表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
2.死神の猟犬
32/602

軌道が飛び交う

投稿頑張ります。

「え?な、なにが起きたの?」


呆けながら目の前で起きた現象に感想を述べる。よく見えなかったけどあれだけの質量の塊を蹴り飛ばした事が信じられない。


しかも彼女の周りの芝生の上に大量の土が覆いかぶさったけれど彼女本人には砂の一粒すら付いていない。もしかしたら彼女も私と似た能力を持っているの!?


「どうしたの?まだ土塊が残っているでしょ?」


先程と同じく左手をくいくいと動かして挑発してくる。しかしさっきまでの挑発とは意味合いが違ってくる。


“そんな攻撃じゃあ私に意味無いけどやってみたら?”


…という意味が含まれた挑発。かなり根に持ってると思って間違いないだろう。なんて根暗な女でしょう。


宮沢みゆきは念動をフルに使って3つの土塊を圧縮する。質量があっても脆ければ意味が無い。雪玉のように押し固めることで強度と威力を上げる。


1メートルもあった土塊は半分の50センチメートルの球体になるまで固められ硬度は先程と比べ物にならない。


(その舐めた態度を続けられるかしら?)


土で出来た球体を高速回転させながら射出する。前の2発とは違って空気抵抗が少なく途中で威力が落ちる事も無い。はっきり言って人間に対して行なうレベルの攻撃ではない。1発で大型の動物だろうと仕留められる土塊を3発分だ。


宮沢みゆきは身長が自身より低い女性にこの攻撃は流石にやり過ぎたかとほんの少しだけ心の隅で心配をした。しかしその心配に意味は無かった。伊藤美世は土塊を弾きながらこちらに向かって走って来たからだ。


「シィッ…!」


両手を手刀のように構えて土塊を横から弾くように軌道を描く。そして土塊の射出速度よりも速く走り抜けて宮沢みゆきの懐まで入り込んだ。


「嘘でしょっ!?」


瞬時に距離を詰めて来た“化物”に恐怖を覚える。ありえないありえないありえない!生き物が出していい速度じゃない!それにあの質量の塊を物ともせずに近付くなんて()()()()!?


伊藤美世は走り抜けた勢いのままに右足を使って宮沢みゆきに蹴りを放つ。


(手応えが…無い。)


蹴りの感触は空気の入った風船を蹴ったみたいで手応えが無い。その証拠に地面を弾みながら宮沢みゆきは10メートル程吹き飛んだけど死んでは…いないどころか傷すら負ってない。


私の身体能力と【再現】(リムーブ)の合わせ技でもあのバリアを破る事が出来なかった。割と自信のある一撃を喰らわせたのに無傷とは軽くショック…一般人だったら上半身と下半身がお別れを告げる程の鋭い蹴りだったのに。


まあ利き足じゃあ無かったしね。利き足だったら今ので殺せたかもしれない。…言い訳じゃないもん。


「アンタ…アパートの時は手を抜いてたの?」


「手は抜いてなかったよ。私が貴方を甘く見て返り討ちにあっただけ。」


宮沢みゆきは勝てると思いここに来た、しかしもしかしたらその考えは早計だったのだろうか。宮沢みゆきの表情に余裕が無くなる。


「宮沢さん、もしかしたら気付いたのかもしれないけど貴方が勝てる可能性は殆ど無いよ。もう私にダメージを負わせることは出来ないし私の能力を防ぎ切る事も出来ない。」


宮沢みゆきに一歩ずつ近付きながらベルガー粒子を圧縮させる。


「そして逃げることも出来ないよ宮沢さん。だって貴方そこまで早く飛べないでしょ?私の銃ならこの距離すぐに撃ち抜けるよ。」


左手を見えやすい様に肩まで上げて銃を【再現】(リムーブ)し宮沢さんが私の銃に目が釘付けになる。


「で、でもわたしの能力はアナタの銃撃だって防いだしさっきの蹴りだって痛くも痒くもなかったよ!」


「宮沢さん自分のベルガー粒子を上手く認識出来ていないのか知識が無くて分からないのか知らないけど1発を防げるぐらいの密度しか無いんだよ。」


宮沢さんがよく分からない単語を並べられて理解不能な表情を浮かべる。


「ベル、ベルガーりゅーし?」


「人によってベルガー粒子量は違うし訓練によってベルガー粒子の密度も変えられる。私と宮沢さんのベルガー粒子量と密度には大きな差があるの。だから私の銃を1発ぶつけるだけで宮沢さんのベルガー粒子は拡散して薄くなる。多分2発3発でそのバリア張れなくなるよ。」


私の説明を聞いた宮沢さんはわなわなと震える。


「許さない!私の力を否定することは!神様から貰ったチャンスだったの!こんな人生を変えられるって本気で思えてそれなのに…うぅううううう!」


地面に腕を叩きつけて泣き出す彼女を見てると共感を覚える。気持ちが痛いほど分かるし、実際能力を得ることはチャンスだ。先生から能力を与えられて人生が良い方向に向かった。


「ううっうぅっう゛う゛う゛う゛う゛う゛!!!」


この感じは…廃ビルで見たヒューマンツリーか。


『ミヨよこれから相手は能力に全てのリソースを注ぐだろう その為に痛覚すら処理出来なくなり痛みを気にも留めない攻めを見せてくる 気を付けろ』


『はい先生!』


宮沢みゆきのベルガー粒子の輝きが鈍くなり重厚感を放つ。更に周りの空気を重く感じるほどのプレッシャーを肌で感じる。


(ベルガー粒子の密度がさっきとは比べ物にならないぐらい濃い。しかもこのバリアの範囲は!)


