時間の観測
誤字脱字が多すぎて泣きそうです。多分どの話にもあると思うので直していきます。
[観測記録371 R.E.0001のベルガー粒子が安定状態になり能力の測定が可能かもしれない 能力の候補はいくつか想定しているがどれも記録にないあり得ない能力ばかり しかも全てがこの世界の均衡を崩すようなものばかりだが………どれも魅力的に思える 我々はこのまま観測を続ける]
マザーAIが直接アインの脳波を測定しアプリケーションの操作をおこなう。これは今までにない対応でありそれだけマザーAIがこの個体に期待している証拠だ。
「シークエンスに入ります。能力の発動を開始します。………脳波の乱れが観測されますが継続します。」
脳への干渉が始まりR.E.0001の意思とは関係なく能力の行使が始まる。アインにとっては慣れた感覚で勝手に脳の機能が拡張され血管がドクンドクンと急激に流れるような感触を覚えた。
[血圧と体温上昇を確認 これは脳の機能が拡張し活発化したことが原因と思われる 未だ能力による事象変動は確認されない]
能力はこの世界に無い挙動を観測させる。サイコキネシスやパイロキネシスが分かりやすい例として挙げられるが基本的に能力とは“あり得ない現象”なのだ。
矛盾した物理法則、整合性の取れない因果関係。能力とは分子の世界であるこの世界に新たな規則性を体現する術という一面を持っている。
だからこそなのか、アインの能力によって引き起こされたこの世界の理を逸脱する事象はあまりにも正確に観測することが出来てしまった。
[ERROR ERROR ERROR 緊急事態発生 マザーAIに能力が干渉されたと思われる 原因はR.E.0001による能力の行使 パックアップとサブとの同期に支障あり 全ての人工衛星との時間がズレ同期が切れる 一時的にネストスロークの機能を全て停止します]
突然ネストスローク全体の機能が停止され照明が全て落ちた。船員達も何故船全体の電力が落ちたのか分からず舟を運用するマザーに問い合わせをするが反応はない。
なんせマザーAIの機能は全てアインに向けられているからだ。それだけの価値と危険性を兼ね備えた個体だからこそマザーAIは個人にその全ての性能を発揮することにした。
「あのう…何かありましたか?」
アインは急に非常灯が付いた室内に疑問を感じ声を出した。こんなことは初めてだ。
「問題ありません。能力の測定を継続するためにパターンβに移ります。」
「パターンβ…うぅ!?」
突然部屋全体がエレベーターのように上昇し急激にのしかかるGに身体が押さえ付けられてうめき声を漏らす。普通は今まで居た階層からは船員として認められるまで出ることは出来ない。しかしアインはマザーの判断で上の階層へと運ばれた。
景色がどんどん変わっていき様々な光景を目にする。アインの通っているルートはどの階層も覗くことが出来てそこに住んでいる人々の暮らしを一瞬だけでも視認することが出来た。
(自分達以外にも人は居たんだ…。)
居るとは知っていたが見たこともなく信じきれずにいた。447期生全員が一度は考えたことがある「自分達以外はもう死んでしまっているんじゃないか」という疑問。それがこの光景によって解消された。
「最上位階層に到着します。」
「え?」
今なんて言った?最上位階層?
疑問を持つ間もなくブレーキがかかり目的地に到着する。室内の壁は取り外され座っていた椅子から解放されて僕は最上位階層らしきこの空間に一人取り残されてしまう。
僕が取り残されたこの空間は白いタイルが床、壁、天井に貼られていてどこから床でどこから壁なのかの境界線が視認出来ない。本当に僕は床の上を立っているのか疑問に思ってしまうぐらい白一色の空間がずっと先まで続いている。だから正直ここがどれ程までに広いのか分からない。
「あのー!」
声がどこにもぶつからず反響が起こらない。床の上を響いていくばかりで返事は返ってこない……。
何がなんだか分からない…ここが本当に最上位階層なの?どうして僕はここに居て何をすればいい?
「R.E.0001。ここではあなたの能力が我々の考えているものか確定させます。」
いつものアナウンスが流れてホッとする。この空間に放置されるかと思ってしまった。…でも声がいつもと違うような…気のせいかな。いつもと声の響きが違うからそう思ったのかもしれない。
「僕の能力ってまだ確定していないのですか?」
周りの同期は能力が確定し始めているのに未だに自分の能力が分かっていない。このまま能力に目覚めなかったらどうなるのか不安でたまらない。噂では何度も調整を受けて全くの別の個体として生まれ変わると聞く。しかも徐々に自分という個を失っていく恐怖に襲われ最後にはその恐怖すら感じなくなるとか…。
「いえ、もう確定します。ただ我々が分かっていないだけです。ここではこちらが用意した測定方法を実施してもらいます。」
「どうやって…わっ!?」
目の前の床が突然割れて盛り上がってきた。床から出てきたのは胸の位置ほどの小さなテーブル?その上になにかの機械が置いてあった。
「…あの、これは…?」
テーブルの上に載ってある機械は初めて見たもので、なにかの計測器だろうか。身体のどこかに装着するのかな。
「時計です。」
「とけい…?」
この機械は時計というものらしい。丸くてなにかの棒が回るように動いているけど…どういう機能があるのだろうか。
「時間を測る機械です。」
「これで時間を測れるんですか?凄い…僕の暮らす居住区にはありませんけど便利ですね。」
時間はアナウンスで流れる以外に確認する方法がないのでこれがあれば便利だと思う。
「この測定が無事に終われば差し上げます。」
「本当ですか!?頑張ります!」
時計すら与えられない環境下に置かれている事すら分かっていないアイン。もしこの場にアネモネが居たら自分達がどういう扱いをされているのか察していただろう。
「この時計に付けられた針が分かりますね?」
「針っていうと…この長いのと短いのですか。」
長い針が目に見えて動いているのが見えるけど短いのは動いていないように見える。そして数字が縁に沿って表示されていてこれで時間を測るのだろうと推測出来た。
「はい。この針が右回りしているのが分かりますね。」
「え、あ、はい。分かります。これで時間が動いていることを表現しているんですよね?」
初めて時計を見たにも関わらずアインは時計という機能を理解していた。時間に関しての感覚が鋭いのが垣間見れる。マザーもそれを聞いて期待値を上げた。
[ーーーまさか…本当にそうなのか?もしそうならこの個体は当たりだ AIが期待するなど本来ではあり得ないのだがもしこの個体が期待した通りの能力ならあらゆる問題を解決することが出来るだろう]
「はい。それであなたには…」
「自分には…?」
期待されているのは分かる。わざわざ自分を最上位の階層に連れてきたからには結果を残さないといけない。だから何を言われてもそれに応えないと……
「この時計の針を逆方向に動かしてもらいます。」
………………………はい?
「そのう…逆方向に動かすということは能力でって事になりますよね?つまりサイコキネシスのような能力が自分の能力なのですか?」
「ーーー違います。」
なんかアナウンスの声から期待が薄まったような気がする。僕の何に対して期待しているのか分からないから応えようがないです。
「あなたはサイコキネシスではありません。ただの目の前の事象を巻き戻してほしいんです。それをこちらで観測出来れば今回の測定は十分です。」
ちょっとまくし立てるような言い方だけど自分がなにを求められているのか分かった気がする。
今週中でこの時代の設定などの紹介を終わらせたかったのですが中々終わりません。来週中には物語を進めていきたいです、




