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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
4.血の繋がった家族
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星が重なる

遂に死神とは何かということに言及が入ります。

ここまでの話をまとめると、蘇芳は最初から変わらずに先生を排除しようと動いていた。でもそれと同時に私が特異点として目覚めるのを待っていたらしい。


「…あり得ない。ミヨが自力で特異点になるなんて…。」


死神は美世が特異点として目覚めた事を受け入れなれないらしく声が弱々しい。


「私から一つ死神に確認したいことがあるんだけど良い?あなたって美世のお母様が亡くなる時に美世が出現させた怪腕って…()()()?」


怪腕なら死神も出現させられる。視えて当然だった。しかし死神は何を言われているのかが理解出来ない様子だった。


「怪腕…?どういう意味だ?あの時にミヨが出現させていたのか?」


「え、視えていなかったんですか?」


逆に美世が驚いて死神に質問し返した。美世は視えているとばかり思い込んでいたから衝撃を受ける。


「やっぱりね…ここまでは私の読み通り。もうあなたは怖くもなんともないよ。思っていたより早かったみたい。」


この状況は完全に蘇芳の思惑通りに進んでしまっている。美世は上手く回らない頭を必死に動かして食らいつこうとするがあまりにも持っている情報が少なすぎる。


「さっきの話の続きなんだけど、天狼のことをどうにかしたい?」


天狼さんの名前を出された私はそっちに意識が向いてしまい考えが霧散する。


「止めたい…助けたい…。蘇芳ならどうにか出来るんでしょ?」


…これは悪魔の誘いだ。でもこれに縋り付くしかない。この状況を彼女が望んだのなら私の望みもそこにある…。


「駄目だ!聞くなミヨ!耳を傾けるな!」


先生が私を引き止めようとするけど、私が先生の軌道を支配下に置いているからそこからは動けない。


「死神より私を選んでくれるの?」


その顔は確信している顔だ。ただ私に言わせたいだけの質問。私が明確にその意志を見せるための茶番にすぎない。


「…あなたを選べば私の大切な人達は幸せになれる?天狼さんも理華も雪さん達や組織の人達も救われる?…あの家族も幸せになれるの?」


もう私は思考を放棄しようとしている。私の選択はいつも間違っていた。なら蘇芳が私という特異点を上手く運用することが出来るのなら私は彼女を選ぶ。…私は先生の期待には応えられないから。


「出来るよ。その証拠に天狼の件をどうにかしてあげる。」


「お願い!天狼さんを止めて!天狼さんに不利益が掛からないようにしてお願い!」


私は蘇芳の足元に縋る。もう私にはこうすることしか出来ない。天狼さんの為なら私は自分の魂を悪魔に売ろう。もう死んでも構わないと思っていたのに今の私は足掻いている。


全てどうでも良くなった私でも天狼さんに責任を押し付けたまま死ぬことなんて出来ない。だって私は天狼さんに助けてもらいっぱなしで、お礼をまだ言えていないんだから。


「うふふっ…。」


自分の足に縋り付く美世を蘇芳は愛おしく感じていた。足元から首筋にかけてゾワゾワ〜っと電流が流れるような快感に身をよじる。


「心配しないで。天狼はね…もう助かってるよ。あの部屋に放置されている死体を視て。」


蘇芳に言われて【探求(リサーチ)】であの部屋の中を視てみると知らない男達4人が部屋に入り込み死体の処理を始めた。


「もう手は打ってある。天狼と美世が関わったという証拠は消えて事故死として処理される流れなの。あ、別に私が全てを命令してやらせたんじゃないよ?他の派閥の人達と協力して口裏合わせてるから心配しないで!」


…彼女は全て知っていたんだ。私が父親と母親を殺してそれを天狼さんが庇う事も…。だから彼女は裏で手引きし私に恩を売った。私との関係を続けるために。


「天狼が何を言っても彼女は罪には囚われない。天狼を撮ったスマホは全てハッキングしてデータを消したし、これからはもっと安全に暮らせるようなシステムで組織が運用されていく。だから美世の心配するような事はこの先起きないよ。ううん、私が起こさせない。約束する。私は絶対に美世を裏切らないから。」


蘇芳はその場にしゃがみ美世の手を握る。お互いの顔は至近距離まで近付き鼻と鼻の先がくっつきそうだった。


「…分からない。なんであなたは私にそこまで執着するの?あなたが何をしたいのかは分かったけど、その行動と理由が分からないの。私はあなたを殺そうともしていたんだよ?」


目の前の華奢な少女が理解出来ない。あまりに自分に都合のいいように彼女が立ち回っているように思える。それだけのメリットが無ければ彼女みたいな人間は動かないだろう。だから何故私に対してここまで真摯に向かい合うのかが本当に分からない。


「美世は私を絶対に殺さないよ。理由は単純に美世が私を殺したくないから。美世は私を殺したくないと考えて私を守ってくれるの。」


これは…真実なの?彼女は私を言葉で操ろうとしている?それとも未来の私がそう選択して……


「騙されるな!彼女はミヨを利用しようと準備していただけだ!分かっているのなら何故チチとハハの事を言わなかった!?こいつなら防げた筈だ!こいつは分かっていて見殺したんだよッ!」