考えるよりも早く銃の引き金を引き弾丸を放つ。軌道は確定され宮沢みゆきに軌道線上が重なり直撃した。


しかし弾丸が空気を切り裂く音だけが響き宮沢みゆきのバリアに直撃した際に発せられるはずの衝撃音は発生しなかった。


【再現】(リムーブ)!」


軌道線上を不可視の弾丸が走る…が再びバリアに防がれる。


(なら【再現】(リムーブ)を使った格闘戦で!)


右手で殴りかかろうと距離を詰めて殴ろうとした瞬間、宮沢みゆきが念動で阻止しようと私の拳にバリアでぶつけてくる。


「ふぐッ。」


骨の芯まで衝撃が響き肩の関節が外れそうになる。能力と能力は干渉し合わないという制約があっても能力を行使している能力者には干渉する。


美世の軌道を再現した拳は完璧なモーションで繰り出されたがその衝撃を受け止めるには美世の身体能力に依存している。


「クソッ!」


宮沢みゆきの瞳には正常さが感じさせないほど濁っていた。まるで怒りや悲しみのマイナスの感情を煮詰めた様な瞳に私は目線を外せない。


「う゛う゛う゛う゛う゛う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」


「うるさいッ!」


今度は対象の頭部に目掛けて左足を蹴り上げる。しかしバリアに阻まれてダメージを与えられない。


(利き足でも微動だにしないとかいきなり強くなりすぎでしょうがッ!!)


最後の手段として残していた弾丸を銃口を向けて打ち尽くす。1発1発バリアに放たれるたびにバリアが波立つが拡散にまで至らない。


【再現】(リムーブ)!」


(5発同時の射出ならどうだ!)


バリアは大きく波立つが…相変わらず拡散には至らない。それどころか大きな波が更に揺れて妖しく輝く。


(マズい!!【再現】(リムーブ)!!)


「ゴフッ…!」


宮沢みゆきを中心とした半径5メートルの物体が()()()()()()()。彼女の居た地面はドーム状のクレーターが生まれ美世は10メートル以上先の地面にまで吹き飛ばされた。


「痛っつぅ…」


先程までは美世の【再現】(リムーブ)を使った蹴りでバリアを蹴り飛ばしていたが、今は立場が変わり逆にバリアで【再現】(リムーブ)が吹き飛ばされた。


『ミヨ大丈夫か?』


先生が側まで来てくれる。けどこんなカッコ悪い所を見られてしまって恥ずかしい。


『大丈夫ですけどあのバリアが無敵すぎて嫌になります。』


宮沢みゆきの攻撃の手は止まらない。先程の土塊を超える大きさの岩石とも言える塊を持ち上げて伊藤美世に叩きつける。


「それはやばいッ!」


すぐさま立ち上がりその場から跳躍し岩石を避ける。巨大な岩石が地面叩きつけられた反動で美世が少しだけ浮き上がる。


「ハァハァハァ…」


…守りに入ったら殺られる。ここは無理をしてでも攻めなければ!


『ミヨ そろそろ最高火力で押すんだ』


『最高火力…ですか?』


銃と蹴り?この2つでもあのバリアを攻略するには火力不足だったけどまだ何かあるのかな?


『ああ ミヨは【再現】(リムーブ)を全て理解していないな?』


『理解ですか?』


今こうしている間も彼女の攻撃が降り注いで来るから回避行動を取らないと…。おっとッ!


『地下駐車場での訓練を思い出せ そこで【再現】(リムーブ)を使った強化を行なっただろう?その時ミヨは実際に()()()()()?』


「あ。」


そうか、そういうことか!せっかくの利点を殺してしまっていた!馬鹿か私はッ!


ベルガー粒子を固めるイメージを思い描く。固く硬く堅く密度を上げて腕を創り上げる。脳の開拓された領域を全て使って現実世界に投影する。そうすると私の肩から()()()()()()()()()()()()()()


肩から第2の腕が生えその禍々しい見た目に伊藤美世と宮沢みゆきの2人がドン引く。


闇の中でも浮き出る程の黒さに血管のようなモノが浮き出て紅黒く脈をうっている。しかも伊藤美世の腕より明らかに大きく成人男性の腕ぐらいある。【探求】(リサーチ)でも認識しきれない何かがそこには在った。


「何だこれ…」


《ーーー何故それをそこまで使えるんだこの子は…》

明日はもっと早く投稿したいですね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