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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
5.終わらせた未来の軌跡
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能力の露呈

今月からやっと執筆に時間が費やせそうです。先月は本当に忙しくて毎日投稿が出来ないと思ってました。

もし能力がみんなにバレたらマザーは自分を殺処分するだろうか。そうしたらみんなが関与したことにもなる。…それは駄目だ。ここは黙秘を貫くしかない!


「幻覚系?それとも認識型?」


「テレポートでしょ!」


「いや…透明化したのなら簡単だ。光系統の能力だろう。」


ああ…勝手に考察が盛り上がっている。しかも後ろに居る個体達にがっしりと肩を掴まれているから席を立つことすら出来ない。なんて用意周到なんだ…普通ここまでするか?


「もう言っちゃいなよ。えっと…アイン?だっけ。アネモネがそう呼んでいたよね。」


「…言えない。マザーから…AIから秘密にするように言われているから。」


みんなを諌めるために言ったマザーからの口止め、これが余計な一言だった。


「マジッ!?」


「そんなヤバい能力なのか!?…言っちゃえよ〜。俺たちもう少ししたら別々になるんだからさ〜。」


「ねえ教えて〜?誰にも話さないからさっ。」


もっと興味を引くことになってしまった。この流れをどうにかする術を僕は知らない。どうしよう…。


「隙あり!」


「あっ!」


フェネットが僕の封筒を奪いあげてアネモネに渡してしまった!なにやっているのフェネット!?この個体ちょっとアグレッシブすぎないか!?


「俺たちが押さえているうち開け!」


「任せろ!」


僕よりガタイのいい個体2人が肩に続いて腕まで押さえ始めたから僕には為す術がない。どうしよう…自分のせいでみんなに被害が及ぶのは非常に心が痛む。


「…私がこうやって封筒を開こうとしても静止されない所を見る限り大丈夫そうね。」


「…え?」


「マザーが本気で隠すつもりならもうアナウンスが入ってもおかしくない。でも無いってことは大丈夫なんじゃない?」


アネモネは周囲を見回しながらもちゃっかりと封筒を開けていく。確かにそうかもしれないけどさ…なんて抜け目のない奴。悪いことをすることに手慣れているよ。


「ねえねえ。マザーってなに?」


フェネットはアネモネにマザーは何なのかを質問する。そこで僕とアネモネは同時に気付いた。彼女達はマザーAIの存在をそもそも知らないんだと。


「…それはまた後で説明するから。」


アネモネは不自然に視線を外し封筒から紙を取り出す。…彼女は僕と一緒でマザーと会ったことがあるんだ。こんな時なのにそんなことを考えてしまう。そのせいで今回は紙を表側でテーブルの上に置かれてしまった。


「えっとなになに………………これって、凄いんじゃない?」


アネモネの素の反応が漏れる。僕も続いて自分の進路を確認した。内容は…これって、どうなんだ?比較対象が無いからどう凄いのか分からないんだけど…。


「…能力判定S。但し現段階での判定。S判定って確か一番上の判定だっけ?」


「Sより上は無いけど…ていうかS判定の能力って核反応型融合系とか異形型知能系レベルってことだよね?歴代に1人ずつしか記録にない能力者だよ?」


誰かが読み上げてそれを周りの個体達が聞きながら感想を述べてまた誰かが読み上げていく。


「能力の詳細…未だ解析しきれず?能力名は仮で【時間操作型能力】…?」


「「「時間操作ってなに?」」」


書かれた内容ではどういう能力なのか分かっていないようだ。自分も最初は時間を操作するという意味を深くまで理解出来なかった。その理由はここに時計みたいな時間を認識出来るものが少ないからだと思う。多分みんなは時間という概念すらあまり考えたこと事が無いんじゃないかな。


「さっきみたいに時間を戻して封筒が開いた事を無かったことにするってことでしょ。」


だがアネモネはみんなとは違った。すぐに時間操作という意味を理解していたのだ。彼女の能力に関する感覚は時間操作型能力者である僕よりも鋭い。


「無かったことになるってどういうこと?」


「つまり…?」


アネモネの説明で分かったものはなく質問攻めをされる。


「だから時間は常に進んでいるでしょ?それが反対側に向かうの。みんなも一度は思ったことぐらいあるでしょう。今のをやり直したいとか昨日に戻りたいとか。アインはそれが出来る能力者なの。…私達の認識の外側にある能力ね。」


