養がありそうだ。そういえばサバイバルについて学んでいる時もかなり集中して聞いていた印象がある。エピは知識を吸収するのが好きなのかも。


「うっせ、マイ。」


「じゃあ急ぎましょう。空気も食料も切れたら本当に死ぬわよ。」


アネモネはみんなをまとめて次の行動に移ろうとあるき始めた。みんなもそれに習って彼女の後ろを付いていく。


「あ、食料と水ってどれぐらいあるの?」


ユーがアネモネに質問をした。確かにどれぐらいの量が支給されたかで行動の範囲が決まるのでみんな知っておいた方が良いだろう。宇宙服に取り付けられたスピーカーのおかげでみんな会話を聞けるからここで確認しておきたい。


「1人1日分しか支給されていないけど、一応目安の時間制限だと12時間程だから保つと思う。だけど問題なのは…」


「空気でしょ?ディズィーの背負ってるタンクの大きさからそこまでの量は無いと思う。だから補給ステーションに寄って補充、そこからまた歩いて次の補給ステーションで補充を繰り返すしかないと思うけど。」


「ナーフの言うとおり。腕に付いてるこのランプで宇宙服内の酸素が見れるからちゃんとチェックしておいて。」


左右の腕にモニターのようなものが付いておりそこには残りの酸素量を示すランプと宇宙服内の温度や心拍数などが表示されている。これを見て体調の管理をするのだが、ちゃんと自分だけではなく周りの仲間たちのヘルスも確認しなければならない。


この訓練の前に説明があったけど、慣れない環境下だと注意散漫になって気付かぬうちに体調を崩してしまったりパニック状態になってしまったりするらしい。その対策のためにこのモニターが付けられている。


「ここはネストスロークよりも重力が軽いけど、私達にとって未開の地。経験のしたことのない広い空間を進むからみんな離れすぎないようにね。」


「ここで迷子になったら多分というか絶対に死ぬよな…。」


「当たり前でしょうが。回収もされずに放り捨てられるんじゃない?もしくは宇宙服だけ回収して中身は放置みたいな。」


冗談っぽく言っているけどあり得る話だ。更に言うと生体サンプルを取ってから放置が一番確率が高い。僕達はみな生産方法が確立された個体達だからね…。


「そうはなりたくないよナーフ。」


「だったら歩くしかないよユー。あのツラい訓練を越えてきた私達なら大丈夫だって。」


「最悪おれが背負ってやるよ。ここは軽くてまだまだいけそうだし。」


ユーとナーフとディズィー達はお互いを励まし合ってお互いを認識し合ってるからあっちのヘルス管理は大丈夫そう。エピもマイとペアだから心配していないしフェネットはアネモネを見ている。それにアネモネは自身のヘルス管理ぐらい完璧におこなえるだろう。


問題なのは…


「僕か…。」


「ん?今のアインか?」


「アイン?どうしたの?」


マイクがこのヘルメット部分に付いてるから勝手に音声を拾ってみんなに送ってしまう。これじゃあ独り言も言えやしない。


「いや、ヘルス管理をちゃんと自分でしないとだなって。」


「私がしているから大丈夫。アインは考え事をしたり集中し始めると他には何も見えなくなるから。」


「アネモネ…まだ宇宙船でのことを怒ってる?そろそろ許してほしいんだけど。」


ちょっとしつこいんだよなアネモネって。確かにこちらが悪いから強くは言い返せないんだけどさ。


「許すも何も事実でしょ。だからアインは考え事をしてて。」


「…僕が悪かったから機嫌を直してよ。ごめんなさい。」


「だからアインは考え事をしててよ。」


流石にここまで突っぱねられるのは初めてだ。アネモネや僕以外にも聞こえているからみんなも不穏な空気を感じ取って遠目で僕とアネモネを見ている。


「もう考え事はしないって。」


僕的にはもう許してくれてもいいんじゃないかって考えているから、これ以上は言いたくないけどこれ以上はこの空気で訓練はしたくない。許してもらえるまでご機嫌を取るしかないか。


「違う。私の言ってる意味はねアイン、あなたにはこの訓練のことを考えていてほしいの。」


「え?」


先頭を歩いていたアネモネが振り返る。ヘルメット越しの彼女の顔は真剣なものでフザケて言っているようには思えなかった。


「今までこんな訓練のやり方は無かった。マザーが管理している訓練で時間がないから早く行け?私はそれは聞いて変だなって思った。だけどどう変なのかは言語化出来ない。」


…確かに僕も変だなとは思った。もう少し説明があっても良いとは思うけど本当に時間が無かったからすぐに訓練へ移ったのかもしれない。


「こういうのはアインが向いてると思う。私よりもちゃんとした理由を思い付いてこの訓練の意味を見つけられるんじゃないかって。」


「意味って…サバイバル訓練だろ?」


ディズィーの言った通りただのサバイバル訓練かもしれない。アネモネがただ深読みしているだけの線もある。だけどそれなら良いんだ。そうであってほしいけど、もし違った場合のことをアネモネは警戒している。


「うん…アネモネの考えていることは分かったよ。色々と考えてアネモネの懸念しているものに近いものが分かったら言う。だけどアネモネはこの訓練を無事にクリア出来るよう集中していて。」


「ありがとう…私の考え過ぎだったらさっきのはチャラって事で。」


「うん。それでいいよ。」


アネモネとアインだけがこの訓練自体に隠された真意を見つけようとしていた。それが他の個体達には奇妙に見えていたのだが、それがどういう意味であったのかは後に判明することとなる。

いつもこのぐらい早く投稿したいものです。

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