そうだ。何故言わなかったのか私は知らない。甘い言葉だけで籠絡される訳には……


「邪魔しないでよ死神。あなたこそ美世を利用しようとしている癖に。知ってるよ?あなたと美世の行き着く先をね。行き着いた先で美世は後悔し絶望する。何度も何度も後悔して何故私の手を取らなかったのかってね。」


死神は口籠ってしまった。それを見逃す能力者(美世)ではない。後ろを振り返り死神の方を向く。


「先生…?何か……言ってくださいよ。私って一体どこに行き着くんですか?」


死神が答える前に蘇芳が真実を口にする。


「私が答えてあげるよ。美世が行き着く所は死神と同じ所だよ。これを死神は一緒に居られるって表現したけど体のいい言い方だよね。死神の目的はこの世界に平穏をもたらす事という結果であって、それまでの過程や手段は死神自身が全てをやることではない。それこそ平穏な世界を維持する人柱が居ればそいつに全てを託していいの。」


蘇芳の言葉が私の中にすんなりと入ってきては腑に落ちていく。蘇芳は私が理解出来る内容を理解しやすいように言っていると分かる。


「死神は美世にバトンを渡してその役目から解放されたいんだよ。そうすればお役目御免で彼らは解放される。その為の後継者だよね死神?」


死神は答えられない。それが真実であることは明白だった。


「行き着く先は死神になることなんだよ…その意味が分かる?()()()()()()()()()()()()()()()()。不老不死とは程遠い存在になってしまうの。」


私の耳元で囁く蘇芳を振り解けない。寧ろ信用性の高い情報として聞き続けている私が居る。


「具体的にどうなるか知りたいよね。…さあ目の前に居る死神を見て。身体は軌道で創られてそこに命なんてものは無い。美世があの軌道に干渉してるから分かるでしょう?…空っぽなの。人間性なんてものはない。ただのプログラムだよ。」


蘇芳に導かれるように私は先生という一つの“個”を認識する。


「ねえ、あの顔を見てよ。今どんな表情してる?悲しそうで……怒りもあって……それでいて痛々しい。でもそんなものは再現されているだけで中身は無いの。その状況に適した“皮”を再現しているだけだよ。」


「…先生、蘇芳の言うことが嘘ならそう言ってください。そう言ってくれるだけで私は先生を信じますから。」


私がさっきから揺さぶられていてどっちつかずなのは分かっている。でも私はもう自分と自分の判断を信じられない。だからもう他者に委ねるしか私は判断をすることが出来ない。だから先生が蘇芳の言っている事を否定してくれれば私は先生を信じる。


「ミヨ……ワタシは……」


でも先生は悲痛な顔で否定も肯定もしてくれなかった。


これってつまり…私は先生に騙されていたってことなの…?蘇芳の言う通り私はただ先生に利用されていた?


「まあ回答出来ないよね…知ってたけど。いま一度よ〜く死神を見てみて。…そうすれば見え方が違ってきたんじゃない?」


私にとっての先生は強く優しく頼りになる人だった。そのイメージは今も昔も変わらない。


「今まで美世が見ていた死神ってただのイメージと先入観で作り出された虚像なんだよ。真実は目の前にある。あれが美世の目指すべき場所だと思えるかな〜?私にはそうは思えないけどね。………ねえ、もう気付いているんでしょう?」


先生は……死神で………人ではない。多分、能力者でもないし……生き物でも……ない。


「真実を告げない死神が、嘘ばかりで塗り固められた案山子(かかし)が人に見える?」


………………見えない。あの人は私の中にある先生のイメージとは違う。


「生きているという事象すら能力で再現してる死神は生きているとは言わない。能力が解除されれば生きているという事象が消えるだけで、死ぬという事象は発生しないの。美世はいずれそこに辿り着いてしまう。辿り着いてしまったらもう終われない。千年以上も超える年月を1人で過ごす事になる。この世界の平穏を維持するためにね。」


千…年…?しかもそれ以上の年月を過ごすってどういうこと…?途方も無い時間の長さに言葉を失う。人間はそんなにも生きていられる筈は無いのに…。


「どうやって千年以上もこの世界に居られるか?それこそ死神の望みだよ。死神は平穏な世界を創り出す為のプログラムの中に美世を組み込もうとしている。」


プログラム…能力のことを言っているのかな。能力はプログラムみたいなものだ。保存された命令を行使する。そんな性質を能力は持っている。


「プログラムの中に組み込むのは別に美世そのものじゃない。高度なプログラムに必要なのは…分かる?」


高度なプログラム…。つまり高度な先生の能力に必要な要素って事だよね。


「私の…知能。プログラムに必要なのは…AI。だから…私、という知能が必要ってこと?」


先生はよく私が能力を上手く行使することを褒めてくれた。時間操作型因果律系能力を運用することを、褒めていた…。


「そうだよ。死神が欲しいのは美世自身じゃなくて美世の思考パターン。その思考パターンを再現してプログラムを運用することが死神の目的。時間操作型因果律系能力という能力(プログラム)を動かす知能(AI)が死神の正体だよ。」

組まれたプログラムが死神の正体でした。……つまりどういうことだってばよ。


…となる人が多いと思います。5章ではそこら辺を詳しく描きたいと思っていますのでよろしくお願いします。

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