最後はポツリと呟いただけで聞こえていたのは僕とフェネットだけだったろう。周りのみんなは僕に詰め寄って更に色々と質問を投げ掛けてきた。


「じゃあ何度も能力測定をやり直せるんだよな?それでS判定出るまでやり直して取ったのか?」


「いや…そんなこと出来ないよ。」


悪意は無いんだろうけどなんか嫌な聞き方をするな…。そんなことはしていないしS判定には興味ない。


「ねえ!これ凄いよ!」


能力についての判定を記述した紙とは別にまだ何かが記述された紙があり、そちらを見ていたフェネットから口頭で教えてもらう。


「R.E.0001は最上位階層での生活を認め、時間操作能力による実験を業務とする…これって能力の測定しているだけでいいってこと?凄くない?しかも最上位階層!」


「…いや、もっと凄いこと書いてるよ。…最高のアクセス権に、無制限の通信量を支給…!?いいな〜!!夢みたいな生活じゃんか!」


どれも特に欲しいとは思わない。だからそんな笑顔で言われても同意は出来ないよ。


「最後の一枚には何が書いてあるの?」


封筒には3枚の紙が入ってあったらしく最後の一枚はアネモネが手にして読んでいた。…だからそれ僕のだからね。


「…月面の居住区認定証。ネストスロークとは別で月にもう一つ住まいを持てるって証?どっちに暮らしてもいいってお墨付きかな。」


「月…。」


僕の左肩側を押さえている個体が月に反応を示す。そういえばこの個体は月で働きたいって言っていたような気がする。


「すごい良いじゃん!今のうちに仲良くしておこうっと!」


フェネットが椅子をピタリとくっつけて身体も同じ様に密着させてきた。…後ろから押さえつけられたのが終わったと思ったら次は横から腕を絡められて身動きが取れない。この個体のペースにはついて行けないよ。


「…そろそろみんな自分の封筒開けて見てみたら?アイン以外にも同じ様な事が書いてあるかもよ。」


…またアネモネにジト目を向けられる。でも彼女の言葉のおかげでフェネットもみんなも自分の封筒が置かれたテーブルの席へと早足で戻っていってくれた。


…なんだよ。その目を止めてほしい。


「…はい。」


取り上げられていた3枚の紙をテーブルの上を滑らせて渡してきたんだけどさ、ふつう態度逆じゃない?なんでそっちが不服そうなの。


「勝手に見ないでよ。アネモネのせいで目立っちゃったじゃん。」


「注目されるのは良いことでしょ?」


「…そうは思わない。あんなに多くの個体とコミュニケーション取るの初めてで緊張したよ。」


もう一生来ないであろう体験をしたと思う。…()()()()()()()()()()()()()()。ここよりも少ないと助かるけど能力者が多い程有利だしな…。


「話している途中で考え事するのやめたほうがいいよ。私もフェネットに注意されたから。」


「あ、ごめん…。」


確かに話している最中に他の事に集中するのは相手を軽視しているみたいに捉えられる。…いや今のは軽視していたのか?…分からない。


「じゃあこれでさっきのはチャラね。チャラって言葉知ってる?清算するって感じの意味。…フェネットに教えてもらったから私も良く使い方分かっていないんだけどね。あの子本当に色々と話しかけてくるから変なことばかり覚えちゃった。」


彼女は自分とは違って仲のいい関係性を築いているようだ。…話をすり替えられたね今。


「いやならないから。」


「ちぇっ、ならないか。じゃあお詫びに私の見せてあげる。」


アネモネは自分の進路が記された封筒をテーブルの上に置き僕の方に滑らせて渡してきた。…封は開けられていない。


「…いいの?」


「良いよ。興味ないし。」


アネモネは本当に興味なさげに顔を横に向けてテーブルに肘を乗せて頬杖をついた。…これって他人が見てもいいのだろうか。見られたから見てもいいのかな…。


(気になるし見てみようかな。)


そう思い僕は封筒の封を開けて彼女の未来が書かれた紙を取り出した。

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